「ヘイ! リトルガール。そんなに貧相な尻をぐいぐい押し付けないでくれ。
生憎俺はノーマルで、ロリータに興味はないのさ。妖艶なマダムのお尻なら大歓迎だがね。HAHAHA!」
唐突に部屋に響いた、巻き舌でパッション溢れる快男子ボイスに、霧雨魔理沙はビクリと体を振るわせた。
頬につらーっと冷や汗が垂れる。
「昨日食べたキノコか? いや、そういえば今朝のキノコは少し酸っぱかったような……」
挙動不審にきょろきょろ部屋を見渡し、手でおなかをさする。
森の中のキノコを散々食い散らかして来た胃袋は強靭であり、もはやどんな毒キノコですら魔理沙に幻覚を見せられない。
自分ではそう思っていた。過信していたのかもしれない、考え直す。
鴉天狗の新聞で特集された事もある由緒正しき散らかり放題ワンルームに、にょきにょき生えた新種のキノコ。
ぶちっと引き抜いてソテーにしたのが昨日。納豆ご飯に放り込んだのが今朝。
なまこの食感にママレードとサッカリンを混ぜたような味わいが中々個性的だった。
アグレッシブさが身上の魔理沙である。私を負かすキノコがあるならドンと来いと、より強い毒キノコを求める彼女は目に付いた新種の悉くを口に入れてしまうのだ。
子供なのではない、知的好奇心旺盛なのだ。多分。
ご近所である魔法使いA・Mさん(仮名)は鴉天狗のインタビューで魔理沙をこう評している。
「あれって多分中毒よね。たまにウフフとか不気味に微笑んでブツブツ何か呟きながら森を徘徊してるもの。
ウフフ……ミマサマニカッチャッタ。なんかそんな感じ。明らかにキマッてるけど、まあ本人は覚えてないみたいだし、いいんじゃない?
ああ、でも、最近の魔理沙はやばいかも。新種キノコを探すだけじゃ飽き足らず、新種開発に手を出したみたいだから。
目に付くもの全部にキノコの胞子を塗ったくっていくのよ。苗床によってできるキノコが違うらしいわ。私には理解できない世界ね。
この前も、唐突にウチを訪ねてきたと思うと、上海に白濁した胞子を……って何言わすのよ! この変態鴉! 変態! 変態! 変態! 出て行って!」
ちなみに、魔法使いの一般人には理解しがたい性質を忠実に書き記したその新聞記事は概ね好評であったという。
特に若い男性からの受けが良く、射命丸女史は若者にもジャーナリズムを啓蒙する決意を「サドいアリスなんて最高じゃないか!」……啓蒙する決意を「アリスさんもっと罵って下さいハァハァ」……決意を…………。
「ああ! 畜生黙れこのマゾブタども! そんなに虐められたいなら、私がサディズムの真髄をその下衆な魂に深く深く深く深くトラウマになるまで刻み込んでやるわよ!」
その日以降、ブラックレザールックな鴉天狗が度々目撃されるようになったという噂だが、それはまた別の話。
閑話休題。
まあ、ともかく魔理沙の変質的なキノコ嗜好は理解してもらえたと思う。
そして、今や部屋のありとあらゆる場所が苗床であるのだ。
机の脚からはエメラルドグリーンの平べったい傘が開き、乱雑に積み上がったガラクタの隙間からはショッキングピングの茸が雄雄しくそびえていた。
「衝撃! ゴミ女の真実」と銘打たれた新聞記事には写真のM・Kさん(匿名希望)の顔に大きな穴が。おとといまでビリジアンな舞茸が生えていた。
三年間放置したヨーグルトの味だったという。魔理沙は美味と評した。
ともかく、そんな人外魔境な魔理沙宅で育ったキノコであるから中には彼女の耐性を超えるキノコが生まれる事もあるかもしれない。
そして、今朝のキノコがそれだったのではないか……。
「おいおいおい。圧迫されて苦しいぜ! リトルガール」
魔理沙はまたビクリと体を震わす。この声の正体は幻聴ではないか。それが今もっとも合理的な判断であろう。
