*注意*
レイアリに傾いたけど気持ち的にレイアリマリ。
カプ以外特に注意はいらないかと。
霊夢とアリスと魔理沙が仲良く鍋を食べているだけです。
タイミングは最悪だった。
どうして今なのという問いかけは何度も私の中を漂い続け。
――取りあえず目の前の白黒を叩きのめした。
「はぁ、最悪だわ。まさかあのタイミングで来るなんて」
あのタイミングとは霊夢が今日も今日とて縁側でお昼寝しているときのことだった。
突如現れた魔理沙に昼寝の邪魔をされて不機嫌だったのとすっかり体が冷え寒かったのも加わり些細なことで口論となった。
そして魔理沙に「ふん、アリスに片想い中のくせに」とまったく関係のない売り言葉に図星なこともあり買い言葉を吐き捨て口論はヒートアップ。
挙句の果て
「だからアリスのことなんて好きじゃないって言ってるじゃない!寧ろ嫌いよ!あんな根暗人形遣い!」
と叫んだその時、どさっと何かが落ちる音。
そこには思いっきり涙目のアリスの姿が。
血が引くのを感じながら誤解を解こうとするもアリスは何も言わず神社から出て行ってしまったのだ。
「いい加減元気だせよ」
「誰のせいだと思ってんのよ」
悪気はあるのかハハハと機嫌を伺うような苦笑いが余計にムっときたので取りあえずもう一発ぶん殴った。
どうして魔理沙なんかの分かりやすい挑発に乗ってしまったのかしら。
アリスが落としていった紙袋の中には2つ分のマフラーが入っていて余計心が痛む。
多分私と魔理沙のために編んできたのだろう。
色は白と黒とでどちらも魔理沙を思わせる色で妬けてしまうが白は紅白の白だと私は信じているわ。
ことの発端である魔理沙は嬉しそうにマフラーで首元を覆っているが、どうもつける気がしない。
やっぱり誤解を解いてからじゃないと有り難く頂けない。
「んお、何処行くんだ?」
「アリスのところ。責任取って留守番と掃除と夕ご飯の支度お願いね」
「お、おい!」
* * * * *
途中氷精にぶつかった気がしたがスルーでマーガトロイド邸にご到着。
冬に腋を露出させて飛ぶもんじゃない、寒過ぎた。
ちゃんちゃんこ欲しい。
凍えかけている手を軽く開いて木製の戸をトントンと叩き声をかけるが辺りは静寂を守った。
あれ、いないのかしら?
窓から中を覗き込んで見るとなんとも簡単に家主は見つかった。
堂々たる居留守がぐさっと胸に刺さる。
せめて隠れるとかカーテンを閉めておくとかして欲しい。
「お願いアリス、開けて。あれは誤解なの!私は貴女のこと嫌いじゃないわ…あれは…その…事故よ」
未だ固く閉ざされた扉。
あぁ、もう面倒だわ。
ぶち破ってやろうかしら。
幻想郷の巫女は短気であった。
扉の危機を感じてかアリスが心底迷惑そうな顔で施錠を解き迎えてくれた。
「うるさいんだけど、近所迷惑」
「誰も住んでないじゃないここ」
「それで何か用なの?」
「さっきのあれ嘘だから!」
どんと一歩踏み出す。
霊夢の勢いにたじろぐアリスに霊夢は更に足を進め家の進入に成功した。
扉を締めるとアリスの顔が更に険しいものへ変わる。
「私はアリスのこと嫌いじゃないし根暗とも少ししか思ってないわ」
「…少しは思ってるのね」
「正直なのよ」
視線を交わし、しばしの無言。
それからアリスは深い溜息をつき「気にしてないわよ」と踵を返した。
ほっと胸を下ろしアリスに続く。
「なに?」
「折角ここまで飛んできたんだから少しくらい良いでしょ?寒かったんだから」
「…霊夢、マフラーは?」
「あんたに許されるまで受け取れないわよ」
「もういいから外出るときはしなさい、人間なのに風邪引いたら大変でしょ。上海、紅茶お願い」
椅子ではなくソファーに座ったアリスの隣にぴたりと身を寄せて座る。
ソファーの方が好き。
アリスにくっついていられるから、テーブルがないのは不便だけど。
後から上海が熱い紅茶を煎れてきてくれた。
