「今日はバレンタイン・デーね」
ベッドに腰掛けた咲夜が唐突に口を開いた。同じベッドに寝転がって顔を伏せていた私は顔を上げて、訊ねる。
「どうした?チョコレートでもくれるのか?」
「お嬢様にガトーショコラを作ったあまりがあるのだけど、」
「いただくぜ」
咲夜の言葉を遮って言った。と同時に腹ばいに移動してベッドのふち、咲夜の隣に腰かけ直す。
「すぐに用意するわ」
と、一言かけると部屋から消えた。誰の気配もないことを確認してから、ごそごそと懐から黄色いラッピングの箱を取り出す。じっと見つめ、
「いつ渡そう」
ぽつりとつぶやいて見ても答えるものはない。いてはこまる。
はぁ、とため息をついて、箱を懐へとしまった。
と、間をおかずにカチャリとドアが開く。
「お待たせしました。ガトーショコラですわ」
瞬く間もなくテーブルにティーセットと綺麗に飾られたガトーショコラが並ぶ。
「おー。流石咲夜。うまそうだな」
ベッドから立ち上がり、椅子へと腰掛ける。小さくいただきます。と言って、フォークを持つと、満面の笑みの咲夜が「魔理沙」と声をかけた。
「なんだ?私はこんなにおいしそうなデザートの前でまてができるほどお利口じゃないぜ」
「そんなこと、知ってるわ」
「しっけいな」
「自分で言ったんじゃない。……渡すものは?」
「何の話だ?」
「私に、渡す物があるんじゃないの?」
「見てたのか」
きまりが悪いな、と思いながら、黄色い箱を取り出した。
「バレンタインだ」
差し出した小さな箱を、両手で受け取った咲夜はあふれんばかりの笑みで言う。
「ありがとう。うれしいわ」
そこまで喜ばれると思っていなかったので、満面の笑みにたじろぐ。
「あれ、あれだからな!義理だからな」
「そう」
あけていい?と聞かれて、とっさに、帰ってから!と答えた。
まあ食べて、と促されてガトーショコラにフォークを立てた。一口。甘さとジャムの酸味、ビターチョコレートの苦み、それらが協調しあって、……端的に言うとおいしかった。どう?とうれしそうにきく咲夜に素直においしいと伝えた。
ケーキを食べ終えて、紅茶もからになった。
お土産にと、ケーキを1切れと、チョコチップクッキーを持たされて、見送られた。
屋敷を出て少し飛んで空で一時停止する。
「あんなに喜ぶなんて」
もしかしたら同じ思いなのかな、と浮かれてみたり。
でも、とっさに義理だと言ってしまったなと、後悔する。本当は本命なのに。
せっかく咲夜が作ったケーキの味も、上の空で食べてしまってもったいなかった。お土産は少しづつ味わって食べよう。なんて決めて、咲夜の真意を考えながら空を帰って行った。
ベッドに腰掛けた咲夜が唐突に口を開いた。同じベッドに寝転がって顔を伏せていた私は顔を上げて、訊ねる。
「どうした?チョコレートでもくれるのか?」
「お嬢様にガトーショコラを作ったあまりがあるのだけど、」
「いただくぜ」
咲夜の言葉を遮って言った。と同時に腹ばいに移動してベッドのふち、咲夜の隣に腰かけ直す。
「すぐに用意するわ」
と、一言かけると部屋から消えた。誰の気配もないことを確認してから、ごそごそと懐から黄色いラッピングの箱を取り出す。じっと見つめ、
「いつ渡そう」
ぽつりとつぶやいて見ても答えるものはない。いてはこまる。
はぁ、とため息をついて、箱を懐へとしまった。
と、間をおかずにカチャリとドアが開く。
「お待たせしました。ガトーショコラですわ」
瞬く間もなくテーブルにティーセットと綺麗に飾られたガトーショコラが並ぶ。
「おー。流石咲夜。うまそうだな」
ベッドから立ち上がり、椅子へと腰掛ける。小さくいただきます。と言って、フォークを持つと、満面の笑みの咲夜が「魔理沙」と声をかけた。
「なんだ?私はこんなにおいしそうなデザートの前でまてができるほどお利口じゃないぜ」
「そんなこと、知ってるわ」
「しっけいな」
「自分で言ったんじゃない。……渡すものは?」
「何の話だ?」
「私に、渡す物があるんじゃないの?」
「見てたのか」
きまりが悪いな、と思いながら、黄色い箱を取り出した。
「バレンタインだ」
差し出した小さな箱を、両手で受け取った咲夜はあふれんばかりの笑みで言う。
「ありがとう。うれしいわ」
そこまで喜ばれると思っていなかったので、満面の笑みにたじろぐ。
「あれ、あれだからな!義理だからな」
「そう」
あけていい?と聞かれて、とっさに、帰ってから!と答えた。
まあ食べて、と促されてガトーショコラにフォークを立てた。一口。甘さとジャムの酸味、ビターチョコレートの苦み、それらが協調しあって、……端的に言うとおいしかった。どう?とうれしそうにきく咲夜に素直においしいと伝えた。
ケーキを食べ終えて、紅茶もからになった。
お土産にと、ケーキを1切れと、チョコチップクッキーを持たされて、見送られた。
屋敷を出て少し飛んで空で一時停止する。
「あんなに喜ぶなんて」
もしかしたら同じ思いなのかな、と浮かれてみたり。
でも、とっさに義理だと言ってしまったなと、後悔する。本当は本命なのに。
せっかく咲夜が作ったケーキの味も、上の空で食べてしまってもったいなかった。お土産は少しづつ味わって食べよう。なんて決めて、咲夜の真意を考えながら空を帰って行った。