しかし、それにしては意識はすっきり冴えていた。
そして魔理沙は恐るべき事実に気づいている。
声は、キノコパスタで優雅なランチと洒落込もうとした魔理沙の下から聞こえてくる。
しかし地面ではない。椅子でもない。もっと上である。
恐る恐る魔理沙はその場所を覗き込む。震える手でスカートを捲り上げながら。
「ヒュー! リトルガール。そんなに見つめないでくれ。照れるぜ」
ガバッとスカートを戻す。息が激しくゼイゼイ言っていた。それだけショッキングであったのだろう。
端的に説明しよう。
声の正体。それは魔理沙のドロワーズに他ならなかったのだ。
~ジョージ=ドロワ(多分アーカンソー訛り)の一生~
「……なるほどな。昨日塗り込んだ胞子のせいか」
「ライツだリトルガール。賢いレディは嫌いじゃないぜ」
ドロワーズと普通に会話している状況に頭が痛くなりそうな魔理沙だったが、喋ってるのが現実なのだ。
なら逃避するより原因を究明したりするほうが合理的だった。
ドロワ曰く、彼が知能を有したのは昨晩の事、そして先程椅子に圧迫された衝撃で覚醒したのだという。
確かに昨晩の魔理沙は何を思ったか己の下着を苗床化しようと、常人には理解不能な行動を取っていた。
そして、胞子がドロワと良く分からない化学変化を起こして、布切れが人格を持つに至ったのだ。
どうしたものかと魔理沙は思案する。
とりあえず食べながら考えようと、キノコパスタにフォークを差し込んだ。くるくる巻く。
ちなみに立ち食いである。尻に挟んだままだとドロワが五月蠅い。
パスタを口に含む。申し分ないアルデンテだが、如何せんキノコの個性が薄い。何だかとても普通だった。
「私は普通にエリンギが食べたいわけじゃないんだ、もっと違う、こう情熱を激しく焚き付けてくれるようなそんなキノコが食べたくて魔法使いしてるんだよ!」
子供が聞けば、魔法使いという職業に対する誤解を植えつけかねない発言を口より発しつつ魔理沙は不機嫌である。
禍々しい斑点が浮いた「私毒ですが何か?」的なキノコですら彼女にとってはエリンギ扱いであった。色々理不尽である。
しかし、食事がこうも貧相だと、いい考えも浮かびはしない。魔理沙は苛立っていた。
「YO! リトルガール。愛らしい顔が台無しだぜ。にっこり笑顔は乙女の財産だ、大事にしようぜ。
よし、じゃあ、俺がリトルガールが笑顔になる手助けをしようじゃないか!」
底抜けに明るいドロワの声に魔理沙は少しむっとする。しかし何を言い出すか興味もあった。彼女は魔法使い。好奇心の僕である。
「よし、そのテープルに生えてるナメコっぽいのを摘み取りな、そうそう、そのバイオレットでパープルなカラーのだ。
生でいい。適当に千切ってスパゲッティの中に放り込みな。きっと驚くぜ」
半信半疑ながら魔理沙はドロワの言う通りにした。そして紫色がとみに多くなったパスタを口に入れる。
途端。視界が曇った。
涙だ。そう理解するのに数瞬を要した。体が震える、感動しているのだ。
今魔理沙の舌の上にはソドムとゴモラがある。素人にはさっぱり何のことやら分からないが、キノコマエストロ魔理沙がそう評したのだ、きっと、とてもソドムとゴモラなのだろう。
血液が激動する。この瞬間、筋肉も脳味噌も表皮も、体の全てが紫キノコパスタへの賞賛を表明する為だけに存在した。
一心不乱にパスタを貪る魔理沙。あっという間に皿は空となる。
心地よい満腹感に、残った涙を拭い、魔理沙は破顔した。美しい、最も自然体な笑顔であった。
「ヒュー。お日様みたいないい笑顔だぜ。惚れ惚れしちまう」
魔理沙は悟る。お尻で喋るこいつは変なやつだし、そもそもドロワーズだが、悪い奴じゃない。
