※多分普通の霖之助です。しかし一部オリ設定です。
そういうのが苦手な方はブラウザで戻るをどうぞ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
まずい。非常にまずい。
香霖堂店主の森近霖之助は悩んだ。赤い文字だらけの家計簿に。
店の商品は少しは売れる。客層もある。だが―――
「お金を払っていてくれれば……」
そう、金を払わない客が多い。(魔理沙とか霊夢とか特に)
辛うじて紅魔館の従者や白玉楼の庭師とその他諸々が払うお金でのぎりぎりの生活だったがついに限界が来た。
というか霊夢も魔理沙もわざわざ家に来てお茶を飲んだりお昼とか夕飯とか済まさないで欲しい。頼むから。
この前少し強気に文句言ったら二百由旬吹っ飛ばされた。
いや、もちろんそこまで吹っ飛ばされてないが(一由旬=約10~15km)、
近くにいた庭師もびっくりなぐらいに飛んだ。もうあんな目に遭いたくない。
と、しばし絶望に浸ってると
「りんのすけー、掃除終わったー。」
入り口からルーミアが入ってきた。いや、今は戻ってきたというのが正しいか。
わけあってルーミアは香霖堂でバイトしている、ということになっている。
どういうわけかというと以前霊夢にこっぴどくやられて人を食うなと言われたらしく、
神社付近の森で別の食料を捕っていたらしいが、ある日巷で<暴食者>と名高い、西行寺のお嬢様により森の木の実や動物達が激減。
その為食糧もほとんど無く日に日に弱りついに倒れたが、たまたまそれを自分が拾って助けた。
というわけだ。
バイトは恩返しだと言うがそのわりに三食よく食う。
「ん、ありがとう。」
そう言って頭を撫でてやるとルーミアは心底嬉しそうな顔をした。
実際の所、ルーミアはそこそこ役に立ってくれている。もともと脳の容量が多いのか
ただ単に空いてるだけかは知らないが簡単な事ならば一度教えれば
”そーなのかー”と言った後だいたい覚える。
しかも覚えることが楽しいのか掃除洗濯はては料理まで覚えた。
すごいぞルーミア!最初の殻付き黒焦げ玉子焼きが嘘のようだ!
「おなかすいた~」
……まあ燃費が悪いのが玉に傷だが。
「ん、そうかい。じゃあそろそろお昼に……」
(……っと食料もそろそろ無くなるんだった)
食料の備蓄も切れそうだったのを忘れていた。
僕の一食を1香霖とするならば108香霖程、ルーミアは一食に3香霖は食べるから
108香霖=36ルーミア……と言ったところか。合計で1香霖+1ルーミア=4香霖
108香霖÷4香霖=27……つまり27食=九日分。
おお、なんか算数みたいだ。しかも応用が利きそうな定義だし。
ルーミアだけならば何日持つかとか。十二日。はい正解。
そういえば108って煩悩の数って云うけど実際は111あるんだっけかな。
あれ、もっとあったかな?
