Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

美鈴の正体が超絶チートキャラだったようです

2008/10/18 02:27:46
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イタッ、イタタッ!?
私の部屋に火砲支援なんて誰が一体何事ですか? って、ああ、フランドール様でしたか……。ベッドに飛び込んできただけで誘導飛翔体の威力があるなんてどんだけです?
うん、暇だから遊べ?
あっ、え、弾幕ごっこはダメですよ!
ほら、普通にやっても私なんて二分も持ちませんし、こんな室内で弾幕を張られたらそれこそ一秒で死にますから!
うわっ、ちょっ、布団が吹っ飛んだ!?
というか、レヴァ剣を出そうとしないでください!
滑稽な姿が見たい? いやいやいや、丸焼け門番なんて滑稽を通り越してグロいだけですよ! えっ、いや、素敵な笑顔で、それ良い、とか言わないでください。ほんと勘弁して下さい。
もっと面白いものや楽しいことはたくさんありますから!
例えばなにが、ですか?
そうですね……。
寝る事とか寝る事とか寝る事?
寝てばかりだからメイドにお仕置きされる……いや、まあ、意外と鋭いところを突いて来ますね、フランドール様は。
でも寝る事は大切ですよ?
パチュリー様なんて寝ないから性格が捻くれているし、お嬢様もこまめに寝ないと記憶が飛びますからね。
うん、嘘じゃないですよ?
今度、三日間くらい追い掛け回してから、こうお嬢様に質問してみてください。
門番の名前はなんですか? と。

元から憶えていないから意味が無い、ですか?

いやいや、名前の一つ位は記憶の片隅に……無いかもしれませんね。
私が門番になったのは、割りとつい最近の話ですし、ハァ。
えっ、何時から門番をしているか、ですか?
それは、紅魔館が幻想郷に来て2ヶ月ほど経ったときでしょうか……いやはや懐かしい。
はい、ここに来る前は何をしていた?
それはですね――――。


                   $


そこは、空であり大地であり海であり、結界の内と外の挟間であった。
上下左右はなく、はっきりとある物といえば僅かな太陽光と大量の雲海だけ――。彼又は彼女はそれだけ在れば存在に支障をきたさない物であり、今日も今日とて意識を混沌の奥底に沈めながら延々と眠っていた。
怠惰ではない。
彼又は彼女の身体は巨大すぎた。
その九つある頭の一つに国が興されるほど巨体である。
身体を起こせば月まで届き、口を閉じれば星を喰らう。
年齢はおよそ数十億を超え、創世記の末期に星に身体の八割ほどを横たえた気がしないでもない。彼又は彼女の数少ない友人達は、異空間に本体を置いたり、完璧に自己を封印していたり、短い周期で転生したり、神として信仰心を集めたり、いろいろな努力をして活動中であるが彼又は彼女は積極的に存在を継続させる気力はない。
只、巨大なだけ――。
それだけの存在が生きていて良い世界はもうないのだ。
だから、身体のほとんどが星に回帰しても寝ているだけであったが、とても賢くて偉い賢者様にお願いされたので、寝ながらも新世界の雛型を外界から保護する結界のエネルギー補助と龍脈の管理、それに天候の操作をしたりしていなかったりしていた。

――誰かの隙間介入か、意識が表層に浮かび上がっていく。

あまりの巨体すぎて周囲に気を遣うことが本能に刻み込まれている、そんな九つの頭の化け物は挟間に在る気配を探り、在ったのが昔からの知り合いだったので数日かけて瞼を開けようとした。
しかし。

「起きなさい起きなさい、大きなもの」
「――……眠…い…無…理」
「これで起きないと内核に核ミサイル数千発ほど放り込む事になりますわよ」
「……それは…地味に…地球が…滅ぶか平気か……のボーダーライン、ですね。解ります。起きたのでむちゃをしないで下さい」
「あらあら、一度試してみたかったのだけど残念だわ」

昔からの友人がむりやりに覚醒を促がしてきた。
睡眠の境界を弄られたのだろう、爽快すぎて嫌な目覚めだ――九つの頭の内で最も小さな会話用の頭の眼球を動かす。
宙というより地に足が着いていない所に影が三つ見えた。
スキマさんとその式神、そして近所に住んでいる竜宮の遣いさんだ。
口には出さないが、へー、と感心する。数十億年ほど経過して一巡したのか、スキマさんの姿形は最初に出会ったときのものであった。昔々、まだ人の設計図しかなかったときに、人間の完成形として宙から落ちてきた“スキマ”さんは記憶にこだわる変な者なので、それもありかな、等と大きなものは思う。

「なんですかスキマさん……目が冴えすぎて地味に眼球が痛いんですけど」
「良い目覚めでしょう?」
「うーん、朝起きたら大量のマスタードを眼球に捻り出された気分です、人間的な基準で言えば……」
「へぇ……」

