Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

梅雨の出来事

2006/06/19 13:11:30
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雨が頻繁に降りジメジメしている、少し不快になる梅雨の時期。


「げほ、げほ。んっ、あ~しんどいわ」
神社の廊下で、雨が降る景色を気だるそうに寝転がりながら見て霊夢がつぶやいた。
「まったく…げほ、なんでこんなジメジメした季節なんてあるの…っくしゅん!」
空を睨みながら文句を言い、くしゃみをする。少し鼻水が出た。
それをちょっと汚いかなと思いながらも、ちり紙を取るのが億劫で服の裾で鼻を拭う。
「あ~、本当に最悪。やっぱり昨日小雨だから大丈夫だと思って傘をささずに
散歩をしたのが敗因だった…」
昨日、霊夢は小雨の中散歩にでた。なぜそんな小雨の中散歩したのかと聞かれても
散歩したい気分になったのだから仕方がない。
しかし、今では後悔している。そんな気分のせいで今は体が重く、喉も痛い。
こんな時はしっかり布団に入って眠った方がいいのだが、廊下に寝転がって
しまったせいか、体がこのまま動きたくないと言って動いてくれない。
「あ~…駄目だ。動けない…まぁ、でも、ちょっと床が冷たくて気持ちいいかも…」
霊夢は頬を床に擦り付けるようにして、この場で眠るのはまずいと思いながらも
その意思に反して眠ってしまった。


どれだけ時間がたっただろう。
目を覚ますと、霊夢はしっかりと布団の中で眠っていた。ボーっとする頭で現状を確認
しようと首だけを動かし、周りを見渡すと霊夢は自分の部屋にいた。首を回して何かが
落ちたことに気づき、それを掴んでみる。濡れタオルだ。額の上に乗っていたらしい。
「あれ……私、どうしてこんなことに…」
「お、目が覚めたのか?」
部屋に入ってきたその人物は霧雨魔理沙。自分のよく知る人物だった。
魔理沙は今まで外に出てたのか、手には袋をぶら下げ、衣類は少し濡れているように見えた。
「魔理沙、何でここにいるのよ?」
尋ねながら体を起こそうとしたが、魔理沙に手で起きなくていいと合図される。
「あー、家で実験をしてたんだが、実験の途中、参考書が必要になってな。取りに来たんだ」
魔理沙はその参考書を霊夢に見せた。
最近、パチュリーが魔理沙から盗まれた本を取り返そうと、抜き打ちで魔理沙の家に咲夜をよこすらしい。
なので、魔理沙は拝借してきた本や現状では使わないと思われる本をこの神社に隠していた。
隠しどころは神社の巫女である霊夢でもわかっていない。
「で、来てみればお前が倒れてるじゃないか。最初はダレてるだけだと思ったんだが
熱があったからな。だからとりあえずお前を部屋に運んで布団に入れたわけだ。
まったく、調子が悪かったらあんな廊下で寝ないだろ!」
魔理沙は強い口調で霊夢を叱るが、そんな叱る魔理沙からは心配したような表情が見られた。
自分が悪いし、そんな心配してくれる魔理沙に何も言い返せるわけも無く
「ごめん…」
と霊夢は一言謝った。
それを聞いた魔理沙は一息置いて、ニカっと笑う。
「わかればいい」
魔理沙は霊夢の枕元に座ると、霊夢からタオルを取り、近くに用意してあった水の入った
桶にタオルを浸し、それをしぼると霊夢の額に乗せる。ひんやりして気持ち良い。
「もう少し寝てろ。今軽い食事作るから」
「気持ちは嬉しいけど…えっと、食事の材料は……」
「大丈夫。食事の材料は調達済みだ。あと薬も永琳からもらってきた」
ウィンク一つして、手に持っていた袋を霊夢に見せる。
そして「台所借りるぞ」と一言残して部屋から出て行った。


(魔理沙のやつ…この雨の中動き回ってくれたんだ……)
悪いことさせちゃったと思うのと、自分のために動いてくれたという気持が少し嬉しくて
でも、そんな嬉しいと思ってしまう自分が恥かしくて霊夢は掛け布団を口もと辺りまで引っ張る。
(なんだろ…この感じ。何かあったかくて懐かしいような…あー、もう! 何なのよ。風邪のせいかしら)
心の中で葛藤しながら、霊夢は左右にごろごろ動く。だがすぐに疲れたので魔理沙に言われた通り
眠る事は出来なかったが、布団の中で安静にしていた。


