ねぇ、妖夢？

　ねぇ、妖夢？　

　あなたいったいぜんたいどういうつもりなの？　

　たしかに私は「いい加減この庭も見飽きてきたわねぇ」とは言ったわ

「華やかさに欠ける」とか　

「面白みがない」とか

「これだから妖夢は」とかいろいろ言ったことも認めるわ
　
　ええそう認めるわよ、私は大人だから自分の発言に責任は持ちますとも
　
　覚えてないことには責任持てないけども　

　だけどねぇ、だからってねぇ、これはちょっとどうかと思う
　
　庭木を動物の形にカットするというのは、まぁ、いいわ

　海の向こうではそういう文化もあるみたいだし？　
　
　純和風の白玉楼に似合うかどうかはこの際置いておいて、そういうのもアリだとは思うのよ、でもね、だからといってね？　

　庭木全部をハダカデバネズミにするのはちょっとどうかと思う　

　しかもシルエットだけでハダカデバネズミとわかる作り込みにはもう感嘆を禁じ得ないわ。ミリ単位で枝葉を削り、ハダカデバネズミのぬめっとした肌質まで再現してるとこなんて匠の技にも程があるでしょ。いつの間にそんなに腕を上げていたのよ、TVチャンピオンが取材に来るレベルでしょこれ　

　え？　いや褒めてないわよぜんぜん
　
　気に入らなかったのでしょうか？　って、え、いや、なんでそんなガチで落ち込んでんの？　これ私に対する嫌がらせじゃなかったの？　人の嫌がることは進んでやりましょうとかいうどこぞのスキマ妖怪による教育のたまものじゃなかったの？　え、ホントに心の底からハダカデバネズミがちょーぜつかっちょよくてゴイスーでナイスーな正に神のつくりたもうた至高のシルエットだと思ってたの？　
　
　ないわー　いやマジでないわー
　
　え、ちょっとなんで泣いてんの？　
　
　しかもなに立ち尽くしたまま表情を消し、桜舞い散るようにはらはら涙を零しちゃってんの？　ガチ絶望してる顔じゃん！　そこまで悲しそうな人間の顔なんて生きてる時はもちろん死んでからだって見たことないわよ！？　

　あ、あー……うん、悪かった　私が悪かったです　ごめんなさい　

　え、あ、そう、そうね　

　ハダカデバネズミさんごめんなさい　

　そうね……まぁ、これはこれで冥府の光景と言えなくもないし、これはこれでよしとしましょう　

　ところで……ねぇ、妖夢？

　

「屋敷の方でもがたがたやってたみたいだけど……このスイッチはなに？」　
　
「白玉楼がロボに変形します」　
　
「ロボ？」
　
「動力は九尾飛翔（ヴァリアブルキュービ）です」　
　
「キュービ……？」　
　
「必殺技は『魔法剣・流星虚空斬（マスタースパーク）』です」
　
「マスター…………？？？？」