Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

仙人、幻想郷の危機を察する

2016/08/17 20:44:30
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「あら、茨華仙さま。
 ごきげんよう」
「今日は雨ですね、霍青娥。
 ごきげんよう」
「ええ、全く。
 雨が続くと洗濯物が乾かなくて困りますね」
 人里の大通り。
 しとしとと降る雨の中、傘を片手に顔を合わせるのは茨華仙こと茨木華扇こと華扇ちゃん。そして、青の邪仙こと霍青娥。
「ただ、雨が降らないと。
 里の土も乾いてしまいます」
「美味しいお野菜が採れなくなってしまいますね」
「そういうことです。
 ついでに言うと、渇水などの状態にもなってしまう。
 水不足は恐ろしいものですよ」
「ええ、存じております。
 海を渡った隣の大国、果てはその向こうの国々も、水不足には悩まされていましたから」
 二人、肩を並べて歩いて行く。
 通りには、天気のためか、人通りは少なめだ。
 そんな中でも建ち並ぶ店は暖簾を掲げ、今日も精一杯、人を呼び込もうと努力している。
「華扇さま、その傘は――」
「最近、新しく手に入れたんです。
 和傘は風情があっていい」
「ええ、全く」
「ただ最近は、紅魔館を始めとしたところから流れてくる『洋傘』も流行りつつあるとか」
 青蛾の持っている傘が、まさにその洋傘である。
 華扇の持っている和傘とは雰囲気の違うそれは、ここ、幻想郷の人々の目を引き付ける。
 ただし、生産量が少ないのと、それに伴う流通の少なさから、少しお値段はお高めだ。持っているのは、里のお金持ち程度のものである。
「こう、何というのでしょう。
 スマートな感じが気に入っております」
「なるほど」
「かっぱや長靴などといった道具も、最近では流行ってきているらしいですね」
「それも紅魔館から?」
「いいえ、山の上の神社と聞いております」
「はあ」
「長靴は……そうですね、確かに。かっぱはどうなのでしょう。
 何でも山の上の巫女が『河童に冗談で話しを持って行ったら「あたし達の名前が使われてる道具だって? それならあたしらが作らないと」という感じで製造が始まったと聞きますよ」
 そんな話をしている二人の横を、その『かっぱ』を着た子どもたちが駆け抜けていく。足元には長靴。
 この雨の中、傘などという煩わしい物を持つ必要がなく、雨を凌ぐことのできる道具として、この二つも最近の幻想郷では流行しているらしい。こちらのお値段に関しては、河童――妖怪の山というところに住まう、自称幻想郷の技術者集団という名前の『迷惑発生装置軍団』――が大量生産を手がけているということで、庶民にも手の届く、こなれた値段となってきているそうな。
「かわいらしいですね。
 子供のやんちゃさが強調される感じがして」
「まぁ、それについては何も言わないことにします」
 雨の中、大喜びであちこち走り回り、長靴で水たまりを踏んで歩く子どもたち。
 確かにやんちゃでかわいらしいのだが、青蛾の言う『子供のかわいらしさ』っつーものは、華扇が感じているそれとは、きっと何か多分違うものなのだろう。
「あ、失礼」
 青蛾が足を止め、店へと歩いて行く。
 向かう先は八百屋である。
 そこの店主と会話をしながら野菜を購入する彼女。
「最近は、少し雨が多いせいもあって、客足が鈍っているそうです。
 ただ、雨が多いおかげで、土は湿って、野菜の収穫にも事欠かないとか」
「物事は功罪併せ持つものですから」
「全くその通りです。
 さすがは華扇さま。含蓄深いお言葉です」
「……そうかな」
 当たり前のことを当たり前に言っているだけだと思うのだが、青蛾の華扇に対する信仰は本物であり、華扇の行うあらゆることに一枚二枚フィルターをかけてくるのである。
 尊敬し、信仰してくれるのはありがたいのだが、青蛾の普段の態度やら性格やらあとなんか色んな物見てると、『こいつ私の事馬鹿にしてんじゃないのか』と思うことも一度や二度ではないのが、また因果なものである。
「華扇さまは、本日はどのようなご用件で?」
「買い物です。
 最近、雨が多いでしょう。ちょっとなまものが傷んでしまっていて」
「あらあら、大変」
 そんな世間話をしつつ歩いて行くと、前方に、見慣れた後ろ姿が二つ。
 緑の長い髪を揺らす少女と、その隣を、彼女の手を握って嬉しそうに歩いて行く小柄な水色の髪の女の子だ。
「――そう言えば」
 つと、青蛾が口を開いた。
「華扇さま。付喪神、というのはご存知ですか?」
「ええ、まあ。
 九十九の歳月を遂げた器物に魂が宿り、妖怪と化した『化物』の総称ですね」
「主に『変化』というものは生前の――すなわち、『変わる前』の姿に引っ張られるものと聞きます」
 獣の変化であれば、その体のどこかに『元の姿』を想起させるものが付随し、器物の化生であれば身に着けているものやその姿などから、『昔』はどのような姿をしていたかわかると言われる。
 華扇の言葉に、「さすがは華扇さま。博識でございます」と青蛾は頷くと、
「例えばあの少女の場合」
 示すのは、前方の水色の髪の女の子。
 彼女は手に、大きな化け傘を持っている。
 古風な和傘。開いた表には大きな目玉と舌のついた『化物』。それを見るに、彼女は『傘の妖』であることがわかる。
 ちなみに、その異様な見た目にも拘わらず、小さな子供たちからは『その傘かっこいい!』と大人気だったりするのだが、それはさておき。
「彼女は傘の妖怪。そうであるからして、あのような見た目をしています」
「ええ」
「先日、山の上の巫女から伺ったのですが、今、外の世界では『ビニール傘』というものが多く流通していると聞きます」
「それは何でしょう?」
「簡単に言うと、特殊な……幻想郷には流通していない素材で作られている傘です。
『ビニール』という化学的な素材から作られたものであり、軽く、安く、便利であることから、多くの人が利用しているとか」
「ふむ。なるほど」
「洋傘の類でもあります」
 視線を、華扇は青蛾の持つ傘へと向ける。
 恐らく、その傘の骨と骨の間に張っている『傘』の部分が『びにぃる』なる素材で作られているのだろうと察する。
「……そして、華扇さま。
 わたくしは、今、恐ろしいことを想像してしまいました」
「はあ」
「このビニール傘というもの、半透明であるらしいのです」
「何が?」
「この部分」
 傘の一番重要な、『雨を弾く』部分をつんつんとつついて、青蛾。
「半透明であることで、前が見やすくなっていて、とても便利だそうです」
「なるほど。それは便利そうですね」
 自分の持つ和傘であれば、たとえば傘を斜めに顔の前にかざしてしまうと足下しか見えなくなってしまう。
 前から人が歩いてきているのに気づくのが遅れ、ぶつかってしまうこともあるだろう。そう考えると、その半透明の傘というのは結構魅力的に思えてくる。
「……つまり」
「はい?」
「今後、幻想郷に、その『ビニール傘』の妖怪が入ってくるとします」
「まあ、ありえないことではないでしょうね」
「変化の妖は生前の姿に引っ張られます」
「ええ、そうですね」
「と、いうことはっ!」
 青蛾が大きな声を上げて、華扇を振り返る。
「それはすなわち、お洋服が『半透明』ということになってしまうのではないでしょうか!?」
 ……………………………………………………………………。
 華扇ちゃん、沈黙。
「なんと……なんというけしからんことに!?
 そんな、年端もいかない少女がスケスケのお洋服を着て!? お持ち帰りされてしまいます!」
「…………………………」