そうして、しばらくすると良い香りと一緒に魔理沙が部屋に戻ってきた。
「ほら、お粥作ってきたぞ。紫蘇のお粥なんだけど嫌いじゃないよな?」
「うん、嫌いじゃない」
魔理沙は手に持っていたお盆を床に置いて、霊夢の枕元に座ると肩を抱いて上半身を起こしてくれた。
そして、お盆からお粥を取ると、そのお粥をスプーンですくい
「ほら、口を開けろ」
と言って、スプーンを霊夢の口の前まで運ぶ。
「い、いいわよ! さすがにご飯くらい自分で食べられるわ」
「病人は甘えとくもんだぜ? ほら、口を開けろって」
そうやって、少し争ったが、結果霊夢が折れて魔理沙がご飯を食べさせる事になった。
その後は、「汗を掻いただろ?」ということで、霊夢は魔理沙に体を拭いてもらうことになった。
最初はご飯も、そして今、体を拭いてもらってることも恥かしいと思っていたのだが、魔理沙が自分の
ために真面目に看病をしてくれている姿を見て、いつの間にか気持は感謝の気持でいっぱいになっていた。
そして、もうひとつ、何故か心に浮かぶ言葉があった。
「……お母さん」
「ん、何だ? 急に?」
魔理沙が手を止めて尋ねる。
心でつぶやいたと思ったのだが、どうも口に出していたらしく魔理沙に聞こえてしまったようだ。
「ん、あ、えっと……何となくね、今の魔理沙、お母さんみたいな感じがしてね」
「ふーん…お前のお母さん、私みたいな感じだったのか?」
「そんなわけないじゃない! といっても、実は私自身お母さんの事よく覚えてないんだけどね。
魔理沙のお母さんってどんな人だったの?」
「うん? えっと……あぁ、すまん。私もあまり覚えてないな」
「そっか。魔理沙も私と同じか」
霊夢は笑いながらも少し悲しそうな顔をした。
魔理沙は少しの間、そんな顔をした霊夢を見ていたが、止めていた手を動かし言う。
「私はお前のお母さんなんて器じゃないから、代わりにはなれないけど」
魔理沙はタオルを一度桶で濯ぎ、しぼったタオルで霊夢の悲しそうな顔を拭う。
「お、お前のお母さんに負けないくらい、一番身近な存在の友達にならなれるぜ」
魔理沙の声が少し上ずっている。霊夢の顔を拭う力も少し強い。
顔を覆われた状態だが、霊夢はわかる。きっと今、魔理沙の顔は赤い。そして自分も。
「い、痛い。あんた、私の顔強く拭きすぎよ。そんな強くしたら顔赤くなるじゃない!」
「い、いいんだよ。お前の顔はひどいからな。もう少し念入りに拭いた方がいいんだ!」
二人はそうしてお互いの顔を隠しながら笑いあった。


「ほら、永琳からもらってきた薬だ」
霊夢は渡された飲み薬を飲む。
「うわ…これ苦いわよ?変な後味」
「良薬は昔から苦いものだぜ?」
薬の苦さで顔をゆがませている霊夢に、魔理沙は笑う。
そして霊夢を寝かせて、布団を丁寧に肩の辺りまでかけた。
「ゆっくり休みな。明日にはきっと良くなってる」
そう言いながら、魔理沙も霊夢の横に敷いた布団に潜り込む。
「あんた、私の風邪うつるわよ?」
「大丈夫だ。私は寒さには弱いが風邪には強い魔法使いだぜ」
首を横にして、霊夢にニヤリと笑いかける。
「絶対うつしてやる」
「できるかな? でも、もしもの時は看病を頼むぜ。さて、おしゃべりはここまでだ」
「そうね。魔理沙、おやすみ」
「ああ、おやすみ」
二人は目を瞑り眠る。


(魔理沙…今日はありがとう)
看病の事、一番身近な友達でいてくれると言ってくれたこと。
本当は口に出してしっかり伝えるべきなのだが、結局言えなくてこうして心の中でつぶやく。
(お礼は言えなかったけど、明日起きたら元気に、そして笑顔で魔理沙に言おう)
言うのはただの朝の挨拶。でも、いつもとは違った、大事な友達に向ける挨拶。
きっと、これが私に出来る、私を大切にしてくれた魔理沙への一番のお礼だから。


「おはよう! 魔理沙!!」

梅雨の時期はジメジメを除けば嫌いではないのです。
雨が好きなので。でも雨の日は何故かあんなことこんなこと
思い出したり思い出さなかったり。不思議ですね(私だけかも……)
ではでは。
つぼみん
コメント



1.ハンド削除
なんつーか一言でいうとイイ!
2.nofix削除
超然とひとり暮らしているかのようにも見える彼女たちですが、
こうして肩寄せ合って生きている姿もまた、良く似合うと思います。