──守矢神社
「こんにちは、八坂の神よ」
紫は守矢神社を訪れていた。あることを確かめるために。
「ああ、八雲の。珍しいじゃないか、わざわざこんなところまで来るなんて。今日は何用だい?」
「一つお願いしたい事がありまして」
「一体どうしたってんだい、改まって」
「真澄の鏡に入らせて頂きたいの」
「……海之から何か聞いたのかい」
「ええ。幻想郷、いえ、世界に関わる重要なことを」
「そうか、あいつが……いいだろう。でも、入るだけだぞ」
「もちろん。すぐ戻りますわ」
神奈子は、ライアを里に送ってからは、本殿の棚に裏返して置いてある真澄の鏡を持ってきた。
境内に戻ると神奈子は八雲に真澄の鏡を向けた。
「何をしたいのかはわからんが、さぁ、行ってきな」
「それでは、失礼しますわ」
紫は目を閉じ妖力を放出すると、虚と実の境界を操り、鏡の像と肉体の境をなくした。
これでミラーワールドに入れる。そして、ふわりと浮かぶと小さな鏡の中へ飛んでいった。
……
………
出口を抜けると、そこは無数の鏡面体で構成された広大な世界。事前に手塚から詳しく聞いていた通り、遥か向こうにコアミラーが見える。
「……なるほど、こうなっているのね」
ちなみに、じっくりコアミラーを観察している今も、四方八方からミラーモンスターが紫に襲いかかっているが、
現れた瞬間、スキマから突き出てくる標識や信号機に串刺しにされ、近づくことができないでいる。
「よくわかった、もういいわ」
紫は、ミラーモンスターの叫び声、断末魔を背に、ミラーワールドを後にした。
「何かわかったのかい?」
「ええ、とても重要なことが。ご協力感謝致しますわ」
「里に戻ったら海之に伝えといてくれ、たまには帰って来いって」
「確かに伝えておきますわ。では、ごめんあそばせ」
紫はスキマを開くと、次の目的地へ向かった。
──博麗神社
手頃な広さの境内に吹き抜ける風が心地よい午後。
博麗霊夢と八雲紫は、博麗神社の境内で立ち話をしていた。立ち話といえど、内容は極めて重要なものであった。
「紫、正気なの?」
「もちろん!だって、誰も得しないライダーバトルをやめさせて?ミラーモンスターも殲滅して?優衣さんと恵里さんを助けると。
全部同時にやるにはこれしかないじゃない」
「リスクがでかすぎるわ」
「それはわかってる。でも今の状況を放置しておくのも同じことではなくて?」
「それはそうだけど……」
「じゃあこうしましょう。早速例の会議を招集して決を採る。1人でも反対がいればこの案は却下。これでどう?」
「……うん、まぁそれならいい」
「決まりね!」
早速ゆかりは小さなスキマを作り、裂けた次元の穴に向かって叫んだ。
「やっほー!ゆっかりんでーす!今日の夕刻にゆかりんから大発表があるから、いつものメンバーは寺子屋に集合ね!ばいなら~」
ふぅ、と一仕事終えたとばかりに額を拭う紫。それを冷めた目で見る霊夢。
「なに今のバカ丸出しの放送」
「ちょ、バカはないでしょう!?ちょっとした遊び心じゃない。全員に要件は伝えたんだからいいでしょ」
「はいはい。会議ではちゃんと説明するのよ」
「わかってるわよ……それじゃ、私は一足先に里に行くから」
「夕刻にはまだ早いから、私は境内の掃除をしてからそっちに向かうわ」
「それじゃ、後でね」
紫は再びスキマを作り、今度は里へ向かった。夕刻までは間がある。
茶屋にでも寄って、お茶と団子でしばしのんびりしよう、と考えながら。
秋山蓮は先程の「ゆかりん放送」を聞いて、里へとシャドウスラッシャーを走らせていた。
ちょうど紅魔館へ出前を済ませたところだったので良いタイミングだった。
しかし、バイクの進路に怪しい人影が立っていた。黄金の翼をモチーフにしたアーマーとベルトを装備している。
ベルトにカードデッキが装填されていることから仮面ライダーであることは間違いない。蓮はバイクを止めると、金色のライダーに近づいた。
「お前は何者だ。今更俺に何の用だ」
