Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

恐怖! 宇宙最強のエイリアン

2015/02/01 22:06:00
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 幻想郷が宝船とUFOに沸いていたその頃、恐るべき侵略者の魔の手が地球に迫っていたのだった!



 ……いくばくかのアクシデントと共に。



 ◇ ◇ ◇



「隊長、やっぱり駄目です。ステルス装置、完全に壊れちゃってますよ」
「……マジか」
「これじゃあこの偵察艇ふね、丸見えですねえ」
「くそっ、これから降下して任務を始めようって時に!」
「どうせ降下偵察なんかしなくたって、隣の惑星にも行けないような未開人が僕らに敵うわけないと思うんですけどね」
「同感だが言うな。これも仕事だ」
「へーい。でも実際のところ、どうやって偵察するんですか?」
「あー、いま考える……」






「隊長隊長、朗報です。グッドニュースです」
「あん? なんだよこんな時に」
「ちょっとした噂を傍受したんですけどね。なんでも今、地球のある地域ではUFOが大発生してるそうですよ」
「……は? はぁ。それで、それがなんで朗報なんだ?」
「鈍いなあ。つまりですね、UFOが沢山いる場所なら、僕らの船が一隻紛れ込んだところで目立ちゃしないじゃないですか」
「おおっ、なるほど。そこでなら問題なく偵察ができるってわけか」
「そういう事です。ねえ隊長、行ってみましょうよ」
「む、そうだな。こんな軌道上ところでずっと立ち往生してるわけにもいかんしなあ。……で、その、ある地域ってのはどこよ?」
「はい。幻想郷です」
「幻想郷? なに県?」
「さあ」
「さあってお前……」
「なぜか具体的な座標データが取得できないんですよね。でもほら、この船のワープ装置にお願いすれば適当に連れてってくれますって」
「うむ。やたら高性能だからな」
「では目的地をセットしまーす。幻・想・卿、っと」
「間違ってるそこ打ち間違ってる」






「ふーむ。ここが幻想郷か」
「この惑星の中でも、ひときわ未開っぽい所ですねえ」
「情報のとおり、UFOがわんさかいるようだが……おい、あれ本当にただのハリボテなんだろうな?」
「間違いありません。何度スキャンしても怪しい反応はゼロ。完全にただ浮いて飛ぶだけのシロモノです」
「そっか。ま、他の同業者インベーダーじゃないなら別にいいんだ」
「心配要りませんよ。どうせ誰か、暇な原住民のイタズラに決まってますって」
「うむ。しかし、なんというか、ものすごく安直なデザインのUFOだな……」
「今どき漫画でも見ませんよね、あんなUFO。作った奴の頭の程度が知れますよ。HAHAHA」
「よし、問題が無いならとっとと偵察だ。地球侵略作戦の発動はこの任務にかかってるんだからな!」
「了解っ。地球人はいねがー、っと」






「――こうして見てみると、地球人ってのは随分とバリエーションが豊富なんだな」
「同感です」
「毛の色どころか、羽とか尻尾の数まで個体ごとに違ってて目眩がするぞ……」
「あの地球人なんて尻尾が九本も生えてますよ。かさばるだろーなーあれ」
「あと、もう一つ気になってるんだが……さっきから見かける奴、どいつもこいつもメスっぽくないか? 確か、地球人のオスとメスはおよそ同数のはずだろ」
「種族全体で、オスのメス化が進んでるのかもしれませんよ。データによれば、最近の地球人はオスでも化粧したり日傘差したり育休取ったりするそうで」
「なるほど。我々には見分けがつかんが、この中にもオスが混じっているということか」
「あっ。ほら隊長、あそこの建物の陰に、つがいっぽいのがいますよ!」
「ほう……ありゃ何だ、求愛行動中か?」
「きっとそうです。メス同士であんなことしませんよ常識的に考えて」
「となると、あの日傘持ってるパツキンの方がオスかな」
「ですね。そんで一回り小さい紅白の方がメスでしょう」
「うむ。だんだん地球人というものが解ってきたな」
「この調子でガンガン行きましょう!」






「隊長、今度は喧嘩中と思われる二匹を発見しました」
「いいぞ! 地球人の戦闘能力を知る絶好の機会だ。できる限り接近しろ」
「見たところ、武器らしい武器は無いようですね。白毛の方は完全に丸腰だし、黒い方も木の枝を持っているだけです」
「ふっ。あれでは未開人どころか原始人よな。やはり我らの敵ではない――っておい、なんか火が出たぞ火が! あの白いの、今どこから火を吹いた!?」
解析不能アンノウンです! 化学・電装・熱核反応いずれも検知していません。しかし、あれはかなりの高温ですよ」
「むう。未知の兵器か……それともまさか、あれが奴らの能力なのか……?」
「あ、二匹とも飛んだ」
「えっ? 地球人って飛べるの?」
「そうみたいですね。いいなー、生身で飛べるって」
「こ、今度は木の枝から弾丸を雨あられと発射してるぞ!」
「便利な木があるんですね。地球には」
「二匹とも相討ちで黒焦げになったのに、一秒で治っちまったぞ!」
「たくましいですね」
「黒毛の方がバカでかい一枚板を次々とぶん投げてるぞ!」
「うわあ、トラウマになりそう」
「いつの間にか喧嘩が終わって、二匹で茶ァしばいてるぞ!」
「本当は仲良しだったんですね」
「…………」
「…………」
「地球人やばくね?」
「そんな気がしてきました」






