Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

東方Project VS 仮面ライダー龍騎:最終話 願いの欠片

2016/06/07 08:05:01
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そして次の日。
予想に反して大勢の幻想郷の実力者や浅倉以外のライダーが集まった。
教室の机を全て後ろに下げないと入れないほどで、正直真司は驚いていた。
よくあの放送で来てくれたものだと、参加者の幾人かに聞いてみたが“いつものこと”、“要点以外聞き流した”、“紫だからしょうがない”との事だった。
慣れてるんだなぁ。当の紫だが、しょげた様子で教室の隅に立っていた。
恐らく昨日のショックから立ち直っていないのだろうが、何があったのかわからないのだから慰めようがない。
10時を回ったところで、慧音が教壇に立ち、参加者達に話しだした。

「みんなお早う。昨日のあんな放送に沢山集まってくれて感謝している。
早速だが、放送にもあったミラーモンスターへの対策について説明したいと思う。
発案者は紫だが、気分が良くないとのことなので、僭越ながら私が代わりに引き受ける」

そして、慧音は昨日紫が説明した神崎率いるミラーモンスターとの全面戦争と、コアミラー破壊による世界再構築について説明した。
あまりの突飛さに参加者の間でどよめきが起こる。無理もない話だろう。失敗すれば世界が破滅するのだから。

「……言いたいことはわかる。みんなも解決案がこんな危険な作戦だったとは思わなかったろう。
だから、一旦休憩という形で解散したいと思う。それでも協力してくれる者は15分後に……」
「その必要はないと思うよ」

神奈子が発言した。

「まずは守矢神社が参加表明だ。それに他の連中の顔を見てご覧」

言われて慧音は教室を見渡す。誰も教室を出ていこうとはしない。その目にはそれぞれの決意が宿っている。

「成功すれば秀一さんも病に冒されずに済む世界になるのでしょう?患者を受け持つ身としては乗らないわけにはいきませんわ」
「永琳さん……それなら、俺も参戦かな。患者だからってドクターにばかりリスク背負わせて寝そべってちゃ、格好悪すぎでしょ」
「館の害虫駆除にもうんざりしていましたの。そろそろ完全に死滅させたいと思っていましたから、良いタイミングでしてよ」
「世界をぶっ壊す、か。こんな面白いこと滅多にないぜ。どうせなら派手にぶっ壊してくれよな!」

その後も参加者から次々と参戦表明が上がる。

「みんな……ありがとう。本当にありがとう」

慧音が深々と頭を下げた。

「……里人や力のない人外については任せてちょうだい。なんとかスキマに詰め込むから」

少し立ち直った紫も人差し指同士を押し付けながら言った。

「なら、早速だが作戦会議に移りたいと思う。勝手だが、もう時間的余裕はないので決行は明日にさせてもらう。まず戦力の配置だが……」

作戦会議とは言っても、1時間ほどで大方まとまった。もともと単純に全戦力をぶつけあう総力戦なので、
決めることといえば人員の配置と開戦時刻くらいのものだったからだ。

「とにかく霊夢、そして真司と蓮がコアミラーを破壊するまでの時間稼ぎができればいい。
幻想郷の要所に各グループが分かれてもらうが、危なくなったら撤退、もしくは最寄りのグループに助けを求めるんだ。
恐らくこれは幻想郷始まって以来の激戦になると思う。絶対に無理をして命を落とすことのないように」

続いて、慧音は各グループの配置について説明する。

「言うまでもなく、守矢神社はコアミラーへの入り口、すなわち真澄の鏡がある最も重要な拠点だ。
初めは全員をここに集めて完全な防御を敷くことも考えたが……限られた敷地に大人数が固まりすぎると、かえって互いを邪魔しあってしまうと考え、
各要所にグループを配置し、ミラーモンスターを分散したほうが良いと判断した」