「なかなか気に入ったぜお前。便利そうだからこのまま履いておいてやろう」
「HAHAHA。リトルガール。プロポーズかい? しかしまだまだ早い。俺はお子様には興味ないんでね。十年後、もう一度その台詞を言ってくれ」
「ふん。私の魅力が分からないとは、お前もまだまだだぜ。そういや名前聞いてなかったな、お前で呼ぶのも不便だ。教えろ」
「ジョージ。そう呼んでくれ。アーカンソー№1の色男とは俺の事だぜ」
「アーカンソーって、適当抜かすな、こいつめぃ。まあいい。私は霧雨魔理沙。幻想郷で一番素敵な魔法使いだ。宜しくなジョージ」
かくして魔法使いとドロワーズ。奇妙な二人の同居生活が始まったのであった。
「このキノコどう思うジョージ?」
「リトルガール。そいつは天才的な選択だぜ。今晩はそれでキノコご飯だ」
「……覗くなよジョージ」
「ハッハ、リトルガール。自分の体を鏡で見てからそういう事を言いたまえ。男が入浴を覗きたくなるまで女の魅力を磨くことだな。HAHAHA!」
「すぅー。すぅー。もう食べられない……」
「まったくリトルガール。酷い寝相だ。布団があんなに遠くに。しかし、その無垢な寝顔、嫌いじゃないぜ」
確かな信頼関係が育まれているのを魔理沙は感じている。
こんな生活も悪くない。そんな事も思い始めた。充実した日々。彼はドロワーズであったが、いい奴だったのだ。
しかし、何事もそうであるように、終結は突然であった……。
――ドンドンドン!
深夜、魔理沙宅のドアを叩く者がいる。酷く必死そうな音であった。
「何だこんな時間に……ってアリス! どうしたそんなボロボロになって!?」
「……魔理沙……逃げて。……奴が来る」
「奴? 一体何が? っておい! アリス!」
服に裂き傷をいっぱい作り、埃だらけの姿で玄関に駆け込んだアリスがふっと意識を失う。
しっかりしろとアリスの体を揺らす魔理沙。そんな動揺しまくる彼女のお尻より声が響いた。
「落ち着けリトルガール」
「落ち着けって! そんな状況じゃ!」
「聞きなリトルガール。賢いレディはいつでも穏やかに微笑んでいるもんだ。
あんたならできるはずだ。俺は知ってるからな、あんたの聡明さを。
よく見ろ、そのレディは疲れすぎて寝てるだけだ。そして魔理沙。視野を広く持て。そのレディの二の舞いになりたくなかったらな」
「……ジョージ。すまん……ああ、お前の言うとおりだ。ちょっと取り乱しすぎたな」
魔理沙はアリスの体を玄関に横たえる。そして魔法の森の樹木に混じって出現した、明らかに異質な影に視線を向ける。
「あれが、奴……か」
「どうするリトルガール。この場面はトンズラこくかい?」
「何言ってやがる。アリスをこんな目に合わせた奴だ。唯じゃおかねえ」
「よく言ったリトルガール。今のあんたは最高にスタイリッシュだぜ」
魔理沙は影に向かい歩を進める。
月明かりに照らされ、次第にその正体が明らかになっていった。
「こ……こいつは……」
「ワオ……こいつはちょっぴり刺激的だぜ」
体全体のボコボコと醜悪なコブ。絵の具という絵の具をキャンパスにぶちまけたような下品なカラーリング。
身の丈は2mほどだろうか、怪獣。そんな表現が相応しい。
「……キノコザウルス」
「知ってるのかリトルガール?」
「いや、今私が名づけた」
しかし、案外適切なネーミングであるかも知れない。その肉体は確かにキノコで出来ていたのだから。
そして、その鳴き声は、
「シャンハーイ」
異常に可愛らしかった。聞き覚えのある声に魔理沙は眉間に皺を寄せる。
「お前、もしかして上海か?」
「シャンハーイ」
聞き間違える事なき独特の高音。上海人形。