うん、美味しい。
「ところでアリス」
「ん、なによ」
「泣いてたね」
「なっ、な、泣いてなんかないわよ!」
顔を真っ赤にして慌てるアリスは可愛すぎた。
ついつい微笑んでしまうと今度はムスっとした顔に変ってしまった。
でもそれも可愛い。
口に出して言うと黙りこんじゃうから言わないでおくけどね。
でもこれだけは訊いておきたい。
「ねぇ、私に嫌われてると思って哀しかった?」
「…当たり前じゃない」
「そっか、ごめんね」
「もういいって言ってるでしょ」
「じゃあマフラーしてもいい?」
「しないと怒る」
今年の冬も暖かい。
ぎゅっとアリスの右手を握ってみると微かにだけど握り返してくれた。
アリスを見上げると未だに顔が赤くて不自然に逸らしている目線が可笑しかった。
「アリス、寒いわ」
「…仕方ないわね」
「うん、仕方ないよね」
向き合うとアリスの首に腕を廻し身を寄せた。
膝の上に乗っかる形は何処か子供扱いされている気がするけどこの身長差だ。
落ち着く位置を見つけて甘えるようにアリスの胸に顔を埋める。
アリスも口では何やら文句を言いつつも背中に腕を廻して抱き寄せてくれた。
一時はどうなるかと思ったけど、今の状況を作り出してくれた魔理沙に感謝しなきゃ。
「霊夢」
「んー?」
「私のこと好き?」
「…っ、どちらかと言うとす、好きよ!」
「良かった」
腕の力が少し強くなった。
余計身体がくっ付き心音が伝わっちゃわないか心配だ。
アリスはすっかりご機嫌の様子で私の髪の毛を片手で梳き始め私もそれが気持ちよくて任せていた。
* * * * *
「随分大きなお届け物だな」
「まったくよ」
あれからすっかり寝付いてしまった霊夢を抱え遥々神社まで飛んできたアリスには疲労の色が滲み出ていた。
寝ながらもアリスに抱きついて離れない霊夢に憐れむような目を向ける魔理沙。
(人に雑用やらせといて気持ち良さそうに寝やがって、ぐうたら巫女め)
「鍋にしようと思ってたんだ食っていけよ」
「まるで我が家ね」
「霊夢に頼まれてたんだって」
「それなら遠慮なく頂こうかしら」
「そこで待ってろ、霊夢が邪魔で動けないだろ」
魔理沙の言うとおりにして座って待っていると湯気のたつ鍋がでてきた。
明らかに白菜が多いのは見間違いではないだろう。
しかし思わず喉を鳴らしてしまいそうなほどいい匂いがする。
それに反応してか今まで微動だにしなかった霊夢がむくりと起き上がった。
やっと解放されたアリスもぐっと背筋を伸ばす。
「あら、いいタイミング」
「今日はバッドタイミングなんじゃなかったのか?」
「それはそれ、これはこれよ。いただきます」
「先に食うなよ!」
「はいはい、白菜ならあるから大丈夫」
「…白菜しかないんだろ」
見事に白菜のみだった。
期待をこめて鍋の底のほうを漁ってみても白菜しかでてこない。
それでもダシが美味しかったので十分味わえた。
お米は一応あったので全部はけた後雑炊にした。
これがまた美味しくて直ぐに鍋は空となった。
「それにしても炬燵っていいわね」
「冬はやっぱり炬燵に限るな!」
「あんたらが最近神社に来る理由が分かったわ」
熱いお茶に蜜柑。
心がこんなにもほわほわとするのはどうしてかしら。
団欒って感じがするわ。
「おっと、そうだ。アリス、これサンキューな」
「私も改めてありがとうね、アリス」
魔理沙は黒の霊夢は白のマフラーを巻き嬉しそうに笑う2人は揃ってアリスの隣へ身を寄せてくる。
幸せいっぱいの2人に挟まれた少女もまた幸せそうに微笑んでいた。
今年の冬もとても暖かいです。
...END
寒過ぎた?
もっとレイアリの輪は広がって良いと思います!
心温まりました
あと、誤字でしょうか?
そして魔理沙に「ふん、アリスに片思い中のくせに」 の文は 魔理沙の「ふん、…ではないでしょうか?間違ってたらすいません、