神奈子が手を挙げる。

「そこはやっぱりうちらが守ることにした。自分の神社も守れないんじゃ神の名折れだからね」
「俺も神社の防衛に当たるよ。1人はライダーがいたほうがいいと思うし」

手塚の配置も決まった。慧音が続ける。

「紅魔館周辺は咲夜を初めとした住人達で防衛することになった」
「地上は美鈴に任せて、空中戦は私とお体の弱いパチュリー様に魔理沙をサポートに付けますわ」

続いては永遠亭だ。

「迷いやすい竹林は私達で受け持つわ。もう神崎の目を気にしなくていいから、
開戦前に手早く緩和薬と体力回復剤を作って秀一さんに飲ませる。治療薬は生成に数日かかるから……」
「期待してますよ、先生特製のお薬!」

そして、最後の拠点、人里については、

「窓ガラス等の鏡面体が多い人里では南北に分かれて戦う。北は私、南で紫が迎撃に当たる。
ライダー諸君はなるべくファイナルベントは温存するんだ。ちなみに行方不明の浅倉は戦力には数えない。そして──」

慧音は一拍置くと、

「明日の正午に真司が神崎士郎に宣戦布告を行う。それと同時に戦闘開始だ。皆、気を引き締めて耐え忍んでくれ。以上だ」


決戦の日。
紫以外誰もいなくなった里で慧音が半鐘を鳴らす。戦いの始まりを告げる鐘の音が、幻想郷のあらゆる要所に響き渡る。

「とうとう始まるんだな……」
「里人を始めとした非戦闘員は全員スキマに避難、というか吸い込んだわ。状況説明は藍に任せてる。
結構ぎゅうぎゅう詰めだけど、最長2時間ほど辛抱してもらわなきゃ。というより、2時間ですべての決着がついているはず。
それじゃ、私も戦いには参加するけど、この大所帯を抱えてるから、あまり頼りにはしないでちょうだいね。それじゃ、頑張ってね~」

そう言い残して紫はスキマを通り、里の南地区へと移動した。

「……お前も、無茶はするなよ」


守矢神社では霊夢と真司と蓮が、コアミラーへの突入準備に入っていた。

「さぁ、私たちは私たちの役目を果たしましょう」
「俺も準備しなきゃ。霊夢、みんな、危ないから下がってて」
「ああ。俺も同時に変身するから、何かに身を隠したほうがいい」
「危ないって何する気?変身するだけでしょ」

サバイブについて知らない霊夢が聞いてくる。

「サバイブに変身する時のエネルギーで炎や暴風が吹き荒れる」
「おいおい、うちの神社焼かないでおくれよ」

神奈子が若干心配そうに念を押す。

「問題ない。あの鳥居の向こうくらいまで離れれば十分だろう」

2人共まずは基本形態に変身し、守矢神社から大鳥居の向こうまで距離を取った。

まずは龍騎が“SURVIVE”をドロー。イラストの炎が実体を持って燃え盛るカードを引くと、周囲が炎に包まれ、
ドラグバイザーが龍の頭部を象った銃型バイザー、ドラグバイザーツバイに変形。
そしてバイザーの口を開き、内部にカードを装填。勢いをつけ口を閉じると、龍騎の体を業火が包み込む。

『SURVIVE』

業火が止むと、龍の顔を模した重厚なアーマー、両肩から突き出る牙を思わせるプロテクター、
そして黄金の装飾が施されたヘルムでパワーアップした龍騎、龍騎サバイブが姿を表した。

「これが、最強の仮面ライダー……」

家屋の角から覗き込んでいた霊夢が驚きの声を漏らす。

「これで仕上げだ!」

龍騎はカードを2枚ドロー。順番に両方をバイザーに装填した。

『SWORD VENT』
『ADVENT』

龍騎の手にドラグブレードが飛び込むと同時に、異次元から真紅の龍が現れた。
巨大な鉤爪、重厚な胴体、鋼の鱗が見る者全てを圧倒する、烈火龍ドラグランザーを召喚した。

「バイクに変形しろ!」

ドラグランザーの鋼鉄の鱗が吹き飛び、胴体と尾から車輪が現れそのまま巨大なバイクに変形。龍騎サバイブはバイクに飛び乗った。


同時に、ナイトも“SURVIVE”をドローしていた。今度は内部で嵐が吹き荒れるカードが現れる。
すると、ダークバイザーから鏡像が弾け飛び、ダークバイザーツバイに変形。そして“SURVIVE”をダークバイザーツバイに装填。

