「ダイアモンドぉ!ブリザァード!」
ソレはとても自然現象と片づけるにはとても無理のある現象―いや、災厄であった。
数十センチ程もある氷の塊が四方八方に荒れ吹雪き、大木、岩、妖精、妖精、妖精。無差別に
中心地にいる者以外全てを抉って、削って、穿って、破壊していった。
「どうだ~?!あたいってサイキョ~だろ~!じゃあ今からここはあたいのシマな縄張りな~!
あたいはやさしくてかんだいだから月に100匹のカエルで許してやろ~ぞザコ妖精ども~」
「チルノさま~あたち達がいること忘れてる?味方も今ので半分以上ピチュンしちゃいましたよ」
嵐の中心に立って偉そうにふんぞり返っている蒼色の妖精。チルノ。妖精として規格外の能力を
持つ彼女は、この時期からさらに力を増し、妖精を配下に湖を我が物にしようと暴れだしたのだ。
「くっ・・・みんな、大丈夫?」
無数に倒れ伏している妖精の中に、一匹だけ無事な、他の妖精より一回り大きな妖精がいた。
彼女が大妖精だ。彼女も妖精にしては強い力をもっているが、仲間を率いて挑んでこの有様だった。
「ハーッハッハッハ!ちょろいちょろい。おぉ、大ちゃん。あんたとも色々あったねぇ、
でも大丈夫!これからあたいのどくさいのもとに毎日カエルを凍らせることに―げはぁっ?!」
「チルノさま~っ?!」
チルノの後ろから来た猛烈な速さの一閃が、彼女を湖の中へ跳ね飛ばした。
「アリスぅ~。このマント、毛がちくちくしてかゆいったらないぜ・・・ん?今何か当たった?」
「あぁ貴女って毛糸系ダメなのね。もぅ、子供っぽいんだから・・・って今何か轢かなかった?」
なんともその場の雰囲気に合ってないのほほんとした会話での登場。いや、その前でも
あまりシリアスとは言えなかったが。
「おう大ちゃん。只今来てやったぜ。で、相手は誰だ?鬱憤ブレイカーはどこだ?敵はどこだぁああ!」
「マリサ、みっともなく興奮しないでよ。で、大妖精。シマ争いの相手は?」
目をパチクリさせてあぅあぅボーゼンとしていた彼女だったが、問われたことに気がつき
湖の方を指差した。たったさっき白黒が撥ねてポチャンした方角を。
「・・・え?マジ・・・?・・・アリス、5だ」
「ボッタクらないでよ。3。」
「7」
「なんで増えてるのよ?!」
「ここまで来た私の魔力代だ!ったく、鬱憤ゲージがMAX寸前状態だぜ!せっかく弾幕戦で
スペルカード合戦ができると思ったのによぉ!」
いきなりやってきていきなりやっつけて報酬でギャアギャアちちくっている彼女達は気づかなかった。
湖が内部から凍っていることに。
最初に気づいたのは大妖精だった。 湖畔の地面が小刻みに振動しているのだ、それも揺れが
だんだんと近づいて、大きくなってくる。流石にお?ちょっと揺れてね?と喧嘩を中断した2人が
揃って湖を見た瞬間、轟っ!と湖から山とも角ともとれる巨大な突起物が突きあがってきた。
「これは・・・氷?なんて巨大な質量なの!」アリスは驚愕した。その大きさも、湖の水のほぼ全て
が凍っていることも。
氷の山のてっぺんからバカっぽい笑い声が聞こえる。
「はーっはっはっはっはぁ!いきなりフイウチとはやってくれるじゃないのさ白黒ぉ!」
「お~生きてたか。うれしいぜ。恩にきる。…ククッ鬱憤ばらしだ弾幕戦だ!さぁやろうかチビ助ぇ!」
2人の間に戦いの火蓋がきっておとされんと思ったとき、今まで隠れていたチルノの下っ端妖精達
が、チルノの優勢と知るやマリサに向かって多数の弾幕を撃ちだしてきた。が、
「―――はいはーい。動かない。タイマン勝負ね、マリサ、後で逆恨みなんてされないよう
徹底的にやっちゃってー」
アリスの操る人形たちが弾幕を弾幕で弾き、妖精たちに剣や槍をもった人形で威嚇した。とたんに
妖精たちは戦意喪失、もともと好意で従っていたわけではないのだ。
「あんた、さっきスペルカードって言ったねぇ!スペルカードがっせん!」
「あぁ、言ったな」
どうやら水中でマリサたちの会話を聞いていたようだ。
「スペルカードを出せと!」
「おおよ!」
マリサが答えるとチルノは無邪気な満円の笑みで、自分の中にある膨大な妖精の力を開放していった
・・・だがまだたりない、このまま弾幕を出せば、それはただバラけるだけの無個性な弾になって
しまう。巨大なチカラを、美しく、力強い形に成す――それがスペルカードだ。
チルノはポケットから無雑作にカードを出し、高らかに宣言したっ!