そういえばと、魔理沙は記憶を辿る。一週間くらい前、上海人形にキノコ胞子をべっとべとに塗りつけた事があったのだ。
人形に込められた霊力が発育に何らかの影響を与えたのであろう。
その結果がこの上海人形withキノコザウルスである。
自分に原因がある事を知り、魔理沙は何と無く申し訳ない気持ちになる。しかしこんな化け物を放置しておくわけには行かない。
アリスの話し振りだと、どうやら魔理沙邸が奴の狙いであるらしいし。
「かわいそうだが、キノコたち。お前たちはここで消えてくれ。
そして上海、お前は後でアリスに修理してもらえ。修理に必要な素材を集めるのは私も協力する」
右手にはミニ八卦炉。左手にはスペルカード。彼女の代名詞『マスタースパーク』。
次の瞬間。森が猛烈に明るくなった。
マスタースパークは虹色の光の奔流である。
キノコを焼き切るに十分な火力である。そう思えた。
キノコザウルスが光線に飲まれて十秒ほどの時間が経った。
出力を除々に小さくしていくミニ八卦炉。そして光が完全に消失する。
残ったのは黒いドロドロした塊。キノコの燃えカスである。
他愛ない。
そう呟き、魔理沙は家にきびすを返す。しかし、その時ふとある疑問に思い当たった。
すなわち、アリスは何故あの程度の存在に、あれほどボロボロされたのか、という事である。
ざわざわと森の木々が不気味に音を立てる。嫌な汗が背中を伝う。
体が勝手に動いた。横っ飛びに思い切り跳ねる。次の瞬間、かつての立ち居地は黒焦げになっていた。
弾幕ごっこで鍛えた集中力と反射神経、そして第六感が命を救った。
キノコザウルスの残骸を睨む魔理沙。そこには信じられない光景があった。
みちみちと異音を奏でながら、再生していくキノコたち。
造形はより醜悪に、色遣いは悪趣味に。そしてあのコブは実は砲門であったのだ。
数秒後には完全に再生し、さらに巨大さを増したキノコザウルスが全周に向かい紅いレーザーを放つ。
それは、太さこそささやかだが、それ以外は上海人形のそれに酷似していた。
舌打ちして、地面に転がる魔理沙。箒が無く飛べない今の彼女ではこんな泥臭い回避しかできない。
回避しつつ、弾幕を放つ。
しかし、マジックミサイルが幾ら命中しようとも、キノコザウルスは再生を繰り返し、大きくなるだけ。
「クソっ! 何なんだよ、これ!」
苛立つ魔理沙はさらに驚愕の現象を目にする。
樹木に生えるキノコたち。それの先端が悉く魔理沙を向いた。そして放たれる紅いレーザー。
地面に伏せ、魔理沙はかろうじて回避する。
キノコザウルスはキノコを操る事が出来るのだという。
今の魔理沙は、四方八方を銃口に囲まれれいるのだ。
「畜生……どうにもならないじゃないか。……どうにも」
この時魔理沙は恐怖を自覚した。
自分の力が及ばない、そんな存在に理不尽に蹂躙される恐怖。
一度恐怖を知ると、心は、もう弱い。
「因果……応報……か」
その呟きは諦めである。
思えば、己が自分勝手な欲求に従い、なりふりかまわず苗床を作りまくったのが原因であった。
その高慢さがキノコを怒らせたのだ。
そして上海は人形である。容姿を以って愛されるヒトガタである。醜悪なキノコが体から生えるなど、彼女のプライドはどれ程傷ついただろう。
ああ、全ては自業自得ではないか!
魔理沙は天を仰ぐ。真ん丸い月が残酷までに明るく彼女を照らしていた。
キノコザウルスが口をパクリと開ける。そこには一際巨大なこぶがある。
こぶが鈍く紅く光る。間も無くレーザーが放たれようとしているのだ。
ごっこではない。知性無き破壊の弾幕である。
だが、魔理沙は動かない。すっかり諦観している。
もはや、儚く散る以外の運命は無いように思えた。
――しかし、運命に反駁するのは常に誰かの強靭な意志である!
