フランドール・スカーレットはもう永いこと外へでていない。
たまに遊びに来る白黒と遊ぶ以外は、部屋でごろごろ本を読んで過ごす。
毎日毎日飽きもせず本ばかりを読んでいるものだから、飽きが来た。
そこで彼女は人里へ行ってみる事にした。
以前白黒においしいあんみつの店があると聞いたのだ。
きっとさぞかしおいしい事であろう。
彼女の期待は膨らむばかり。
店へ行くにはお金が必要である。
それは幻想郷でも変わらない。
だから彼女は姉を探して広い屋敷を歩き回った。
姉はテラスで優雅にお茶をしていた。
「お姉様。ごきげんよう」
「あら、フラン。珍しいわね。どうしたの?」
「えっと、お金ちょうだい」
「何に使うの?」
「甘味処であんみつを食べるの」
「フランが?外へ?」
姉は目を丸くしていた。
ずっと外出していない妹がお出かけだとか。
びっくり仰天である。
そんなレミリアの様子を見て妹は怒る。
「もう!私が外に出たらいけないの!?」
「いや、そういうわけじゃないけれど」
そういうわけじゃないけれど、姉としてはやはり心配である。
しかし、ここで自分がついて行くと言うと、きっとフランは嫌がるだろう。
子供扱いする歳でもないし。
幽閉してたはずなんだけどな。
そうして、レミリアは咲夜に財布を持って来させ、漱石さんを二枚抜き出す。
「これでパチェも連れていきなさい。パチェにもたまには外出が必要だわ」
パチュリー・ノーレッジは不機嫌だ。
設定資料集を眺めていたところ、友人の妹により現実に引き戻されたのだ。
本の世界に没頭する時間は、彼女にとって至福の時間。
おのれレミリアめ、この恨みはらさでおくものか。
パチュリーはすぐさま妹様の来訪が友人の差し金であると悟り、怨んだ。
しばし沈黙が続いた後、フランドールが口を開く。
「パチュリー。あんみつ食べに行こう。私の奢りだよ!」
奢りと言う言葉には魔力が宿ってるのかもしれない。
そう考える時には魔女の機嫌は治っていた、奢りと言う言葉によって。
辿り着いた先は里にある甘味処。
それなりに人の入りは良いようだ。
甘味処の旗、暖簾がここが甘味処であるとしきりに主張する。
外に長椅子が置いてあり、通りを眺めながら食べる事もできるようだ。
この通りは慧音先生や風見さんがたまに通る通りである。
ちなみに内装は普通に小綺麗で、壁によくわからない達筆な掛け軸がかけてある。
少女達は店内奥のテーブル席に通された。
彼女達がたとえ魔女と吸血鬼であろうと誰も驚かない。
生きとし生ける者、皆甘い物が好きであることは幻想郷の常識であるから。
妹様は抹茶クリームあんみつを、パチェさんは白玉ぜんざいを注文した。
パチュリーは口直しにと置かれたシソの実をつまみ、渋い顔でお茶をすすりながら注文の品を待っている。
「パチュリーってなんか、年寄りじみてる所あるよね」
「ええっ!!?」
自分よりずっと年上に言われた。
妹様は読書好きのインドア派であるあたり、友人よりずっと気が合うと思ってたのに。
ショックを受けている様子の魔女にすかさずフォローを入れる。
「いや、ぜんざい頼んだりとか、お茶すすったりしてる姿がそれっぽくて」
「それなら、この店の客はお年寄りが多い事になるわね」
実際にお年寄りは多かったりする。
フランドールは違うんだよなーと唸る。
「何と言うか、雰囲気だよ。服がナフタレン臭いところとか」
何故防虫剤の匂いでそんな雰囲気がでるのだろう。
「そう言う妹様も仕草が年寄り臭いけど。椅子から立つと腰を叩くとか」
「「………」」
「年をとるって嫌ね」
そうして静かな時間が過ぎる。
未だ品は来ない。
「お、珍しい奴がいるな」
