私は、二ヶ月ぶりに博麗神社へ訪れた。
以前は週一回のペースで顔を出していたはずだが、神社の巫女である博麗霊夢がアイツと交際を始めてからは距離を取っていたんだ。
別に女同士の色恋沙汰に口出しをするつもりはないが、霊夢が付き合っていると知ってからはアイツの事がどことなく気に食わなくなっていたことは確かだった。
「邪魔するぜ」
「はいはいどうぞ」
玄関で靴を脱ぎ、久しぶりにくたびれた母屋の香りを肺に取り込んでみる。うん、霊夢の家の匂いだ。
久々に来たのだから何を話してやろうかと最近の実験の成果を思い返している最中に、視界の端に見慣れない物が映った。可愛らしい兎の絵が描かれた下履きは、記憶が確かなら二ヶ月前には存在していなかった物で、霊夢らしからぬデザインが悪目立ちしている。
それを、とりあえずは流し見て、霊夢の後を追った。
居間の様子は相変わらずで、古びた畳と柱時計、歴史を感じる傷だらけの柱と、修繕の跡が多い障子戸。居心地の良い和の空間に満足してから、すでに火が入っているであろう炬燵に足を滑り込ませた。
「あんたが玄関から入ってくるなんて珍しいわね」
霊夢は、私に着席を促したまま立っている。いつも通りなら茶の一杯でも入れてきてくれる流れになるだろう。
「礼儀を弁えただけだぜ」
「無礼が服着て歩いてる奴がよくもまあ。緑茶で良い?」
「ああ。体が冷えちまったんだ、早くしてくれよ」
こちらを振り返らずに「言いたい放題、相変わらずね」とこぼし、巫女は茶箪笥から袋を一つ取り出して台所へと向かった。どうせ緑茶しか無いくせにと心の中で突っ込んで、開けっ放しの茶箪笥を覗くべく炬燵から這い出る。本人は気付いていないのかもしれないが、霊夢は質の良い物を左に置く癖があるのだ。
「きょ~おっのおっ茶は~な~んだ~ろな~」
適当なリズムに乗せて、いい加減な即興詩を呟きながら立ち上がる。数歩歩いて少し屈めば、様々な袋が鎮座しているのが丸見えだ。
「ちぇ、右から二番目か」
経験上そこまで良くない袋が抜けている事を確認し少し残念に思っていると、どことなく違和感を感じ視線を左に動かす。
常は里の高級緑茶が置いてある場所に、どういうわけか紅茶の袋が置いてあった。馬鹿な、あり得ない。霊夢は常日頃から「紅茶なんてどこがいいのかわからないわ、あり得ない。私は緑茶だけで十分」と声高に言っていたはずだが。
「……」
見なかったことにして、駄々下がったテンションを引きずりながら炬燵の中へと戻る。足をじんわりと暖めてくれているが、来たときより寒くなってきていた。
「お待たせ」
「遅いぜ」
廊下から霊夢が現れて、盆から湯気を立ち上らせる湯飲みを差し出してくれた。いつも通りの小さな文句を垂れてから、慎重に受け取って喉を潤す。うん、美味い。
「しかし、この二ヶ月どうしてたのよ」
「研究まっしぐらだよ。まあ、お邪魔虫になるとお前らにシバかれそうだったしな」
「アホか。まあ、出刃亀に何度も来たブン屋よりは常識人って認めてあげるわ」
「あれと比較する時点で失礼なんだが」
言い合って、二人して少しだけ笑う。茶を啜って喉を鳴らして、滑りが良くなった舌を会話で舞わして回すこの時間。これが好きで神社に通っているようなものだ。
「今日はアイツは居ないんだな」
「あっちだって忙しいのよ」
「へぇへぇ。で、相変わらず一人で昼寝でもしてたのか?」
「人を何だと思っているんだか。あんたが来るまでは本を読んでいたわよ」
「はっ?本?」
「そ」
面食らっている私を後目に、霊夢は炬燵の脇に転がっていた分厚い本を拾い上げた。数百は頁数がありそうな見た目に尚更驚きが爆発する。
「霊夢が、本を、しかもあんなびっしり活字だらけの洋書を……?」
「本くらい読めるっての。ちゃんと日本語訳されているし」
