地底闘技場にある北西控え室の扉が開かれる。つい先程試合を終えて長椅子で一息吐いていた八雲藍がそちらの方を向くと、自らのセコンドが目に映った。
参加選手ではない地上の巫女である博麗霊夢は以前のように室内を見回す。そこには第五試合以降の一回戦勝者である三名しか部屋にはいない。それを理解して何を思うでもなく、真っ直ぐ藍の前に歩み寄った。
「一回戦おつかれさま。ま、大穴としてはほぼ満点ね」
「大穴?」
藍が言葉の真意を理解する前に、霊夢の背中に小鬼の伊吹萃香が飛び掛かった。
「霊夢ー。私も勝ったぞー!」
「わーかってるわよ!」
なんとか体勢を保った霊夢に、更に裾を掴む者がいた。
「針妙丸……」
「私も勝ったぞ、霊夢!」
「そうね」
霊夢自身、小人族の少名針妙丸が亡霊の西行寺幽々子に勝利を収めるとは思ってはいなかった。体躯も相まって子供のように笑顔を見せる小人に霊夢も笑みを溢してしまう。
「頑張りなさい。幽々子に勝ったあなたは、もう他の奴等から甘く見られることはないわ」
腰を落として視線の高さを合わせる霊夢を見る小人の表情は自信に溢れていた。
「ああ。私は結局、小槌に頼らないと戦えない。しかし逆に言えば、小槌があれば私のような者でも強者と真剣勝負をする資格を持てる。それが分かっただけでも十分さ」
「言うじゃないかい」
自信溢れる小人を見て、未だ背中にしがみつく萃香は笑う。
「生憎だけど二回戦は私だよ。霊夢の言う通り、幽々子を倒したあんたに手加減するのは失礼かもしれないね」
流石に一歩引いてしまう小人に鬼はまた笑う。
「ま、こっちに来なよ。ヒントくらいはやるさ」
萃香は針妙丸を壁際に連れて、話を始める。今まで戦った魑魅魍魎を相手取り、如何にして豪快に勝利を収めたか、という内容のものだ。
それを長椅子に座りながら話半分に聞く霊夢の横に藍は座る。
「いい気分だよ」
「え?」
「今でも、野蛮で暴力的だとは思う。しかしそれでも、スペルカードルール以上にはっきりとした勝利の喜びを味わえた。同時に、試合の終盤で村沙水蜜に奇襲を許してしまった時、一瞬よぎった敗北の恐怖も。久しぶりだったよ」
「そうね。紫は美しさも競えることができるスペルカードルール、とか言ってたけど。ほぼあなたのパーフェクト勝利だったさっきの試合。なんて言うか……綺麗な戦いだったわ」
「はは、それは良かった」
霊夢の見る先で萃香はただ自分勝手に話し続けている。しかしそれでも針妙丸は怖じ気づくことなく楽しそうに聞き続けている。その様を見て、不思議と針妙丸と天邪鬼の姿が被って見えた。
「あんた達、さっきまで戦ってたのよね?」
余りにもほのぼのとした室内の雰囲気にのまれてしまいそうになり、霊夢は苦笑した。
一方で、試合を控える化け狸の二ッ岩マミゾウもにやけ顔を抑えきれないでいた。
「楽しそうだな」
同じ命蓮寺に属する鵺の封獣ぬえにマミゾウは応える。
「二回戦であの忌まわしき狐と戦えることもそうじゃが。儂ら六人、うまい具合に別れたもんじゃのう。儂とお前に至っては、ちょうど真ん中を挟んでおる」
「そして私達は、恐らく三回戦で鬼に当たる。まぁ、確かにうまい具合にばらけてるね。これが本当にランダムで決められたのか怪しく思うよ」
「閻魔様ならば、まぁ目隠ししてもそれくらいはできそうではあるがの」
「しかし……」
ぬえは通路の奥を見るも、そこから他の命蓮寺勢が訪れる気配はない。
「ムラサの時の仕返しなのか誰も来ないな」
「それこそ舟幽霊の見舞いじゃろう。それに儂は、この方が落ち着くよ」
「博麗霊夢や道教の奴等に対抗するためにお前を連れてきたんだ。情けない戦いはするなよ」
「はは、また懐かしい話じゃ。ま、折角だから楽しまんとな」
選手入場を促す古明地さとりの声が通路に響き、マミゾウは闘技場に足を踏み入れる。
ちらりと客席中を見回すと鬼や開催者代理の試合が終わったためか先程よりぽつぽつと人が減っていた。それでも、自分達や対戦相手を応援する野蛮な声援は湧き続ける。
妖怪が心おきなく騒ぎ、喧嘩をする。昔の外の世界では割と茶飯事だった光景を思いだし、マミゾウは懐かしさを感じた。
「儂も年かのう、なんて」
苦笑しつつ闘技場の中央まで歩き、自分の対戦相手と対峙する。長身である自分と比べ二回りは小さい、青い作業着に身を包む妖怪河童――河城にとりと目を合わせた。
「久し振りじゃのう、河童」
「ああ。どこかで見たことあると思ったら、前に倒した妖怪狸か」
「その節は世話になったのう」
「ついてないね。よりによって私と相手になるなんて」
「ふぉっふぉっふぉ。しかし今回のルールは、お前さんにとって不利なものじゃろう」
にとりのような河童という種族は、総じて器用であり水で動く機械を造ることができる。以前マミゾウと拳を交えた時は、それらを用いて戦った。しかし今回の規則では例外を除き道具は一つまでしか使用できない。
「それに、お前さんだけじゃない。霊夢や魔理沙、色んな奴らとも戦い、この世界での戦いを学んだ。もう知識不足で負けることなどありはせんよ」
「そう」
にとりは会話の中、左の胸ポケットを見る。
――言ってろ。お前が何であろうと、私が造った『とっておき』で御陀仏さ。
にとりの不遜な態度にマミゾウはあくまでうすらわらうだけである。