普通の白黒がやって来て話かけてくる。
人形使いも一緒だった。
「居たら悪いのかしら」
パチュリーが答える。
眉間の皺は相変わらずに。
「そういうわけじゃないけど、引きこもりが集まってたからな。まぁ、私も引きこもりを連れて来たんだが」
「うるさいわね」
アリスがそれに答える。
こちらの眉間の皺も相変わらずである。
そして、やっとお待ちかねの抹茶クリームあんみつと白玉ぜんざいがやってきた。
後から来た少女達はくずきり、ストロベリーアイス最中を入れ違いで注文した。
「甘味処でストロベリーアイスを頼むのは邪道だと思うぜ」
「メニューにあるんだから別に邪道じゃないでしょう」
「いや、蕎麦屋でカレー南蛮頼むくらい邪道だ」
「それも別に……第一、魔法使いなんだから邪道でも、いや邪道こそ、よ」
二人が来ると騒がしくなった。
これも若さ故なのか。
アリスの言葉に感動し、パチュリーは私もストロベリーアイス頼もうかしらとか呟いている。
「ところで」
フランドールが口を開いた。
三人とも注目する。
「パチュリーと私、どっちが年寄りっぽい?」
一応年寄り臭いのは認めたのか、そんな質問をした。
「どっちが……って言ってもなぁ……」
「そうねぇ………」
若い魔法使い達は言葉に困る。
「どちらかと言えばフランじゃないか」
白黒は言う。
「なんか生活に覇気がなくて、色々と衰えてる気がする」
それを聞いたフランドールは言い返す言葉がなかなか見つからず、仕方ないから頬を膨らませた。
見た目だけは幼女である。
「私はパチュリーだと思う」
そう言うのは七色。
「同じく生活に覇気がない上、生きる目的を失ってる気がする。惰性で読書してるみたい」
紫魔女は吸血幼女の真似も兼ねて、不満に頬を膨らませる。
似合わない。
「まぁ、それらは両方に言える事なんだがな」
「そうね。二人とも目が死んでる時あるし」
フランドールはこんな話題振らなければよかったと、パチュリーは外にでるんじゃなかったと後悔するも後の祭り。
「ねぇ。じゃあどうすればいいのかな?」
聞くはフランドール。
原因を掴んでる人なら打開策があると期待をする。
「何か生きる目標を持てばいいんじゃないか。アリスの自立人形しかり、早苗の全人類の守矢信仰計画しかり」
「生きる目標って、また漠然としてるわね」
一応望みをもって聞いていたパチュリーが不平をこぼす。
確かに簡単に見つかるものじゃない。
「そうでなくとも趣味をもってみたらどうかしら。新聞やら教師やら。燻ってると霊夢みたいになるわよ」
この時霊夢に殺意が芽生えるも、いつもの事である。
「それだよ!趣味だよ!」
目から鱗が物理的に落ちんばかり目を見開きフランは言う。
同じくパチュリーも納得したのか、無言でこくこく頷いてる。
その様子を見て、くずきりとストロベリーアイス最中を持ってきた店員が変な視線を送っていた。
素敵な甘味をお腹に納め、少女達は家路についた。
フランドールは自室に篭りより良く生きるための趣味を模索する。
生きる上での良いとは何か。
恐らく幸せが答の一つであろう。
しかし、自分にとっての幸せとは何だろうか、そもそも生きるとは。
こうして、フランドールは哲学を始めた。
甘味処から帰ってきたパチュリーは執筆を始めた。
パチュリーの趣味は読書であるので、良い本と巡り会う嬉しさを知っている。
しかし、幻想郷では書き手があまりいない。
ならば読書ブームをその手でもたらしてやろう、と。
そして彼女の処女作『甘味で治る引きこもり』は多くの親御さんに受け、彼女の財布は潤いましたとさ。
たまに遊びに来る白黒と遊ぶ以外は、部屋でごろごろ本を読んで過ごす。
