「あつい…」
「そうかしら?」
「妖怪は卑怯ね。こんなに暑いのにそれを感じないなんて」
「あら、便利なようでなかなかに不便もあるのよ?」
ジンジンと煩い蝉。雲一つない青空。うだるように照りつける太陽。夏真っ盛りな神社に私たちはいる。
周りにたくさん生えている木々が多少暑さを緩和しているが、石畳が熱を吸収して放さないために全く気休めにもならない。
「しかし暑いわね」
「あんたさっきと言ってる事違うじゃない」
「あなたを見てると何故か暑さを感じるわ」
「じゃあ見なきゃいいじゃない」
「嫌よ、私が目を放したらあなた脱ぎだしそうじゃない」
「良いじゃない。あんた毎晩のように見てるんだから」
「夜はいいのよ。神様だって寝てるんだから」
全く、夜のあんたはこっちが待ってって言っても待ってくれないくらいに積極的なのに、日中のあんたはまるで淑女。
…なるほどそうか。猫かぶりね変態という名の紳士ならぬ淑女なのか。
「あいた」
「シャンハーイ!」
「いつも思うけど何とかならないのこいつ」
「この子をこうしたのはあなたよ」
「シャンハーイ」
「誇らしそうにするな」
それにしても暑い。今は縁側から一歩引いた居間にいる。縁側は木製のくせに鉄板のような熱さを持っているからおしりが痛くなってしまいそう。
風鈴がちりちりと鳴っているが乾いた音は返って暑さを強調してしまう。
「だったら外せばいいじゃない」
「嫌よ。あれはあんたから貰ったんだから」
「霊夢…うれしい」
…しまった。部屋の温度がまた1度上がってしまった気がする。うんきっとそうだ。だってアリスの顔にも少し朱が差しているから。
すっかり温くなってしまった、アリスがお土産に持ってきた水羊羹を口に放り込む。心なしかさっきより甘く感じる。多分気のせい。
「暑い」
「ええ。そうね。でも私は構わないかな」
「なんでよ」
「うーん、目の保養?」
「…変態ね」
「暑さでやられたのかしら」
自分をよく見ると、いつのまにやら服が乱れていた。胸元、腋はだらしなく緩められており、お腹周りもめくれあがっている。夏用に厚さと丈が控えめなスカートも汗に濡れてぐったりしているし、頭のリボンは取り外され、髪は重力から開放され腰元まで下がっていた。直す気などないが。
「でも、さすがにこれ以上暑くなってもらっちゃ困るわね」
「なんでよ」
「私が保たない」
「妖怪が何を」
「だってこのままだらだら続いたらあなたが熱中症に罹ってしまうわ。若い子でも危険なのよ」
「心配してくれるの?」
「当たり前じゃない。あなた自分を誰だと思ってるの」
「博麗の巫女にして、あんたの恋人」
「そうとも」
また温度が1度上がったかもしれない。やはりこの暑さで頭が上手く動かないのだろう。迂闊に声を上げれば自分の首を絞めることになりそうだ。
このままではほんとに熱中症になりそう。アリス熱中症。なんてね。
「大丈夫よ。私は死なないわよ、そんなんじゃ」
「まあ、病気ごときで死ぬような奴じゃないか」
「何よそれ。それにね、病気したって怪我したって、あんたが看護してくれるでしょ?」
「ええそうとも、あなたに何かあっても私が死なせない。永琳にだって負けない器用さで看護してあげるんだから。勿論、あなただけの限定だけどね」
「…だったら今すぐ看護を要求するわ」
今のは3度くらい上がったかもしれない。本気で気が遠のくかと思ったけど踏みとどまった。落ち着けようとしてお茶を啜る。勿論熱いお茶じゃない。冷たい麦茶だ。と思ったけどもう大分温かった。この温度じゃ仕方ないか。
「そんな2人に朗報です!!」
「暑いわ騒ぐな失せろ今すぐ」
「わーひどい!?」
また変なのが出てきた。黒い新聞記者か。このくそ暑いのにぴしっと服を着こなし汗一つかかないでペンを器用に回している。全く黒いものは熱を萃めるってのに。
「あら、朗報ってなにかしら」