「試合時間変更の申し立て等があれば聞きますが?」
審判長を務める閻魔の四季映姫・ヤマザナドゥに対し、マミゾウは右手を肩まで上げる。
「何か?」
「ええと、そうじゃのう。確か試合時間は十五分じゃったか?」
「はい。時間切れになれば私と八雲紫、古明地さとりの三名で判定をとります」
「そうかい。なら、その時間を五分延ばしてくれんかのう。それでいて、その始めの五分は勝敗とは関係ない戦いをさせてくれんか? 飛ぶ事も禁止にしてほしい」
制限時間を二十分にして、始めの五分間はどのようにしても勝敗が下されないようにし、更に空を飛ぶこともできないようにする。マミゾウが言ったその申し出の真意をにとりどころか映姫や八雲紫も理解できない。心を読めるさとりは理解していたが、隣で座っている勇儀を横目で見て何も言わなかった。
「どうしますか?」
迷うにとりは映姫の問いかけに応えることができない。それを見て、マミゾウはわざとらしく吹きだす。
「儂が怖いか? 運のない儂が」
にとりは舌打ちしつつ、「上等だよ。いいよそれで」と応えた。
それを見て紫は映姫を呼び寄せ、耳打ちする。
戻って来た映姫は二人に結果を伝え、司会進行のさとりはそれを客席中に伝えた。
「ええ、二ッ岩マミゾウ選手の要望により、今回の試合時間は二十分となり、更に始めの五分間は勝敗とは関係ない戦い――どのような場合になっても勝敗を判定しない事になります。ただし、例外的に弾幕の使用だけは禁止のままと致します。あと一つ、その五分間は空を飛ぶことを禁止します」
追加規則について魔理沙を含めた客席は困惑する。
「なんだそりゃあ? それじゃあその五分間、勝負はしないってことか? それじゃ楽しめないぜ」
「そうとは限らないんじゃない?」
暴力的な何かを期待するかのように幽香の表情は笑っていた。
「五分間、何があっても勝敗はつかない。それこそ、審判が戦闘不能と判断しても、両手両足を切断されても。更に、空を飛んで逃げることさえ許されない」
「な、なるほど」
魔理沙が納得する中、制限時間が二十分となった試合が始まろうとする。
「ちょっと待った」
しかしマミゾウは更に、試合に影響のないよう審判席に戻ろうとした映姫を呼び止めた。
「お前さんもここに残っといてくれ。あと、もう始めても構わんぞ」
「はぁ……」
訝しげに思いつつも映姫は試合開始を判断していいかにとりに視線を向ける。
「いいよ」
にとりの返答を聞き、映姫は戸惑いつつも宣言は、はっきりとする。
「一回戦第八試合……始めっ」
映姫が闘技場で試合開始を宣言すること自体、先の七戦では一切ない事だったので客席も困惑する。それでいて闘技場では映姫を含め、三人は棒立ちのままでいた。
「で、どうするんだい? この状態で戦うの?」
にとりの問いに対しマミゾウは黙って歩き出す。とある場所に着くと、そこから片足を引きずりながら歩き、地面に線のようなものを引いていく。数十秒程経ち、マミゾウが線を引き始めた場所に戻った時、それはにとりや映姫を囲う円となっていた。
「なんだこりゃ……」
言いつつ、にとりは薄々感付いていた。五メートルない小さな円、そして自分とマミゾウの他に映姫という審判がいる。
「相撲をしようじゃないかい」
「……はぁ?」
「お前さんは河童じゃろう? 河童は相撲が好きじゃと聞いたが。それに、儂は一度お前さんに負けておる。本来の勝負の前に勝敗をとんとんにしておきたいと思っての」
にとりは多少面喰っていたが、しょうがないといった様子で頭を掻いた。
「いいよ、上等だよ。やろうよ、相撲」
「決まりじゃのう」
互いに靴を脱ぎ、唐突に行われることになった相撲勝負だったが、それはそれで観客は湧き上がりだす。相撲が得意である河童と最近外界から来た妖怪狸、どちらが優勢かは誰にも判らない。開催者である八雲紫も御満悦な表情だった。
――あなた達二人に応え、道具を用意しましょう。と言っても、まわしでは時間が掛かるでしょうから……。
突如にとりとマミゾウが向かい合う場所に小さなスキマが現れる。そこから道着の帯が二本落ちたので、二人はそれぞれの帯を手に取った。
「儂が白帯かい」
にとりが黒帯を腰に巻き、マミゾウは白帯を締めていく。
「勇儀さんはどう見ます、この対決」
何気ないさとりの一言に、勇儀は酔っているのか大きく笑う。
「どっちにしろ私には敵いっこないさ。ただ……あの狸、喧嘩の売り方だけは上手いね」
勇儀の視線に映るにとりとマミゾウは土俵の中で屈む。その二人を見て前列の席にいる妖怪達からは徐々にどよめきが漏れだしていく。相撲勝負をする二人の表情は、下手すれば今まで戦った者達よりも鋭い眼光をしていた。
――ああ、好きだよ。大好きさ! こんな所でも相撲ができるなんて思わなかったよ。だからこそ、あんたをあしらってやるさ。外の世界から来たのか知らないけど、相撲なら私に勝てるっていうその思い込み、ぶっ壊してやるよ!
にとりは片手を突き、マミゾウに殺気を飛ばす。
――さぞ腕に自信があるんじゃろう、河童。さっきは仕方ないといった態度を装ってたが、今まで何人もの人間や妖怪を化かしてきた儂の目は誤魔化せんわい。ここでお前さんを相撲で捻じ伏せ、士気を崩して見せようじゃないかい!
