月、月、月、月がいっぱい、お星様もいっぱい。月がいっぱい。お星様もいっぱい。きらきら輝く月の光で、皆狂っちゃえばいいのにな。
狂ってしまえば人生ハッピィ。悩むことも苦しむこともないのにな。月、月、月、月がいっぱいうれしいな。赤い月より黄色い月、黒い月より、黄色い月
黄色い月の光がキラキラチカチカキラキラチカチカまぶたの中で踊ってる。さあ、月の光を浴びながら私と一緒に踊りましょ。終わることのない円舞曲。
キラキラチカチカクルクルチカチカキラキラチカチカクルクルチカチカ
そうよ。私と一緒に踊ればいいの。さあ、あなたも一緒に踊りましょ。私の目をよぅく見て。見て見て。よぅく見て。ホラ、わかるでしょ。私の目、赤いでしょ。
私の赤い目よぅく見て。吸い込まれそうなくらい、よぅく見て。綺麗でしょ。綺麗でしょ。私の赤い目綺麗でしょ。
今日も私は月の光を浴びながら踊る踊るかごめかごめ。私は優曇華院。花京院みたいな名前だけど、たぶん関係ないと思う。しがない月のうさぎです。
うさぎうさぎナニ見て跳ねる十五夜お月さんを見て跳ねる。今日は十五夜。まん丸いお月様から毒を帯びた光のしずくが地上に降り注ぐなんて素敵な日なのかしら。
あんまり素敵な月の夜だから、私は湖の上で踊るのよ。そう、私はかもめ、じゃなくて私は白鳥。正宗じゃないわ。もちろんジョナサンは関係ない。
湖の上で私は華麗に踊るの。瀕死の白鳥のように歌を歌うの。白鳥の歌。エンヤーってまるで宝の山よ。でも身上をつぶしたりはしないわ。私は朝寝も朝酒もしない主義だし、朝湯も嫌だし。
私は踊る。月の光を浴びながら体の中が満たされていくの。月の光に満ち満ち満たされて耳が千切れてしまいそうなほど満たされていく私の体が。
「うどんげ~、そろそろ帰るわよ」
嗚呼、私を呼ぶ声が聞こえる。誰? 誰? 誰なの? 決まってるわ。そんなのえーりんに決まってるわ。お師匠様。
「あら、また狂ってたのね。何も言わなくても脳波を見ればわかるわ」
今、さりげなく凄い事言った気がする。さすが師匠、得体の知れない存在。
「人を遊星から来た物体なんたらみたいに言わないでちょうだい。いいから帰るわよ」
嫌、帰りたくない今日は朝まで帰さない。そんな気分だからお師匠様も一緒に踊りましょ。月の光を浴びながらクルクルチカチカ踊りましょ。
「生憎だけど、私はそんな気分じゃないのよ。だから一緒に帰りましょ。うどんげったら」
顔に張り付いたような満面の笑みを浮かべた師匠様の手にはドス黒い液体の入った注射針が。きっとこれを私に刺すのね。いいわ、ドンと来い!
私は師匠様にとってのモルモット小父さんだから私はいつでも実験台。でもそれでいいの。何でもいいの。さあ、早く! 早くっ! お尻を突き出してウエルカムトゥジャングルよ!
「まったく、うどんげったら楽しそうね。うらやましいわ。私もあなたくらいに狂ってみたいものね」
いえ、お師匠様はすでに私以上に狂ってるじゃない。そうじゃなければ振動が脳に悪いからって家の中でジャンピングシューズを履いたりしないし、暇だからって敷地中に自分の蝋人形を置きまくったりしないわ。
「あなたも蝋人形にしてあげましょうか?」
嫌です。それより何よりお師匠様も一緒に踊りましょうよ。月のワルツ。赤鬼と青鬼のタンゴ。キャベツUFO。さあ、どれから行きます? ……ってお師匠様ったらもういない。
「だって、私はあなたとは違うんです。そう言い残して天才魔法少女えーりんは消えましたとさ」
そう言い残してお師匠様はいなくなっちゃった。なんだかよくわかんないけれど、私は独りぼっちで踊りましょう。いえ独りじゃないわ。だって私には……。
ルルルンランララルルルンランララルルルンランララルルルンランララ
ほら見て! ホラ見て! 月が私を見ているわ!
さすが宇宙人