……まあそれは置いといて。
「ルーミア」
「うん?」
「ここの家計がつらいのは知ってるかな?」
しばし黙考後……
「うん、”ひのくるま”なんだよね。熱そう。」
あえて突っ込みは控えよう。
「そうだね。まだしばらく生活できそうだけど早めに対策は取りたい。」
「そーなのかー」
「例えば……そうだな、なるべく食べる量を減らす……おかわりは1回まで。」
と、ルーミアの目の色が変わった。
そしてぶるぶると小刻みに震えてぽろぽろと涙を流し始めた。
「!! ……そう……かー」
これには霖之助も仰天した。多少ごねると思いはしたが泣くまでとは…
「うわっ!? わ、わかった! 他の方法考えよう!」
が、ルーミアはなんとなく自分が家計を圧迫している要因だと自覚しているのか
「い……いいよぉ……がまん……する。」
と涙ながらに言った。
あーあ、また厄介なことに……
しかしこれは家計を圧迫している要因の1つであり、実のところ他はもうすでにギリギリまで削っている。
どうするかと頭の中で必死に打開策を練ろうと考える。
が、思いついたのは
1、狩猟生活
2、死ぬ気でツケを取り立て
3、売り上げを伸ばす。
1は……駄目だ、店をあまり空ける訳にはいかないし
第一いまだ幽々子嬢による被害が甚大すぎて自分の分まではともかく、
ルーミアが満足する分まで捕れるか……
2はどうだ? 死ぬな。かなり高い確率で死の淵に立つ羽目になるな。
せめて僕に少しでも戦闘能力があれば……いや無理か。みんな強すぎ。
3……自信が無いなぁ。なんだろうな、商売人として向かないのかもしれない。
広告……いや、あの天狗の新聞は購読者少ないし……
うちで一番の売れ筋商品を中心に売る物をしぼるか。
さっきまで付けていた家計簿をちらっと見る。
一番の売れ筋は……酒。
しかし、酒のほとんどはツケとなっている。売れ筋というのもおかしいか。
どこぞの小鬼は珍しいのばかりセレクトして金を払う前に霧みたいになって消えてしまった。
今度会った時のため常に懐に炒った大豆をしのばせている。たまに小腹が空いた時食べている為もうあまりないが。
秘蔵の品を売ることも考えたがすでにいくつか売っており後が無い。
売っても所詮その場凌ぎか。
駄目だな……今は考えた所で名案は出そうにない。さっさとお昼にしよう。
このままルーミアを泣かせっぱなしにはいかないし、こんな時に誰か来たら……
――ガチャ
「おーい香霖、水晶球ないか? ストックが切れ……」
うわ、来たよ。しかも直感乙女の魔理沙。
頼むからせめてドア叩いてくれ――
「ま、魔理沙……悪いけど今取り込んでて――」
ベシッ!!
突如少しざらりとした、竹箒の穂特有の感触を頬で感じたのも束の間、
魔理沙の持つ箒でもっていきなり顔面をぶん殴られた。
「ぶあっ!?」
続いて一歩踏み込んでの右の拳がカウンター越しに胸へと叩き込まれ、
「ぐえっ!」
そのまま服を掴み店の出入り口へと投げる。
と、魔理沙も出入り口へとダッシュ。手にはスペルカード。
「スターダストレヴァリエッ!!!!!」
「のあああああああ!!」
いつのまにか箒へと乗っていた魔理沙が僕を巻き込みつつ店を飛び出し、
僕は吹っ飛ばされ紅い吐血を撒き散らしながら蒼い空を舞った。
どこかに眼鏡を落としたか視界が突如ぼやけた。
ぐるぐる視界が回る中、魔理沙が僕に何かを向けていた。
多分八卦炉だろう。マスタースパークならよく食らうから、たぶん大丈夫なはず……
「ファイナルウゥゥ……」
そっちか!! くそっ!空中で身動きが……
「ナイトバード!!」
スペル宣誓の声が別方向から聞こえた。この声は……
(ルーミア!!)
思いがけない助け舟!
だがもう魔理沙は発射体制に入っている。もう止めら……あれ?
あの、ルーミア? なんだか弾幕が魔理沙じゃなくて僕の方に……
ゴスゴスゴスゴス…………
「あだだだだだ!?」
「スパァァァァクッ!!!!」
僕の声と魔理沙の声が重なった。
ルーミアの放つ弾幕は続く。しかしその弾の威力は低い。
まるで体を押してるだけかのような……
(そ、そうか! ルーミアは僕を射程上から外そうと……)
迫るファイナルスパークの光。
ゴウッ!
