Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

夢の中のキスはどんな味?

2015/09/13 23:30:04
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私の朝は基本的に早い。特に宴会の翌日はそうだ。
基本的に酔い潰れた者は、家族や従者、友人に連れて帰られる。そのため宴会の翌日に神社にいるのは大抵一人暮らしの者だ。まぁ別に泊めるといっても酔いつぶれた連中を収納する部屋へ転がしておくだけだけど。そして転がされてるのが誰か確認していないのは無用心すぎると自分でも思っているが、特に目ぼしい物はないため気にしていない。
私の宴会の後の楽しみは酔い潰れた連中の寝顔観察だ。寝ている時だけは、どんな奴も良い寝顔を見せてくれる。

「さてさて、今日のお客さんは誰かしらね……って」
文とチルノだけだった。それだけなら気にしないが二人とも抱き合って寝ている。これはあれか、あてつけか。
しかし、無理やり起こすのもためらわれる寝顔ねぇ……。チルノなんか涎垂らしてるし。文は何かうーうー唸ってるけど、どんな夢を見ているのかしらね。
ふと、いつも使っているカメラが枕元に置いてある事に気がついた。……ふむ、これは霖之助さんに見せてもらったカメラと同じタイプみたいね……。
カメラを持ち、ファインダーを覗く。被写体はもちろん文とチルノだ。
「ハイ、チーズ」
カシャリと一枚写真を撮り、枕元にカメラを戻す。ま、いつも無断で撮影されてるし、別にいいわよね。写真を焼いたときの文の反応が見てみたいわ。
さて、今起こすのもあれだし朝食ぐらい出してあげますかね。いい寝顔の閲覧料ということで。
襖を後手に閉めながら私は少しだけ文を羨ましいと思ったのは絶対誰にも秘密だ。


目が覚めるとそこは神社だった。寝起きでボーッとしている頭を必死に働かして昨夜あったことを思い出そうとする。
「宴会……」
そうだ、宴会の飲み比べで倒れたチルノさんを母屋まで運んでそのまま寝てしまったんだ。……ん、チルノさんは何処?
一緒に寝転んでいたはずの彼女の姿を探そうと起き上がろうとして、胸の辺りの違和感に気が付いた。
掛け布団を剥がしてみると寝る前と同じ姿勢で胸にしがみついている彼女の姿が確認できた。いや、しがみつくと言うよりは抱きついているといったほうが正しいか。腕だけではなく、小さな体格に合っている可愛らしい脚で私の胴に抱きついている。
その姿に思わず笑いそうになるが、彼女を起こすために努めて冷静に声をかける。

「チルノさん起きてください。朝ですよ」
「んぁ……」

だめだ、起きてくれない。
プランB、声を掛けつつ肩を揺すってみる。

「おーい、チルノさんや~」ユサユサ
「……」ぎゅー

反応なし。かなり熟睡しているようだ。しかも巻きついている腕や脚の締め付けが強くなっているし。
子供らしいぷにぷにとした肌の弾力に意識が持ってかれそうになる。
「これは、マズいですね……」 いや何が? と訊かれると困るが……。

プランC、チルノさんごと起き上がって霊夢さんに応援を要請する。
とりあえずチルノさんを抱えて起き上がろうとして気が付く。
「チルノさんの体温で冷却で痺れて動けない……!?」
何この的確な弱点の狙い撃ち。想定外すぎる。

「プランD、所謂ピンチですね……」
とか言っている場合ではないが、正直動くこともままならないので、再び寝転がる。
暇つぶしにチルノさんの髪の毛を撫でる。私とは違うさらさらとした触り心地に軽く嫉妬を覚えつつ、静かに寝続けるその横顔を観察する。いつも騒がしく活発な姿からは創造できない静かな寝息をBGMに、私が下した感想は「勿体無いなぁ」だった。
いつもこれくらい大人しいなら引く手数多だろうに。
大人しいチルノさんは正直想像できないけど。もはや別人だ。

そう考えながら視線を下に移す。その先には小さな鼻とぷっくりとした健康的なピンク色をした唇がある。その唇に無意識に手が向かっている事に気が付いた私は慌てて手を引っ込める。一応彼女が寝ていることを確認して胸を撫で下ろした。
しかし見れば見るほど触ってみたい欲求に駆られる。
いったいどんな触り心地なんだろう? 温かいのか、氷精らしく冷たいのか?
考えていることを列挙すればきりがない。しかし今最大の欲求は
『チルノさんの唇に触ってみたい』
だけだった。

「絶対触り始めたらきりがないわよねぇ……」
そう言いながら震える手で触ろうとしている私はよっぽどの馬鹿だ。
高鳴る胸を必死に沈めようとしながらチルノさんの閉じた口元にゆっくり手を進める。
距離が縮むにつれ、緊張も強くなってくる。
ほんの少しの距離をとてつもなく長い距離に感じながら彼女を起こさないようにそろりそろりと進めていく。

そして遂に待ちわびた瞬間が来た。彼女の唇に指先が触れたのだ。
程よい弾力が私の指を刺激する。頬とはまた違う感触を楽しむ。少々冷たいが、緊張と興奮で火照った体には心地よく感じる。