「らしくないぜ! リトルガール!」
魔理沙のお尻が跳ねる。彼女自身の意思によらずに。
空中に突き出る形になるお尻に、魔理沙は僅かな熱を感じた。レーザーが命中したのだ。しかし、それにしては余りに些細な痛みだった。
着地した魔理沙はお尻をなで、そして、その驚愕の理由を知る。
「よう、リトルガール……無事かい?」
スカートはすっかり焼け焦げて、腰からすっとずり落ちた。それだけの熱量であったのだ、
しかし、ドロワーズは黒焦げになりながらも穴はあいていない。
すなわちジョージであった。
唯の布切れであるはずの彼。しかしその意志は清々しくも強靭で、それが奇跡を呼び寄せた。
魔理沙の尻を無理矢理跳ね上げ、自らをして盾となった。そして、唯の布切れでありながら、根性を以って熱量に耐え切ったのだ。
「ジョージ! どうして!」
「はは……レディを守るのに理由なんてあるはずがないだろ、それは義務なんだぜ」
助けられた。しかしその結果ジョージは満身創痍。
布なのだ。燃えれば死ぬのだ!
しかし、ジョージの口調は酷く満足げで。
ぽろりと雫が落ちる。魔理沙は涙を堪える事が出来なかった。
「はは……しかし、残念だが、長くは持ちそうにないな。ヘッ、色男は長生きしないのさ」
「……ジョージ」
「そんな顔するなよリトルガール。俺はあんたの笑顔が好きなんだぜ。無理にでも笑ってくれ、それが俺を嬉しくさせる」
無茶を言うと魔理沙は思う。この胸を揺さぶる感情を抑えることなど出来るはずがないというのに。
しかし、霧雨魔理沙に涙は似合わない、それを一番知るのは魔理沙である。ならば、頑張って笑わなければならないのだ。
魔理沙は腕でがいがし涙を拭う。しかし、やっぱり涙は止まらなくて、でも懸命に笑顔を作った。ぐちゃぐちゃの、でも力いっぱいの。
ドロワーズが何と無く微笑んだ気がした。
いつに無く穏やかな口調でジョージは魔理沙に語り始める。
「いい顔だ。リトルガール。
さっきあんたは因果応報だと言ったな。
ああ、そうだろう。あんたはまだ若い。間違いだっていっぱいある。
でもな、そこで立ち止まっちゃいけない。間違いは正していけばいいんだ。
そのための時間はたっぷりある。だから、あんたは一瞬一瞬を精一杯あんたらしく生きてくれ。
破天荒で酷く傍迷惑で、でも最高に輝いてる。それがあんたの魅力なんだから。俺のからの一生のお願いだ」
魔理沙は頷く。何度も何度も。涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら。
ドロワーズが満足そうに震えた。
「ナイスだリトルガール。利発なレディは大好きだぜ。
……俺は幸せ者だな。レディの盾となって果てる。男の本懐だろ? しかもこんなに悲しんでもらった。最高の死に際だ。
ただ、一つ心残りがある、あんたを酷い目にあわせたあの怪物が、今ものうのうと徘徊している事だ。
だがなリトルガール、俺はいい事考えた。あの化け物をやっつける方法だ。どうだ? 乗ってみないかい?」
何と無くお尻がニヤリとした気がした。魔理沙は知っている。それが空元気であることに。
最後の死力を振り絞り、魔理沙に心配かけまいとしているのだ。
ならばその心意気に私は応える必要がある――魔理沙はぐっと上体を倒し、顔をドロワに近づけた。
「サンクス。リトルガール」
ジョージは魔理沙に必殺の作戦を説明する。
魔理沙は、力強く頷いた。
魔理沙宅の外壁をガシガシ破壊しているキノコザウルス。
その背後に魔理沙は立った。瞳は強靭な意志を湛えている。涙は、もう無い。
「シャンハーイ」
魔理沙に気付きキノコザウルスが振り返った。
その口が大きく開かれる。レーザーが放たれようとしているのだ。
しかし魔理沙は逃げない。代わりにくるりとキノコザウルスに背中を向けた。