毎日毎日飽きもせず本ばかりを読んでいるものだから、飽きが来た。
そこで彼女は人里へ行ってみる事にした。
以前白黒においしいあんみつの店があると聞いたのだ。
きっとさぞかしおいしい事であろう。
彼女の期待は膨らむばかり。
店へ行くにはお金が必要である。
それは幻想郷でも変わらない。
だから彼女は姉を探して広い屋敷を歩き回った。
姉はテラスで優雅にお茶をしていた。
「お姉様。ごきげんよう」
「あら、フラン。珍しいわね。どうしたの?」
「えっと、お金ちょうだい」
「何に使うの?」
「甘味処であんみつを食べるの」
「フランが?外へ?」
姉は目を丸くしていた。
ずっと外出していない妹がお出かけだとか。
びっくり仰天である。
そんなレミリアの様子を見て妹は怒る。
「もう!私が外に出たらいけないの!?」
「いや、そういうわけじゃないけれど」
そういうわけじゃないけれど、姉としてはやはり心配である。
しかし、ここで自分がついて行くと言うと、きっとフランは嫌がるだろう。
子供扱いする歳でもないし。
幽閉してたはずなんだけどな。
そうして、レミリアは咲夜に財布を持って来させ、漱石さんを二枚抜き出す。
「これでパチェも連れていきなさい。パチェにもたまには外出が必要だわ」
パチュリー・ノーレッジは不機嫌だ。
設定資料集を眺めていたところ、友人の妹により現実に引き戻されたのだ。
本の世界に没頭する時間は、彼女にとって至福の時間。
おのれレミリアめ、この恨みはらさでおくものか。
パチュリーはすぐさま妹様の来訪が友人の差し金であると悟り、怨んだ。
しばし沈黙が続いた後、フランドールが口を開く。
「パチュリー。あんみつ食べに行こう。私の奢りだよ!」
奢りと言う言葉には魔力が宿ってるのかもしれない。
そう考える時には魔女の機嫌は治っていた、奢りと言う言葉によって。
辿り着いた先は里にある甘味処。
それなりに人の入りは良いようだ。
甘味処の旗、暖簾がここが甘味処であるとしきりに主張する。
外に長椅子が置いてあり、通りを眺めながら食べる事もできるようだ。
この通りは慧音先生や風見さんがたまに通る通りである。
ちなみに内装は普通に小綺麗で、壁によくわからない達筆な掛け軸がかけてある。
少女達は店内奥のテーブル席に通された。
彼女達がたとえ魔女と吸血鬼であろうと誰も驚かない。
生きとし生ける者、皆甘い物が好きであることは幻想郷の常識であるから。
妹様は抹茶クリームあんみつを、パチェさんは白玉ぜんざいを注文した。
パチュリーは口直しにと置かれたシソの実をつまみ、渋い顔でお茶をすすりながら注文の品を待っている。
「パチュリーってなんか、年寄りじみてる所あるよね」
「ええっ!!?」
自分よりずっと年上に言われた。
妹様は読書好きのインドア派であるあたり、友人よりずっと気が合うと思ってたのに。
ショックを受けている様子の魔女にすかさずフォローを入れる。
「いや、ぜんざい頼んだりとか、お茶すすったりしてる姿がそれっぽくて」
「それなら、この店の客はお年寄りが多い事になるわね」
実際にお年寄りは多かったりする。
フランドールは違うんだよなーと唸る。
「何と言うか、雰囲気だよ。服がナフタレン臭いところとか」
何故防虫剤の匂いでそんな雰囲気がでるのだろう。
「そう言う妹様も仕草が年寄り臭いけど。椅子から立つと腰を叩くとか」
「「………」」
「年をとるって嫌ね」
そうして静かな時間が過ぎる。
未だ品は来ない。
「お、珍しい奴がいるな」
普通の白黒がやって来て話かけてくる。
人形使いも一緒だった。
「居たら悪いのかしら」
パチュリーが答える。
眉間の皺は相変わらずに。