彼女は何か微妙に不機嫌そうであった。

「どうかしたんですか? ああ、私ってば寝返りを打っちゃいました? 寝相には十二分に注意をしているつもりなんですけど……大地震が起きたのならすみません」

とりあえず謝っておく、この精神は大事だ。
頭を下げることはできないけれど、口だけではなんとでも言える。
しかし、古い付き合いのスキマさんは眉一つ動かさず、秀麗な表情筋を無表情に固めて唇を動かす。

「新参者の紅を名乗る吸血鬼に巫女が殺されたわ」
「へー、それは気がつきませんでした、私も耄碌したものですね。でも、大結界の補助で絶対に負けることが無い巫女が殺されるなんて、戦闘中に耐用年数が尽きたんですかね?」
「……そうかもしれませんわ」
「ふーん、へー、ほー、原因が解らないしもっと巫女の相手をして上げとけば良かった、なんて愚痴を言いに来ただけなら、もう私は寝るよ、寝ますね、寝る」
「待ちなさい大きなもの。話はまだ終わって無いわぁ」
「うん?」

瞼の隙間を操られた。

「……次の巫女が使い物になるまで吸血鬼に憎悪が集中するようにしたんだけど、彼女達は殺しすぎるのよ」
「で、潰すんですか?」
「いいえ、そうしたいのはやまやまだけど複数の勢力が話し合った結果、あの忙しかったときに熟睡していた奴に監視役をさせようと一同同意の上で決まってしまったの……。私の計算的にもそれが最善だと出たしね」
「へー、幻想郷で足並みが揃うなんて、それは、大任の様で嫌な役回りですね」
「ええ、貴方のことね」
「おお…………おっ!?」

お前ちょっとは動けや、という台詞に動けぬ化け物は激しく瞬きする。
すると、胡散臭く笑ったスキマさんの横に居る式神が、「この方が本当に、その、あれなんですか」と首をかしげ、竜宮の使いさんが「気安さが売りなんです」と言っていた。
自分は一体如何いった説明でどのように思われているのか……。
少しばかり不安になり、九つ頭の大きなものは、ここは一発頼れる所を見せねば、と思い目をカッと見開いた。

「で、どうかしら、嫌なら――」
「まあ、良いですよ。私が断ればスキマさんが頑張りすぎて、大事な大事な記憶の一欠けらでも失いそうですし万事任せなさい!」

自信満々の太鼓判を押した後、即行でおおきなものは寝る。
使用する術は胡蝶の夢的なものだ。数秒後、目糞がボロリとこぼれ落ち、むくむくと動いて人型となった。その髪の色は紅。よく見れば飛び抜けて美人なのだが、人の良さげな雰囲気がそれらを緩和している。
周りに居る者に影響されて、少しばかり肉感が溢れすぎるものになったが及第点であろう。これは、昔々に古い仲間と大陸で遊んできた頃に使っていた“普通の人間”程度の能力しかない身体だ。

「さて、では件の吸血鬼のところまで案内して貰えます?」

自信満々に胸を張ると、スキマさんの式神が「あんなので大丈夫なんですか?」と訝しげな視線を向けてきた。
ここまで精巧に人間の能力を模した身体は無いというのに失礼な話だ。
暇つぶしで人間に教えていた体術的な構えを取って、アチョー、と言ってみる。
視線が冷たい。

「まあ、頭は弱いけど倒しようが無いから大丈夫でしょう」
「ああ、やはり頭が弱いんですか……」
「違います、気安いだけです」

スキマさんの言葉に式神が同意し、竜宮の使いさんがフォローしてくれた。
正直、ちょっとだけ異変を起こしたくなったけれど紅髪の美女は自重する。
今、幻想郷には異変を平和裏に解決できる者はいないのだ。問答無用にスキマさんとか闇の人型に折檻されるかもしれない。
一人で納得し有無有無と頷いていると足元に隙間が現れ、「それでは適当にお茶を濁してきなさいな、紅美鈴」と声をかけられた。

「なるほど、紅魔の首に付けられる美しい鈴と言う意味ですね。紅鈴でも良いんじゃないかと思いま――」

隙間空間が大きくなる。
“紅美鈴”は名前の由来を最後まで言わせてもらえず、気泡が溢れる湖の中に放り出された。果たして、件の吸血鬼はどのような奴なのか――。直ぐ様に気分を変えた美鈴は周囲の気配を探り、目の前の島に紅色の館を発見した。
こうして、普通の人間みたいな妖怪 紅美鈴の物語が始まったのだ。
彼女は自身に降りかかる困難を今は知らない――――。