「仮面ライダーオーディン。ライダーバトルを司る者。使命を果たせ、ライダーとしての使命を」
「ふざけるな。お前を倒したところで、どうせ“力”を渡す気などないんだろう。よくも今まで利用してくれたな」
「ふん。やはりあの女に余計なことを吹きこまれたか。まあいい。使命を捨てたライダーに用はない。ここで、消えろ」
「消えるのはお前だ」
蓮はシャドウスラッシャーまで走ると、ミラーにカードデッキをかざし、「変身!」仮面ライダーナイトに変身した。
「行くぞ!」
『SWORD VENT』
大型ランスを召喚したナイトがオーディンに斬りかかる。が、直立姿勢のままの瞬間移動で避けられた。
ナイト後方に移動したオーディンにもう一度斬りつけるが、やはり当てることができない。
「この程度で私を倒そうなど笑わせる」
オーディンが左腕を伸ばすと、左腕に鳳凰を象った錫杖が現れた。
そしてカードを1枚ドローし錫杖のカードスロットに装填。カバーを押し上げた。
『SWORD VENT』
カードの力が発動すると、オーディンの手に黄金の剣が召喚された。
そして、瞬間移動でナイトに接近し、一太刀浴びせた。重さも切れ味も桁違いの斬撃に、吹き飛ばされるナイト。
「ぐはっ……!」
たった1撃が凄まじい威力……このまま戦い続けても、一方的になぶり殺しにされるだけだ。あのカードに賭けるしかない──
ナイトは立ち上がると、ダークバイザーからゆっくりと1枚のカードをドローする。
背景の嵐が実体を持って吹き荒れるカードを取り出すと、辺りに激しい烈風が吹き荒れる。
すると、ダークバイザーから鏡の破片がはじけ飛び、蒼い翼のコウモリをモチーフにした盾形召喚機・ダークバイザーツバイに変形した。
そしてナイトはカードスロットに“SURVIVE”を装填。
『SURVIVE』
すかさず、召喚機に内蔵された柄を抜き取ると、鋭い金属音と共に蒼い装飾と黄金の刀身を持つ剣が現れた。
そしてナイトの体に、さらに3つの鏡像が重なり、黄金のフレームに、ブルーを基調としたアーマーに変形。
両肩を守る翼のように開いたガード、そして黒くはためくマントが装備された、仮面ライダーナイトの最強フォーム・ナイトサバイブが現れた。
「ライアのカードがナイトに渡っている……そして他数人のライダーもライダーバトルを中止している。やはり今回の戦い、修正する必要があるな」
ナイトサバイブを見たオーディンは、カードを1枚ドロー。錫杖のカードスロットに装填しようとしたその瞬間──カードが弾き飛ばされた。
「!?」
「殿方の決闘に水を差したくはないのだけれど、やはりチートカードは使用禁止ですわ」
声の主を見ると、いつかのメイド、十六夜咲夜だった。小高い丘の上に、腕を組んで立っていた。
遠くの樹の幹に、“TIME VENT”のカードがナイフで突き刺さっている。
「あの小娘……!!」
「私も時の摂理に触れる者の端くれ。奇妙な時間変動の兆候があれば察知できますわ。そして、そのカードで何をするのかも。それに──」
咲夜はちらりとナイトサバイブを見る。
「この方にいなくなられると、お嬢様が冷たいお蕎麦(わさび抜き)を食べられなくなりますの。
ご安心下さい。これ以上手出しをするつもりはありませんから。また貴方がチートしない限りは」
「貴様……!!」
「お前の相手はこの俺だ」
黄金に輝く剣でオーディンの行く手を遮るナイトサバイブ。
「サバイブ化した程度で、図に乗るなよ!」
再びナイトサバイブに剣を振り下ろすオーディン。それを剣で受け止めるナイトサバイブ。
一撃で吹き飛ばされた先程と違い、やはりパワーアップしている。だが、やはり敵の攻撃力が高いことにも変わりはない。
ナイトサバイブは全力で剣を振りぬくと、オーディンの剣を弾き返した。その勢いで、オーディンは後方にジャンプ。
「斬り合いだけでは消耗戦になるな」
ナイトサバイブはカードを1枚ドロー。ダークバイザーツバイに装填した。
『SHOOT VENT』