――これがもし、マスタースパークだったなら、彼は助かっていた。
わずかに額を掠る程度でカスリ点も稼げた。
が、ファイナルマスタースパークはさらに太いレーザー。
ジュッ
「アッ」
額を掠るどころか頭部にもろに食らい、霖之助の意識は途絶えた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
気が付いた時、景色はがらっと変わっていた。陰鬱な魔法の森ではなく、どこかこざっぱりとした空気が感じられる河原だ。
ざり、と物音がしたので咄嗟に振り向いた。
「おや、新しい人?」
目の前に女性がいた。眼鏡が無いのかよく見えないが、女性にしては大柄な方のようだ。
「んー? お客さん、どっかで会わなかったかい?」
どこかもなにも、今の自分の状況さえ理解できない。
というか、自分の体がよくわからない。
なんかこう、ふわふわしてる感じだ。
幼い頃、何度か夢を夢と自覚して夢の中を自在に動けたことがある。
それとどこか似ていた。
「うーんどこだったかなぁ……」
目の前の女性は腕を組んで考え込んでいる。
「ん?」
と、彼女が何かに気が付いたように目を細めた
「なんだ、お客さん生きてるじゃんか」
何を当たり前な……ん? 待てよ…
「あー、なんかの拍子に魂だけ抜けたんだね」
……なんか今うっすらとファイナルスパークにやられたのを思い出した。
そうか、今僕は仮死状態なのか。あれを食らってまだ生きてるとは我ながら頑丈な体だ。
そうだとすればここは三途の河付近か。ふむ、そういえば見た事ある景色だ。
……なんだか魂のままここに長居してはいけない気がする。
「心配しなくてもすぐに肉体に戻れるさ。」
目の前の女性……いや、ここが三途の河付近なら彼女は―――
(小野塚……小町…だったかな?)
まだ目はぼんやりしていてはっきりと姿は見えないが、
赤い髪と肩に担いでる大きな何か――おそらく鎌だ。
あと―――まあ胸か。胸だな。それでわかる。
「あん? お客さんどこ見て…………」
ちら、と僕の目線の先、胸を見てやれやれ、という感じに溜め息をついた。
「はー、胸なんざ大きいと邪魔なだけなのにな……まあいいさ」
うわ、その発言はすごく危険だと思う。
誰にとは言わないが。
「昨日珍しくはりきっちゃってさ、今日は霊も少ないし かなり暇だったんだよ。
どうせそのうち戻るんだし雑談でもしない? ほら酒もあるし。」
服の中から酒を取り出し(なぜか胸辺りから)、自分に向けて差し出される。
…特に断る理由もなかったので飲む事にした。
数分後、
普段はそんなに飲む事も無いのに精神的に疲れていたのか、霖之助はいつもよりかなり早いペースで飲み、
小町は最初から遠慮せずガンガン飲んだ。
結果、両者ともすっかりできあがってしまった。
―どうせ店なんて僕には向いてないんだ……
でも夢だったから やめるわけにはいかないし……はぁ……
「ういー、いやー旦那も苦労してるねえ。
うちの上司なんか一にも二にも説教説教。
こないだなんか
『胸が大きいのにどこがいいんだか、邪魔だし肩凝るし。 あ、でも物入れるのに便利かあははん』
とか言ったら4/5殺しにされたしねぇ」
―4/5ってほとんど死んでるんじゃあ…… というかさっきからお酒だのおつまみだのと
全部服から出してるようだけどどうなっているんだ?
「な~にただ服の中とうちの上司の家の食料庫との距離を――おっとうっかり。」
―うわ酷いな。なんか僕の妹分を思い出すよ。
ああそうだ、いつもいつもその妹分が店の商品を勝手に持って行ってね……
まあ稀に自分の蒐集品をカタとして支払いしていくんだけど。
言いつつ酒に手を伸ばした。こんなに飲むのもずいぶんと久しぶりだな。
「カタだけ? それじゃあ儲からないねえ。」
―いやもうまったく。しかもよく食べる居候も居るし、正直もう駄目かも……
「うーんそれじゃあ困るねぇ。よし!