「見せてあげる!これが私のスペルよー!氷符『アイシクルフォ~~ル』ぅうぅう!」
カードが発動した!
次の瞬間、マリサの左右に氷の嵐が巻き起こっていた。とてもつっこむことが出来ないほどの…
気合で避けろと言われても無理なくらいの吹雪。(閉じ込められたか…)そんな状況の最中、
マリサは込み上げる喜びに耐え切れず口元を吊り上げた。
「フフッいいねぇ。この感じ。・・・生まれながらに辺なチカラとかもっちまったが
こういう雰囲気を味わえるならワルくはねぇ・・・。
弾幕戦も、ワルくはねぇ~よなぁ!そう思うだろ?!お前も!」
マリサは箒に跨ると同時にチルノと同じくらいの高度まで一気に飛翔した。チルノは行く手を
阻もうと散弾状の黄色く丸い弾幕で撃ち落とそうとするが、箒は異常な速さで右に左にと
弾を正確に、精密に避け、かすった程度だった。
マリサはレーザーを撃ち返すがこの吹雪の中、真正面に小さいターゲットを捉えることができず
撃った弾は虚空に消えるばかりであった。
(ちっ!なかなかウザいスペルだな・・・あの正面からの弾幕さえなんとかすれば―そうだ!)
マリサはレーザーを前ではなく後ろに撃った、湖に。
高熱量のレーザーは湖の氷を一気に昇華し、高密度の水蒸気をつくりあげた。
湖周辺は普段から霧が濃く、視界が悪いのに、さらにこの蒸気だ、あたり一面白、白、白。
「なにぃ~くそぅ!どこだ白黒~!えんまくとはひきょうなり~!」
チルノは突然のことで大層戸惑ったが、なんのことはない。左右は封じているのだからアイツが
来るのは自分の前しかないのだ、そう前に…前に…前に・・・。 見えた!見つけた!
蚊帳の外で傍観していたアリスが大妖精に言った。
「よく見ておきなさいよ、あれが本物の弾幕使いなんだから…って今の状況じゃほとんど見えないか」
大妖精は戦いの場を真剣な眼差しで見つめていた。
「いいえ・・・見えてますよ。あぁ・・・なんてきれいな光なんでしょう」
「白黒やっぶれったりぃ~♪喰らえアイシクル~!」
氷のつぶてがズタズタに対象を引き裂いた。箒を。やった~かった~。…ほうき?
箒って茶色いよね、白黒じゃないよね、でもやっつけたから私の勝・・・・えっ?!
チルノの上に黒い影が覆いかぶさった。霧と蒸気が混じった視界から見ると、ソレはまるで獰猛な
獣のような――!「私が思ってたよりも隙がありすぎてちと戸惑ったが、まぁいい。喰らってくれ」
スペルカードから放たれる光が霧を裂く。
「衝撃のぉ!」
マリサの右手に有るはミニ八卦炉。莫大な魔力を純粋な破壊のエネルギーに直変換することができる
稀少な魔術道具だ。魔力を充分に溜めた八卦炉が煌々と輝き・・・そして
「ファーストスパークぅー!!」
特大の光線がほぼゼロ距離でチルノに降りそそがれた。
チルノが最後に見た光景は、まるで太陽のような輝きをもつ光のでっかいでっかいでっかいの。
(あはは~きれいだな~まるでお日様の日向ぼっこみたいだ~でも日向ぼっこって
こんな羽が蒸発しちゃうほどやばやばじゃないよ・・・ね・・・ガクッ)
空からポトリとチルノが落ちてきた。どうやらまだ息があるらしい、本当に規格外の妖精だ。
そんなチルノを心配そうに介抱する者が一人・・・大妖精だ。
「おい大ちゃん・・・こいつ、お前の仲間を・・・」
「大丈夫です。きっと、分かり合えると思いますから」
なんと健気で純粋な妖精なのだろう、アリスは抱きしめて頬ずりして自分の人形コレクションに
加えようとか、不純な衝動にかられるが寸でのところでストップした。
これで霧の湖での妖精ナワバリ抗争はめでたしめでたしなのであった。・・・が
戦いの最中しきりにシャッター音みたいのを響かせていた者がいたような気が、と
マリサは気づいたがどうせ些細なことだろうさ、成るようなら成っちまえ。
そんな持ち前の考えで湖をあとにしたのであった。
ソレはとても自然現象と片づけるにはとても無理のある現象―いや、災厄であった。
数十センチ程もある氷の塊が四方八方に荒れ吹雪き、大木、岩、妖精、妖精、妖精。無差別に
中心地にいる者以外全てを抉って、削って、穿って、破壊していった。
「どうだ~?!あたいってサイキョ~だろ~!じゃあ今からここはあたいのシマな縄張りな~!
