*この話にはオリジナルキャラが……出ていません、たぶん。
『刻符』
「おい、しっかりしろ!」
「隊長、俺はもうダメです……あとはたのみ……」
「くそっ、なんてことだ!」
我々は最強の弾幕攻撃隊。どんな妖怪ですら退けてきた精鋭だ。
あの吸血鬼やスキマ妖怪ですら、我々に傷一つつける事すら出来なかった。
「おのれ、許さんぞ人間めー!」
「待て新入り、早まるんじゃない!」
「なんだこの弾の軌道……うぼぁ!」
「し、新入りー!!」
その我々は今、史上かつてないほどの強敵と相対している。
――いや、敵は相対などしていない。我々をまるで毛玉扱いしているのだから。
敵は人間、しかもたった一人の人間だ。
我々が負けるはずなど無い。当初はそういった思い上がりが戦況を悪化させているのだと思っていた。
だが今は違う。
この人間は今まで戦ってきた相手とは桁が違うのだ。
我々が訓練で鍛え上げてきたことを全て出し尽くしているにも関わらず、あの人間は我々を毛玉の如く叩き落しているのだ。
「う、うわああああぁぁぁぁぁ!!」
「助けてくれ……ひぎぃ!」
「ちくしょう! このままじゃ全滅だ!」
分が悪い、悪すぎる。
この人間には手を出してはいけなかったのだ。
「隊長、このままでは全滅は時間の問題です。ご決断を」
「……」
迷うことなど無い。答えはとうに出ている。
我々の存在意義、それは主を守ることのみ――
「全員覚悟を決めろ、これより一斉攻撃を行う」
「了解しました」
「お前ら気合入れろ! 一気に決着をつけてやるぜ!」
「仲間のカタキ、とって見せるぞ!」
頼もしい部下たちだ。彼らが居れば負けることなどありはしない……
「行くぞ――突撃!!」
「げぇ! もう使い魔使うだけの体力残って無いよ!」
「あら、それじゃさっさとご退場願いたいものね」
「ちくしょー、この紅白強すぎる~」
「あんたが弱すぎるのよ……ってゴキブリさんだったっけ?」
「蛍!」
「さて、あのヘンテコな満月を元に戻すには如何すればいいのかしら? 紫も面倒ごとは丸投げなんだから……」
とはいいつつ顔は笑っている、まんざらでもないようだ。
霊夢は紫から貰った『迷惑料』と書かれた封筒の厚みを確認すると、ニンマリと笑いながら真犯人を探すために飛んでいった。