Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

バレンタインデー 咲マリの場合

2018/02/14 23:11:18
最終更新
サイズ
2.21KB
ページ数
1

分類タグ

「今日はバレンタイン・デーね」

ベッドに腰掛けた咲夜が唐突に口を開いた。同じベッドに寝転がって顔を伏せていた私は顔を上げて、訊ねる。

「どうした?チョコレートでもくれるのか?」
「お嬢様にガトーショコラを作ったあまりがあるのだけど、」
「いただくぜ」

咲夜の言葉を遮って言った。と同時に腹ばいに移動してベッドのふち、咲夜の隣に腰かけ直す。 

「すぐに用意するわ」

と、一言かけると部屋から消えた。誰の気配もないことを確認してから、ごそごそと懐から黄色いラッピングの箱を取り出す。じっと見つめ、 

「いつ渡そう」

ぽつりとつぶやいて見ても答えるものはない。いてはこまる。
はぁ、とため息をついて、箱を懐へとしまった。
と、間をおかずにカチャリとドアが開く。

「お待たせしました。ガトーショコラですわ」

瞬く間もなくテーブルにティーセットと綺麗に飾られたガトーショコラが並ぶ。

「おー。流石咲夜。うまそうだな」

ベッドから立ち上がり、椅子へと腰掛ける。小さくいただきます。と言って、フォークを持つと、満面の笑みの咲夜が「魔理沙」と声をかけた。

「なんだ?私はこんなにおいしそうなデザートの前でまてができるほどお利口じゃないぜ」
「そんなこと、知ってるわ」
「しっけいな」
「自分で言ったんじゃない。……渡すものは?」
「何の話だ?」
「私に、渡す物があるんじゃないの?」
「見てたのか」

きまりが悪いな、と思いながら、黄色い箱を取り出した。

「バレンタインだ」

差し出した小さな箱を、両手で受け取った咲夜はあふれんばかりの笑みで言う。

「ありがとう。うれしいわ」

そこまで喜ばれると思っていなかったので、満面の笑みにたじろぐ。

「あれ、あれだからな!義理だからな」
「そう」

あけていい?と聞かれて、とっさに、帰ってから!と答えた。
まあ食べて、と促されてガトーショコラにフォークを立てた。一口。甘さとジャムの酸味、ビターチョコレートの苦み、それらが協調しあって、……端的に言うとおいしかった。どう?とうれしそうにきく咲夜に素直においしいと伝えた。
ケーキを食べ終えて、紅茶もからになった。
お土産にと、ケーキを1切れと、チョコチップクッキーを持たされて、見送られた。
屋敷を出て少し飛んで空で一時停止する。

「あんなに喜ぶなんて」

もしかしたら同じ思いなのかな、と浮かれてみたり。
でも、とっさに義理だと言ってしまったなと、後悔する。本当は本命なのに。
せっかく咲夜が作ったケーキの味も、上の空で食べてしまってもったいなかった。お土産は少しづつ味わって食べよう。なんて決めて、咲夜の真意を考えながら空を帰って行った。

黄色い箱を手の中で遊びながら、考える。見てたのではなく、勘よ。鋭い方ではない、どちらか言うなら鈍い私でも気付いてしまったくらい今日の魔理沙は挙動不審だった。
義理だからな!と力強く言っても、あの赤い顔をみたら本命に違いないと浮かれてしまう。
さぁ、お土産の中に入れたカードにはいつ気付くかしら。
使っていた食器を洗いながら外を見た。
暗い空には星が瞬いていた。

覚えている人がいるかわかりませんが、小波と申します。お久しぶりです。バレンタインネタを書きたくなって書いてみました。しばらくssを書いていなかったのでリハビリがてら短編を書いていきたいなと思っています。お付き合いいただければ幸いです。
おそらく遅刻になりますがもう一つバレンタインネタ書けたらいいなとか思ってたりします。
それでは最後まで読んでいただきありがとうございました。
小波
コメント



0. コメントなし