あたいはやさしくてかんだいだから月に100匹のカエルで許してやろ~ぞザコ妖精ども~」
「チルノさま~あたち達がいること忘れてる?味方も今ので半分以上ピチュンしちゃいましたよ」
嵐の中心に立って偉そうにふんぞり返っている蒼色の妖精。チルノ。妖精として規格外の能力を
持つ彼女は、この時期からさらに力を増し、妖精を配下に湖を我が物にしようと暴れだしたのだ。
「くっ・・・みんな、大丈夫?」
無数に倒れ伏している妖精の中に、一匹だけ無事な、他の妖精より一回り大きな妖精がいた。
彼女が大妖精だ。彼女も妖精にしては強い力をもっているが、仲間を率いて挑んでこの有様だった。
「ハーッハッハッハ!ちょろいちょろい。おぉ、大ちゃん。あんたとも色々あったねぇ、
でも大丈夫!これからあたいのどくさいのもとに毎日カエルを凍らせることに―げはぁっ?!」
「チルノさま~っ?!」
チルノの後ろから来た猛烈な速さの一閃が、彼女を湖の中へ跳ね飛ばした。
「アリスぅ~。このマント、毛がちくちくしてかゆいったらないぜ・・・ん?今何か当たった?」
「あぁ貴女って毛糸系ダメなのね。もぅ、子供っぽいんだから・・・って今何か轢かなかった?」
なんともその場の雰囲気に合ってないのほほんとした会話での登場。いや、その前でも
あまりシリアスとは言えなかったが。
「おう大ちゃん。只今来てやったぜ。で、相手は誰だ?鬱憤ブレイカーはどこだ?敵はどこだぁああ!」
「マリサ、みっともなく興奮しないでよ。で、大妖精。シマ争いの相手は?」
目をパチクリさせてあぅあぅボーゼンとしていた彼女だったが、問われたことに気がつき
湖の方を指差した。たったさっき白黒が撥ねてポチャンした方角を。
「・・・え?マジ・・・?・・・アリス、5だ」
「ボッタクらないでよ。3。」
「7」
「なんで増えてるのよ?!」
「ここまで来た私の魔力代だ!ったく、鬱憤ゲージがMAX寸前状態だぜ!せっかく弾幕戦で
スペルカード合戦ができると思ったのによぉ!」
いきなりやってきていきなりやっつけて報酬でギャアギャアちちくっている彼女達は気づかなかった。
湖が内部から凍っていることに。
最初に気づいたのは大妖精だった。 湖畔の地面が小刻みに振動しているのだ、それも揺れが
だんだんと近づいて、大きくなってくる。流石にお?ちょっと揺れてね?と喧嘩を中断した2人が
揃って湖を見た瞬間、轟っ!と湖から山とも角ともとれる巨大な突起物が突きあがってきた。
「これは・・・氷?なんて巨大な質量なの!」アリスは驚愕した。その大きさも、湖の水のほぼ全て
が凍っていることも。
氷の山のてっぺんからバカっぽい笑い声が聞こえる。
「はーっはっはっはっはぁ!いきなりフイウチとはやってくれるじゃないのさ白黒ぉ!」
「お~生きてたか。うれしいぜ。恩にきる。…ククッ鬱憤ばらしだ弾幕戦だ!さぁやろうかチビ助ぇ!」
2人の間に戦いの火蓋がきっておとされんと思ったとき、今まで隠れていたチルノの下っ端妖精達
が、チルノの優勢と知るやマリサに向かって多数の弾幕を撃ちだしてきた。が、
「―――はいはーい。動かない。タイマン勝負ね、マリサ、後で逆恨みなんてされないよう
徹底的にやっちゃってー」
アリスの操る人形たちが弾幕を弾幕で弾き、妖精たちに剣や槍をもった人形で威嚇した。とたんに
妖精たちは戦意喪失、もともと好意で従っていたわけではないのだ。
「あんた、さっきスペルカードって言ったねぇ!スペルカードがっせん!」
「あぁ、言ったな」
どうやら水中でマリサたちの会話を聞いていたようだ。
「スペルカードを出せと!」
「おおよ!」
マリサが答えるとチルノは無邪気な満円の笑みで、自分の中にある膨大な妖精の力を開放していった
・・・だがまだたりない、このまま弾幕を出せば、それはただバラけるだけの無個性な弾になって
しまう。巨大なチカラを、美しく、力強い形に成す――それがスペルカードだ。
チルノはポケットから無雑作にカードを出し、高らかに宣言したっ!