『SURVIVE』

内蔵された伸縮式の剣の柄を素早く抜き取ると、蒼い装飾と黄金の刀身の剣が現れる。そして、ナイトのボディに更に3つの鏡像が重なる。
2度目の変身を終えると、全体的にブルーを基調とし、黄金のフレームを持つアーマーに翼を象ったショルダーアーマー、
龍騎と同じく黄金の装飾を施されたヘルムを装備した、ナイトサバイブが姿を表した。

荒れ狂う風と燃え盛る炎で巨大な火柱が上がり、凄まじい熱風が辺りに吹き荒れる。

「うぅ、あっつい……」

その熱風の凄まじさに、遮蔽物に隠れたはずの霊夢も圧倒される。そして、ナイトサバイブもダークレイダーを召喚し、飛び乗る。
バイクのグリップのような両耳を握ると、ダークレイダーの両方の翼からタイヤが現れ、体が頭部を軸に回転。バイクモードに変形した。

2人のライダーはサバイブへ変身を遂げると、本殿まで戻ってきた。

「すっかり変わったじゃない。っていうか貴方達、一体何やってたのよ……戦う前から汗びっしょりよ。ちょっとお水飲んでくる」
「すまない。あれほど風が炎を煽るとは思わなくてな」

霊夢は手水舎へ向かっていった。本来、手水舎の水は飲むものではないのだが、細かいことは気にしないのが幻想郷である。
小さな柄杓で何度かコクコクと水を飲むと、ふぅ、と息をついてから戻ってきた。

「じゃあ、準備が出来たところで始めましょうか。真司さん、お願いね」
「ああ……覚悟はできてる。神奈子さん、お願いします」
「あいよ」

神奈子は真司達に向け、真澄の鏡をかざした。真澄の鏡には、大鳥居のそばに佇む神崎の姿が映っていた。
その時、あの甲高い音と共に神崎の声が聞こえてきた。

「お前達、サバイブになりながら戦いもせず何をしている。そしてここ数日コソコソと何を企んでいた」
「神崎……!俺たちは、ライダーバトルを放棄して、コアミラーを破壊する!
そして誰も争わなくて済む、ライダーバトルやミラーモンスターのない世界に造り直して、みんなを救うんだ!!」
「……!! 貴様ら……役立たずのライダーは全員脱落とみなす!そして新たなライダーを選び出し、ライダーバトルを再開するため、お前たちには死んでもらう!
そして幻想郷。このライダーバトルを著しく阻害する要因は排除する。次も、また次も!」

人間性を失ったかのように、ただ行動だけを続けてきた神崎が、始めて“怒り”の感情を露わにした。幻想郷のあらゆる鏡面体に神崎の怒りの形相が浮かび上がる。

──「「「キイィィーーーン!!」」」

これまで聞いたことのないほど大きな金切り音が、何重にもこだまする。

「……これって多分」
「ああ。神崎がミラーモンスターを放ったんだ。多分、幻想郷全ての鏡になるものから」
「もう時間ね」
「っしゃあ!」
「行くぞ!」
「さぁ、勝ちに行っておいで!!」

予め紫から虚と実の境界を調整されていた霊夢、龍騎サバイブ、ナイトサバイブは真澄の鏡に飛び込んだ。

そして、はるか遠くに黒い雲、恐らくはミラーモンスターの大群が現れた。今からあれが幻想郷の各所を襲撃するのだろう。
だが、皆、手練の者達。簡単にやられはしまい。自分たちは自分のやるべきことをやるまでだ。神奈子はパシッと手のひらを拳で叩く。