ダークバイザーツバイの両端が開き、ボウガンのような形状に変形。ナイトサバイブはオーディンに狙いを定めると、トリガーを引いた。
青白い光の矢が発射されるが、回避された。しかし、正面切っての斬り合いよりまだ当たりの目はある。
とはいえ、瞬間移動する相手に命中させるのは至難の業だ。何度か撃ってもなかなか当たらない。
「どうした?サバイブを手に入れてもその程度か」
(数撃ちゃ当たる、か……)
ナイトサバイブは黙ってカードをドロー。バイザーに装填した。
『TRICK VENT』
カードが発動すると、4体の分身が現れた。計5体になったナイトサバイブは、オーディンに照準を定めた。
「いいか、3度目だ」
分身に向け、小声で告げるナイトサバイブ本体。まず1射目。5体揃ってオーディンを撃つが、矢の数が増えてもやはり当たらない。
「無意味だ」
オーディンが回避した方向に2度目の斉射。オーディンの瞬間移動にかすりもしない。
「滑稽だな。数が増えようが遅すぎる」
次だ。無言で分身たちと示し合わせると、5体はオーディンに狙いを定めてトリガーを引く瞬間、それぞれ別方向を向いた。
5方向に放たれた矢のうち、一発が瞬間移動先に飛んでいき、オーディンに命中。
「うがあっ!!」
光の矢をまともに受け、体勢を崩すオーディン。
「今だ!!」
一時的に瞬間移動が止まったオーディンに向け、5体が光の矢を連射する。
5体から計数十発もの光の矢を受けたオーディンは、もはや瞬間移動が出来ないほどの深手を負った。
「おのれええぇ……!!」
オーディンは錫杖で身を支えながら、最後の切り札である“FINAL VENT”をドローし、錫杖のカードスロットに装填した。
『FINAL VENT』
「決着をつける!」
ナイトサバイブもカードをドロー。ダークバイザーツバイに装填。
『FINAL VENT』
両者、相手にとどめを刺すべく、ファイナルベントを発動。
オーディンは、金色に燃え上がる不死鳥、ゴルドフェニックスを召喚し、上空まで浮遊。
ナイトサバイブは、パワーアップしたダークウイング、ダークレイダーを召喚し、飛び乗った。
バイクのグリップのような両耳を握ると、ダークレイダーの両方の翼からタイヤが現れ、体が頭部を軸に回転し、バイクモードに変形。
そしてナイトサバイブのマントが竜巻状にバイク全体を包み、敵に向かって突進する。
「「終わりだ!!」」
オーディンはゴルドフェニックスと共に、体ごとナイトサバイブに向けて落下。ナイトサバイブはフルスロットルでオーディンに突撃。
オーディンの「エターナルカオス」とナイトサバイブの「疾風断」。
両者がぶつかり合った時、そのエネルギーで大爆発が起きた。
「が……はっ」
「うぐ……っ」
数分後。オーディンのアーマーは今にも砕けそうなほど傷つき、ナイトサバイブは変身が解け、秋山も全身傷だらけだった。
「今なら……とどめを……」
──キィィーーーン……
オーディンが秋山に這いよろうとすると、例の甲高い音が響いた。
「やめろオーディン。そいつは変身が解けている。ライダーでない者を消しても意味は無い」
「くっ……この屈辱、必ず……!!」
オーディンは秋山のシャドウスラッシャーへ這っていった。メタリックなフレームがオーディンの姿を映し出している。
「待……て」
止める秋山も虚しく、オーディンはフレームに吸い込まれていった。
秋山は全身の痛みを堪えながら立ち上がると、シャドウスラッシャーまでなんとか歩いて行った。
シートにまたがると、エンジンを掛け、里の寺子屋を目指し走って行った。
「馬鹿者、授業中に大声を出して!突然教室に奇声が響くから生徒達が怯えていたぞ!」
「奇声ってなによ!この愛くるしい声のどこが気持ち悪いっていうの?」
「“おばけが出た”と泣きそうな子もいたんだぞ!」
「まぁまぁ、とにかく二人共落ち着「「うるさい!」」いて」
くそ、せっかくいつか回避したお約束を食らってしまった。なんでこの2人はいつもケンカになるんだ?
