Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

うらみっこなし

2018/04/28 14:43:13
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紅魔館。

どっか。


「はーい! どうもお茶の間でテレビをご覧の皆様PCの前でぼさぼさの散髪で汚いナリをして見ている皆様! どうも私幻想郷一の暇人、リリカルシスター☆ドッキング・チェンジせん滅型対城魔法少女にして殺りくを呼ぶ純白の虹色の翼もつ死の乙女*ヴァルキュリア*の異名をもつ宇宙系ドッキリ☆美少女フランドール・スカーレット改エクステンドリリィオルタナティブ・フラッシュモニュメントクロニクルサバイヴです! 全国一万人のあの世にいったファンのみんなー元気ー!!」

フランドールは言った。ぱたぱた、と振っていた手を下ろす。

「はい! 恒例の挨拶が済んだところで、今日のドッキリ幻想郷私的勝手に生タイムは大声出してもバレないよう咲夜の監視の目をかいくぐって屋敷の外の庭のはしっこから隠れながらお送りしております、咲夜の監視はほんと抜け目無くて困ります、抜け出すなっつってんのに抜け出すのも一苦労ですねー。はい、では前置きはこの辺にしていってみましょうイーッツ☆お前はここでルナティックターイム!!」



しばし、館内。

フランドールはフンフンと生番組用のOPテーマを歌いながら、部屋の前に立った。

「はい! ではさっそくお送りして参りましょう、今日はまずこのコーナーから! ででーん! 紅魔館ドッキリバックンバックン訪問お部屋編! というわけでウチとこのお姉さま、レミリア・スカーレットさんの自室の前です。と言ってもお姉さまはとっても高貴な血筋を自称するだけあって昼間は大体ちゃんと寝ています。私? 魔法は不可能を可能にするから魔法なんだよ! ていうのはウソで吸血鬼も昼起きる気になれば起きれます。もー、ウチのお姉さまったらダメ人外! あ。しぃー! 騒がしくするとパチュリーとか咲夜に見つかってしまいます。あいつらったらこんなプリティーィィィな私を危険物扱いするからおこですよねー。それではさっそく突撃訪問一発目いってみまーす。はーい、みーんな一緒に、禁忌「レーヴァテイーン」!!」

「失礼しまーす」と言い、フランドールはスペカ名を叫びつつただの剣をふり回した。

「このアホ娘がァァァァ!!」
「アハハハハハハハハ!!!」



しばし。館の外。


「どうでしたかー? アレがウチのお姉さまです。さて、次は館の外にやってきまーしーたー。私がブッ壊した部屋の片づけやなんやで館内は大わらわで人がゴミのようなので、というかこの館人間咲夜くらいしかいねー。たぶんね! まあちょっとその間に、ほら、ほら、ほーらぁ、ほーら、見えてきましたぁー。この紅魔館が誇る、誇ってないですけどねー。まぁ夜の境内ほどではありませんがなかなかロマンティックかつエレガントな、お花の庭園です。でもさーここだけの話ちょっとナゾですよねー、ねー、設、おっと、こちらの紅魔館は常日頃お姉さまに包まれています。というか血なまぐさいらしい紅い霧ですねー。おかげで日の光も通さず真夏の紫外線も怖くありませんがこんな中で咲いてる植物や花ってなにでできてるのかなー。あっご紹介が遅れました。こちら門番を放棄しているアホ庭師にして中国拳法の達人ブルース紅・美リー鈴さんです。ブルース紅さんどうもー」
「いえ、紅美鈴ですから」

美鈴は言ったがフランドールはにこにこと笑顔で銀のスプーン(マイク? のつもりだ)を向けた。

「くれないみれいさん。どうもー」
「もういいです。しかしお嬢様、こんな所で何を。というか館の方がなにか騒がしいから門に戻ろうとしてたんですがお嬢様ですか?」
「くれないさん、もとい紅さんはうちの庭の手入れをしているんですよー。花壇が主らしいですけどねー。どうですかお仕事大変ですか?」
「いいえ、好きでやっていますので。私もともと弾幕は不得意なので庭の相手をしていた方が気が楽ですね」
「でも格闘ルールの方では結構ドヤ顔していたそうじゃないの。やらしいでしてー」
「そりゃあ積年の借りを……ウゥン! 話をそらしても」

ん? と美鈴が館の方を見やる。その時轟音が大地を揺すぶった。美鈴の立っていた辺りはえぐれて地面の土が吹っ飛び木も何本か枝を折った。破壊されたあとにひゅん、と滑り込むようにレミリアが降り立つ。

「ちっ逃げたか。美鈴! 後始末は任せたわよ!」

レミリアが言ってまたぶわっと空に舞い上がり、猛烈な速さで屋敷のほうへ消える。とりあえず(木々をかばってはいたが、無傷だった)美鈴はやれやれとほこりを払い、「あーもうメチャクチャだよ」と、周囲を見て言った。レミリアが外したのか花壇は花が多少散ったくらいで無傷だった。