マミゾウは不敵な笑みを浮かべてにとりを睨む。
既に高揚しきっている戦意を見せる二人に閻魔は溜息を吐きつつも、相撲の審判――行司としての役割を果たすべく土俵ぎりぎりまで下がる。
「両者、手を付いて」
なかなか残り片方の手を着かないにとりを見て、寧ろマミゾウからは余裕の笑みが浮かぶ。
――なんじゃなんじゃ。偉そうにしておいて儂に先手を譲る気もないんかい。仕方ないのう。
マミゾウがはっきりと両拳を地面につけた瞬間――すぐさまにとりも両手を一瞬だけ着き、そのまま跳ぶ。
――上手い……!
驚きつつもすぐさまマミゾウが放った張り手さえにとりは潜り、あっさりと懐に潜り込んだ。これで背の高さや体重差の優劣は無くなったに等しい。
「こぉんの……舐めるな!」
力付くで押し返そうとするマミゾウに対しにとりは笑う。左手だけを残して身体で半円を描き、左足を置く。足を掛けてマミゾウを前に倒す作戦だったが、そこで簡単には終わらない。
「甘いのう」
初めから分かっていたかのようにマミゾウは足にかかることなく右に回る。あっという間に、にとりが土俵際になり状況は逆転した。
――嘘……。でかいくせに、あの力づくはフェイクだったのか!
「残念じゃったのう。すぽーつは頭じゃ、頭」
言いつつ、とどめとばかりに押し出そうとするも、にとりの身体は土俵際から後ろに出ない。
――人を見かけで判断するなよ。ずっと前まで外の世界で暮らしてた狸が……。
勇儀は静かに河童達の相撲を見ながら、「あの見た目で中々強いんだよ、河童は」とさとりに話していた。
――ある時まで、鬼との相撲に散々付き合わされてきた私達に勝てるわけないだろ!
にとりの足は土俵際から内側に進んでいく。
「やるじゃないかい……!」
帯を掴んで引き攣られるマミゾウに対し、にとりはがっちりと身体を下からつける。それでも、自分が優勢だとは思えなかった。
――なんでこいつの身体……こんなにリラックスしてるんだ?
戸惑いつつもにとりは一気に力を引く方向へ転換し、再び半円を描きながら左手だけを残しマミゾウを前に倒そうとする。マミゾウの右手は自分の左腕の上から帯を掴んでいたので、その点は有利だとにとりは思い込んでいた。
マミゾウは思っていたよりあっさりと前に動かされる。しかし、突如にとりの身体は止まった。外側にあるマミゾウの右腕が、がっちりとにとりの左肘を捉えていた。
「すまんの。相撲に誘っておいてなんじゃが、儂は柔術の方が得意でな」
マミゾウは右腋をしめて左に回る、帯から手を放させたにとりの肘は捉えられ、反射的に前に進む事しかできない。マミゾウはそのまま前に進み、にとりを土俵際に追い込んでいく。
――勝負ありじゃ!
無理に堪えればにとりの左肘は破壊される。しかし既に回り込むために必要な土俵の間隔もない。飛ぶ事も禁止された規則の中、にとりは既に詰んでいる。マミゾウがそう思っていた時、まるで消えたかのようににとりの左腕の感触はなくなった。
「な……?」
にとりはいつの間にかマミゾウの背後にいて、そこから諸手でマミゾウの背中を押し出そうとする。しかし背中を許しているにも関わらずマミゾウはそれを両手で受け止めた。
それに驚いてしまい、追撃の手はまだあったもののにとりは手を振り払い間合いをとってしまった。
「な……なんで分かるんだよ!」
「なぁに、単純な経験則よ。それより質問したいのはこっちの方じゃ。肘が決まって完璧な『小手投げ』の体勢じゃったはずじゃ。何故お前さんは逃げられた?」
「……ふん」
にとりは後ろ頭に左腕を回す、肘関節部分が右肩まで付いてしまうのではと思うほどまで左肩は柔らかく曲がり、左肘を曲げて顔の前に出す。右手の補助で押さえつつ手首を捻った指先は左耳に触れる、という奇妙な光景ができあがっていた。
「ほ……ほほう。河童の手は伸びるという話は聞いた事はあるが、これはこれで圧巻じゃのう」
「これだけは鬼よりも勝ってると自覚してる」
にとりはゆっくりと左腕を戻していく。
「だから、私に関節技は通用しないよ。そして、この身体を活かしてこんなこともできる」
両腕の力をだらりと抜いた状態でにとりはマミゾウに近付く。
奇襲に耐えようと腰を落としたマミゾウの左頬に突如衝撃が走る。それは柔軟な腕から放たれる鞭のようなにとりの張り手だった。
――儂が……間合いを誤った!?
次に放たれたにとりの張り手は咄嗟に腕を出して防ぐことができた。しかし、異常な速度によって放たれた衝撃は鈍い痛みとして残る。
「ま、まだまだ本試合ではないぞ。相撲をしようじゃないかい」
「愚問だね。突っ張りが相撲技じゃないって言うのかい?」
再びにとりは腕を振る。マミゾウの鼓膜を破壊せんとばかりに放たれたそれは、しかし空を切った。この瞬間、二ッ岩マミゾウは初めてにとりより低い姿勢を構えた。咄嗟にマミゾウより内側に手を入れて帯を掴む事はできたが、その奇襲のような勢いににとりは再び土俵際に追い詰められる。
「策さえ絡め捕れば、柔など剛に捻じ伏せられるわい!」
その一言は、にとりの癇に障るものだった。
――いつから……いつから私が柔寄りだと勘違いした!
身体を付けて全霊を込めたにとりは、二回り大きいマミゾウを持ち上げた。
――鬼程じゃあない。だけどこの『やぐら』は私への見定めを誤ったツケだ!
