Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

可能性の奇跡を探る

2015/07/14 22:30:48
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「はぁ……」
「アリスさん。どうされたんですか?」
「……ああ、早苗」
 ここは人里のとある居酒屋。
 まだ時刻は早いということもあり、人の姿はほとんどない。
 その一角に座して、ちびちびと酒を煽りつつ、時たまため息をつく人物――アリス・マーガトロイドに声をかけるのは、東風谷早苗という人間である。
「何だかね……。
 この頃、私の立場と言うか……」
「立場?」
「そうなのよ。
 何かさ、私、忘れられてきてるんじゃないか、って……」
「どうしてですか?」
「どうして、も何も」
 アリス・マーガトロイドはつぶやく。
「最近のナンバリングタイトル――輝針城では触れられもせず、深秘録では、心綺楼の背景にいたことすら忘れられ、そして今回の紺珠伝。
 一服休憩を置いて復活したあなた以外の新キャラは、花映塚以来のうどんげと来たものだわ。
 私なんて……ねぇ?」
「……」
「永夜抄以降、プレイアブルキャラになったのは非想天則までのこと。
 それももう……何年前だったかしら」
 ふっ、と彼女は冷めたような笑みを浮かべた。
 思えば遠くまで来たものだ――彼女は語る。
 唯一、旧作とのつながりを匂わせた状態で登場した妖々夢。その鮮やかな弾幕で人々を魅了し、続く永夜抄で、あっという間の自機キャラへ。
 萃夢想や緋想天と言った格闘弾幕アクションでも活躍し、キャラ人気もすこぶる高い。
 このまま行けば、ナンバリングシリーズレギュラーも夢ではない――そう思っていたはずなのに、今や、『背景にすら出られない女』となって久しい。
「やっぱり流行り廃りはあるものだからね……。
 新しいキャラが出れば、必然的に順位も下がる。人気投票でもどんどん順位が落ちていく。
 いずれ私も『あの東方キャラは今』シリーズで、顔に黒線入れられて出演するようになるかもしれないわね……」
 ちなみにその番組は、幻想郷テレビランキングでは常に上位に入っている、視聴率の高い番組である。
 この番組に出演するというのも、『ネタ』と言う要素以外に大切なものはあるのだが、アリスはそれに気づいていないようだ。
 グラスの中で、からん、と氷の音がする。
 彼女はそれを飲み干すと、『おかわり』とつぶやいた。
「アリスさん」
「早苗。
 あなたは、自分を大切にしなさいよ。
 霊夢や魔理沙はね、ほら、昔から立場が確約されている主人公だから。
 その地位が揺らぐことはないわ。
 けど、周りはそうでもない。
 いつ、あなたの存在が脅かされるかわからないわ。あざとい娘は一杯いるんだから。
 悪いやつらはね、天使の顔して心で爪を研いでいるものなのよ」
「アリスさん。ネガティブが過ぎます」
 そんな彼女に、早苗ははっきりと、そしてしっかりとした口調で告げた。
 少し、酒が回って、頬を赤く染めているアリスが『え?』という顔で振り返る。
「アリスさん。あなたは、『可能性』を自ら否定している。
 それでは、新たな可能性を掴むことなど、出来ないのですよ!」
 ばん、と早苗はカウンターを叩いて叫んだ。
 驚くくらいに大きくて、そして鋭い言葉だった。
 思わず、アリスはその場でほうけてしまう。
「アリスさん。わたしが今回、自機へと復活したこと――そして、新たに鈴仙さんが抜擢されたこと。
 まさか、これが、『奇跡』か何かのおかげだと思っているのですか?」
「え……っと、そ、それは……」
「はっきり言うなら、『人気』でもありませんよ」
「そ、それは……その……」
「ならば、何だと思うのです!」
 びしぃっ、と早苗は相手を指差し、右斜め45度に角度を取り、足と腕の位置にも気を配ったかっこいいポーズを決めた。
 アリスが狼狽し、思わず、手に持っていたグラスを床に落としてしまう。
 グラスの砕ける鋭い音と共に、早苗は言う。
「いいですか。
 これは可能性の話です。いつだって、可能性は0ではない。
 99%の確率で負ける勝負だって、1%の確率で勝てる可能性は残されている。
 勝つか負けるかの二元論で考えれば、常に勝率は50%! そして! 己が『勝つ』意気込みで戦いに向かい、『勝てば』勝率は100%となるのです!」
「そっ、それは……!」
 それは、実に単純かつ、誰も考えない事実。
 勝てる勝負も勝てなくなる。負けるつもりで戦っていては、その勝率は常に『0%』となるからだ。
 勝つために戦い、結果、勝つ。それこそが正しい。勝負とは、誰もが勝つために戦うものだ。
 ならば、勝率100%の戦いをするほうが賢い。
 アリスのように、戦う前から負けるものと思っているから『負ける』のだ。
「アリスさん。
 あなたには、まだ、勝利への可能性が残されている。
 それが何か、わかりますか?」
「それは……!」
「――恐らく、あなたはわかっている。わかっていて、あえて、その可能性から目を逸らしている。
 いいでしょう。教えてあげます。
 今回の自機キャラの基準! それはっ!」
 早苗が、右手で天を示す超かっこいいポーズを取った。
 そして、告げる。