「さすがアリスさん話が早い!実はですね、魔法の森の一角に流れる川があるんですが」
「ああ、あの流れが地味に激しい」
「はい。里では遊泳禁止区域ですね。場所的にも。しかし!我が盟友の工具の手によって、水の引き込みに成功し、新たにプールを建設したのです!」
「はぁ?プールゥ?何でまたそんなへんぴな場所に」
しかし、文は私の質問に答えずにアリスに「これフリーパスです」とか言いながら紙を渡している。針投げた。
「こんなうだるような暑い午後のひと時に、涼しげな水辺で邪魔な衣服から開放されて水着ではしゃぐ。というのもいいでしょう!?」
「あ、文大丈夫?派手に血が出てるけど」
「この程度恐れるに足らず!私は任務を完遂させなければならないのですから」
とりあえず何だか部屋の温度が下がった気がした。何でかな。まあいいか。とりあえずお札投げて文を追い払った。
「霊夢、折角だから行ってみない?」
「めんどくさい。水着持てないし」
「大丈夫よ。こんなこともあろうかとあなたの水着作っといたから」
「…準備がよろしいことで」
「決まりね。どの道こんなとこでぼーっとしてたらそれこそ熱中症になっちゃうわ」
「ほー、意外とまともなのね」
「どんなの想像してたのよ」
「いやもっと野生的なのをね」
「アスレチックじゃないんだから」
場所は変わって魔法の森。薄暗い森には不釣合いな清水がさらさらと流れている。水面に近づくと自分の体が映りこんだが、すぐに目をそらした。
「恥ずかしがることないじゃない」
「だって、こんな水着」
「似合ってるわよ」
「安っぽい言葉言ってんじゃないわよ」
「似合ってるのに」
今の私は何時もの巫女服ではなく、アリスお手製の水着を着用している。しかし、その水着は私の想像していたものよりもかなり露出度が高い、ビキニと言われるものだった。私に合わせたのか紅白のコントラストが綺麗に配置された一品で、これを作っているときのアリスはどんな顔してたのかと思う。多分ド真面目な顔して作ったんだろうなぁ。
「流石に恥ずかしいわよ」
「気にしなきゃいいじゃない。泳げば一緒よ」
「私じゃないわよ。あんたのこと」
「…別に普通だと思うけどなぁ」
アリスも私と同じビキニタイプの水着を着用している。しかし、アリスを象徴するかのような蒼色に、流れるような彼女のボディラインが映えており、さらに日に当たったことがないのかと疑うほどに白い肌がより水着と肌の境界を強調していて。はっきり言って見てるこっちが恥ずかしい。
…私より1回りも2回りも大きい胸元も恥ずかしい。いやこれはこっちが恥ずかしい。こっちの胸元が、ね。
「ねえ、どうかしら」
「どうって」
「似合ってる?」
「安い言葉は言わない」
「それでも、好きな子には言ってもらいたいものよ」
「アリス」
「ん」
「…とても似合ってる」
「安いこと言わないんじゃないの」
「ええ。だから言ったのよ」
「…ありがとう。うれしい」
暑い。暑くてたまらない。さっきからなんだ。これじゃ神社より暑いじゃない。ここは森の中だってのに。ええいやめやめ、とにかく泳ごう。
「ほら、今日はとことん泳ぐわよアリス…アリス?」
「え、えーとね、霊夢。笑わないで聞いてくれる?」
「モノによるけど何?言ってみなさいよ」
「あの…私実は泳げないの…」
「…え」
「仕方ないの!魔界には人が泳げる海なんてないし、こっちだって海なかったし川で泳ぐ機会もあまりなかったし!不可抗力なのよ!…霊夢?」
目を伏せて頬を染めながらモジモジと語るアリス。そこにはさっきまで吹かしていたお姉さんのような空気は纏っていない。何かもう無理。
「ごめん」
「え?」
「あははははははは!無理!あのアリスが、泳げないなんて、ギャップがありすぎ、て…はははは!…あばぁ!?」
「調子に乗るな!」
ああ、熱い。殴られた頭が。それにしても暑い。さっきからなんだか暑くて暑くてたまらない。これってもしかして気温のせいじゃない?