腰や手に最大限の力を込めたにとりによって完全に身体が宙へと浮いたマミゾウだったが、それでも表情からはにやけた笑みが消えていなかった。
――お前さんの思い、そのままそっくり返すよ。
河童とは比べ物にならない長身による左足は、にとりの伸びきった腰と膝にがっちりと絡みつく。
――儂のような捻くれ者を剛だと思い込むとは、愚かじゃのう!
マミゾウを持ち上げるために自ら生み出した引く力の勢い。右脚を完全に殺され、如何に河童であっても堪える事は叶わず、重力と慣性に流されるままにとりは後ろに倒れていく。
――くっそぉぉぉぉぉぉ!
マミゾウの右手によって左側の腰や手も制され、為す術なくにとりは土俵の外に背を着けた。
「『外掛け』により、二ッ岩マミゾウ!」
あくまで試合としての勝敗宣言ではなく、映姫は行事として勝名乗りをあげる。
体格差をものともしない柔軟な身体を持つ河童の怪力と、剛体から柔を主にする戦いを行った化け狸による、長く二転三転する相撲に、まるで試合の決着とばかりに歓声が沸いた。
それに思わず魔理沙は「なんか、藍とムラサが戦った時より凄くないか? 地底って、相撲、盛んなのか?」と困惑していた。
未だ闘技場で仰向けに倒れるにとりは溜息を吐く。
「あー。萎えるなぁ……」
「何を言うか。儂が柔側に回るなんて事は数える程しかないよ」
マミゾウは手を差し出し、にとりはそれを掴まずに起き上がる。
「何にせよ、これでようやく一勝一敗じゃ。これで気持ちよくお前さんに勝ち、二回戦へ進むことができるのう」
「言ってなよ。私のような小柄な妖怪を力で捻じ伏せる事もできない奴に真剣勝負で負ける道理がないよ」
今現在も試合中ではあるものの、申し合わせたかのように二人は互いに背を向け、本来の試合開始位置まで下がって行く。故に、にとりは浮かぶ笑みを隠すことはしなかった。
――面白い相撲ではあったよ。でも、今のでお前の実力はよーく分かった。その程度なら私のこの道具で……。
にとりは左胸に触れ、突如表情が固まる。
「あれ?」
思わず服中の袋に触れるが、それによってよりはっきりとした事実に彼女の表情は青ざめていく。
――あの道具が……ない!
にとりが思わず振り返った先にいるマミゾウは不敵な笑みを浮かべている。河童が異常に気付くことが予想より遅かったことに、マミゾウは笑みを抑えきれなかった。
――あの野郎……まさか道具を……!
『五分経過しました。これよりあらゆる脱落規則を有効とします』
既に審判席へ戻った閻魔の声に一瞬だけ怯んだにとりの前にすぐさまマミゾウはせまる。指を第二関節部分まで曲げた掌底を放つも、にとりは腕で防ぐ。しかし、痛手は免れたものの大きく吹き飛ばされた。
「この野郎……人の道具を……!」
「さぁて、なんのことかのう? 仮にそうだとしても、道具を盗む事など反則でもなんでもないじゃろう?」
マミゾウの言い分は最もであり、にとりは舌打ちで返す事しかできない。
――反則……ルール……?
しかし、マミゾウの言った言葉でにとりには、とあるひらめきが起こった。
「こんなの不公平だ……」
「やれやれ、戦いに公平も不公平もなかろう」
「私はお前に道具を盗まれて、事実上手の内をさらされた。なら、やられる前に、せめてあんたの道具も見せてくれよ……」
「だから、誰も盗んだとは言ってなかろう。まぁいいわい。ほれ」
マミゾウは懐から道具を取り出す。それは一見、何の変哲もない一枚の葉っぱだった。
「これが儂の道具じゃ。これは――」
しかし、にとりにとってはどうでも良い事だった。
「審判! こいつは試合の禁止ルールが有効になった瞬間、道具を二つ持ってたぞ!」
何を持っているかではなく、マミゾウが道具を何個持っているかが重要だったのだ。
「こいつは今の葉っぱと……注射器か何かを隠し持ってるはずだ!」
「……この一瞬で、よく考えたのう!」
マミゾウが苦笑いする中、閻魔は視線を向ける。しかしその視線は反則に対する鋭いものではなかった。
「それが……どうしたのでしょうか」
「……え?」
自分の言い分が閻魔にまるで相手にされず困惑するにとりの横にマミゾウはあっという間に詰める。両肩を押さえ、己の左足でにとりの両足を刈り、頭から後ろに叩きつけた。
「がっ!?」
視界が歪むにとりの腰を起こしたマミゾウは後ろから羽交い絞めにする。
「いくら肩や腕が柔らかくとも両腕をいっぺんに逃がす事はできんじゃろう? それはそうと、お前さんの言葉は片や正しく、間違っておるよ」
「なん……だって?」
「お前さんは道教の尸解仙が言った言葉に騙されておるよ」
にとりの鼓動は一度大きく跳ねる。確かに先程の作戦を思いついたのは、第四試合が始まる寸前に物部布都が霊烏路空に対して道具を二つ所持していることに対して抗議する描写を思い出したからである。
「あの時は地獄鴉がすぐに道具を預けたから何も起こらなかったが、そもそもあのまま続行しても問題はなかったはずじゃ。反則なのはあくまで、道具を二つ以上『使用』することじゃからな」
「……あっ!」
ようやくにとりは自分がしていた勘違いに気付く。第四試合の時に布都は抗議をしていたが、あの段階では空はまだ反則でもなんでもない。あくまでその二つをそれぞれ利用した時に初めて反則が適用されるのだ。
