「なぁ霊夢、チルノが踊ってるぜ」
「そう、どうでもいいわね」
「あぁ、どうでもいいぜ」
ふん、どうせあんたらには判らないだろうさ。
あたいのありがたみなんて。
~~~~~~~~
「幽々子さま、かき氷のもとが踊っています」
「あの子が作るのは粗いのよねぇ。気性のせいかしら」
「そういうものでしょうか」
「もっと肌理(きめ)細やかなものを作れる位になれば、美味しそうな娘(こ)になりそうだけど」
あの幽霊の言葉はいつ聞いても食事のことばっかりだ。
ってか、あたいをかき氷のもと呼ばわりするな。
~~~~~~~~
「師匠、氷精が踊っています」
「駄目よウドンゲ、目を合わせたら。馬鹿がうつるわ」
あたいは馬鹿じゃない。
「馬鹿につけられる薬は無いの。死ななきゃ治らないから」
ふん、偉そうにべらべらと。
あたいだって知ってるんだぞ。
「天才と馬鹿は紙一重」だって。
あたいとあんたは紙一重なんだから。
って、自分から馬鹿って認めてどうする!
あたいのバカバカ!
……あ、あたいはバカじゃない!
~~~~~~~~
「お取り込み中失礼します。取材してよろしいでしょうか?」
「このままでいいならいいよ」
「ええ、続けてもらって構わないので、是非お願いします」
知りたいって言うのなら、あたいの凄さを教えてやろうじゃないの。
「あなたは何故踊っているのでしょうか?」
「ん、ただ踊っているわけじゃないよ。これは雨乞いの儀式なんだから」
「ほう、雨乞いの儀式……ですか」
「何よ、何か文句でもある?」
「いえ、失礼ですが、そうは見えなかったので。ですが何故雨乞いを?」
「暑いからに決まってるじゃない」
「あなたの周りは十分に涼しいですよ」
これだから素人は困る。
「暑いと修行が成功しにくいのよ」
「修行って……あの蛙を凍らせるやつですか」
「それ以外に何があるって言うの」
「まだやっていたのですね……」
「ふん、あんただって熱いのが続くのはイヤでしょ。あたいが涼しくしてあげようってんだから素直に喜びなさいよ」
「新聞を配達する時に雨だと厄介なんですよねぇ。ネタが入ったのは喜ばしいことですが」
ほら、やっぱり嬉しいんじゃない。
「あそこの魔女とは比べ物にならないよ。あたいは幻想郷中に雨を降らせるんだから」
屋敷の周りだけに雨を降らせるのとは規模が違う。
言ってみれば、格が違う ってやつ?
この際、天候を操る程度の能力とでも銘打ってみようか?
「ですが、本当に効果はあるのでしょうか?」
「間違いないわ。あたいが雨乞いすれば100%雨が降るんだから」
「100%!? それは凄い!」
どんなもんだ。
大抵のやつは数字を見せれば納得するもんだ。
数字 いず びゅーてぃふる
あたいは天才だ。
「どれ位で雨が降って来るんでしょうか?」
「半日で降ったこともあるよ」
「ほう……」
どんなもんだ。
あたいの凄さが判ったか!
「それじゃ、長い時はどれ位やっているんです?」
「え? 長い時?」
うーん、どれ位やっていたかなぁ。
べ、別に記憶力が悪いわけじゃないのよ。
最近やっていなかったから忘れかけてるだけで……
「あ、そうそう、思い出した」
「おぉ、どれ位でした?」
「うん、確か2ヶ月位は踊っていたかな」
流石はチルノ、⑨は理屈を経ずに本質を見る。