一見不可解な行動。しかし、これこそが必殺の策。
スペルカードを取り出す。
右手にファイナルスパーク。左手にもファイナルスパーク。
それは魔理沙最高の破壊力特化スペル。
しかし、一発打てば霊力を根こそぎ持っていかれるこの符を何故魔理沙は二枚も用意したのか。
魔理沙の口元には決意がにじみ出ている。
これは必要な手段だった。キノコザウルスを一片の消し炭すら残さず消失させる火力。それを得るためには。
すなわち、この超弩級スペルを同時発動させるという無茶をこれより魔理沙はやってのけようというのだ。
無謀。しかし不可能を可能ししてこそ魔法使いだと、魔理沙の瞳は物語っている。
符が光を放ち、炎を纏った。スペルが起動した合図である。
魔理沙の生き様、魔理沙の純真それを体現したスペル、ファイナルスパーク。その尋常でないエネルギーがドロワーズに集まる。
お尻が虹色に美しく輝き出した。一人では絶対に放てなかったであろう限界突破の魔砲。
しかし、二人ならきっとできる。確信があった。
符が燃え尽きる。トリガーが引かれた。今、幻想郷で彼女達はもっとも眩しかった。
「よう、リトルガール。今だから言えるが、あんた中々魅力的な女だったぜ! そして素敵だった!
10年経ったら俺が嫁に貰ってやりたいくらいになぁ!」
「ジョージ。私はお前のことを忘れない! 何があっても、何年経っても、絶対になぁ!」
そして、魔理沙の尻が咆哮した。
この瞬間、幻想郷は少し明るかった。
あの日から数週間がたった。
魔理沙の家の裏にはちんまりとした石碑がある。それは墓標であった。
丁寧な楷書体で、故人の名が掘り込まれている。
最後に魔理沙の手によって丁寧に埋葬された彼は、破れたドロワーズではない。心を通わせた友であり、大切な事を教えてくれた恩師であった。
きゅっきゅと石を布で磨き、軽く手を合わせる。日課であった。
その日の昼食はドドメ色のキノコパスタ。マッシュルーム的な詰まらない味わい。
そういえば、すっかり立ち食いの習慣がついていた事に魔理沙は気付く。
魔理沙は少し寂しげに微笑むと、椅子を引き、そこに腰を移動させた。
お尻が、椅子のクッションに触れる……。
「ハッハー! セニョリータ。青いケツを押し付けるのは止めたまえ。
我輩は子供に興味はないのだよ。ふくよかな貴婦人の桃尻なら大歓迎だがね。ハッハッハ!」
唐突に、巻き舌でパッション溢れる快男子ボイスが部屋に響いた。
アリスさんも上海人形嬢もあややんもちくしょう良いキャラしやがって………。
創想話だったらガチで万点入れたい。
ボリューム・構成・文章どれをとっても五時間で書き上げたとは思えないほど素敵な出来です。
お仕事頑張ってください。
いやーいい話でしたw
不憫なアリスに罵られたいっ!
ジョージは実にいい男、いや漢。
おかげでドロワSSで涙ぐむ羽目になりました。どうしてくれますか
ウーパールーパー、お前がNO.1だ!
【ただし魔法は尻から出る。】
キノコ怪獣がマタンゴを思い起こさせて、笑いながらもおっかなかったです。
そして
>お尻がニヤリ
ここで泣き笑いになりました。
でもいろいろとねーよwww
ドロワの形をした霊魂が、いつも魔理沙を見守っているのですね。
胞子ぶっかけられたのが上海だけで良かった。
人形手当たり次第にかけていたら、今頃幻想郷はキノコが支配していたでしょう。
「シャンハーイ」
で吹きました。ええ、吹きましたとも
ジョーマリが俺のジャスティス!
こういうのは嫌いじゃないぜマイボーイ
……ちくしょう。
字面はカッコいいけど絵にするとひどいwww
と思ったら尻から出るマスパも相当にひどいなw
そして下裸の魔理沙も悪くない・・・・うん、実に悪くない・・・・
そして魔理沙、キミにこの言葉を捧げよう。
「ただし、魔法は尻から出る」