まあいいか。とにかく、今はアリスに水へ顔をつける練習から教えようか。
「そうかしら?」
「妖怪は卑怯ね。こんなに暑いのにそれを感じないなんて」
「あら、便利なようでなかなかに不便もあるのよ?」
ジンジンと煩い蝉。雲一つない青空。うだるように照りつける太陽。夏真っ盛りな神社に私たちはいる。
周りにたくさん生えている木々が多少暑さを緩和しているが、石畳が熱を吸収して放さないために全く気休めにもならない。
「しかし暑いわね」
「あんたさっきと言ってる事違うじゃない」
「あなたを見てると何故か暑さを感じるわ」
「じゃあ見なきゃいいじゃない」
「嫌よ、私が目を放したらあなた脱ぎだしそうじゃない」
「良いじゃない。あんた毎晩のように見てるんだから」
「夜はいいのよ。神様だって寝てるんだから」
全く、夜のあんたはこっちが待ってって言っても待ってくれないくらいに積極的なのに、日中のあんたはまるで淑女。
…なるほどそうか。猫かぶりね変態という名の紳士ならぬ淑女なのか。
「あいた」
「シャンハーイ!」
「いつも思うけど何とかならないのこいつ」
「この子をこうしたのはあなたよ」
「シャンハーイ」
「誇らしそうにするな」
それにしても暑い。今は縁側から一歩引いた居間にいる。縁側は木製のくせに鉄板のような熱さを持っているからおしりが痛くなってしまいそう。
風鈴がちりちりと鳴っているが乾いた音は返って暑さを強調してしまう。
「だったら外せばいいじゃない」
「嫌よ。あれはあんたから貰ったんだから」
「霊夢…うれしい」
…しまった。部屋の温度がまた1度上がってしまった気がする。うんきっとそうだ。だってアリスの顔にも少し朱が差しているから。
すっかり温くなってしまった、アリスがお土産に持ってきた水羊羹を口に放り込む。心なしかさっきより甘く感じる。多分気のせい。
「暑い」
「ええ。そうね。でも私は構わないかな」
「なんでよ」
「うーん、目の保養?」
「…変態ね」
「暑さでやられたのかしら」
自分をよく見ると、いつのまにやら服が乱れていた。胸元、腋はだらしなく緩められており、お腹周りもめくれあがっている。夏用に厚さと丈が控えめなスカートも汗に濡れてぐったりしているし、頭のリボンは取り外され、髪は重力から開放され腰元まで下がっていた。直す気などないが。
「でも、さすがにこれ以上暑くなってもらっちゃ困るわね」
「なんでよ」
「私が保たない」
「妖怪が何を」
「だってこのままだらだら続いたらあなたが熱中症に罹ってしまうわ。若い子でも危険なのよ」
「心配してくれるの?」
「当たり前じゃない。あなた自分を誰だと思ってるの」
「博麗の巫女にして、あんたの恋人」
「そうとも」
また温度が1度上がったかもしれない。やはりこの暑さで頭が上手く動かないのだろう。迂闊に声を上げれば自分の首を絞めることになりそうだ。
このままではほんとに熱中症になりそう。アリス熱中症。なんてね。
「大丈夫よ。私は死なないわよ、そんなんじゃ」
「まあ、病気ごときで死ぬような奴じゃないか」
「何よそれ。それにね、病気したって怪我したって、あんたが看護してくれるでしょ?」
「ええそうとも、あなたに何かあっても私が死なせない。永琳にだって負けない器用さで看護してあげるんだから。勿論、あなただけの限定だけどね」
「…だったら今すぐ看護を要求するわ」
今のは3度くらい上がったかもしれない。本気で気が遠のくかと思ったけど踏みとどまった。落ち着けようとしてお茶を啜る。勿論熱いお茶じゃない。冷たい麦茶だ。と思ったけどもう大分温かった。この温度じゃ仕方ないか。
「そんな2人に朗報です!!」
「暑いわ騒ぐな失せろ今すぐ」
「わーひどい!?」
また変なのが出てきた。黒い新聞記者か。このくそ暑いのにぴしっと服を着こなし汗一つかかないでペンを器用に回している。全く黒いものは熱を萃めるってのに。
「あら、朗報ってなにかしら」
「さすがアリスさん話が早い!実はですね、魔法の森の一角に流れる川があるんですが」
「ああ、あの流れが地味に激しい」
「はい。里では遊泳禁止区域ですね。場所的にも。しかし!我が盟友の工具の手によって、水の引き込みに成功し、新たにプールを建設したのです!」
「はぁ?プールゥ?何でまたそんなへんぴな場所に」
しかし、文は私の質問に答えずにアリスに「これフリーパスです」とか言いながら紙を渡している。針投げた。