そういう問題ではないのだが、というか霊夢が本を読む姿なんぞ想像もできないのだが、これ以上突っ込むときっと命が危なくなるだろうからおとなしく引き下がることにしておく。
「寝てぼーっとしてるだけの生活は勿体ないって言われてね、来る度に本を置いていくのよ。まあ、意外と面白いものが多いから最近は本の虫になってるわね」
「意外すぎて思わず茶を吹くところだったぜ」
「そしたら出ちゃいけない物まで吹くことになってたわよ」
「そりゃ吹くじゃなくて吐くだろ」
減らず口を並べ立ててなんとか平静を装うものの、心中はどうしても穏やかでいられない。胸が、ジクジクした。
「吹くだの吐くだの止めてよね、もう昼なんだから」
「お前だって言ってた癖に。あ、私はご飯大盛りでよろしく」
「そう言うと思って、さっきあんたの分も仕込んできたわよ」
「よっ、流石は博麗の巫女だ。懐の深さが違うぜ」
「そのおだて文句は聞き飽きたわ。どうする、もう食べちゃう?」
「まあ、そのつもりでこの時間に来たからな」
「やっぱり」
憮然顔をしながら、霊夢は再び部屋を出ていった。なんとか笑顔で見送ることができたが、これ以上は持ちそうにない。邪魔になるからとかそんな変な気を起こさずに、今まで通り顔を出していれば良かった。そんな後悔も遅すぎたことは明白で、どこまでも自由で自分本位な博麗霊夢は、アイツの色に浸食されてしまっていた。
きっと染められて、変えられて、最後には私が憧れていた博麗霊夢は死んで居なくなる。霊夢だった誰かとなってしまうのが目に見えている。心に仕舞われていた大切な物が抜け落ちていく。
嫌だ。
嫌だ嫌だ。こんな気分も、変わった霊夢も、変えたアイツも、駄々こねてる私も嫌だ。
「お待たせ」
「……おう」
声だけで応え、霊夢が料理が乗った食器を並べていくのを眺める。漬け物に、白米、卵焼き……そして、
「それは、ポトフか?」
「正解。作り方を教わったのよ。試しに食べて味の感想聞かせて頂戴」
湯気が鼻腔をくすぐり、ぐぅと腹の虫が鳴る。だけれど、食欲はなくなる一方だ。霊夢の作った品だ、美味しくないはずがない。なのに今は、不味くあって欲しいなどと考えてしまっている自分が居た。それも許せなかった。
「霊夢、お前変わったな」
「何よ、藪から棒に」
配膳を終えて炬燵に入る霊夢に、口が勝手に言葉を投げかける。止まらない、止められない。
「昔のお前は和食一辺倒だったな。私が教えようとしてもカレーの作り方すら覚えようとしない徹底っぷり、懐かしい」
「それが?」
「よそってくれたところ悪いんだけどよ、弾幕ごっこしよう」
「は?」
呆ける霊夢に本気を見せるべく、懐に手を突っ込んで八卦炉に充填を開始。宣言無しにでも魔砲を撃てるよう準備に入った。
「あんた何言ってるのよ、冷めちゃうでしょうが」
「だから悪いって言ってるだろうが。別に、今ここでおっぱじめても構わないんだぜ?」
霊夢の目を睨みつけて、充填が完了した八卦炉を取り出し見せつける。のんびりとしていた目が戦闘モードに変わり、眉間に皺が刻まれた。それを確認してから、壁に立てかけておいた箒に手をかける。
「よくわからないけれど、力づくで黙らせなきゃいけないみたいね」
「ああ……『お前に』勝つのが、昔からの私の目標だからな」
「わけがわからないっての!」
背後にあった縁側に通じる障子戸を開け放ち、寒風吹き荒ぶ屋外へと飛び出した。追ってくる巫女装束を着た誰かを焼き尽くし、中に仕舞われている博麗霊夢を解き放つことを夢見て。
「ちく、しょお」
十分もしないうちに、私は境内に倒れることになった。素早い動き、反則的な空間移動術、強力な結界……全部計算通りだったのに。
「なん、で、当たらな……」
絶対に、間違いなく、恋符は直撃するはずだった。空間移動を誘い、結界が無い場所におびき出し、仕込んでおいた弾幕で動きを封じて……避けられるはずが無かったのに。