「隊長~、ちょっと一休みしませんか?」
「う、うむ。そうだな。立て続けに恐ろしいものを見すぎて、こっちのメンタルが持たん」
「いやー、何処に行っても凄い奴ばかりでしたねえ。みんな当たり前のように弾とかレーザーとか座薬とか出すし」
「ああ。しかも瞬間移動はするわ巨大化はするわ、首が取れても生きてるわ……」
「聞いた話じゃ、満月の夜はさらにパワーアップするんだとか」
「想像したくねえ」
「それにしても、この何もない未開の地にあんなハイスペックな連中がいるのが不思議ですね」
「……いや、それは違うな。どうやら俺たちは、とんでもない思い違いをしていたようだ」
「どういうことです?」
「いいか、地球人は未開なんじゃない。体一つでなんでもできるから、特別な道具や設備を作る必要が無かったってことなんだよ!」
「な、なんだってー」

 ボカーン

「ん? なんだ今の音」
「あっ、近くを飛んでいるUFOたちが次々と墜落していきます! 何者かの攻撃を受けている模様!」
「なんだと!? 弾道を解析して下手人の位置を特定するんだ! 急げ!」
「解析もなにも、素で目立ちまくってますよあの地球人。ほら、あそこでどっかんどっかん乱射してる黒い羽の」
「あいつか! なんのつもりだ?」
「単にUFOを撃ち落として遊んでいるのでは?」
「なんて傍迷惑な奴だ。しかも、このセンサーの反応は……核融合反応? ただの棒に見えるアレが、超小型の核融合炉だというのか!?」
「地球人が真面目に道具を作るとああなっちゃうんですね」
「しかもそれを遊びに使うとは、どこまで恐ろしい奴らなんだ……」
「ちなみに隊長、奴の次の狙いはこの船のようです。来ますよ弾幕が」
「か、回避ィ―――!!」
「はいはい。でも、頑張って動いてはいるんですが、段々と攻撃がハードになってきてですね……」
「負けるな! 超負けるな!」
「やっ、たっ、こらっ、あー、これは覚えないと避けられない。言っときますが被弾しますよ。対ショック姿勢!」
「お、落ち着け。偵察艇といえど、この船には並の砲撃ではビクともしない無敵バリヤーが――」
「そのバリヤーと後部メインエンジンが吹っ飛びました」
「いやぁ――――――っ!!」
「大丈夫。跡形もなくなっちゃったから、爆発の心配はありません」
「そういう問題じゃねえだろスカポンタン! 緊急通信回線開け! 船が動くうちに収集データを本国へ送るッ!」
「こんな時にも任務を忘れないんですね。格好いいなあ」
「やかましいわ! お前は不時着に備えろ!」
「限りなく墜落に近い不時着ですけどね。あ、ちょうどいい所に湖が」
「メーデーメーデー! なにとぞ侵略作戦の撤回を! 地球人は、地球人こそは――」






「まぎれもなく、宇宙最強のエイリアンですっ!!」



 どっぱ――――――ん。












 ◇ ◇ ◇


「……綺麗な湖だなあ」
「僕らの船、沈んじゃいましたね」
「ああ……。まあ、命あっての物種だ。あの状況でよくやってくれた」
「恐縮です。それで隊長、これからどうしますか?」
「そうさな。偵察員としての義理は果たしたし、任務はもう終わりだ。空気もうまいし、幻想郷ここで嫁さんでも探そうか」
「おっ。切り替え早いですね」
「ふふん、侵略者の意地というものよ。こうなったら我々だけでもこの地で楽しく暮らしてやろうじゃないか」
「いいですね! お供しますよ。……実はさっき、不時着の際にここら一帯をスキャンしたんですけど、結構可愛い娘がいるみたいですよ」
「ほう? ハハハこやつめ、抜け目が無いな! ではいざ出撃といこうか!」
「イエッサー。それでは張り切って――」

 カチーン

「ん? どうしたんだお前、急に固まっ……な……なんだ? 体のうごきが、に……にぶいぞ……」

 コチーン











 ◇ ◇ ◇


「大ちゃん見て見てー。変な色のカエル捕まえた!」
「可哀相だよチルノちゃん。早く解凍にがしてあげようよー」



(地球人まじぱねぇ)
(もう侵略はこりごりでござる)



 ~完~
こうして地球は救われたのです。
監督
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
カエル型なのに人間の姿がきれいに見えるのか
って思ったけど地球のカエルのことかw
2.名前が無い程度の能力削除
なんだか星新一みたいな話だw
科学がどんなに進歩しても幻想郷の住民にはなかなか敵いそうもありませんなー
面白かったです。笑えました
3.名前が図書程度の能力削除
紫と霊夢は何してたんですかねえ
4.奇声を発する程度の能力削除
面白かったです
5.名前が無い程度の能力削除
やっぱりチルノは最強だった!
6.絶望を司る程度の能力削除
恐れるな....それ人間じゃないから。
おもしろかったです。
7.名前が無い程度の能力削除
ありがとう幻想郷!
8.名前が無い程度の能力削除
発想がすばらしい。
さすが監督さんだ。
9.名前が無い程度の能力削除
手軽にコミカルでうまうま
10.名前が無い程度の能力削除
さすが監督さんという感じ!

こういうかるーい笑える話書いてみたいですねぇ