「見せてあげる!これが私のスペルよー!氷符『アイシクルフォ~~ル』ぅうぅう!」
カードが発動した!
次の瞬間、マリサの左右に氷の嵐が巻き起こっていた。とてもつっこむことが出来ないほどの…
気合で避けろと言われても無理なくらいの吹雪。(閉じ込められたか…)そんな状況の最中、
マリサは込み上げる喜びに耐え切れず口元を吊り上げた。
「フフッいいねぇ。この感じ。・・・生まれながらに辺なチカラとかもっちまったが
こういう雰囲気を味わえるならワルくはねぇ・・・。
弾幕戦も、ワルくはねぇ~よなぁ!そう思うだろ?!お前も!」
マリサは箒に跨ると同時にチルノと同じくらいの高度まで一気に飛翔した。チルノは行く手を
阻もうと散弾状の黄色く丸い弾幕で撃ち落とそうとするが、箒は異常な速さで右に左にと
弾を正確に、精密に避け、かすった程度だった。
マリサはレーザーを撃ち返すがこの吹雪の中、真正面に小さいターゲットを捉えることができず
撃った弾は虚空に消えるばかりであった。
(ちっ!なかなかウザいスペルだな・・・あの正面からの弾幕さえなんとかすれば―そうだ!)
マリサはレーザーを前ではなく後ろに撃った、湖に。
高熱量のレーザーは湖の氷を一気に昇華し、高密度の水蒸気をつくりあげた。
湖周辺は普段から霧が濃く、視界が悪いのに、さらにこの蒸気だ、あたり一面白、白、白。
「なにぃ~くそぅ!どこだ白黒~!えんまくとはひきょうなり~!」
チルノは突然のことで大層戸惑ったが、なんのことはない。左右は封じているのだからアイツが
来るのは自分の前しかないのだ、そう前に…前に…前に・・・。 見えた!見つけた!
蚊帳の外で傍観していたアリスが大妖精に言った。
「よく見ておきなさいよ、あれが本物の弾幕使いなんだから…って今の状況じゃほとんど見えないか」
大妖精は戦いの場を真剣な眼差しで見つめていた。
「いいえ・・・見えてますよ。あぁ・・・なんてきれいな光なんでしょう」
「白黒やっぶれったりぃ~♪喰らえアイシクル~!」
氷のつぶてがズタズタに対象を引き裂いた。箒を。やった~かった~。…ほうき?
箒って茶色いよね、白黒じゃないよね、でもやっつけたから私の勝・・・・えっ?!
チルノの上に黒い影が覆いかぶさった。霧と蒸気が混じった視界から見ると、ソレはまるで獰猛な
獣のような――!「私が思ってたよりも隙がありすぎてちと戸惑ったが、まぁいい。喰らってくれ」
スペルカードから放たれる光が霧を裂く。
「衝撃のぉ!」
マリサの右手に有るはミニ八卦炉。莫大な魔力を純粋な破壊のエネルギーに直変換することができる
稀少な魔術道具だ。魔力を充分に溜めた八卦炉が煌々と輝き・・・そして
「ファーストスパークぅー!!」
特大の光線がほぼゼロ距離でチルノに降りそそがれた。
チルノが最後に見た光景は、まるで太陽のような輝きをもつ光のでっかいでっかいでっかいの。
(あはは~きれいだな~まるでお日様の日向ぼっこみたいだ~でも日向ぼっこって
こんな羽が蒸発しちゃうほどやばやばじゃないよ・・・ね・・・ガクッ)
空からポトリとチルノが落ちてきた。どうやらまだ息があるらしい、本当に規格外の妖精だ。
そんなチルノを心配そうに介抱する者が一人・・・大妖精だ。
「おい大ちゃん・・・こいつ、お前の仲間を・・・」
「大丈夫です。きっと、分かり合えると思いますから」
なんと健気で純粋な妖精なのだろう、アリスは抱きしめて頬ずりして自分の人形コレクションに
加えようとか、不純な衝動にかられるが寸でのところでストップした。
これで霧の湖での妖精ナワバリ抗争はめでたしめでたしなのであった。・・・が
戦いの最中しきりにシャッター音みたいのを響かせていた者がいたような気が、と
マリサは気づいたがどうせ些細なことだろうさ、成るようなら成っちまえ。
そんな持ち前の考えで湖をあとにしたのであった。