「『相手を観察して思考する』のよ」
「あ、あ……」
それは、アイツの、口癖……
「あんたが罠張ってるのなんか、ちょっと考えればバレバレだったわよ。もうちょっとわかりにくくやらないと引っかからないわ」
んなわけ、あるか。そう言うお前はいつも勘ばっかりで、とりあえず突っ込んで、私以上に力任せ。思考の『し』の字もなかったじゃないか。なかったはず……じゃないのか。
うっすらと目を開くと、無表情で見下ろす霊夢の顔と、流れが速い雲が見えた。その視線はどこかアイツを想起させる、冷たくて、見下した――
「魔理沙。あんた、弱くなったわね」
それだけ言って、霊夢は母屋へと戻っていった。こちらを一度も振り返ることなく、履き物も残さずに、障子戸を閉める。
ピシャリという子気味良い音が、まるで私を隔絶する結界の音のような錯覚さえ覚えた。
「なんで、前より……強いんだよ」
私は、強くて格好良くて凛々しくて、そんなお前の友達であることが誇らしかったんだ。なのに、なんだよこれ、なんなんだよ。
「馬鹿野郎……馬鹿野郎っ……!」
嗚咽が止まらない。涙まで溢れてきた。
「馬鹿……やろう……」
私はこれからどこへ向かえばいいんだよ。誰と馬鹿やればいいんだ。
なあ、教えてくれよ、お願いだよ。
霊夢。
パキンという、何かが弾ける音がして、自分の耳元に何かが落ちてきた。涙で霞んだ視界を精一杯開いて見ると、そこには風で折れた桜の枝。小さな蕾が付いていて、きっともう数週間もすれば一斉に花開くんだろう。
春は、もう、すぐそこだ。
終
以前は週一回のペースで顔を出していたはずだが、神社の巫女である博麗霊夢がアイツと交際を始めてからは距離を取っていたんだ。
別に女同士の色恋沙汰に口出しをするつもりはないが、霊夢が付き合っていると知ってからはアイツの事がどことなく気に食わなくなっていたことは確かだった。
「邪魔するぜ」
「はいはいどうぞ」
玄関で靴を脱ぎ、久しぶりにくたびれた母屋の香りを肺に取り込んでみる。うん、霊夢の家の匂いだ。
久々に来たのだから何を話してやろうかと最近の実験の成果を思い返している最中に、視界の端に見慣れない物が映った。可愛らしい兎の絵が描かれた下履きは、記憶が確かなら二ヶ月前には存在していなかった物で、霊夢らしからぬデザインが悪目立ちしている。
それを、とりあえずは流し見て、霊夢の後を追った。
居間の様子は相変わらずで、古びた畳と柱時計、歴史を感じる傷だらけの柱と、修繕の跡が多い障子戸。居心地の良い和の空間に満足してから、すでに火が入っているであろう炬燵に足を滑り込ませた。
「あんたが玄関から入ってくるなんて珍しいわね」
霊夢は、私に着席を促したまま立っている。いつも通りなら茶の一杯でも入れてきてくれる流れになるだろう。
「礼儀を弁えただけだぜ」
「無礼が服着て歩いてる奴がよくもまあ。緑茶で良い?」
「ああ。体が冷えちまったんだ、早くしてくれよ」
こちらを振り返らずに「言いたい放題、相変わらずね」とこぼし、巫女は茶箪笥から袋を一つ取り出して台所へと向かった。どうせ緑茶しか無いくせにと心の中で突っ込んで、開けっ放しの茶箪笥を覗くべく炬燵から這い出る。本人は気付いていないのかもしれないが、霊夢は質の良い物を左に置く癖があるのだ。
「きょ~おっのおっ茶は~な~んだ~ろな~」
適当なリズムに乗せて、いい加減な即興詩を呟きながら立ち上がる。数歩歩いて少し屈めば、様々な袋が鎮座しているのが丸見えだ。
「ちぇ、右から二番目か」
経験上そこまで良くない袋が抜けている事を確認し少し残念に思っていると、どことなく違和感を感じ視線を左に動かす。
常は里の高級緑茶が置いてある場所に、どういうわけか紅茶の袋が置いてあった。馬鹿な、あり得ない。霊夢は常日頃から「紅茶なんてどこがいいのかわからないわ、あり得ない。私は緑茶だけで十分」と声高に言っていたはずだが。