自殺を未然に防ぐのも死神であるあたいの仕事だし、たまには善行積んでみようか!」
―ああ、自殺するつもりはないけど助かる。お礼に今度なにか持っていくよ。
「いいのいいの、まあできたら……お酒がいいかな」
―折を見て持ってくるよ。ここにはよく来るし。
「うん、じゃあまた会った時にね。
……で、まあさっきから聞いてて状況は把握したけどさ、
あたいが思うにその店での生活は無理だと思う。」
―う、はっきり言うね。
「遠慮してちゃ始まんないさ。」
そう言うと小町はカラカラと笑った。
「うーんそうだね……いっそのこと家を人里近くに
移したらどうだい?」
―いや……いい案だとは思うけど……うちは少々変わったものが
主役でね。(普通の)人相手じゃ需要は無いといっていいかな。
それにあそこにはおじ――霧雨道具店があるしね。
「ああ、そういやそんな店があったか。じゃあ商品を変えたら?もっと妖怪よりで役に立ちそうなの」
―簡単に言うけど、そしたら流通の仕方からを変える上に
それを維持する元手が必要なんだよ。そもそもうちは固定の入荷物は少ない。
「むう……じゃあ副業でもする?」
―それしかないかな。紅魔館に行けば雑用ぐらいあるだろう……
いや、あそこは死ぬな。
「あっ!!」
小町は突然何の前触れも無く立ち上がった。そのまま胸の中をがさごそと
探ると…………
一冊の本……いや、あれは外の世界の雑誌なる物か。
その雑誌を僕に手渡した。
「ほら、外の世界の資料だよ。もしかしたら打開策があるかも。」
渡されたその雑誌をぱらぱらと捲る。
ふむ、どうやら外の仕事図鑑のようなものか。
―家に帰ってじっくり読みたいね。興味深いよ。
「そうかい? じゃ持って帰りなよ。愚痴聞いてくれたお礼だよ。
それにそろそろ時間だろうしね。…よっと」
空になった酒瓶を持ち、小町はたたらを踏みながら立ち上がった。
―ありがとう、貰ってくよ。うん、そろそろか。じゃあまた今度。
「ああ―――縁があったらまた今度――――」
少しずつ、
沈み込むように意識が薄れ始める――
何かに引っ張られるような感覚。魂が本体へと引っ張られているのだろうか。
―たまには呑まれるのも悪くないか。
そう思いつつ、じゃあ、また。と最後に挨拶を交わした
ぱち、と目が開く。真正面は空。綺麗な秋空だ。
なぜか四方は――土。
……つまり、
埋葬一歩手前だった。
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◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
まずい。非常にまずい。
香霖堂店主の森近霖之助は悩んだ。赤い文字だらけの家計簿に。
店の商品は少しは売れる。客層もある。だが―――
「お金を払っていてくれれば……」
そう、金を払わない客が多い。(魔理沙とか霊夢とか特に)
辛うじて紅魔館の従者や白玉楼の庭師とその他諸々が払うお金でのぎりぎりの生活だったがついに限界が来た。
というか霊夢も魔理沙もわざわざ家に来てお茶を飲んだりお昼とか夕飯とか済まさないで欲しい。頼むから。
この前少し強気に文句言ったら二百由旬吹っ飛ばされた。
いや、もちろんそこまで吹っ飛ばされてないが(一由旬=約10~15km)、
近くにいた庭師もびっくりなぐらいに飛んだ。もうあんな目に遭いたくない。
と、しばし絶望に浸ってると
「りんのすけー、掃除終わったー。」
入り口からルーミアが入ってきた。いや、今は戻ってきたというのが正しいか。
わけあってルーミアは香霖堂でバイトしている、ということになっている。
どういうわけかというと以前霊夢にこっぴどくやられて人を食うなと言われたらしく、
神社付近の森で別の食料を捕っていたらしいが、ある日巷で<暴食者>と名高い、西行寺のお嬢様により森の木の実や動物達が激減。
その為食糧もほとんど無く日に日に弱りついに倒れたが、たまたまそれを自分が拾って助けた。
というわけだ。
バイトは恩返しだと言うがそのわりに三食よく食う。
「ん、ありがとう。」
そう言って頭を撫でてやるとルーミアは心底嬉しそうな顔をした。
実際の所、ルーミアはそこそこ役に立ってくれている。もともと脳の容量が多いのか
ただ単に空いてるだけかは知らないが簡単な事ならば一度教えれば
”そーなのかー”と言った後だいたい覚える。
しかも覚えることが楽しいのか掃除洗濯はては料理まで覚えた。
すごいぞルーミア!最初の殻付き黒焦げ玉子焼きが嘘のようだ!
