Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

東方Project VS 仮面ライダー龍騎:EPILOGUE 夢よ、踊れ

2016/06/07 08:15:25
最終更新
サイズ
8.83KB
ページ数
1

分類タグ

──博麗神社


博麗神社の巫女、博麗霊夢は縁側で出がらしのお茶を飲んでいた。
それほど広くない境内の掃除はさっき済ませてしまったし、今日は里に行く用事もない。彼女は暇を持て余していた。

「暇ねぇ……」

だが、なんだろう。今日はずっと心に言いようのない違和感がくすぶっている。
その時、庭の空間が裂け、スキマからドレスを着た女性が現れた。そんな超常現象にも気を留める事なく、茶をすする霊夢。

「何しに来たの、紫。出がらしの出がらしでいいならお茶、飲む?」
「遠慮しておくわ。ちょっとあなたををからかいに来ただ~け」

紫は霊夢の隣に腰掛けた。

「あんたも暇よね……そうだ。ねぇ、紫」
「なぁに?」
「最近なんか異変、あった?」
「異変?そうねぇ……一番最近だと守矢神社が引っ越してきたことだけど、もう結構前のことよ。どうして?」
「いや、なんかもっと最近、でっかい異変があったような気がしたから聞いてみただけ」
「変な霊夢。真っ先に異変の当事者になるあなたが知らないのに、私が知るわけないじゃない」
「そう、よね……」

自分でも何を言ってるんだろう、と思いつつ、霊夢は空を見上げる。雲一つない快晴、野鳥の声が聞こえるだけで、のんびりした時間が過ぎていく。

「暇ねぇ……」

つぶやいてからまた一口、お茶をすすった。


──永遠亭


「「「いただきます!」」」

朝餉の準備を終え、全員が席に着いたところで朝食を食べ始める。だが、皆一様に首を傾げた。

「ど、どうしたんですか皆さん……?お口に合いませんでした?」

自分が作った朝食が皆のひんしゅくを買ったのかと不安になる鈴仙。

「いえ、なんでもないのよ、ウドンゲ」
「でもな~んか妙っていうか……」

決して鈴仙が作った朝食がまずいわけではない。ただ、なにか違うのだ。
いつもと同じものを食べてるはずなのに、違うものを食べているような、矛盾した感覚がどうしても拭えない。そして何より──

「ねえ、ウドンゲ。確かに全員集まってるわよね?」
「はい。因幡もみんな来てますし……あれ?」

全員揃っているはずなのに、なぜか、がらんとしているような気がする。まだ誰か来るはず、そんな気がするのだ。
でも、そんなことあるはずない。みんな集まってるんだから。いつまでも箸を止めていても仕方がないので、皆食事を再開する。

「ごめんなさいね。さぁ食べましょう」


──紅魔館

「みなさん。紅茶をお持ちしましたわ」

咲夜が銀のトレーに、紅茶が入ったポットとティーカップを乗せて図書館の扉を開けた。
無駄のない動きで黒檀のテーブルにティーカップを並べ、紅茶を注いだ。

「お待ちどうさまです!今日はドーナツ焼いてみたんです。たくさん焼いたんでいっぱい食べてくださいね!」

咲夜に続いて小悪魔が、手製のドーナツが山盛りになったかごを持ってやってきた。

「……そこ、置いといて」

パチュリーは読みかけの本を手放そうとしない。

「お、今日はツイてるぜ!ドーナツ食べ放題だ」

両手に持ったドーナツを頬張る魔理沙。

「もう、パチュリーったらお茶の時間くらい本置いたら?それに魔理沙も意地汚いわよ」

アリスが2人をたしなめる。そんな3人を微笑みながら見つめる咲夜。そして、トレーを持って下がろうとした時、ふと壁のステンドグラスが目に入った。
なにかしら、この感覚。何か大事なものを置き忘れたような気がしてならないのだ。あんな何もないところに。

「変ね、私ったら」

メイドの仕事は忙しい。いつまでも手を止めてはいられない。咲夜はいつもの仕事に戻っていった。


──寺子屋


「先生さよなら!」
「さようならー」
「さようなら。気をつけて帰るんだぞー」

今日の授業を終え、帰路につく生徒達を見送る慧音。最後の一人が見えなくなり、事務処理に取り掛かろうと校舎に戻ろうとしたとき、
ふと隣の空き家が視界に入り、奇妙な違和感を覚えた。確かにあそこは長い間空き家だったのに、最近まで誰か住んでいたような。
わずかに混乱する慧音。いつも明るいお調子者の青年、無口な友達がいて、知り合いがとんでもない暴れん坊で。
……そんなやつが住んでたら面白かったろうな。あそこは来月取り壊し予定だ。さぁ、余計なことを考えてる時間はない。
戻ったら試験の採点に書類の束が待っている。慧音は肩を回すと校舎に戻っていった。