次。


(はい! というわけで! 魔法少女であるフランちゃんは魔法少女と言えば正義側であって云々、あれくらいでは落ちないのでした。とはいえ危なかった。フォーオブアカインドのうち3人が犠牲になった。はいというわけで次は大図書館内にやって参りました。で、なんでさっきから声をひそめているかというと見つからないように隠れて向こうで本読んでるパチュリーを今後方から見守っている真っ最中です……! 割と離れてますけどねー、あれです知ってますかー? 魔法使いってやつは生まれつき耳が良いものらしくてぜん息で息切れて唱えられないとか虚弱ぶってますがスキがないです。ほこりが舞うとかいう理由で異変の犯人殴り倒しに行って帰ってきたりもするガチ勢です。よって)
「あら? お」
「CQC!!」

と言い、フランドールは近くにいた小悪魔の口を後ろからふさいだ。「むぐ」と小悪魔は口をつぐんだ。

(ふーあぶない。このフランドールにスキあらばいつでもこの首かき切って良いのだぞと言いつつ百人から先は覚えていないほど殴ってきた私の背後をとるとはなかなかやります、この使い魔。え? 使い魔じゃない? でもみんなそう思ってるしいいじゃないの。私ももあ出番! っていつ言ったのかも覚えてないような、いるような、どこかなつかしい……それでいてイラッ☆とするこの感じ。でも出番的にはかろうじて私が勝っているんですけどね。はい、今でもEXボスですよね、て言ったり思ったり笑ったりした人、ドカーン。この話はやめて、そっとのぞくと、どうやらパチュリーは今ので気づいてしまったらしく、すでにすぐそこに立っています)
「フランドール様。何しているんですか」

パチュリーが言った。フランドールは小悪魔を放してスカートを叩いた。そして銀のスプーンを取り出す。

「お早うございまーす。今日は何をしていらしたんですか?」
「とくに何もしていないですけど」
「薄い本は描けましたか?」
「うすい本? 絵本か何か?」
「絵本と言えば絵本ですね。いやくわしく知らないけれど、言い伝えによればよく私たちの非業な運命が書き記されていて、いっぱいあるとか何とか」

パチュリーは頬をかいた。言う。

「それは見てみたいものね。ところで早いとこ部屋に戻らないとまたレミィがうるさいわよ?」
「もう怒らせてきたから大丈夫。そろそろこの部屋にも」
「フランドォォォーーーールゥゥ!!!」

うひょうっと軽い調子で全速力でフランドールは逃げ出した。ズズン!! ズズズズズズン!!!


廊下。


「いやー恐ろしい剣幕でしたね。でもしばらくは図書館を荒らされたパチュリーと口喧嘩になっているから大丈夫です。この間に今度はメイド長の十六夜咲夜さんのパンツを拝みがてらインタビューしてみようと思います。え? だってメイドのパンチラ芸は義務です、市民」
「フランドール様」
「おっと咲夜さんです。今日の下着の色は?」
「そのようなことは口に出しませんが、派手なものではありませんよ」

咲夜は言った。頬に手を当てる。

「早く部屋にお戻りくださいな。お嬢様が暴れてそれはもう屋敷が大変ですから」
「まだ放送中だし」
「放送中でも何でもいいですから、とにかくこっちへ」
「まぁまぁ、待ちなさい。ほら今から咲夜の部屋をレポートするから。お邪魔しま~す」
「まったくもう。では紅茶を淹れてまいりますからお待ち下さい」
「いいの? お姉さまに部屋潰されちゃうよ」
「お嬢様は今パチュリー様とお話し中です」

咲夜がスッと消える。

「さて、こちらが当館の名物メイド長咲夜さんの部屋です~。メイドなので当然部屋もメイドですね~。うーんメイド臭。くんかくんか。皆さんにお伝えできないのが残念です。ちなみに無給ですので余所行きの服とかはありません。そういうのは当主のお姉さまにお願いして必要なものを用意してもらいます。メイド長ですからそれくらいはやってもらえるんですね~。さてこちらの渋味がかったいかにも年代物のクロゼットを開けてみましょう。え? ベッドにダイブしてああああ咲夜ああ咲夜咲夜くんかくんかかわいいよおおとかやらないのかって? やりません。レポーターですから」
「フランドール様。そこは私用の下着を入れてあります。開いても面白みはありませんわ」
「おっと。咲夜が戻ってきたのでここまでです~。どうですか皆さん、お楽しみいただけましたでしょうか。うん、「また」なんだ。すまない。仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。じゃあ、注文を……」

ZGRAAAAK!!! その時部屋の天井が抜ける轟音とともに降ってきた何かが、なにか、何もかも破壊した。

「親方! 空からお姉さまが!!」
「フランドォォォォル!!! お前ここから生きて出られると思うなよォォォ!!!」
「こんな恐ろしいお姉さまに槍を突きつけられては話も出来んな!! おっとどこを狙っている、そっちは本体だ! 嘘だ!」

ビュンビュンと飛ばされる槍(のようなもの)をいなしつつ、フランドールはズバァン!! と勢いをつけて空に飛び上がった。

「屋上へ行こうぜ! 久しぶりにお姉さまがキレちまったよ!」
「待てぇぇぇぇ……!!!」


フランドールが去った後、当然咲夜の部屋とベッドと下着を入れていた面白みのない棚も全吹っ飛んでおり、後日、レミリアとフランドールが咲夜に五体投地して許してもらった。


(終)
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