「おなかすいた~」
……まあ燃費が悪いのが玉に傷だが。
「ん、そうかい。じゃあそろそろお昼に……」
(……っと食料もそろそろ無くなるんだった)
食料の備蓄も切れそうだったのを忘れていた。
僕の一食を1香霖とするならば108香霖程、ルーミアは一食に3香霖は食べるから
108香霖=36ルーミア……と言ったところか。合計で1香霖+1ルーミア=4香霖
108香霖÷4香霖=27……つまり27食=九日分。
おお、なんか算数みたいだ。しかも応用が利きそうな定義だし。
ルーミアだけならば何日持つかとか。十二日。はい正解。
そういえば108って煩悩の数って云うけど実際は111あるんだっけかな。
あれ、もっとあったかな?
……まあそれは置いといて。
「ルーミア」
「うん?」
「ここの家計がつらいのは知ってるかな?」
しばし黙考後……
「うん、”ひのくるま”なんだよね。熱そう。」
あえて突っ込みは控えよう。
「そうだね。まだしばらく生活できそうだけど早めに対策は取りたい。」
「そーなのかー」
「例えば……そうだな、なるべく食べる量を減らす……おかわりは1回まで。」
と、ルーミアの目の色が変わった。
そしてぶるぶると小刻みに震えてぽろぽろと涙を流し始めた。
「!! ……そう……かー」
これには霖之助も仰天した。多少ごねると思いはしたが泣くまでとは…
「うわっ!? わ、わかった! 他の方法考えよう!」
が、ルーミアはなんとなく自分が家計を圧迫している要因だと自覚しているのか
「い……いいよぉ……がまん……する。」
と涙ながらに言った。
あーあ、また厄介なことに……
しかしこれは家計を圧迫している要因の1つであり、実のところ他はもうすでにギリギリまで削っている。
どうするかと頭の中で必死に打開策を練ろうと考える。
が、思いついたのは
1、狩猟生活
2、死ぬ気でツケを取り立て
3、売り上げを伸ばす。
1は……駄目だ、店をあまり空ける訳にはいかないし
第一いまだ幽々子嬢による被害が甚大すぎて自分の分まではともかく、
ルーミアが満足する分まで捕れるか……
2はどうだ? 死ぬな。かなり高い確率で死の淵に立つ羽目になるな。
せめて僕に少しでも戦闘能力があれば……いや無理か。みんな強すぎ。
3……自信が無いなぁ。なんだろうな、商売人として向かないのかもしれない。
広告……いや、あの天狗の新聞は購読者少ないし……
うちで一番の売れ筋商品を中心に売る物をしぼるか。
さっきまで付けていた家計簿をちらっと見る。
一番の売れ筋は……酒。
しかし、酒のほとんどはツケとなっている。売れ筋というのもおかしいか。
どこぞの小鬼は珍しいのばかりセレクトして金を払う前に霧みたいになって消えてしまった。
今度会った時のため常に懐に炒った大豆をしのばせている。たまに小腹が空いた時食べている為もうあまりないが。
秘蔵の品を売ることも考えたがすでにいくつか売っており後が無い。
売っても所詮その場凌ぎか。
駄目だな……今は考えた所で名案は出そうにない。さっさとお昼にしよう。
このままルーミアを泣かせっぱなしにはいかないし、こんな時に誰か来たら……
――ガチャ
「おーい香霖、水晶球ないか? ストックが切れ……」
うわ、来たよ。しかも直感乙女の魔理沙。
頼むからせめてドア叩いてくれ――
「ま、魔理沙……悪いけど今取り込んでて――」
ベシッ!!
突如少しざらりとした、竹箒の穂特有の感触を頬で感じたのも束の間、
魔理沙の持つ箒でもっていきなり顔面をぶん殴られた。
「ぶあっ!?」
続いて一歩踏み込んでの右の拳がカウンター越しに胸へと叩き込まれ、
「ぐえっ!」
そのまま服を掴み店の出入り口へと投げる。
と、魔理沙も出入り口へとダッシュ。手にはスペルカード。
「スターダストレヴァリエッ!!!!!」
「のあああああああ!!」
いつのまにか箒へと乗っていた魔理沙が僕を巻き込みつつ店を飛び出し、
僕は吹っ飛ばされ紅い吐血を撒き散らしながら蒼い空を舞った。
どこかに眼鏡を落としたか視界が突如ぼやけた。
ぐるぐる視界が回る中、魔理沙が僕に何かを向けていた。
多分八卦炉だろう。マスタースパークならよく食らうから、たぶん大丈夫なはず……
「ファイナルウゥゥ……」
そっちか!! くそっ!空中で身動きが……
「ナイトバード!!」
スペル宣誓の声が別方向から聞こえた。この声は……
(ルーミア!!)