──守谷神社


「さぁ、今日は神奈子様の大好きな水炊きですよ!」
「お、いいねぇ」
「たまにはすき焼きが食べたいなー」
「無茶言わないでください、諏訪子様。今の台所事情じゃ牛肉なんて高嶺の花です」

早苗が鍋の蓋をとると、ぼわっと湯気が立ち上り、煮え立った中身が姿を表す。

「相変わらずの緑だねー……」
「お二人共、鶏は一人2粒ですからね。いつもそれでケンカになるんですから」
「う~ん……足りない」

神奈子が腑に落ちない様子で言う。

「神奈子様までわがまま仰らないでください……」
「いや、そうじゃない。うちに誰か客人は来てなかったかい?」
「お客様ですか?いいえ。今日はご祈祷の方もいらしてませんけど」
「あぁ、そうかい?誰か来てたような気がしたんだが……」
「もーいいじゃん。早く食べようよ~」
「あ、ああ……待たせて悪かったね」

それでも神奈子はちゃぶ台の隅がなぜか気になって仕方がなかった。


今日も幻想郷は平和だった。……今のところは。幻想郷は全てを受け入れる。
外界で忘れ去られた遺物。異世界からの訪問者。そして異変を起こす厄介者。
また異変が起きれば博麗霊夢とその仲間達が解決に乗り出し、解決したあかつきには宴会を開いて酒を酌み交わす。そんな日常が繰り返されるのだ。


──2002年 東京

OREジャーナル編集部。編集長を含めてたった4人の編集部で、
新米記者、城戸真司は古ぼけたデスクの下で眠りこけていた。

「う~ん、牛丼……ねぎだく……むにゃむにゃ」

サスペンダーでパンツを留めた、オールバックの男が歩み寄る。そして眠る真司のそばでしゃがみ込むと、

「あい、ねぎだく1丁お待ち~って、コラ! 起きろ新人、いつまで寝てんだ!」
「まだ食べて……って、編集長!?“ゴツ!”痛てっ!!」

真司は編集長に叩き起こされた勢いで頭をしたたかに打った。

「今何時だと思ってんだ、城戸!今日は取材だっつってただろ、さっさと行って来い!」
「す、すいません。あーやべ、早く行かなきゃ!」

真司はヘルメットを持って編集部を飛び出していった。


新宿の街で真司は愛用のHondaズーマーを走らせながら考える。

「よーし、絶っ対見つけてやるぞ、虹色の鯉。今までのガセネタとは目撃情報の数が圧倒的……ってわわわわ、なんだなんだ!!」

突然ズーマーのエンジンの回転数が急速に落ち、まもなく完全に停止してしまった。セルもキックも効かない。完全に故障である。

「なんだよ、ついてないな~。しょうがない、電車で行くか」

近くにバイク修理店がないか、見回しながらズーマーを押しつつ新宿駅まで歩いていたが、
原付といえど予想以上に重く、取材があることを考えると体力を残したかったので、結局路肩に停めて駅に向かうことにした。
駐禁を切られるかもしれないが、動かせないのだからどうしようもない。


乗り捨てられたズーマーの近くに一台の高級車が停まっていた。中には、これまた高級なスーツに身を包んだ男と大柄な秘書が乗っていた。

「う~ん、これ見てよ、ゴローちゃん。俺の特集記事、なかなか良く撮れてると思わない?」
「はい、先生のお顔はとてもよく写真映えします」
「サンキュー、ゴローちゃん。ところで今日のスケジュールはどうなってるの?」
「はい。10時から東京高裁で証人尋問です。それから……」
「あぁ、それはランチの時でいいや。どうせフツーの裁判でしょ」
「わかりました」
「それじゃあ、行きますか」

スーツの男は高級車のエンジンをかけ、目的地に向けて発進した。


真司は走っていた。もたもたしていたせいで、このままでは取材の時間に間に合わない。焦っていたため、誰かと正面からぶつかりそうになった。

「あっとと!どうもすいませ……」

蛇革のジャケットを着た金髪の男がじっと見ている。怖えぇ。

「邪魔だ」

絡まれる……と、思ったが、

「イライラさせるな」

それだけ言い残し、男は去っていった。

「あんた、今日の運勢は最悪だな」

ホッとしていると、道端で占いをしている、細身で背の高い青年が話しかけてきた。

「わかってるよ!今日は朝から散々だよ!」


占い師に言い残すと、角を曲がったところで、今度は男女と鉢合わせになった。
黒い上着を着た男と優しそうな女性が腕を組んでおり、真司は右に避けたが、偶然男も右に避けた。
今度は左に回ろうとしたが、また、男も同時に左に移動してしまった。
たまにあるパターンを何度か繰り返すと、しびれを切らした男が、真司の服を掴んで脇にどけた。何だよ乱暴な奴だな。
真司は何か言おうとしたが、優しそうな女性が振り返り、ペコリと頭を下げた。よし、許す!