「さぁ、ひと暴れしようかね。私が持っている限り、この鏡には指一本触れさせないよ!
3柱の神と仮面ライダーライアに喧嘩を売る度胸のあるやつは、かかってきな!」
「私も今日は本気出しちゃうよ!」
「この神社に、私たちの家に、一切手出しはさせません!」
「皆で変えてみせる、この戦いの運命を……変身!」


そして、真司の宣戦布告と同時に幻想郷各地で戦闘が始まった。


慧音は里北部の大通りで、弾幕を放ちながらミラーモンスターに応戦するが、少々押され気味であった。
戦力配分を誤ったか。焼け石に水程度でも効果があるのでは、と考えた里を囲む壁は全く役に立たなかった。
戦闘開始からまだ15分だが、既にスペルカードを3枚使った。
「私は軍師には向かないな」作戦設計の甘さを若干悔やみながら戦っていると後方から気配が。
約10体のカマキリ型モンスターが現れ、全力で駆け寄ってくる。しまった、同時に前後は相手にしきれない!その時、

「楽しんでるじゃねえか……俺も混ぜろ」

裏通りから王蛇がベノサーベルを引きずりながらブラブラと歩いてきた。

「浅倉……まさかお前、手伝ってくれるのか?」
「馬鹿が!腹空かせてんだよ……俺も、こいつも……!!」
「そうか、でもファイナルベントは温存して……」

慧音が言い終わる前に、王蛇はカードをドローし、ベノサーベルに装填。

『FINAL VENT』

ベノスネーカーと共に駈け出した王蛇は大ジャンプ後、ベノスネーカーの毒液噴射で突進。
毒液と連続キックでカマキリ型モンスターを一網打尽にした。いきなりファイナルベントをぶっ放した王蛇に叫ぶ慧音。

「温存しろと言っただろう!?」
「黙れ……とにかく殺せば、いいんだろうが……!!」

なおも、水たまり、防火用水、散乱したガラス片等から多数のミラーモンスターが現れ、王蛇に迫ってくるが、

「腹ぁ……一杯にしてくれよ!!」

彼が抱くのは恐怖などではなく、期待と喜びであった。動機はどうあれ、背中を任せられる味方が現れたことで、慧音の状況は一気に改善した。
これで余裕を持って攻撃と注意を前方向に集中できる。残りの敵に向け、弾幕を放つ慧音。
霊力の弾丸で飛びかかる敵を迎撃していると、数分後には攻撃が止んだ。

「どうにか第一波は凌いだな。しかし浅倉はどうなってる」

戦闘中は気付かなかったが、断続的な打撃音が聞こえてくる。後ろはまだ戦闘が続いている。
やはりライダーとはいえ一人で戦わせるのは無理があった、早く加勢しなければ!そして慧音が到着すると、

「あ」

そこには、あちこちにミラーモンスターの死体が。

「まだだ……出ろ……早く来い……!!」

そして、王蛇は力尽きるどころか、もっとよこせ、と催促せんばかりにセメントで出来た防火用水の水槽をガシガシ殴っていた。

「おーい、やめておくれ……それは結構高いんだ」

なにか言いたげな手を差し伸べたまま、慧音はつぶやいた。



一方里南部の住宅街では、紫がふわふわと浮かびながらミラーモンスターを相手にしていた。
上半身に多数の触手があるミラーモンスターや、弓矢を持った巨大なスズメバチ型ミラーモンスターが紫に攻撃を仕掛けようとするが、
空を飛べない触手のモンスター達はスキマから現れた無人電車に粉砕され、
スズメバチ型モンスターが放った弓矢もスキマに吸い込まれて命中には至らない。