「ちなみに、お前さんが言った事には正しい事もある」
羽交い絞めの体勢を保ったまま、マミゾウは懐に手を入れる。
「私は確かに、二個目の道具を持っておるよ」
懐から出した注射器の様な道具を眼前に見せられたにとりは、よりマミゾウの腕から逃れようとする。
「くっそ……!」
「ほっほ。そうそう、素直なのはいい事じゃ。さぁて、中身は毒か、それとも別の何かか……お前さんで確かめんとな!」
マミゾウはにとりの右胸に注射器を刺し、注射筒を押していく。
しかし、苦しむどころかにとりには一切の変化がないことにマミゾウは疑問に思う。
「ばぁか。それはただの強化剤だよ」
「……なんじゃと?」
若干、力が増したような気がしたにとりは右手で自らに刺さっている注射器を抜き、そのまま強引に後ろにいるマミゾウの左太腿に突き刺した。
「ぬぅ!」
「相手に盗まれて使われることは想定済みさ!」
にとりは中途半端に飛び出ている注射筒の側面部分に指で力を入れ、破壊した。
「だから正しい使い方は、こうやって壊すんだよ!」
「な……何を……したんじゃ……」
「これは妖力放出器! 幻想郷に来たばかりのお前には解らないだろうけど、さっき戦ってた鬼の術を応用したものだよ。お前が降参するまで、お前からは絶えず妖力が垂れ流しになるのさ!」
鬼である伊吹萃香が使う技の中には『鬼縛りの術』というものが存在する。それを強力にしたものに、相手に鎖を巻きつけて霊力を宙に散らし、弾幕はおろか空を飛ぶ程度の力さえ無くしてしまう技もある。それを応用して造ったにとりの道具は、たとえ鬼であろうと長く生きた化け狸であろうと、あっという間に妖力を枯渇させ骨抜きにできる、というものである。
しかし、自分を羽交い絞めにしているマミゾウの腕からは一向に力が抜けない事に、にとりは困惑する。まるで、先程の自分のように。
「そうかい……妖力放出器……かい……。……わざわざ詳しく説明してくれて、すまんのう」
マミゾウは懐から二本目の注射器を取り出し、にとりの前に見せた。
――そんなばかな! 私は一本しか持ってきてない! こいつ……既にリュックに入れてた予備を盗んでた?
「これは先程、お前さんから盗んだ道具じゃよ」
「は……はぁ? じゃ、じゃあさっきのは……」
「……儂の説明を聞かないお前さんが悪い」
マミゾウの太腿に刺さっている注射器は突如煙を上げる。煙が散った時、そこにあったのは一枚の葉っぱだった。
「なっ……あぁぁぁ!」
「まんまと化かされてくれてありがとう」
マミゾウは再びにとりの右胸に注射器を刺し、先程見たのと同じように注射筒の部分を指で折った。
僅かに青色が見えるにとりの霊力は注射器を通じて宙に放出されていく。必死に暴れるも、道具を使われる前から振り解けなかったマミゾウの羽交い絞めを妖力が溢れていく今の状態で逃れることは不可能に近い。
「あ……あぁぁぁ……」
「もうええじゃろ。これ以上妖力を無くすと闘技場から歩いて帰れなくなるぞ」
歯を食い縛りつつも、文字通り手も足も出せず道具も利用されて万策尽きたにとりの表情からは闘気が消えた。
「こ……降参……だよ」
マミゾウが河童を解放した後、閻魔の声が闘技場に響き渡る。
「そこまで! 河城にとりの降参宣言により、勝者、二ッ岩マミゾウ!」
相撲勝負とは違いあっさりと決着が着いた事に観客が戸惑う中、にとりは力を振り絞り注射器を掴む。それを二回、更に胸に差し込むと、まるで自ら離れるかのように注射器はにとりから抜け落ちた。
「なるほど。抜かれる対策も兼ねて、そうしないと抜けない、ということかい。聖には聞かされておったがこの世界でそんな技術を持っておるとは、河童は大した種族じゃ」
「はん……皮肉にしか聞こえないよ。……一つ聞きたいんだけど。あの相撲は……私から道具を盗む口実だけで提案したのかい?」
「何と言えばいいかのう。仮に普通の戦いを行ったとしても、儂はお前さんから道具を盗む自信はあった。ま、戦績を一勝一敗にしたい、というのが本音だよ。そして今、儂が勝ち越せた。それだけじゃよ」
「……あーあ。こんな大会……出るんじゃなかったよ。あの閻魔も、あんたが自分と私の道具を使った事に対して何も言わないし」
「始めの五分も後の十五分も、同じひとつの試合じゃからのう。お前さんの抗議は、どのみち間違っておったんじゃよ」
「……まぁ、あれはあんたが失格になってくれればラッキー程度のものだったし」
数分あれば起きれると、苦笑いするにとりは差し出した手を拒んだので、マミゾウはそのまま闘技場を後にする。
「楽しい相撲じゃったぞ」
「……けっ」
河童との会話を交わし、出入り口の通路に入るマミゾウをぬえが待ち構えていた。
「お見事。ほとんど技を見せる事無く勝つなんて。まぁ、河童程度には技を見せる必要もないか」
「買い被るな。あいつは大した力を持ってたよ。ただ、少々道具に頼りすぎる気があった。本来の試合が始まってから儂が放った大外刈りや羽交い絞め。力があるにも関わらず河童はそれをわざと受けるために手加減していた。儂が道具を使う事を誘うためにな。便利な道具を持つと、自らの力ではなくそれを使う事に気を取られてしまったのが、あの河童の敗因じゃ。まぁ、おかげでどこぞの狐に手の内を見せんで済んだがのう」