                   $


――――と言うわけで紅魔館に行くことに……あれ、寝ようとしてませんかフランドール様? ここから、不満たらたらなメイドさんの愚痴を聞いちゃう篇、魔女の身体が弱すぎて心配になっちゃう篇、最後にお嬢様に十六分割されちゃう篇と続くんですけど……。
眠たいから寝る、ですか?
まあ、その意見は正しいと思いますが、自室かお嬢様の部屋に行ったほうが……。
あれ、ちょ、もう寝てます?
ハァ、せっかく即興でお話を考えたのに。
えっ、ちょ、ん、服に手を突っ込んでこないでくださいよ!
寝てるから聞こえない? いやいや、思いっきり喋りましたよね、喋ったよね!?
それって、ガハッ、拳骨で…言論統制…とはッ。

明日の天気を夢見ながら、紅美鈴は眠りについた。
一筋の鼻血を輝かせながら――。
「――いや、私が生まれたときには紅魔館に居ただろ、門番。と言うか、なんでうちの妹と同衾している」
「はぁ、そうですね、フランドール様の頬はプニプニして気持ちがいいんですよね」
「それに、何で“俺達の戦いはこれからだ!”ENDなのよ。フランが寝る云々以前に明らかに途中で飽きてきていただろ、お前。と言うか、咲夜がベッドの下に居たことに気がついてやれよ、ツッコミ待ちほど切ない時間はないんだぞ?」
「ええ、やはり吸血鬼だから狭い場所が好きなんでしょうね。腕と脇の間に入ってこようとするんですよ、ハハハッ」
「…………話を聞く気が無い、だと?」
「いえ、全力の三分の一くらいはありますよ」
「そうかそうか……私がお前を殺るなら二十分割だ」
「なるほど、フランドール様は本当に可愛らしい」
「ああ、それは同意せざるを得ない! そして無残に散れ!」
「くそっ! 背水の陣だ!」



美鈴の正体をチートキャラにしたら途中で飽きた。
今は反省している。
ダンベル百科事典
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
おお、あなたはダンベル百科事典さんじゃありませんか!
いやはやこりゃめでたい、またあなたの美鈴SSが読めるとは。
おっ、今回はチート美鈴なのか?と思わせといて結局は中流に落ち着きましたかw
口八丁手八丁でのらりくらりとしたそれは中級妖怪の生きてく上での必須スキルにして、また美鈴によく似合いますな。

ロム専との事でしたがあなたのプチファンもここに一人いるので、気が向いたらまた読ませてくださいね。
2.名前が無い程度の能力削除
ぅおっしゃあ!
ダンベルさんが、ダンベル百科辞典閣下が再び舞い戻られた!
これを嬉しいと言わずして何としますか。
ほんに相も変わらずほっこり殺伐紅魔館ですね。
我等が中級紅美鈴、ゴーイングマイウェイsisters、ガチ百合従者と来られましたか。
やはり次(があればですが)はちょっちズレ気味使い魔とツンツンツンデレ仕様七曜様方と美鈴の絡みを超期待。
こんなに怠惰ならチートでも無問題かと。
衣玖さんはとてもとても良ぇ御方。
ただゆかりんがツンデレ仕様に思えてしまいました。
すいません長々と。
3.名前が無い程度の能力削除
紅鈴って読み方によってはこうr…いや、なんでもない。
4.名前が無い程度の能力削除
ちょwwww
美鈴の正体が龍ってのは見たことありましたが、九頭竜ってのはやばいですね。
旧支配者クラスはどいつもこいつもチートキャラですからwww
5.名前が無い程度の能力削除
つまり美鈴が使う武術は中国拳法などではなく、蝦夷に伝わる伝説の妖拳法だということか。
6.名前が無い程度の能力削除
冒頭の妹様の「素敵な笑顔」が見られないのが悔しい…。
ところで元ネタがわかりません。まさかコメント4番様の言っているようなことなのですか?(レスレスすみません)
7.名前が無い程度の能力削除
ダンベルの帰還!ダンベルの帰還!ダンベルの帰還!ダンベルの帰還!
大事な事だから4回言いましたまし。
サボってたのなら、大安心。書けなかったのなら老中大心配。
「さくやわんもいっしょ」余裕で三年は待てます。
地味に大ファンです。
8.名前が無い程度の能力削除
うおおぉ!?久しぶりに創想話に来たらダンベルさんが復活してるなんて!
しかも相変わらず飄々としたステキな美鈴だなんて!
「~といっしょ!」の新作も待ってます!
頑張ってください!
9.名前が無い程度の能力削除
九頭・左竜雷掌を使わざるを得ない
10.名前が無い程度の能力削除
ダンベル閣下…今更だがお目見え出来るとは。

背水の陣を敷かねば成るまい