「はぁ、やっぱり重いわ……幻想郷全部の里人や他の人妖を抱えながら戦うのはちょっと無茶だったかもね。
爆撃機とか呼べれば楽なんだけど、今の状態でそんな重い処理は無理だし、そもそも里がめちゃくちゃになるわね。そんなことしたら慧音が……」

先日受けたショックを思い出し、身震いする紫。思い出したくもないことを思い出しそうになったので、戦いに集中することにした。
倒しても倒しても相変わらず触手型モンスターやスズメバチ型モンスターがあちらこちらから湧いてくる。
全体が錆びついた路面電車で固まったモンスターの群れをなぎ倒し、標識・信号機の針山で紫を狙い撃ちしようとするスズメバチ型モンスターを串刺しにするが、
まだ攻撃が止む気配はない。紫が日の傾きを見て独り言を漏らす。

「まだ30分ってところかしら。霊夢達はまだかしら。流石に3時間も4時間も待てないわよ。
というか早めの終了を希望しま~す。……って、空を飛ぶから余計疲れるのよね」

紫はスキマからすたっ、と飛び降りた。すかさず数体のモンスターが紫に飛びかかる。
が、一瞬にしてズタズタに引き裂かれ、辺りに飛び散った。紫の指先が鋭い爪と化し、モンスターの体液が滴り落ちていた。

「たまには妖怪らしく暴れてみようかしら」

紫はナイフのように鋭く尖った指を構え、獰猛な笑みを浮かべた。



紅魔館上空では咲夜が巨大なトンボ型ミラーモンスターの群れを迎撃していた。
モンスターは両腕から鋭い針を飛ばしてくるが、それらをかわして両手の指に挟んだナイフを投げつけ、正確に頭部に命中させる。

「たった2発の直進弾なんて当たらないわ」

叫び声とともに巨大なトンボが落下していく。
時折周囲を多数のモンスターに囲まれるが、「時間停止」止まっている敵など相手ではない。
全ての敵にナイフを投げつけ、「停止解除」瞬時に殲滅。

下では魔理沙やパチュリー様も背中合わせになってうまくやっているみたい。今のところ加勢する必要はなさそう。なら私はここで害虫駆除を続けましょう。

地上の敵は美鈴に任せてある。元々彼女はスペルカード戦は不得意なのだが、その代わり格闘術で右に出るものはなく、
妖怪として生まれ持った身体能力によって、この程度の敵なら2時間どころか1日中戦い続けても汗一つかかないだろう。
今も、何やら白い粘液を吐くモンスターの群れと戦っているが、流れるような動きで回避しては強烈な一撃で一匹、また一匹と撃破している。

「しかし、霊夢達も少し急いではくれないかしら。そろそろお嬢様のお茶の時間なのだけれど」



ゾルダと永琳亭メンバーは、竹林で背中合わせになってモンスターを迎撃する。砲撃・弓矢・弾幕で全方位の敵を次々と撃ち落としていく。
竹の間から絶えることなく真っ赤なカメレオン型ミラーモンスターが現れ、既に100体を超える数を撃ち落としているが、まだまだ4人に疲労の色は見えない。

「秀一さん、絶対生き残って!私が必ず貴方を助けるから!」

もう狙わなくても当たるような状況。永琳はスペルカードより消耗が少ない、霊力の矢を一度に6本まとめて放っていた。

「当然!主治医の指示には従わなきゃね!」

そう答えたゾルダは、2種類の“SHOOT VENT”、ショルダーマウント式大砲2門と手持式大砲1門で次々と敵の群れを爆破していく。

「師匠を悲しませたら、許しませんから!」

鈴仙は、指先から正確な射撃で霊力を放ち、1体ずつモンスターを撃ち抜き、さばき切れないほど数が増えたところでスペルカードを使うという堅実な戦法で戦う。

「俺はスーパー弁護士かつライダーだから、絶対そんなことにはならないよ。ね、“ぐーやん”」
「最後まで“ぐーやん”なわけ!?あんたこれ終わったら顔貸しなさい!」

もう!と八つ当たり気味に宝珠が付いた枝に霊力を込めて振り抜くと、上空で同じく色とりどりの光球が破裂し、無数の弾幕が着弾。
輝夜の視界に存在する全てのモンスターが消し飛ぶ。

