Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

月の名を戴いた少女

2009/01/08 21:51:36
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いつの間にこんな所を歩いていたのだろう。
もやのかかった仄暗い樹海の中を、少女はふらふらと歩いてゆく。
木々の隙間から零れ落ちる月の光が、少女の足元を照らしている。
手を伸ばせば届きそうなほどに大きな月だ。
それはとても妖艶で美しいものなのだろうが、今の彼女はそうは思わない。
煌煌と空に浮かぶ月をゆっくりと見上げて一瞥するなり
眉をひそめて、より光の届かないほうへ、逃げるように歩を進めた。
暗いほうへ、暗いほうへ。
誰にも見られないところへ。
どれくらいの時間を歩いたかわからない。
一日中歩いたような気がするのに、まだ夜明けの気配すら訪れない。
まるで時間が止まっているかのようだった。
自ら踏みしめる枯れ草の音が自分のものと思えない。
目に入る樹木が自分を食らおうとする悪魔に見える。
しつこく付きまとう月の光は、さながら奴らの持つたいまつの光のようだった。
私の村を襲った奴ら。
私の家を燃やした奴ら。
私の家族を殺した奴ら。
私が殺した奴ら。
力の抜けた手にべっとりとついていたものはすっかり乾いてしまっていた。指を動かすたびにパリパリとひび割れて、それはとても不快な感触だった。それでも、元の状態よりはいくらかマシだった。
足はとっくに棒になっていた。さらけ出された素足は生傷だらけになり、ひざに力が入らなくなっていた。
少女はなんとか月の光も届かなくなったあたりまで歩いたが、そこまでだった。木の根か何かにけつまずき、受け身もとらずにうつぶせに倒れた。小枝が肌を傷つけたが、気にならなかった。
湿った土がひんやりしていて、気持ちいい。汚れた手も、傷ついた足も、もう動かすことができなかった。
少女は目を閉じた。
すぐに耳元で枯草の砕ける音が鳴っても、彼女は起きなかった。





「今日からしばらく屋敷を空ける。留守番、頼んだぞ」
お父様はそう言って、私の頭を優しく撫でた。
世界で最も強く、凛々しい私のお父様。
私は鞄をお父様に渡しながら、質問した。
「今回はどこへ行かれるのですか?」
「大きな時計塔のある、霧の濃い、美しい街だ。お前も大きくなったら行ってみるといい」
お父様は鞄を受け取って、それと、と付け加え、ベッドの上で眠るそれを見た。追うようにして、私をそれを見た。
乱れた銀髪の髪の人間は、昨夜お父様が森から拾ってきたものらしい。
腕を覆うようについた血は、仲間割れのあとだろうか。
しかし、食事としてここにいるならば、お父様のベッドで寝ているはずがない。そう考えると、ますます不可解だった。
「これを・・・どうするのですか?」
「少し長くなるからな。宿題さ」
お父様は人差し指を立てて、続けた。
「お前があれの世話をするんだ。あれには特別な力がある。きっとお前の役に立つぞ」
顔には表れていないが、お父様はたいそう愉快そうだった。
きっと私が少し、困ったような顔をしていたからだと思う。
「ですけどお父様、人間がここで生活できるとはとても思えませんわ。」
私は言ったが、お父様はほほをわずかに上げて微笑み、言った。
「お前の力が、その人間の宿命をも変えてしまうさ」
思わずじっと眼を見つめてしまい、私は少し照れて、話をそらそうとした。
「ところでお父様。この人間、なんと呼べば良いんですの?」
お父様は、どうやら考えていなかったようで、おお、と短くもらし、顎に手を当てて窓の外を見た。
欠け始めの月が星空に君臨している。
「今日もよい月だ。そうは思わんか」
お父様は外を見ながら問いかけてきた。
欠け始めの月はやはり昨日と比べて小さく、魔力もそれほど感じない。
「私は、やはり満月のほうが好きですわ。大きいし、それに力が湧いてきますもの」
私は素直に答えた。お父様は小さく笑ったようだった。
「そうだな・・・。だが不完全故、この月もまた満月のように美しい」
そう言って、お父様はベッドの上のものに視線を落として
「人間も然り、だな」
と呟いた。


お父様は月に向かって飛び立ち、たちまち闇夜に溶けてしまった。
私はため息をついて、いやしくもお父様の布団に横たわる人間に目をやった。
十六夜の名を戴いたそれは、未だ静かに寝息を立てていた。
初投稿になります。
某メイド長が館に来たあたりのお話を自分なりに妄想してみました。
お父様とかパラレル設定ごめんなさい。
ながよし
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
短っ!?しかもあんまり良く分かんないうちに終わってるっ!!?

まぁ、そのへんは初投稿なんだからとして。
人物像がぼんやりしすぎていますね。あとがきにも「某メイド長」とは、いやはや…
キャラの自己紹介や名称はきちんと書きましょう。話はそれからです。

つまりは、お話になっていないってことです。
2.名前が無い程度の能力削除
お嬢様が幼咲夜さんを育てるだと
是非とも育児風景が見てみたい
3.名前が無い程度の能力削除
別に分からないだなんて思いませんでしたよ。キャラの自己紹介…?キャラが自己紹介をするんですね。なるほど…私的には某メイド長で分かるのですから構わないでしょう。わざわざ名前を出すほうが無粋だと思ったりもします
4.名前が無い程度の能力削除
なるほど…最後の一文がなければ誰の話だか気がつかなかったぜ。
それにしても、れみりゃのお父様はダンディですね。抱いてくれ。