「……」
見なかったことにして、駄々下がったテンションを引きずりながら炬燵の中へと戻る。足をじんわりと暖めてくれているが、来たときより寒くなってきていた。
「お待たせ」
「遅いぜ」
廊下から霊夢が現れて、盆から湯気を立ち上らせる湯飲みを差し出してくれた。いつも通りの小さな文句を垂れてから、慎重に受け取って喉を潤す。うん、美味い。
「しかし、この二ヶ月どうしてたのよ」
「研究まっしぐらだよ。まあ、お邪魔虫になるとお前らにシバかれそうだったしな」
「アホか。まあ、出刃亀に何度も来たブン屋よりは常識人って認めてあげるわ」
「あれと比較する時点で失礼なんだが」
言い合って、二人して少しだけ笑う。茶を啜って喉を鳴らして、滑りが良くなった舌を会話で舞わして回すこの時間。これが好きで神社に通っているようなものだ。
「今日はアイツは居ないんだな」
「あっちだって忙しいのよ」
「へぇへぇ。で、相変わらず一人で昼寝でもしてたのか?」
「人を何だと思っているんだか。あんたが来るまでは本を読んでいたわよ」
「はっ?本?」
「そ」
面食らっている私を後目に、霊夢は炬燵の脇に転がっていた分厚い本を拾い上げた。数百は頁数がありそうな見た目に尚更驚きが爆発する。
「霊夢が、本を、しかもあんなびっしり活字だらけの洋書を……?」
「本くらい読めるっての。ちゃんと日本語訳されているし」
そういう問題ではないのだが、というか霊夢が本を読む姿なんぞ想像もできないのだが、これ以上突っ込むときっと命が危なくなるだろうからおとなしく引き下がることにしておく。
「寝てぼーっとしてるだけの生活は勿体ないって言われてね、来る度に本を置いていくのよ。まあ、意外と面白いものが多いから最近は本の虫になってるわね」
「意外すぎて思わず茶を吹くところだったぜ」
「そしたら出ちゃいけない物まで吹くことになってたわよ」
「そりゃ吹くじゃなくて吐くだろ」
減らず口を並べ立ててなんとか平静を装うものの、心中はどうしても穏やかでいられない。胸が、ジクジクした。
「吹くだの吐くだの止めてよね、もう昼なんだから」
「お前だって言ってた癖に。あ、私はご飯大盛りでよろしく」
「そう言うと思って、さっきあんたの分も仕込んできたわよ」
「よっ、流石は博麗の巫女だ。懐の深さが違うぜ」
「そのおだて文句は聞き飽きたわ。どうする、もう食べちゃう?」
「まあ、そのつもりでこの時間に来たからな」
「やっぱり」
憮然顔をしながら、霊夢は再び部屋を出ていった。なんとか笑顔で見送ることができたが、これ以上は持ちそうにない。邪魔になるからとかそんな変な気を起こさずに、今まで通り顔を出していれば良かった。そんな後悔も遅すぎたことは明白で、どこまでも自由で自分本位な博麗霊夢は、アイツの色に浸食されてしまっていた。
きっと染められて、変えられて、最後には私が憧れていた博麗霊夢は死んで居なくなる。霊夢だった誰かとなってしまうのが目に見えている。心に仕舞われていた大切な物が抜け落ちていく。
嫌だ。
嫌だ嫌だ。こんな気分も、変わった霊夢も、変えたアイツも、駄々こねてる私も嫌だ。
「お待たせ」
「……おう」
声だけで応え、霊夢が料理が乗った食器を並べていくのを眺める。漬け物に、白米、卵焼き……そして、
「それは、ポトフか?」
「正解。作り方を教わったのよ。試しに食べて味の感想聞かせて頂戴」
湯気が鼻腔をくすぐり、ぐぅと腹の虫が鳴る。だけれど、食欲はなくなる一方だ。霊夢の作った品だ、美味しくないはずがない。なのに今は、不味くあって欲しいなどと考えてしまっている自分が居た。それも許せなかった。
「霊夢、お前変わったな」
「何よ、藪から棒に」