思いがけない助け舟!
だがもう魔理沙は発射体制に入っている。もう止めら……あれ?
あの、ルーミア? なんだか弾幕が魔理沙じゃなくて僕の方に……
ゴスゴスゴスゴス…………
「あだだだだだ!?」
「スパァァァァクッ!!!!」
僕の声と魔理沙の声が重なった。
ルーミアの放つ弾幕は続く。しかしその弾の威力は低い。
まるで体を押してるだけかのような……
(そ、そうか! ルーミアは僕を射程上から外そうと……)
迫るファイナルスパークの光。
ゴウッ!
――これがもし、マスタースパークだったなら、彼は助かっていた。
わずかに額を掠る程度でカスリ点も稼げた。
が、ファイナルマスタースパークはさらに太いレーザー。
ジュッ
「アッ」
額を掠るどころか頭部にもろに食らい、霖之助の意識は途絶えた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
気が付いた時、景色はがらっと変わっていた。陰鬱な魔法の森ではなく、どこかこざっぱりとした空気が感じられる河原だ。
ざり、と物音がしたので咄嗟に振り向いた。
「おや、新しい人?」
目の前に女性がいた。眼鏡が無いのかよく見えないが、女性にしては大柄な方のようだ。
「んー? お客さん、どっかで会わなかったかい?」
どこかもなにも、今の自分の状況さえ理解できない。
というか、自分の体がよくわからない。
なんかこう、ふわふわしてる感じだ。
幼い頃、何度か夢を夢と自覚して夢の中を自在に動けたことがある。
それとどこか似ていた。
「うーんどこだったかなぁ……」
目の前の女性は腕を組んで考え込んでいる。
「ん?」
と、彼女が何かに気が付いたように目を細めた
「なんだ、お客さん生きてるじゃんか」
何を当たり前な……ん? 待てよ…
「あー、なんかの拍子に魂だけ抜けたんだね」
……なんか今うっすらとファイナルスパークにやられたのを思い出した。
そうか、今僕は仮死状態なのか。あれを食らってまだ生きてるとは我ながら頑丈な体だ。
そうだとすればここは三途の河付近か。ふむ、そういえば見た事ある景色だ。
……なんだか魂のままここに長居してはいけない気がする。
「心配しなくてもすぐに肉体に戻れるさ。」
目の前の女性……いや、ここが三途の河付近なら彼女は―――
(小野塚……小町…だったかな?)
まだ目はぼんやりしていてはっきりと姿は見えないが、
赤い髪と肩に担いでる大きな何か――おそらく鎌だ。
あと―――まあ胸か。胸だな。それでわかる。
「あん? お客さんどこ見て…………」
ちら、と僕の目線の先、胸を見てやれやれ、という感じに溜め息をついた。
「はー、胸なんざ大きいと邪魔なだけなのにな……まあいいさ」
うわ、その発言はすごく危険だと思う。
誰にとは言わないが。
「昨日珍しくはりきっちゃってさ、今日は霊も少ないし かなり暇だったんだよ。
どうせそのうち戻るんだし雑談でもしない? ほら酒もあるし。」
服の中から酒を取り出し(なぜか胸辺りから)、自分に向けて差し出される。
…特に断る理由もなかったので飲む事にした。
数分後、
普段はそんなに飲む事も無いのに精神的に疲れていたのか、霖之助はいつもよりかなり早いペースで飲み、
小町は最初から遠慮せずガンガン飲んだ。
結果、両者ともすっかりできあがってしまった。
―どうせ店なんて僕には向いてないんだ……
でも夢だったから やめるわけにはいかないし……はぁ……
「ういー、いやー旦那も苦労してるねえ。
うちの上司なんか一にも二にも説教説教。
こないだなんか
『胸が大きいのにどこがいいんだか、邪魔だし肩凝るし。 あ、でも物入れるのに便利かあははん』
とか言ったら4/5殺しにされたしねぇ」
―4/5ってほとんど死んでるんじゃあ…… というかさっきからお酒だのおつまみだのと
全部服から出してるようだけどどうなっているんだ?