ガタン!
その時、寺子屋の入り口から大きな物音がした。真司達が駆けつけると、傷だらけの蓮が倒れていた。
「蓮!どうしたんだよ一体、蓮!」
「待ってろ、私は医者を呼んでくる!」
慧音が外に飛び出そうとすると、
「その必要はなくてよ」
紫が扇子で蓮の体を軽く扇ぐと、みるみる傷が塞がっていき、やがて意識を取り戻した。
「……ここは、どこだ」
「蓮!……よかった助かって。ありがとう紫さん、でもどうやったらこんなこと……」
「あら、私の能力をお忘れ?“境界を操る程度の能力”。精神と肉体の境界をなくして傷を塞いだの。
体が傷ついても心まで傷つくとは限らないでしょう?」
「本当にありがとう、初めて尊敬した!」
「どういたしまして。でもムカつくわ」
「しかし、本当に何があったというんだ?」
傷が癒えても服だけはボロボロの蓮に、慧音が尋ねる。
「オーディン……仮面ライダーオーディンと戦ってた。ライダーバトルを司る存在を名乗っていた」
「ひょっとして神崎か!?」
「いや、多分、分身かなにかだろう。神崎が奴に話しかけてたからな」
「そいつが何にしろ、もう取るに足らない存在ですわ。私がとっておきのアイデアを持ってきたんですもの」
「ああ、重要な話があるんだろう。遅れて悪かった」
教室に前回の会議と同じメンバーが揃った。今回は紫から重要な提案があることで、
紫が教壇に立ち、他のメンバーは席についている。手塚が手を上げて質問する。
「あの、重要な発表って何なんですか?」
「よく聞いてくれました。前回課題として残った問題点を一気に解決する手段を見つけたのよ!」
「ほ、本当ですか!?」
「一体どうすればいいんだ?」
一気にざわつくメンバー達。そして紫は彼らにこう言った。
「神崎士郎と全面戦争することです!」
「こんにちは、八坂の神よ」
紫は守矢神社を訪れていた。あることを確かめるために。
「ああ、八雲の。珍しいじゃないか、わざわざこんなところまで来るなんて。今日は何用だい?」
「一つお願いしたい事がありまして」
「一体どうしたってんだい、改まって」
「真澄の鏡に入らせて頂きたいの」
「……海之から何か聞いたのかい」
「ええ。幻想郷、いえ、世界に関わる重要なことを」
「そうか、あいつが……いいだろう。でも、入るだけだぞ」
「もちろん。すぐ戻りますわ」
神奈子は、ライアを里に送ってからは、本殿の棚に裏返して置いてある真澄の鏡を持ってきた。
境内に戻ると神奈子は八雲に真澄の鏡を向けた。
「何をしたいのかはわからんが、さぁ、行ってきな」
「それでは、失礼しますわ」
紫は目を閉じ妖力を放出すると、虚と実の境界を操り、鏡の像と肉体の境をなくした。
これでミラーワールドに入れる。そして、ふわりと浮かぶと小さな鏡の中へ飛んでいった。
……
………
出口を抜けると、そこは無数の鏡面体で構成された広大な世界。事前に手塚から詳しく聞いていた通り、遥か向こうにコアミラーが見える。
「……なるほど、こうなっているのね」
ちなみに、じっくりコアミラーを観察している今も、四方八方からミラーモンスターが紫に襲いかかっているが、
現れた瞬間、スキマから突き出てくる標識や信号機に串刺しにされ、近づくことができないでいる。
「よくわかった、もういいわ」
紫は、ミラーモンスターの叫び声、断末魔を背に、ミラーワールドを後にした。
「何かわかったのかい?」
「ええ、とても重要なことが。ご協力感謝致しますわ」
「里に戻ったら海之に伝えといてくれ、たまには帰って来いって」
「確かに伝えておきますわ。では、ごめんあそばせ」
紫はスキマを開くと、次の目的地へ向かった。
──博麗神社
手頃な広さの境内に吹き抜ける風が心地よい午後。
博麗霊夢と八雲紫は、博麗神社の境内で立ち話をしていた。立ち話といえど、内容は極めて重要なものであった。
「紫、正気なの?」
「もちろん!だって、誰も得しないライダーバトルをやめさせて?ミラーモンスターも殲滅して?優衣さんと恵里さんを助けると。
