Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

ユア・クール

2019/09/09 09:09:28
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「あたいね、かっこよくなりたいの」

 取材協力の報酬であるペロペロキャンディを舐めながら話す、氷精のチルノさん。
 世間一般の認識である「かっこいい姿」とは真逆の仕草をしておいて、その発言をするとは何か高度な冗談なのだろうか。我が「文々。新聞」において、快く取材に協力してくれる貴重な存在でなければ、すぐにでも突っ込みたいところである。
 どう返事をすれば良いか困ったけれど、ひとまずは、いまの彼女の姿を後世に残すべく、写真を一枚撮っておくことにする。

 ぱしゃり。とな。

「ちょっとあや? 聞いてるの?」
「ああ、大丈夫です。ちゃんと聞いてますよ。チルノさん」
「なら良いけどさ……」

 若干不満そうな顔をしながら、キャンディを舐める彼女。
 一気に口の中へ頬張ったりせず、味わって食べ進める様子を見るのは、なかなかに気持ちが良い。人里で一番高いアメちゃんを買った甲斐がある、というものだ。

「それ美味しいですか?」
「うんっ! ……って、そうじゃなくて! あたいかっこよくなりたいのっ!」
「知ってます。さっき聞きました」
「聞くだけじゃダメなの! どうしたらかっこよくなるか、あやも考えてよー!」
「え~。でもねぇ~」

 かっこよくなりたいらしい彼女の姿を改めて見直す。
 まずは外見。妖精特有の不思議な羽は付いているものの、それ以外は年端も行かぬ少女と何ら変わらない。大きな瞳。柔らかく細い髪。活発的な印象を思わせる愛らしい犬歯。おまけに小さな手足ときたもんだ。
 では内面は、と聞かれると、これもまた困る。
 確かに勇ましい姿は何回か見たことがある。明らかに撃破困難な相手でも弾幕勝負を挑んだり、かの恐ろしい巫女にイタズラを敢行したり、と。それに普段から元気もあるし、他の妖精たちを率いて遊んでいる姿もよく見る。だから正直、リーダー格というか、皆から「かっこいい」と思わせる素質はあると思う。
 けれどその実、臆病で、繊細な心の持ち主であることを私は知っている。死とは程遠い種族が、自分の死について思い詰めるなんてこと、単純に元気な子であればあり得ないのだ。
 まとめると外面も内面も見た目相応の、元気でちょっと繊細な女の子、というのが総評で……うーん……

「むぅ。なにさ、じろじろあたいのこと見て」
「あ、いや……ちょっと考え事を…………」

 さっきより随分と小さくなった渦巻きアメの奥から、鋭い視線が飛んできた。
 視線の先端が丸いので、本当に鋭い視線なのかと言われると非常に怪しいが。
 まぁ、とりあえず訳を聞きますか。

「そもそも、なんでかっこよくなりたいと思ったの?」
「んっとね、かっこいい人って最強じゃない?」
「うん……うん?…………はい」
「あたいね、あたいのこと最強と思ってたわけ」
「……はい」
「でね、ためしに大ちゃんにね、あたいのことどう思ってるか聞いたの。そしたらね――


 『えっと………チルノちゃん! 今日も可愛いねっ!!』


 ――って、こんなこと言ってきたのよっ!!」
「あー……」

 なんかそのやり取りのこと詳しく知らないのに、そのときの状況がものすごく鮮明に分かるわ。
 かっこいいと言われるに違いないと胸張って聞いたものの、友人が出した答えにずんどこ怒るチルノさん。そして突然の質問に困惑しつつも正直に言ったのになぜか怒られ、さらに困惑して動揺する大妖精さん。……彼女も苦労してるなぁ……今度お菓子をおごってあげよう。