マミゾウが耳を澄ますと、観客席からはちらほらと、二回戦で八雲藍と自分が戦う事になることで盛り上がる話が聞こえてくる。
「儂ともあろうものが楽しみでしょうがないわい」
吊り上った口元を隠そうとせず色めくマミゾウは笑顔を浮かべていた。
参加選手ではない地上の巫女である博麗霊夢は以前のように室内を見回す。そこには第五試合以降の一回戦勝者である三名しか部屋にはいない。それを理解して何を思うでもなく、真っ直ぐ藍の前に歩み寄った。
「一回戦おつかれさま。ま、大穴としてはほぼ満点ね」
「大穴?」
藍が言葉の真意を理解する前に、霊夢の背中に小鬼の伊吹萃香が飛び掛かった。
「霊夢ー。私も勝ったぞー!」
「わーかってるわよ!」
なんとか体勢を保った霊夢に、更に裾を掴む者がいた。
「針妙丸……」
「私も勝ったぞ、霊夢!」
「そうね」
霊夢自身、小人族の少名針妙丸が亡霊の西行寺幽々子に勝利を収めるとは思ってはいなかった。体躯も相まって子供のように笑顔を見せる小人に霊夢も笑みを溢してしまう。
「頑張りなさい。幽々子に勝ったあなたは、もう他の奴等から甘く見られることはないわ」
腰を落として視線の高さを合わせる霊夢を見る小人の表情は自信に溢れていた。
「ああ。私は結局、小槌に頼らないと戦えない。しかし逆に言えば、小槌があれば私のような者でも強者と真剣勝負をする資格を持てる。それが分かっただけでも十分さ」
「言うじゃないかい」
自信溢れる小人を見て、未だ背中にしがみつく萃香は笑う。
「生憎だけど二回戦は私だよ。霊夢の言う通り、幽々子を倒したあんたに手加減するのは失礼かもしれないね」
流石に一歩引いてしまう小人に鬼はまた笑う。
「ま、こっちに来なよ。ヒントくらいはやるさ」
萃香は針妙丸を壁際に連れて、話を始める。今まで戦った魑魅魍魎を相手取り、如何にして豪快に勝利を収めたか、という内容のものだ。
それを長椅子に座りながら話半分に聞く霊夢の横に藍は座る。
「いい気分だよ」
「え?」
「今でも、野蛮で暴力的だとは思う。しかしそれでも、スペルカードルール以上にはっきりとした勝利の喜びを味わえた。同時に、試合の終盤で村沙水蜜に奇襲を許してしまった時、一瞬よぎった敗北の恐怖も。久しぶりだったよ」
「そうね。紫は美しさも競えることができるスペルカードルール、とか言ってたけど。ほぼあなたのパーフェクト勝利だったさっきの試合。なんて言うか……綺麗な戦いだったわ」
「はは、それは良かった」
霊夢の見る先で萃香はただ自分勝手に話し続けている。しかしそれでも針妙丸は怖じ気づくことなく楽しそうに聞き続けている。その様を見て、不思議と針妙丸と天邪鬼の姿が被って見えた。
「あんた達、さっきまで戦ってたのよね?」
余りにもほのぼのとした室内の雰囲気にのまれてしまいそうになり、霊夢は苦笑した。
一方で、試合を控える化け狸の二ッ岩マミゾウもにやけ顔を抑えきれないでいた。
「楽しそうだな」
同じ命蓮寺に属する鵺の封獣ぬえにマミゾウは応える。
「二回戦であの忌まわしき狐と戦えることもそうじゃが。儂ら六人、うまい具合に別れたもんじゃのう。儂とお前に至っては、ちょうど真ん中を挟んでおる」
「そして私達は、恐らく三回戦で鬼に当たる。まぁ、確かにうまい具合にばらけてるね。これが本当にランダムで決められたのか怪しく思うよ」
「閻魔様ならば、まぁ目隠ししてもそれくらいはできそうではあるがの」
「しかし……」
ぬえは通路の奥を見るも、そこから他の命蓮寺勢が訪れる気配はない。
「ムラサの時の仕返しなのか誰も来ないな」
「それこそ舟幽霊の見舞いじゃろう。それに儂は、この方が落ち着くよ」
「博麗霊夢や道教の奴等に対抗するためにお前を連れてきたんだ。情けない戦いはするなよ」
「はは、また懐かしい話じゃ。ま、折角だから楽しまんとな」
選手入場を促す古明地さとりの声が通路に響き、マミゾウは闘技場に足を踏み入れる。
ちらりと客席中を見回すと鬼や開催者代理の試合が終わったためか先程よりぽつぽつと人が減っていた。それでも、自分達や対戦相手を応援する野蛮な声援は湧き続ける。
妖怪が心おきなく騒ぎ、喧嘩をする。昔の外の世界では割と茶飯事だった光景を思いだし、マミゾウは懐かしさを感じた。
「儂も年かのう、なんて」
苦笑しつつ闘技場の中央まで歩き、自分の対戦相手と対峙する。長身である自分と比べ二回りは小さい、青い作業着に身を包む妖怪河童――河城にとりと目を合わせた。
「久し振りじゃのう、河童」
「ああ。どこかで見たことあると思ったら、前に倒した妖怪狸か」
「その節は世話になったのう」
「ついてないね。よりによって私と相手になるなんて」
「ふぉっふぉっふぉ。しかし今回のルールは、お前さんにとって不利なものじゃろう」
にとりのような河童という種族は、総じて器用であり水で動く機械を造ることができる。以前マミゾウと拳を交えた時は、それらを用いて戦った。しかし今回の規則では例外を除き道具は一つまでしか使用できない。
「それに、お前さんだけじゃない。霊夢や魔理沙、色んな奴らとも戦い、この世界での戦いを学んだ。もう知識不足で負けることなどありはせんよ」
「そう」
にとりは会話の中、左の胸ポケットを見る。
――言ってろ。お前が何であろうと、私が造った『とっておき』で御陀仏さ。