『次は~14番ホーム渋谷行き、間もなく到着します。白線の内側までお下がりください』

車掌のアナウンスが構内に響く。ほうほうの体で新宿駅に辿り着いた時には、目的の電車が到着する寸前だった。
ホームに駆け込む真司。向かい側のホームに男女の後ろ姿が見える。

「お兄ちゃん、向こうに着いたらさ、お昼においしいもの食べようよ」
「……ああ、一緒に食べよう」

次の瞬間、到着した電車で見えなくなってしまったが、なんとなく気になった真司は電車に乗り込み、
向かいの窓ガラス越しにあの男女を探してみたが、もうどこにも居なかった。まぁ、いいか。それよりどこで降りたら近いかな。
真司はドア上部の路線図に目をやった。まもなく、渋谷行きの電車が真司を乗せてゆっくりと走りだした。

今日も東京の街は動き出す。そこに生きる様々な人達を乗せて。それがどこに行き着くかは分からない。
行き先を決めるのは、皆が抱くそれぞれの願い、そのものなのだから。皆がそれぞれの終着点を目指して、人生という名の旅を続けるのだ。























真っ暗な空間。
一箇所だけ明かりが点っており、そこに立つ男が貴方に語りかける。

「本当にこれが最良の選択だったのだろうか。今となっては誰にもわからない。
もし、貴方の生きる世界が、この結末と異なっているのであれば、まだ本当の意味での戦いは終わっていない。
全ての人間は誰しも願い、言い換えれば欲望を抱えて生きている。
そして、その欲望を抱えきれなくなったとき、人は、ライダーになる。
そう、誰であろうと人はライダーとなりえるのだから。もちろん貴方も例外ではない。
なぜなら──」

男は貴方に向けてカードデッキを放り投げた。
あとがき:まずはお詫びです。こうして振り返ると、矛盾が矛盾を呼び沢山のご指摘を頂きました。
1話で頂いたコメントの通り、クロスオーバーは茨の道だと痛感しました。
今後は東方オンリーの話で精進したいと思います。申し訳ありませんでした。

そして、ここまでお付き合いくださった方、コメントをくださった方全てに本当に感謝しています!
頂いたコメントからヒントを得たこともあり、拙いながらも
完結までこぎつけられたのは皆さんのおかげです。本当にありがとうございました!

さて、与太話になりますが、
まだ第1話を書き始める直前の段階では、ライダー達が一人、また一人と戦死していく話にしようと
考えていたんですが、自分にシリアスは向いてなかったらしく、全く話の筋が思い浮かばなかったので
このような展開になりました。一応、「本編ラストのように致命傷を負った真司が、最後の力を振り絞り、
コアミラーを破壊した後、慧音の腕の中息を引き取る」という1場面だけ妄想してはいたんですけどね…
まだまだクロスオーバーどころか長編も力不足のようです。以上、与太話でした。

くどいようですが、お読みいただき、本当にありがとうございました。東方も龍騎も大好きです!
AK
コメント



1.沙門削除
完結おめでとうございます。
クロスオーバー物は、あっちを立てるとこっちが引っ込む。バランスが重要だと思うんですが、この作品は両方の登場人物が上手く立ち回ってたと感じます。
エピローグを含むラスト3話をまとめて読んだので、盛り上がりにドキドキしました。リュウガも出てきて、こっそり嬉しいなとほくそ笑んだり。
ほぼ毎日の投稿で大変だったと思いますが、読み手としては次から次へと話しが読めて有り難かったです。野暮ですが、過去に自分の長編をぶん投げた前科が有る為特に。
これからも頑張ってください。継続は力になりますよ。と、酔っ払いが呟いてみたりして。
きせき~、きりふだは~じぶんだけ~。ブレイドのOPを歌いながらフェイドアウト。ではでは。
2.AK削除
>沙門 さん
これまで拙い作品にお付き合いいただき、また多くのコメントでの励まし、本当にありがとうございました。
正直続きが思いつかず、諦めそうになったこともあったのですが、沙門さんのコメントを見て何とか気持ちを立て直すことができました。
勢いで始めてしまったクロスですが、いわゆる「蹂躙」にはならなかったようでホッとしています。
リュウガは話の流れでファイナルベントを出せなかったのが少し心残りでしたが。
今後も、まずは1話完結で質の良い作品を目指して書いていきたいと思います。
ブレイドは物哀しいラストが好きです。シリアス好きでも書くのは別、ということがよくわかりました(笑)