「そういうわけじゃないけど、引きこもりが集まってたからな。まぁ、私も引きこもりを連れて来たんだが」
「うるさいわね」
アリスがそれに答える。
こちらの眉間の皺も相変わらずである。
そして、やっとお待ちかねの抹茶クリームあんみつと白玉ぜんざいがやってきた。
後から来た少女達はくずきり、ストロベリーアイス最中を入れ違いで注文した。
「甘味処でストロベリーアイスを頼むのは邪道だと思うぜ」
「メニューにあるんだから別に邪道じゃないでしょう」
「いや、蕎麦屋でカレー南蛮頼むくらい邪道だ」
「それも別に……第一、魔法使いなんだから邪道でも、いや邪道こそ、よ」
二人が来ると騒がしくなった。
これも若さ故なのか。
アリスの言葉に感動し、パチュリーは私もストロベリーアイス頼もうかしらとか呟いている。
「ところで」
フランドールが口を開いた。
三人とも注目する。
「パチュリーと私、どっちが年寄りっぽい?」
一応年寄り臭いのは認めたのか、そんな質問をした。
「どっちが……って言ってもなぁ……」
「そうねぇ………」
若い魔法使い達は言葉に困る。
「どちらかと言えばフランじゃないか」
白黒は言う。
「なんか生活に覇気がなくて、色々と衰えてる気がする」
それを聞いたフランドールは言い返す言葉がなかなか見つからず、仕方ないから頬を膨らませた。
見た目だけは幼女である。
「私はパチュリーだと思う」
そう言うのは七色。
「同じく生活に覇気がない上、生きる目的を失ってる気がする。惰性で読書してるみたい」
紫魔女は吸血幼女の真似も兼ねて、不満に頬を膨らませる。
似合わない。
「まぁ、それらは両方に言える事なんだがな」
「そうね。二人とも目が死んでる時あるし」
フランドールはこんな話題振らなければよかったと、パチュリーは外にでるんじゃなかったと後悔するも後の祭り。
「ねぇ。じゃあどうすればいいのかな?」
聞くはフランドール。
原因を掴んでる人なら打開策があると期待をする。
「何か生きる目標を持てばいいんじゃないか。アリスの自立人形しかり、早苗の全人類の守矢信仰計画しかり」
「生きる目標って、また漠然としてるわね」
一応望みをもって聞いていたパチュリーが不平をこぼす。
確かに簡単に見つかるものじゃない。
「そうでなくとも趣味をもってみたらどうかしら。新聞やら教師やら。燻ってると霊夢みたいになるわよ」
この時霊夢に殺意が芽生えるも、いつもの事である。
「それだよ!趣味だよ!」
目から鱗が物理的に落ちんばかり目を見開きフランは言う。
同じくパチュリーも納得したのか、無言でこくこく頷いてる。
その様子を見て、くずきりとストロベリーアイス最中を持ってきた店員が変な視線を送っていた。
素敵な甘味をお腹に納め、少女達は家路についた。
フランドールは自室に篭りより良く生きるための趣味を模索する。
生きる上での良いとは何か。
恐らく幸せが答の一つであろう。
しかし、自分にとっての幸せとは何だろうか、そもそも生きるとは。
こうして、フランドールは哲学を始めた。
甘味処から帰ってきたパチュリーは執筆を始めた。
パチュリーの趣味は読書であるので、良い本と巡り会う嬉しさを知っている。
しかし、幻想郷では書き手があまりいない。
ならば読書ブームをその手でもたらしてやろう、と。
そして彼女の処女作『甘味で治る引きこもり』は多くの親御さんに受け、彼女の財布は潤いましたとさ。
唐突に哲学しちゃうフランちゃんも妙に面白いw
>『甘味で治る引きこもり』
ちょっと読んでみたいかもwww
それにしてもアリスの「二人とも目が死んでる時あるし」は酷すぎw
淡々としてるけどアリスも魔理沙も正直すぎw
『甘味で治る引きこもり』を一冊買いたい。