全部同時にやるにはこれしかないじゃない」
「リスクがでかすぎるわ」
「それはわかってる。でも今の状況を放置しておくのも同じことではなくて?」
「それはそうだけど……」
「じゃあこうしましょう。早速例の会議を招集して決を採る。1人でも反対がいればこの案は却下。これでどう?」
「……うん、まぁそれならいい」
「決まりね!」
早速ゆかりは小さなスキマを作り、裂けた次元の穴に向かって叫んだ。
「やっほー!ゆっかりんでーす!今日の夕刻にゆかりんから大発表があるから、いつものメンバーは寺子屋に集合ね!ばいなら~」
ふぅ、と一仕事終えたとばかりに額を拭う紫。それを冷めた目で見る霊夢。
「なに今のバカ丸出しの放送」
「ちょ、バカはないでしょう!?ちょっとした遊び心じゃない。全員に要件は伝えたんだからいいでしょ」
「はいはい。会議ではちゃんと説明するのよ」
「わかってるわよ……それじゃ、私は一足先に里に行くから」
「夕刻にはまだ早いから、私は境内の掃除をしてからそっちに向かうわ」
「それじゃ、後でね」
紫は再びスキマを作り、今度は里へ向かった。夕刻までは間がある。
茶屋にでも寄って、お茶と団子でしばしのんびりしよう、と考えながら。
秋山蓮は先程の「ゆかりん放送」を聞いて、里へとシャドウスラッシャーを走らせていた。
ちょうど紅魔館へ出前を済ませたところだったので良いタイミングだった。
しかし、バイクの進路に怪しい人影が立っていた。黄金の翼をモチーフにしたアーマーとベルトを装備している。
ベルトにカードデッキが装填されていることから仮面ライダーであることは間違いない。蓮はバイクを止めると、金色のライダーに近づいた。
「お前は何者だ。今更俺に何の用だ」
「仮面ライダーオーディン。ライダーバトルを司る者。使命を果たせ、ライダーとしての使命を」
「ふざけるな。お前を倒したところで、どうせ“力”を渡す気などないんだろう。よくも今まで利用してくれたな」
「ふん。やはりあの女に余計なことを吹きこまれたか。まあいい。使命を捨てたライダーに用はない。ここで、消えろ」
「消えるのはお前だ」
蓮はシャドウスラッシャーまで走ると、ミラーにカードデッキをかざし、「変身!」仮面ライダーナイトに変身した。
「行くぞ!」
『SWORD VENT』
大型ランスを召喚したナイトがオーディンに斬りかかる。が、直立姿勢のままの瞬間移動で避けられた。
ナイト後方に移動したオーディンにもう一度斬りつけるが、やはり当てることができない。
「この程度で私を倒そうなど笑わせる」
オーディンが左腕を伸ばすと、左腕に鳳凰を象った錫杖が現れた。
そしてカードを1枚ドローし錫杖のカードスロットに装填。カバーを押し上げた。
『SWORD VENT』
カードの力が発動すると、オーディンの手に黄金の剣が召喚された。
そして、瞬間移動でナイトに接近し、一太刀浴びせた。重さも切れ味も桁違いの斬撃に、吹き飛ばされるナイト。
「ぐはっ……!」
たった1撃が凄まじい威力……このまま戦い続けても、一方的になぶり殺しにされるだけだ。あのカードに賭けるしかない──
ナイトは立ち上がると、ダークバイザーからゆっくりと1枚のカードをドローする。
背景の嵐が実体を持って吹き荒れるカードを取り出すと、辺りに激しい烈風が吹き荒れる。
すると、ダークバイザーから鏡の破片がはじけ飛び、蒼い翼のコウモリをモチーフにした盾形召喚機・ダークバイザーツバイに変形した。
そしてナイトはカードスロットに“SURVIVE”を装填。
『SURVIVE』
すかさず、召喚機に内蔵された柄を抜き取ると、鋭い金属音と共に蒼い装飾と黄金の刀身を持つ剣が現れた。
そしてナイトの体に、さらに3つの鏡像が重なり、黄金のフレームに、ブルーを基調としたアーマーに変形。
両肩を守る翼のように開いたガード、そして黒くはためくマントが装備された、仮面ライダーナイトの最強フォーム・ナイトサバイブが現れた。