無駄口を叩きながらも協力して四方に圧倒的火力を放つ4人。実質無限のミラーモンスターも、この周辺では絶対数を増やすことができない。
他の地区に向かおうとしていたモンスター達が、4人を倒さんと集まってくる。このグループは他の全グループの負担軽減にも貢献していた。



……
………

霊夢とサバイブ化した龍騎とナイトが飛び込んだミラーワールド。
やはり不思議な空間だった。霊夢と龍騎達。移動手段は異なるのに、並んで走り続けることができた。
飛びたいと思えば障害物のない空間を自在に飛び回れるし、走りたいと思えば願ったとおりに見えない道が出来上がる。坂も凹凸も思いのままだ。
もちろんミラーモンスターの妨害はあるが、霊夢は霊力を込めた霊符、封魔針で撃ち落とし、龍騎サバイブ、ナイトサバイブは“SHOOT VENT”で撃墜する。
コアミラーを目指して直進する3人。まだまだ距離はあるが、着実に目的地との距離を縮めている。
そんな彼らを彼方から見つめるものがいた。神崎士郎である。

「やはり今回も失敗なのか……!!オーディン、“TIME VENT”……“TIME VENT”だ!オーディン!」

空間がゆらぎ、オーディンが姿を表すが、全身のアーマーは今にも砕けそうで、ふらつく足元をなんとか錫杖で支えながら歩いていた。

「オーディン、なぜだ、なぜ修復しない!?」

先日のナイトサバイブとの戦いで、オーディンのカードデッキは、破損とまでは行かなかったが、エンブレムにまで大きなヒビが入っており、
もはやカードデッキとしての機能を失っていた。

「神崎……“TIME VENT”は、失った……」
「馬鹿な!?……いや、まだだ。まだ“あいつが”いる……!!」



3人がコアミラーに向け全力疾走していると、前方に1つの人影が見えた。全員霊符や銃を構えるが、その姿に手を止める。城戸真司だった。
変身すらしていない状態で真司がいつもの服装で3人を見つめていたのだ。

「お、俺!?」

当の本人である龍騎サバイブが驚いてブレーキをかける。他2人も同様に停止する。

「あそこは鏡なんてないわよね!?」
「なぜ城戸がここにいる!」

冷たい笑いを浮かべながら、もう一人の真司はゆっくりと歩いてくる。そして、龍騎サバイブの前で足を止めた。

「お、お前は誰だ!」
「もうひとりのお前さ。もうひとりの自分だよ」
「……2人共、先に行ってて。よくわからないけど、こいつは俺がケリをつけなきゃいけない気がするんだ」
「……わかった。警戒は怠らないで」
「城戸、必ず来いよ」

2人は再びコアミラーへ向けて走り去っていった。残されたのは2人の城戸真司。

「俺を受け入れろ。俺達が一つになれば、最強のライダーになる。そうすれば、神崎優衣を救うことができるんだぞ。受け入れろ、俺を」
「ふざけるな……俺だけが願いを叶えても、大勢の人を犠牲にしなきゃならないんだぞ!!」
「お前がやろうとしていることも同じだろう。しくじれば大勢ではない、全てが無に帰するんだ」
「絶対成功させてみせる!そのために今もみんなが戦ってるんだ。俺達を信じてくれたみんなが!だからそこをどけ!」
「フン……」

もう一人の真司は目を閉じ集中すると、ただ前方にカードデッキをかざす。

「変身……!!」

すると腰にベルトが現れ、バックルにデッキを装填。すると3つの影が重なり、もう一人の真司が変身を遂げた。
姿形は龍騎と同じだったが、全体が漆黒に染められており、黒いヘルムの奥に紅く光る瞳が禍々しさをより強く感じさせる。