配膳を終えて炬燵に入る霊夢に、口が勝手に言葉を投げかける。止まらない、止められない。
「昔のお前は和食一辺倒だったな。私が教えようとしてもカレーの作り方すら覚えようとしない徹底っぷり、懐かしい」
「それが?」
「よそってくれたところ悪いんだけどよ、弾幕ごっこしよう」
「は?」
呆ける霊夢に本気を見せるべく、懐に手を突っ込んで八卦炉に充填を開始。宣言無しにでも魔砲を撃てるよう準備に入った。
「あんた何言ってるのよ、冷めちゃうでしょうが」
「だから悪いって言ってるだろうが。別に、今ここでおっぱじめても構わないんだぜ?」
霊夢の目を睨みつけて、充填が完了した八卦炉を取り出し見せつける。のんびりとしていた目が戦闘モードに変わり、眉間に皺が刻まれた。それを確認してから、壁に立てかけておいた箒に手をかける。
「よくわからないけれど、力づくで黙らせなきゃいけないみたいね」
「ああ……『お前に』勝つのが、昔からの私の目標だからな」
「わけがわからないっての!」
背後にあった縁側に通じる障子戸を開け放ち、寒風吹き荒ぶ屋外へと飛び出した。追ってくる巫女装束を着た誰かを焼き尽くし、中に仕舞われている博麗霊夢を解き放つことを夢見て。
「ちく、しょお」
十分もしないうちに、私は境内に倒れることになった。素早い動き、反則的な空間移動術、強力な結界……全部計算通りだったのに。
「なん、で、当たらな……」
絶対に、間違いなく、恋符は直撃するはずだった。空間移動を誘い、結界が無い場所におびき出し、仕込んでおいた弾幕で動きを封じて……避けられるはずが無かったのに。
「『相手を観察して思考する』のよ」
「あ、あ……」
それは、アイツの、口癖……
「あんたが罠張ってるのなんか、ちょっと考えればバレバレだったわよ。もうちょっとわかりにくくやらないと引っかからないわ」
んなわけ、あるか。そう言うお前はいつも勘ばっかりで、とりあえず突っ込んで、私以上に力任せ。思考の『し』の字もなかったじゃないか。なかったはず……じゃないのか。
うっすらと目を開くと、無表情で見下ろす霊夢の顔と、流れが速い雲が見えた。その視線はどこかアイツを想起させる、冷たくて、見下した――
「魔理沙。あんた、弱くなったわね」
それだけ言って、霊夢は母屋へと戻っていった。こちらを一度も振り返ることなく、履き物も残さずに、障子戸を閉める。
ピシャリという子気味良い音が、まるで私を隔絶する結界の音のような錯覚さえ覚えた。
「なんで、前より……強いんだよ」
私は、強くて格好良くて凛々しくて、そんなお前の友達であることが誇らしかったんだ。なのに、なんだよこれ、なんなんだよ。
「馬鹿野郎……馬鹿野郎っ……!」
嗚咽が止まらない。涙まで溢れてきた。
「馬鹿……やろう……」
私はこれからどこへ向かえばいいんだよ。誰と馬鹿やればいいんだ。
なあ、教えてくれよ、お願いだよ。
霊夢。
パキンという、何かが弾ける音がして、自分の耳元に何かが落ちてきた。涙で霞んだ視界を精一杯開いて見ると、そこには風で折れた桜の枝。小さな蕾が付いていて、きっともう数週間もすれば一斉に花開くんだろう。
春は、もう、すぐそこだ。
終
霊夢さんの相手はアリスかゆかりんか
意外とパチュリーでもいいかも
誰かなぁ?紫か?
本命、紫
対抗、アリス、咲夜さん
大穴パチュリー…かな?
アリスさん以外のお相手候補が浮かばなかったわ… ビスクドールの印象が強すぎたんや
魅力が丸潰れです
恋人が出来れば、あの霊夢もこうまで変わってしまうんですね。相手は誰だったのか。
恋をすると人は変わるものですけど、周りの人にとってはそれが必ずしも良いこととは限らないんですね。
霊夢にとって特別な誰かが出来ることと、魔理沙と親友であることは両立出来ない事なのかな。
完全なレイアリ派な私ですが、これは切ない。魔理沙……。