しばらくふにふにとした唇を指で弱く摘んだりつついたりして楽しんでいた。
何気なく視線を上に持っていくとすぐに、少し紅く染まった頬と双眸がこちらに向いていることに気が付いて私は凍りついた。
まるで時が凍ったように感じた。沈黙がその場を支配する。それを破ったのが私だった。

「あの、チルノさん」
「……なに?」
少しの間を置いて返ってくる声。
「いつから起きてました?」
「文が、髪の毛触ってきた時くらい」
意外と早く起きていたのか。しかし疑問が残る。
「怒ってます?」
「……ちょっとだけ」
「そ、そうですか……」
「……」
「……」
再び訪れる沈黙。

「でもね、文に触られるの、いやじゃなかったよ」
「え?」
その言葉に驚き彼女の顔を見つめる。そんな私を横に押し倒して腹に跨る。その表情は悪戯を楽しんでいる子供そのものだった。
「ねぇ、文はなんであたいの唇触ってたの?」
「ちょっ、チルノさん顔近い……」
そう言うと彼女は意地悪な笑みを浮かべてさらに顔を下ろしてくる。まるでキスを迫るように。
「ねぇ、なんで答えられないの?」
「う……それは」

まさか『あなたの唇に触りたかっただけだ』と誰が答えられようか。答えに窮して彼女から目線を外す。自分でも真っ赤になっていることが容易に分かるほど顔が熱い。
そんな私を笑いながら見るチルノさんはおもむろに耳元に顔を寄せ、小さな声で囁く。
「文は可愛いね……いつも取材の時とかはスラスラ喋れるのに、こんな時は真っ赤になって喋れないんだ?」
「……」
「ねぇ、文? 続きはどんなことしようとしてたの?」
チルノさんの目は好奇二割、嗜虐八割の目だ。そんな目で私の目を覗き込まないでほしい。

「わ、私は……」
「でも、時間切れみたいだね」
「え?」
その言葉が終わるや否や、腹部に圧迫感を感じた。驚いている私の頬に両手を添えてチルノさんは言葉を続ける。
「ねぇ文。文はここであったことを全部忘れちゃうとあたい思うんだ。でも」
「ち、チルノさん?」
「あたいが文のことを大好きだってことは忘れないんで欲しいんだ。だからね」

そう言葉を切ったと思いきや私の視界は水色に染まった。



少しして視界はさっきまで見ていた光景に戻る。唯一違うのは、風景が崩れ始めたということだろうか。
チルノさんは紅く染まった顔で微笑みながら先程までの言葉を続ける。

「起きて、あや」
その瞬間、先程から続いていた圧迫感が強くなった。それと同時に、視界は白く染まることとなった。


「あ~や~起きてってば~!」
「ちょ、まっげほっげほっ!!!」
「え、あや大丈夫!?」
「とりあえずお腹の上から降りてください……」

腹の上で飛び跳ねていたチルノさんにとりあえず降りてもらう。いくら体格が小さくて軽いとはいえ、飛び跳ねられるとなると話は別だ。
心配そうなチルノさんに手を振って大丈夫だと咳き込みながら合図すると、ほっとしたような表情になった。と思ったら次は怒ったような表情を浮かべた。本当に面白い子だと思う。
「もー! あやったら声掛けても肩ゆすっても全然起きないんだから! それにうーうー言ってるし、心配したんだよ!?」
「あー……それはすみませんでした」
とりあえず謝ってみると彼女は満面の笑みで頷くと、霊夢さんが朝食を用意してくれた事を教えてくれた。
一足先に朝ごはんを食べに行くという彼女に礼を言うと申し訳なさそうな表情を浮かべ、腹の上で跳ねていたことを誤ってくれた。
気にしないでいいですよ、と伝えると頷いて今度こそ部屋を出て行った。

とたとたと軽い足跡が廊下に響くなか、私は無意識に唇を指でなぞっていた。
夢でなにかいろいろとショッキングなことがあった気がするが思い出せない。

「ちょっと文ー! ご飯が冷めちゃうじゃない! 早く来なさい!」
「はーい、ただいまー!」

響く霊夢さんの声に返事をして私は立ち上がる。
「ま、夢のことなんてどうでもいいか」
そう呟くと私は朝食への一歩を踏み出したのだった。
後日、現像した写真を見て呆気に取られる天狗の姿があったそうな。

チルノは結構長生きだと思うんですよね。だからこんな雰囲気のチルノも見てみたいと思いませんか?
思いませんかそうですか。
お読み頂きありがとうございました。
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コメント



1.南条削除
責められると一転して気弱になっちゃう文ちゃんがよかったです
それにしても目が覚めて真っ先に考えることがチルノのこととは、これはかなりのぞっこんなのですね
良いものを読ませていただきました
2.奇声を発する程度の能力削除
良かったです
3.ぺ9削除
イチャイチャ度が増してますね!表現が甘々で素晴らしいと思います。
チルノ攻めも新鮮な感じがしていいですね!
4.大根屋削除
文ちゃん、チルノちゃんに惚れすぎかw