「俺はミラーワールドからのライダー、リュウガ……」
「ミラーワールドのライダーだって!?」

リュウガは何も答えずにカードをドロー。左腕のブラックドラグバイザーに装填した。

【STRIKE VENT】

異次元から真っ黒なドラグレッダー、ドラグブラッカーが現れ、リュウガが龍騎サバイブに狙いを定めて左腕を突き出すと、
ドラグブラッカーが激しく燃え盛る黒炎を吐き出した。ヤバい!直感的に反応した龍騎サバイブは、命中する寸前にバイクから脱出した。
黒い炎の直撃を受けたドラグランザーが叫ぶ。そして、何か様子がおかしい。炎が消えることなく、時間が止まったかのように固まり、ドラグランザーを捕らえているのだ。

「ドラグランザー、龍に戻って退避しろ!」

龍騎サバイブが、傷つき、固形化する炎で動けなくなったドラグランザーに指示を出す。
元の龍形態に戻ったドラグランザーは黒炎から脱出し、龍騎サバイブ後方でミラーモンスターの迎撃を始めた。

「やっぱり、俺が決着をつけるしかないのか!」

ドラグランザーが癒えるまで、無闇に強いカードは使えない。龍騎サバイブはカードをドローし、ドラグバイザーツバイに装填。

『SWORD VENT』

ドラグバイザーツバイが変形し、一振りの剣と化した。リュウガに向かって駆け寄る龍騎サバイブ。

「……」

そしてリュウガも同様に“SWORD VENT”をドロー。ブラックドラグバイザーに装填。

【SWORD VENT】

その手にドラグセイバーが現れる。形こそ龍騎のものと同じだが、やはり禍々しい黒で染め上げられている。
同時に龍騎サバイブが斬りかかってきたが、巧みな剣さばきで受け流す。
何度も全力で攻撃を繰り返す龍騎サバイブだが、リュウガは受け止めることなく、片手だけで受け流す。
戦いの技量が明らかに違っていた。そして、今度は龍騎サバイブの一撃を受け流すことなくギリギリでかわすと、背後から一撃浴びせた。

「がはっ!」

闇のドラグセイバーの斬撃を受けた龍騎サバイブは思わず倒れこむ。その隙を逃さず、リュウガはカードをドローし、装填した。

【ADVENT】

突然鏡の空間からドラグブラッカーが現れ、龍騎サバイブに噛み付いた。そして、そのまま強力な顎で噛んだまま、引きずり続ける。

「あ……がぁっ!」

龍騎サバイブは絶え間ないダメージに耐えながらドラグバイザーツバイを元の形状に戻し、何発もドラグブラッカーの頭をレーザーで撃つ。
十数発撃ったところで、ようやくドラグブラッカーから開放されたが、大きなダメージを受けてしまった。

「くそ……もう終わりにしないと、ヤバいかも……頼む!」

カードを1枚ドロー、そしてドラグバイザーツバイに装填。

『STRANGE VENT』

そのカード自体は特に何かの効果を発動することなく、別のカードに変化。間髪置かずもう一度バイザーに装填。

『TRICK VENT』

ナイトの“TRICK VENT”と同じく、4体の分身が現れた。

「行け!」

龍騎サバイブが叫ぶと、分身達はレーザーを撃ちながらリュウガに突撃していった。リュウガはカードを1枚ドロー。バイザーに装填。

【GUARD VENT】

盾を召喚してレーザーを全て受け止める。その隙に龍騎サバイブは最後のカードをドローし、ドラグバイザーツバイに装填。

「悪い……もう一度だけ、耐えてくれ!!」

『FINAL VENT』

その時、全ての分身がリュウガに躍りかかり、手足を押さえつけた。
そして、ミラーモンスターの相手をしていたドラグランザーが龍騎サバイブの元へ舞い戻り、再びバイクモードへ変形。
すかさず飛び乗ると、ドラグランザーが一際大きな咆哮を上げた。