「……おい、聞いたか」
「これは……まずいな……」
「幻想郷には紳士でも淑女でもない下郎が多い……」
「そんな輩の目に、スケスケの少女がさらされてしまったとしたら……!」
「……幻想郷の終わりだ」

 ――などという声も聞こえてきたりする。
 まぁ、確かに、青蛾の危惧するところはわかる。痛いほどにわかりすぎる。
 というか実際にそんな妖怪が出てきてしまったら、もう色々やばい。博麗の巫女っていうかあの隙間妖怪が大慌てで出てきて『女の子としての羞恥心』を教えるところから始まってしまうだろう。
「どう思われますか!?」
「……いやどう思われますかって言われてもさぁ」
「……これは由々しき事態です。
 やはり、便利さの裏には必ず影となる部分があった! そういうことです!」
「それ間違ってないけど違うから」
「そもそも、そんなお下品は許されません!
 世の中、『濡れ透け少女』というジャンルがあることは山の上の巫女から伺っていますが、『スケスケ』では風情もへったくれもありませんわ!」

「全くだな!」
「それではただの痴女だ!」
「恥じらいと慎みを失った少女……なんと憐れな……」

「こうしてはいられません!
 わたくし、そのような幻想郷の危機を避けるために活動を開始します!
 華扇さま、それでは!」
 なんか一方的にまくし立てて、青蛾はどこぞへと飛んでいった。
 飛んで行く彼女を見ながら、『んじゃ、あんたも下着くらいつけろ』と華扇は思ったとか思わなかったとか。




 ――だが、この時は誰も気づいていなかった。
 これが後日発生する、幻想郷に入ってきた、ビニ傘少女の起こす『濡れ透け異変』の前兆であったということに。
ビニ傘スケスケ小傘ちゃんとな!?( ゚д゚ )
haruka
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
カラービニール傘とか来たらよりやばいよね
2.名前が無い程度の能力削除
まさかの穿いてない・・・・・・だと!?
3.奇声を発する程度の能力削除
良かったです
4.ペンギン削除
ビニ透けだと…!?
ふむ。続けて、どうぞ