「ライアのカードがナイトに渡っている……そして他数人のライダーもライダーバトルを中止している。やはり今回の戦い、修正する必要があるな」
ナイトサバイブを見たオーディンは、カードを1枚ドロー。錫杖のカードスロットに装填しようとしたその瞬間──カードが弾き飛ばされた。
「!?」
「殿方の決闘に水を差したくはないのだけれど、やはりチートカードは使用禁止ですわ」
声の主を見ると、いつかのメイド、十六夜咲夜だった。小高い丘の上に、腕を組んで立っていた。
遠くの樹の幹に、“TIME VENT”のカードがナイフで突き刺さっている。
「あの小娘……!!」
「私も時の摂理に触れる者の端くれ。奇妙な時間変動の兆候があれば察知できますわ。そして、そのカードで何をするのかも。それに──」
咲夜はちらりとナイトサバイブを見る。
「この方にいなくなられると、お嬢様が冷たいお蕎麦(わさび抜き)を食べられなくなりますの。
ご安心下さい。これ以上手出しをするつもりはありませんから。また貴方がチートしない限りは」
「貴様……!!」
「お前の相手はこの俺だ」
黄金に輝く剣でオーディンの行く手を遮るナイトサバイブ。
「サバイブ化した程度で、図に乗るなよ!」
再びナイトサバイブに剣を振り下ろすオーディン。それを剣で受け止めるナイトサバイブ。
一撃で吹き飛ばされた先程と違い、やはりパワーアップしている。だが、やはり敵の攻撃力が高いことにも変わりはない。
ナイトサバイブは全力で剣を振りぬくと、オーディンの剣を弾き返した。その勢いで、オーディンは後方にジャンプ。
「斬り合いだけでは消耗戦になるな」
ナイトサバイブはカードを1枚ドロー。ダークバイザーツバイに装填した。
『SHOOT VENT』
ダークバイザーツバイの両端が開き、ボウガンのような形状に変形。ナイトサバイブはオーディンに狙いを定めると、トリガーを引いた。
青白い光の矢が発射されるが、回避された。しかし、正面切っての斬り合いよりまだ当たりの目はある。
とはいえ、瞬間移動する相手に命中させるのは至難の業だ。何度か撃ってもなかなか当たらない。
「どうした?サバイブを手に入れてもその程度か」
(数撃ちゃ当たる、か……)
ナイトサバイブは黙ってカードをドロー。バイザーに装填した。
『TRICK VENT』
カードが発動すると、4体の分身が現れた。計5体になったナイトサバイブは、オーディンに照準を定めた。
「いいか、3度目だ」
分身に向け、小声で告げるナイトサバイブ本体。まず1射目。5体揃ってオーディンを撃つが、矢の数が増えてもやはり当たらない。
「無意味だ」
オーディンが回避した方向に2度目の斉射。オーディンの瞬間移動にかすりもしない。
「滑稽だな。数が増えようが遅すぎる」
次だ。無言で分身たちと示し合わせると、5体はオーディンに狙いを定めてトリガーを引く瞬間、それぞれ別方向を向いた。
5方向に放たれた矢のうち、一発が瞬間移動先に飛んでいき、オーディンに命中。
「うがあっ!!」
光の矢をまともに受け、体勢を崩すオーディン。
「今だ!!」
一時的に瞬間移動が止まったオーディンに向け、5体が光の矢を連射する。
5体から計数十発もの光の矢を受けたオーディンは、もはや瞬間移動が出来ないほどの深手を負った。
「おのれええぇ……!!」
オーディンは錫杖で身を支えながら、最後の切り札である“FINAL VENT”をドローし、錫杖のカードスロットに装填した。
『FINAL VENT』
「決着をつける!」
ナイトサバイブもカードをドロー。ダークバイザーツバイに装填。
『FINAL VENT』
両者、相手にとどめを刺すべく、ファイナルベントを発動。
オーディンは、金色に燃え上がる不死鳥、ゴルドフェニックスを召喚し、上空まで浮遊。
ナイトサバイブは、パワーアップしたダークウイング、ダークレイダーを召喚し、飛び乗った。