「な~にただ服の中とうちの上司の家の食料庫との距離を――おっとうっかり。」
―うわ酷いな。なんか僕の妹分を思い出すよ。
ああそうだ、いつもいつもその妹分が店の商品を勝手に持って行ってね……
まあ稀に自分の蒐集品をカタとして支払いしていくんだけど。
言いつつ酒に手を伸ばした。こんなに飲むのもずいぶんと久しぶりだな。
「カタだけ? それじゃあ儲からないねえ。」
―いやもうまったく。しかもよく食べる居候も居るし、正直もう駄目かも……
「うーんそれじゃあ困るねぇ。よし!
自殺を未然に防ぐのも死神であるあたいの仕事だし、たまには善行積んでみようか!」
―ああ、自殺するつもりはないけど助かる。お礼に今度なにか持っていくよ。
「いいのいいの、まあできたら……お酒がいいかな」
―折を見て持ってくるよ。ここにはよく来るし。
「うん、じゃあまた会った時にね。
……で、まあさっきから聞いてて状況は把握したけどさ、
あたいが思うにその店での生活は無理だと思う。」
―う、はっきり言うね。
「遠慮してちゃ始まんないさ。」
そう言うと小町はカラカラと笑った。
「うーんそうだね……いっそのこと家を人里近くに
移したらどうだい?」
―いや……いい案だとは思うけど……うちは少々変わったものが
主役でね。(普通の)人相手じゃ需要は無いといっていいかな。
それにあそこにはおじ――霧雨道具店があるしね。
「ああ、そういやそんな店があったか。じゃあ商品を変えたら?もっと妖怪よりで役に立ちそうなの」
―簡単に言うけど、そしたら流通の仕方からを変える上に
それを維持する元手が必要なんだよ。そもそもうちは固定の入荷物は少ない。
「むう……じゃあ副業でもする?」
―それしかないかな。紅魔館に行けば雑用ぐらいあるだろう……
いや、あそこは死ぬな。
「あっ!!」
小町は突然何の前触れも無く立ち上がった。そのまま胸の中をがさごそと
探ると…………
一冊の本……いや、あれは外の世界の雑誌なる物か。
その雑誌を僕に手渡した。
「ほら、外の世界の資料だよ。もしかしたら打開策があるかも。」
渡されたその雑誌をぱらぱらと捲る。
ふむ、どうやら外の仕事図鑑のようなものか。
―家に帰ってじっくり読みたいね。興味深いよ。
「そうかい? じゃ持って帰りなよ。愚痴聞いてくれたお礼だよ。
それにそろそろ時間だろうしね。…よっと」
空になった酒瓶を持ち、小町はたたらを踏みながら立ち上がった。
―ありがとう、貰ってくよ。うん、そろそろか。じゃあまた今度。
「ああ―――縁があったらまた今度――――」
少しずつ、
沈み込むように意識が薄れ始める――
何かに引っ張られるような感覚。魂が本体へと引っ張られているのだろうか。
―たまには呑まれるのも悪くないか。
そう思いつつ、じゃあ、また。と最後に挨拶を交わした
ぱち、と目が開く。真正面は空。綺麗な秋空だ。
なぜか四方は――土。
……つまり、
埋葬一歩手前だった。
次回に期待しちゃうよ?
火葬じゃなくてよかったw
続きお願いします!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!1
鳥葬だったら今頃解体されてたな、土葬でよかったね霖之助さんw
ありがとうございます(><)
次回は、香霖SSによくある
『ちょっと香霖(ry』を出して見せます!
と、どうやら1つ勘違いをしているようなので
ヒントみたいなものを。
…ジョージ・ワシントンの桜の逆の事を魔理沙はしました。
次回UPは2月9日を予定しています。では!
もしかして土葬でなく遺棄ですか?
こう、なんというか、育てたい・・・。
てか、誰も看病しなかったのかい。
ガンバ、こ~りん。
これは続きに期待せざるをない。
ぎゃああああwwwwwwテラ可愛いwwwwwwwwwwww