「こんなうだるような暑い午後のひと時に、涼しげな水辺で邪魔な衣服から開放されて水着ではしゃぐ。というのもいいでしょう!?」
「あ、文大丈夫?派手に血が出てるけど」
「この程度恐れるに足らず!私は任務を完遂させなければならないのですから」
とりあえず何だか部屋の温度が下がった気がした。何でかな。まあいいか。とりあえずお札投げて文を追い払った。
「霊夢、折角だから行ってみない?」
「めんどくさい。水着持てないし」
「大丈夫よ。こんなこともあろうかとあなたの水着作っといたから」
「…準備がよろしいことで」
「決まりね。どの道こんなとこでぼーっとしてたらそれこそ熱中症になっちゃうわ」
「ほー、意外とまともなのね」
「どんなの想像してたのよ」
「いやもっと野生的なのをね」
「アスレチックじゃないんだから」
場所は変わって魔法の森。薄暗い森には不釣合いな清水がさらさらと流れている。水面に近づくと自分の体が映りこんだが、すぐに目をそらした。
「恥ずかしがることないじゃない」
「だって、こんな水着」
「似合ってるわよ」
「安っぽい言葉言ってんじゃないわよ」
「似合ってるのに」
今の私は何時もの巫女服ではなく、アリスお手製の水着を着用している。しかし、その水着は私の想像していたものよりもかなり露出度が高い、ビキニと言われるものだった。私に合わせたのか紅白のコントラストが綺麗に配置された一品で、これを作っているときのアリスはどんな顔してたのかと思う。多分ド真面目な顔して作ったんだろうなぁ。
「流石に恥ずかしいわよ」
「気にしなきゃいいじゃない。泳げば一緒よ」
「私じゃないわよ。あんたのこと」
「…別に普通だと思うけどなぁ」
アリスも私と同じビキニタイプの水着を着用している。しかし、アリスを象徴するかのような蒼色に、流れるような彼女のボディラインが映えており、さらに日に当たったことがないのかと疑うほどに白い肌がより水着と肌の境界を強調していて。はっきり言って見てるこっちが恥ずかしい。
…私より1回りも2回りも大きい胸元も恥ずかしい。いやこれはこっちが恥ずかしい。こっちの胸元が、ね。
「ねえ、どうかしら」
「どうって」
「似合ってる?」
「安い言葉は言わない」
「それでも、好きな子には言ってもらいたいものよ」
「アリス」
「ん」
「…とても似合ってる」
「安いこと言わないんじゃないの」
「ええ。だから言ったのよ」
「…ありがとう。うれしい」
暑い。暑くてたまらない。さっきからなんだ。これじゃ神社より暑いじゃない。ここは森の中だってのに。ええいやめやめ、とにかく泳ごう。
「ほら、今日はとことん泳ぐわよアリス…アリス?」
「え、えーとね、霊夢。笑わないで聞いてくれる?」
「モノによるけど何?言ってみなさいよ」
「あの…私実は泳げないの…」
「…え」
「仕方ないの!魔界には人が泳げる海なんてないし、こっちだって海なかったし川で泳ぐ機会もあまりなかったし!不可抗力なのよ!…霊夢?」
目を伏せて頬を染めながらモジモジと語るアリス。そこにはさっきまで吹かしていたお姉さんのような空気は纏っていない。何かもう無理。
「ごめん」
「え?」
「あははははははは!無理!あのアリスが、泳げないなんて、ギャップがありすぎ、て…はははは!…あばぁ!?」
「調子に乗るな!」
ああ、熱い。殴られた頭が。それにしても暑い。さっきからなんだか暑くて暑くてたまらない。これってもしかして気温のせいじゃない?
まあいいか。とにかく、今はアリスに水へ顔をつける練習から教えようか。
素晴らしいレイアリ!
水着姿ひゃっほい!!
>>1さま
このようなものに素晴らしいと言っていただけるなんて…ありがとうございます!
>>奇声を発する(ry in レイアリLOVE!さま
おお、やはり貴方様もでしたか!
皆もなればいいですのに。
>>華彩神護.Kさま
はい、ネガでしたらここn…あれ、目の前が真っ赤に…がく
>>4さま
もっとみんな感染拡大させるべきですね!
>>5さま
な、なんだってー!?
ありがとうございます!!
解毒剤が必要ならいつでも言ってくださいね!
>>6さま
ちなみに書いているとき私の部屋は30度を上回っておりました。
でも二人がいれば暑さなんて吹っ飛びますよ!
>>拡散ポンプさま
その後、はたての行方を知る者は誰もいなかった…。
そうですね・・・1億ジンバブエドルほどを博麗神社の賽銭箱に入れたら大丈夫ではないでしょうか(え