にとりの不遜な態度にマミゾウはあくまでうすらわらうだけである。
「試合時間変更の申し立て等があれば聞きますが?」
審判長を務める閻魔の四季映姫・ヤマザナドゥに対し、マミゾウは右手を肩まで上げる。
「何か?」
「ええと、そうじゃのう。確か試合時間は十五分じゃったか?」
「はい。時間切れになれば私と八雲紫、古明地さとりの三名で判定をとります」
「そうかい。なら、その時間を五分延ばしてくれんかのう。それでいて、その始めの五分は勝敗とは関係ない戦いをさせてくれんか? 飛ぶ事も禁止にしてほしい」
制限時間を二十分にして、始めの五分間はどのようにしても勝敗が下されないようにし、更に空を飛ぶこともできないようにする。マミゾウが言ったその申し出の真意をにとりどころか映姫や八雲紫も理解できない。心を読めるさとりは理解していたが、隣で座っている勇儀を横目で見て何も言わなかった。
「どうしますか?」
迷うにとりは映姫の問いかけに応えることができない。それを見て、マミゾウはわざとらしく吹きだす。
「儂が怖いか? 運のない儂が」
にとりは舌打ちしつつ、「上等だよ。いいよそれで」と応えた。
それを見て紫は映姫を呼び寄せ、耳打ちする。
戻って来た映姫は二人に結果を伝え、司会進行のさとりはそれを客席中に伝えた。
「ええ、二ッ岩マミゾウ選手の要望により、今回の試合時間は二十分となり、更に始めの五分間は勝敗とは関係ない戦い――どのような場合になっても勝敗を判定しない事になります。ただし、例外的に弾幕の使用だけは禁止のままと致します。あと一つ、その五分間は空を飛ぶことを禁止します」
追加規則について魔理沙を含めた客席は困惑する。
「なんだそりゃあ? それじゃあその五分間、勝負はしないってことか? それじゃ楽しめないぜ」
「そうとは限らないんじゃない?」
暴力的な何かを期待するかのように幽香の表情は笑っていた。
「五分間、何があっても勝敗はつかない。それこそ、審判が戦闘不能と判断しても、両手両足を切断されても。更に、空を飛んで逃げることさえ許されない」
「な、なるほど」
魔理沙が納得する中、制限時間が二十分となった試合が始まろうとする。
「ちょっと待った」
しかしマミゾウは更に、試合に影響のないよう審判席に戻ろうとした映姫を呼び止めた。
「お前さんもここに残っといてくれ。あと、もう始めても構わんぞ」
「はぁ……」
訝しげに思いつつも映姫は試合開始を判断していいかにとりに視線を向ける。
「いいよ」
にとりの返答を聞き、映姫は戸惑いつつも宣言は、はっきりとする。
「一回戦第八試合……始めっ」
映姫が闘技場で試合開始を宣言すること自体、先の七戦では一切ない事だったので客席も困惑する。それでいて闘技場では映姫を含め、三人は棒立ちのままでいた。
「で、どうするんだい? この状態で戦うの?」
にとりの問いに対しマミゾウは黙って歩き出す。とある場所に着くと、そこから片足を引きずりながら歩き、地面に線のようなものを引いていく。数十秒程経ち、マミゾウが線を引き始めた場所に戻った時、それはにとりや映姫を囲う円となっていた。
「なんだこりゃ……」
言いつつ、にとりは薄々感付いていた。五メートルない小さな円、そして自分とマミゾウの他に映姫という審判がいる。
「相撲をしようじゃないかい」
「……はぁ?」
「お前さんは河童じゃろう? 河童は相撲が好きじゃと聞いたが。それに、儂は一度お前さんに負けておる。本来の勝負の前に勝敗をとんとんにしておきたいと思っての」
にとりは多少面喰っていたが、しょうがないといった様子で頭を掻いた。
「いいよ、上等だよ。やろうよ、相撲」
「決まりじゃのう」
互いに靴を脱ぎ、唐突に行われることになった相撲勝負だったが、それはそれで観客は湧き上がりだす。相撲が得意である河童と最近外界から来た妖怪狸、どちらが優勢かは誰にも判らない。開催者である八雲紫も御満悦な表情だった。
――あなた達二人に応え、道具を用意しましょう。と言っても、まわしでは時間が掛かるでしょうから……。
突如にとりとマミゾウが向かい合う場所に小さなスキマが現れる。そこから道着の帯が二本落ちたので、二人はそれぞれの帯を手に取った。
「儂が白帯かい」
にとりが黒帯を腰に巻き、マミゾウは白帯を締めていく。
「勇儀さんはどう見ます、この対決」
何気ないさとりの一言に、勇儀は酔っているのか大きく笑う。
「どっちにしろ私には敵いっこないさ。ただ……あの狸、喧嘩の売り方だけは上手いね」
勇儀の視線に映るにとりとマミゾウは土俵の中で屈む。その二人を見て前列の席にいる妖怪達からは徐々にどよめきが漏れだしていく。相撲勝負をする二人の表情は、下手すれば今まで戦った者達よりも鋭い眼光をしていた。
――ああ、好きだよ。大好きさ! こんな所でも相撲ができるなんて思わなかったよ。だからこそ、あんたをあしらってやるさ。外の世界から来たのか知らないけど、相撲なら私に勝てるっていうその思い込み、ぶっ壊してやるよ!
にとりは片手を突き、マミゾウに殺気を飛ばす。
――さぞ腕に自信があるんじゃろう、河童。さっきは仕方ないといった態度を装ってたが、今まで何人もの人間や妖怪を化かしてきた儂の目は誤魔化せんわい。ここでお前さんを相撲で捻じ伏せ、士気を崩して見せようじゃないかい!