「行くぞ!」

全速力でリュウガに向けて突撃するドラグランザー。
こちらに気づいたリュウガが驚いた様子で分身を払いのけようともがくが、ドラグランザーが残る力の全てで巨大な火球をいくつも放ち、そのままリュウガに直撃した。
龍騎サバイブのファイナルベントをまともに受けたリュウガは空中に放り出され、足場に落下。
立ち上がろうと宙に手を伸ばすが、力尽き、そのまま蒸発するように空間に消滅した。

「行こう、全速力だ!」

リュウガの消失を確認した龍騎サバイブは、再びコアミラーへ向けて走りだした。



リュウガの気配が消えた。もはや神崎に手は残されていなかった。

「俺は……お前を救えないのか、優衣。俺は……うわあああああ!!!」

神崎が叫ぶ。何度も“救えなかった”世界を繰り返し、虚の世界をさまよい、全ての希望を絶たれた男の慟哭だった。しかし、

“お兄ちゃん、もういいんだよ”

神崎のそばに一人の女性が立っていた。もはや透けるほど実体は消えかけていたが、紛れもない、神崎の妹、優衣だった。

「優衣?俺は、お前に新しい命を与えるために……」
“もう、終わりにしよう?”
「お前を、失いたくない。俺を、独りにしないでくれ……」

優衣は神崎を抱きしめる。神崎も優衣を強く抱きしめる。

“私はここにいる。お兄ちゃんのそばにいる。ずっとそばにいるから、泣かないで”
「優衣、すまない……許してくれ」

神崎と優衣は舞い上がる砂のように、さらさらと次元に溶けこみ消えていく。
最期に神崎がこの世界から消失するとき、一瞬だけその目に光るものが見えた。



フルスピードでドラグランザーを走らせてきた龍騎サバイブは、とうとうコアミラーに到着した。
傷だらけの体でドラグランザーから降りると、コアミラーまで歩み寄る。霊夢とナイトサバイブが駆け寄ってきた。

「一体どうしたってのよ、ボロボロじゃない!」
「やはり神崎の手先だったのか」
「もう、いいんだ。大丈夫だから。それより霊夢、コアミラーを早く!」
「わ、わかった」

霊夢が精神を集中すると、その体が宙に浮いた。そして懐から1枚の札を取り出す。
更に集中力を高めて札に全霊力を込め、スペルカードに込められた力を一気に開放する。

──夢想天生

スペルカードが発動すると、霊夢の周囲に八つの陰陽玉が現れ、コアミラーに向けて強力な霊符を一点集中で放ちだした。
集中攻撃を受けるコアミラーがその巨体を揺らす。陰陽玉の攻撃は尚も続く。固唾を呑んで見守る真司達。
そして、しばらく霊符の攻撃を受け続けたコアミラーが、パキッと小さな音を立てた。次の斉射でそれはバリバリとした大きな音になり、コアミラー全体に亀裂が走った。

「もうすぐだ。準備はいいな、城戸」
「ああ!!」

そして、次の斉射を受けた外殻が、ダメージに耐え切れず、とうとう砕け散った。内部の光球が露わになる。

「行け!」
「うおおおおおお!!」

真司は光球に向かって駆け出す。理想の世界を想いながら。誰も戦わずに済む、皆が笑顔でいられる、そんな世界を。
そして、光球に飛び込んだとき、真司は見た。無数の鏡の欠片が舞い降りてくる。それは、願いだった。一つ一つに皆が抱く願いが映しだされていた。
その中には蓮や優衣、幻想郷で知り合ったみんな。そして神崎もいた。真司がその一つに手を伸ばした瞬間、突然音もない光の奔流に身を包まれた。
光はどんどん強くなり、一切の影が消え去り、光しか見えなくなった時、体中の感覚がなくなり、時間も上下左右も意味を失い、真司は光に飲み込まれていった。
そして──
詳細はエピローグで
AK
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