「はぁ……なるほど。で、自他ともに最強と呼ばれるため、かっこよくなりたい、と」
「そうよ! あやは話が早くて助かるわ!」
「あ、ありがとうございます」

 話の筋がなんとなく分かったような、分からなかったような。
 でも、これ以上突っ込むと宇宙よりも深い何かを見そうなので、止めておく。

「それで、あやの意見聞きたいのっ! 何かない?」
「え、あ、うーん……そ、そうですねぇ……」

 どう反応しようかと迷う。ふと彼女の頭の上を見ると、主張の激しいアホ毛がうごめいていた。なにかを察知しようといわんばかりに、それはもうピョコピョコと。もしかしなくても私の答えに期待してる感じだった。同時に、下手なことをいうと不貞腐れて、しばらく口聞いて貰えないやつだ、とも。
 いや、でも、自然とこういう仕草をやってしまう辺り、やはり「かっこいい」のは無理なのでは、と思ってしまう。むしろいまの仕草みたいな方向性で「最強」を目指した方が近道ではないかと強く思う。
 いや、いや、ダメだ。いまの彼女の禁句が分かりきっている以上そんな提案は出来ないし、受け入れてもらえそうにない。

「ねーねー、あやってばー」

 あーヤバい。めっちゃ揺さぶられてる。キャンディも食べ終わったみたいだし、彼女はそう長く待ってくれそうにない。
 早く返答を。生半可な誤魔化しではなく、少なくとも彼女を納得させられるような、なにかこう、スマートでクールでビューティフルな答えは…………ん?……クール?…………クールといえば……あー……――あ、ひらめいた。
 いや、すごく下らないけど、彼女を納得させられるような答え、見つけました。
 この状況でこれを思いつくとは私もなかなか天才ではなかろうか……なんて冗談は置いといて、実際に上手くいくかどうかだけど……ええい、ままよ!

「えー、こほん。チルノさんは『クール』という言葉知ってますか?」
「ぬっ…………ふふん、それくらい知ってるよ。冷たい、って意味でしょ?」
「そのとおり。でもそれ以外に、かっこいい、という意味もあるんですっ」
「むむっ!」

 おっ。いい反応。これはいける!

「つまりですね、チルノさんは氷の妖精で、冷気を帯びて常にクール……それはすなわち! もうすでにっ! チルノさんはかっこいい妖精だったということなのですっ!!」
「おおっ……!!」

 いま明かされる衝撃の事実! みたいな感じで話したけど、さてどうだ?
 あと一押し、かな?

「あたいって、かっこいいの?」
「はい。かっこいいですよー。それはもう幻想郷で一番なくらいに」
「あたい最強なの?」
「もちろん、さいきょーですよ」
「ほんとに、ほんと?」
「ほんとに、ほんとですっ」
「でも大ちゃんに、かっこいいって言われなかったよ?」
「うっ……それは…ですね、えー……たぶんかっこよく感じているのを前提で、さらにチルノさんのことを可愛いと誉めたのでしょう。なんたって、チルノさんはさいきょーにクールな妖精ですからねっ。大妖精さんもその事実を知っているはずです。ええ」
「おおーっ!!」

 うん、めっちゃ適当言った。後で大妖精さんと口裏を合わせておかないと……
 その一方で、うんうんと頭を揺らして考え込む彼女。きっと、いまの私の話を処理しているのだろう。
 そして、長そうで、そう長くない時を経て、彼女が出した答えといえば――

「あたい! かっこいい!!」

 花丸の答えでした。
 うん、ちょろいわね。でもそこが素敵よマイフェイバリットフェアリー。

「あや! あやっ!! あたい、かっこいい!?」
「ええ、ええ、もちろんですとも」
「あやっ!! ありがとうっ!!」
「いえいえ、どういたしまして。チルノさんの力になれて、私も嬉しいです」

 私にぎゅっと抱きついてきた彼女。その頭を撫でてあげると、この世で最強の笑顔が見えた。
 ああ、そうです。この笑顔が見たかった。


 やっぱりチルノさんは可愛いね!









 ―了―
 
文「ということで、今後チルノさんに対しては、かっこかわいい妖精として認識をお願いします!」
大「がってん!」
チ「あやと大ちゃん、なに話してるの?」

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最後までお読みくださり、誠にありがとうございます。

六作目です。
チルノの可愛い魅力を出そうと頑張りました。
少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。

以上です。
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19/09/13 1箇所の誤字を修正しました。

https://twitter.com/hatsuca79
はつかねずみ
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
良かったです
2.名前が無い程度の能力削除
大ちゃんと打ち合わせをする天狗…
やはりロリコンスケベ天狗…