バイクのグリップのような両耳を握ると、ダークレイダーの両方の翼からタイヤが現れ、体が頭部を軸に回転し、バイクモードに変形。
そしてナイトサバイブのマントが竜巻状にバイク全体を包み、敵に向かって突進する。
「「終わりだ!!」」
オーディンはゴルドフェニックスと共に、体ごとナイトサバイブに向けて落下。ナイトサバイブはフルスロットルでオーディンに突撃。
オーディンの「エターナルカオス」とナイトサバイブの「疾風断」。
両者がぶつかり合った時、そのエネルギーで大爆発が起きた。
「が……はっ」
「うぐ……っ」
数分後。オーディンのアーマーは今にも砕けそうなほど傷つき、ナイトサバイブは変身が解け、秋山も全身傷だらけだった。
「今なら……とどめを……」
──キィィーーーン……
オーディンが秋山に這いよろうとすると、例の甲高い音が響いた。
「やめろオーディン。そいつは変身が解けている。ライダーでない者を消しても意味は無い」
「くっ……この屈辱、必ず……!!」
オーディンは秋山のシャドウスラッシャーへ這っていった。メタリックなフレームがオーディンの姿を映し出している。
「待……て」
止める秋山も虚しく、オーディンはフレームに吸い込まれていった。
秋山は全身の痛みを堪えながら立ち上がると、シャドウスラッシャーまでなんとか歩いて行った。
シートにまたがると、エンジンを掛け、里の寺子屋を目指し走って行った。
「馬鹿者、授業中に大声を出して!突然教室に奇声が響くから生徒達が怯えていたぞ!」
「奇声ってなによ!この愛くるしい声のどこが気持ち悪いっていうの?」
「“おばけが出た”と泣きそうな子もいたんだぞ!」
「まぁまぁ、とにかく二人共落ち着「「うるさい!」」いて」
くそ、せっかくいつか回避したお約束を食らってしまった。なんでこの2人はいつもケンカになるんだ?
ガタン!
その時、寺子屋の入り口から大きな物音がした。真司達が駆けつけると、傷だらけの蓮が倒れていた。
「蓮!どうしたんだよ一体、蓮!」
「待ってろ、私は医者を呼んでくる!」
慧音が外に飛び出そうとすると、
「その必要はなくてよ」
紫が扇子で蓮の体を軽く扇ぐと、みるみる傷が塞がっていき、やがて意識を取り戻した。
「……ここは、どこだ」
「蓮!……よかった助かって。ありがとう紫さん、でもどうやったらこんなこと……」
「あら、私の能力をお忘れ?“境界を操る程度の能力”。精神と肉体の境界をなくして傷を塞いだの。
体が傷ついても心まで傷つくとは限らないでしょう?」
「本当にありがとう、初めて尊敬した!」
「どういたしまして。でもムカつくわ」
「しかし、本当に何があったというんだ?」
傷が癒えても服だけはボロボロの蓮に、慧音が尋ねる。
「オーディン……仮面ライダーオーディンと戦ってた。ライダーバトルを司る存在を名乗っていた」
「ひょっとして神崎か!?」
「いや、多分、分身かなにかだろう。神崎が奴に話しかけてたからな」
「そいつが何にしろ、もう取るに足らない存在ですわ。私がとっておきのアイデアを持ってきたんですもの」
「ああ、重要な話があるんだろう。遅れて悪かった」
教室に前回の会議と同じメンバーが揃った。今回は紫から重要な提案があることで、
紫が教壇に立ち、他のメンバーは席についている。手塚が手を上げて質問する。
「あの、重要な発表って何なんですか?」
「よく聞いてくれました。前回課題として残った問題点を一気に解決する手段を見つけたのよ!」
「ほ、本当ですか!?」
「一体どうすればいいんだ?」
一気にざわつくメンバー達。そして紫は彼らにこう言った。
「神崎士郎と全面戦争することです!」
いつもありがとうございます。海外版はゲームまで出てて羨ましいです。
リュウガはズタボロになったオーディンの代わりに出せる可能性がゼロではないかも?
まだ肝心の話の中心を書いている途中なので何もはっきりしてませんが、
頑張って書き上げたいと思います。