「カップリングですっ!!」



「……カップリング……!」
「そう!
 霊夢さん、魔理沙さん、鈴仙さん、そしてこのわたし!
 いずれも、互いに何らかの関係を持っています!
『レイマリ』といえば大昔から、それこそ東方初期からの定番カップリングですっ!
 そして『レイサナ』の勢力も根強く、『サナマリ』も新興のものながら、着々と勢力を広げている!
 一方っ!
 鈴仙さんといえば、『うどみょん』! 神霊廟にて華々しく復活を飾った妖夢さんからのつながりで、鈴仙さんが今回の復活を遂げた!
 そう考えるのは、全くおかしくないっ! そうでしょう!?」
「……言われてみれば」
「そしてそして!
 アリスさん、あなたもまた、東方シリーズ初期からの根強いカップリングである『レイアリ』『マリアリ』の持ち主! そうではなかったのですか!?」
 まさしく、その瞬間、アリスは雷に打たれたかのように、その場に硬直していた。
 自分が持つ『可能性』を二つも、自分は忘れていた――その事実を、今、ようやく思い出したのだ。
「どちらも東方カップリング論争では一大勢力!
 どちらがタチでどちらがネコかでも、血で血を洗う紳士たちの殴り合いが日夜繰り広げられる、そこは常在戦場!
 そして何より、カップリングと言う『絆』が! 『つながり』が! 今また、あなたを自機へと呼び戻す、その可能性が0であると、言い切ることが出来るのですか!?」
 ――沈黙。
 そして、
「……そうね」
 小さな笑み。
 アリスは静かに、伏せた顔を上げた。
 まだ、そこに、いつもの彼女の表情は見られない。
 しかし、確かに、『彼女らしさ』の気配は戻ってきていた。
「言われてみれば、そうかもしれない。
 私は自分の中の可能性を、自分で摘み取ってしまうところだった……愚かな話ね」
「そういうことです」
「一度や二度、……いいえ、三度、四度と押しのけられたとはいえ、所詮はその程度。
 諦めない限り、そして、絆がある限り、いずれ『またいつか』の可能性は残されている」
「諦めなければ勝てる。
 若さとは振り向かないこと、諦めないことなのです。そして、愛とはためらわず、悔やまないことなのです」
「そうね。
 ありがとう、早苗」
「いいえ」
 二人は静けさを取り戻して、席に戻る。
 足下の割れたグラスを、アリスは『ごめんなさい』とかき集めて、店主へと戻した。
「……いつになるかわからないけれど、私はそれを信じて待ってみるとするわ」
「お互い、頑張りましょう」
「あら、余裕たっぷりね。勝者の余裕かしら」
「そうでもありませんよ。
 わたしだって、油断したら、いつまた誰かに取って代わられるかわからないんですから」
「別に勝負をしているわけじゃないけど、負けないわよ」
「こっちだって」
 段々、店に客が増えてくる。
 にぎわってくる店の中、二人はお互いに顔を見合わせて笑っていた。
 そこに漂うのは、間違いなく、『勝者』の気配。
 彼女たちは、今、目の前に控えている戦いに勝ったのだ。そして、これからも続く戦いへと挑む勇気を手に入れたのである。
 負けるつもりで戦ってはいけない。必ず勝つつもりで戦わなくてはいけない。
 己の可能性を、最初から、自分の手で潰してしまうことほど愚かなことはない。
 勝つのだ。
 これからも。
 戦っていくのだ。
 この先もずっと。
 自分の中の、勝利への道と可能性を信じて。
華扇「え? 私にインタビュー? 深秘録で堂々のプレイアブルキャラへの昇格について?
    そ、そうですね。まぁ、受けておいてあげてもいいでしょう。たまにはこういうのも息抜きに必要です。
    きっかけというか理由は……ほら、幻想郷における物知りというか、智慧者の立場は色々あれど、それが親しみを持って接してくる、というのはないでしょう?
    その点、私はばっちり、そこにはまりましたから。出しやすく、動かしやすい、それでいて神の視点を持つことが出来る。
    これですね、やっぱり!
    ……え? カップリング論争がきっかけじゃないか、って?
    そ、そんなこと、あるはずがないでしょう! 第一、何ですか、カップリングって!
    私はですね、よく聞きなさい! 別に、霊夢のことをどうとかそういうのではなくて、彼女が真面目に幻想郷の要の巫女としてふさわしい自覚と人格、あと神格を持てればと
    そう考えているだけであって……!
    ……え? 霊夢のことは別に何も言ってない?
    い、いいじゃないですか、揚げ足取るな!
    霊華? 華霊? 何ですか、その、人の名前とか魚の名前みたいなもの!
    あ、ちょっと待ちなさい! ちょっと! 何その顔! 明日の朝刊の見出しはこれだ、みたいな顔してないで!
    ちょっと! こら、待ちなさい! こら、そこの天狗! 待てーっ!!」
haruka
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
良かったです
2.名前が無い程度の能力削除
【悲報】ピンク、最後の最後にクリティカル
3.名前が無い程度の能力削除
つまりにゃんにゃん自機化待ったなしということですね
4.名前が無い程度の能力削除
だがしかし女子高生キャラを奪われ何ちゃって女子高生となった早苗さんの明日はどっちだ
5.名前が無い程度の能力削除
(ぶっちゃけサナマリを見たことが)ないです
6.名前が無い程度の能力削除
今ここにサナアリの可能性を見た
7.名前が無い程度の能力削除
CP相手が居ない子たちだって居るんですよ!