マミゾウは不敵な笑みを浮かべてにとりを睨む。
既に高揚しきっている戦意を見せる二人に閻魔は溜息を吐きつつも、相撲の審判――行司としての役割を果たすべく土俵ぎりぎりまで下がる。
「両者、手を付いて」
なかなか残り片方の手を着かないにとりを見て、寧ろマミゾウからは余裕の笑みが浮かぶ。
――なんじゃなんじゃ。偉そうにしておいて儂に先手を譲る気もないんかい。仕方ないのう。
マミゾウがはっきりと両拳を地面につけた瞬間――すぐさまにとりも両手を一瞬だけ着き、そのまま跳ぶ。
――上手い……!
驚きつつもすぐさまマミゾウが放った張り手さえにとりは潜り、あっさりと懐に潜り込んだ。これで背の高さや体重差の優劣は無くなったに等しい。
「こぉんの……舐めるな!」
力付くで押し返そうとするマミゾウに対しにとりは笑う。左手だけを残して身体で半円を描き、左足を置く。足を掛けてマミゾウを前に倒す作戦だったが、そこで簡単には終わらない。
「甘いのう」
初めから分かっていたかのようにマミゾウは足にかかることなく右に回る。あっという間に、にとりが土俵際になり状況は逆転した。
――嘘……。でかいくせに、あの力づくはフェイクだったのか!
「残念じゃったのう。すぽーつは頭じゃ、頭」
言いつつ、とどめとばかりに押し出そうとするも、にとりの身体は土俵際から後ろに出ない。
――人を見かけで判断するなよ。ずっと前まで外の世界で暮らしてた狸が……。
勇儀は静かに河童達の相撲を見ながら、「あの見た目で中々強いんだよ、河童は」とさとりに話していた。
――ある時まで、鬼との相撲に散々付き合わされてきた私達に勝てるわけないだろ!
にとりの足は土俵際から内側に進んでいく。
「やるじゃないかい……!」
帯を掴んで引き攣られるマミゾウに対し、にとりはがっちりと身体を下からつける。それでも、自分が優勢だとは思えなかった。
――なんでこいつの身体……こんなにリラックスしてるんだ?
戸惑いつつもにとりは一気に力を引く方向へ転換し、再び半円を描きながら左手だけを残しマミゾウを前に倒そうとする。マミゾウの右手は自分の左腕の上から帯を掴んでいたので、その点は有利だとにとりは思い込んでいた。
マミゾウは思っていたよりあっさりと前に動かされる。しかし、突如にとりの身体は止まった。外側にあるマミゾウの右腕が、がっちりとにとりの左肘を捉えていた。
「すまんの。相撲に誘っておいてなんじゃが、儂は柔術の方が得意でな」
マミゾウは右腋をしめて左に回る、帯から手を放させたにとりの肘は捉えられ、反射的に前に進む事しかできない。マミゾウはそのまま前に進み、にとりを土俵際に追い込んでいく。
――勝負ありじゃ!
無理に堪えればにとりの左肘は破壊される。しかし既に回り込むために必要な土俵の間隔もない。飛ぶ事も禁止された規則の中、にとりは既に詰んでいる。マミゾウがそう思っていた時、まるで消えたかのようににとりの左腕の感触はなくなった。
「な……?」
にとりはいつの間にかマミゾウの背後にいて、そこから諸手でマミゾウの背中を押し出そうとする。しかし背中を許しているにも関わらずマミゾウはそれを両手で受け止めた。
それに驚いてしまい、追撃の手はまだあったもののにとりは手を振り払い間合いをとってしまった。
「な……なんで分かるんだよ!」
「なぁに、単純な経験則よ。それより質問したいのはこっちの方じゃ。肘が決まって完璧な『小手投げ』の体勢じゃったはずじゃ。何故お前さんは逃げられた?」
「……ふん」
にとりは後ろ頭に左腕を回す、肘関節部分が右肩まで付いてしまうのではと思うほどまで左肩は柔らかく曲がり、左肘を曲げて顔の前に出す。右手の補助で押さえつつ手首を捻った指先は左耳に触れる、という奇妙な光景ができあがっていた。
「ほ……ほほう。河童の手は伸びるという話は聞いた事はあるが、これはこれで圧巻じゃのう」
「これだけは鬼よりも勝ってると自覚してる」
にとりはゆっくりと左腕を戻していく。
「だから、私に関節技は通用しないよ。そして、この身体を活かしてこんなこともできる」
両腕の力をだらりと抜いた状態でにとりはマミゾウに近付く。
奇襲に耐えようと腰を落としたマミゾウの左頬に突如衝撃が走る。それは柔軟な腕から放たれる鞭のようなにとりの張り手だった。
――儂が……間合いを誤った!?
次に放たれたにとりの張り手は咄嗟に腕を出して防ぐことができた。しかし、異常な速度によって放たれた衝撃は鈍い痛みとして残る。
「ま、まだまだ本試合ではないぞ。相撲をしようじゃないかい」
「愚問だね。突っ張りが相撲技じゃないって言うのかい?」
再びにとりは腕を振る。マミゾウの鼓膜を破壊せんとばかりに放たれたそれは、しかし空を切った。この瞬間、二ッ岩マミゾウは初めてにとりより低い姿勢を構えた。咄嗟にマミゾウより内側に手を入れて帯を掴む事はできたが、その奇襲のような勢いににとりは再び土俵際に追い詰められる。
「策さえ絡め捕れば、柔など剛に捻じ伏せられるわい!」
その一言は、にとりの癇に障るものだった。
――いつから……いつから私が柔寄りだと勘違いした!
身体を付けて全霊を込めたにとりは、二回り大きいマミゾウを持ち上げた。
――鬼程じゃあない。だけどこの『やぐら』は私への見定めを誤ったツケだ!
腰や手に最大限の力を込めたにとりによって完全に身体が宙へと浮いたマミゾウだったが、それでも表情からはにやけた笑みが消えていなかった。
――お前さんの思い、そのままそっくり返すよ。
河童とは比べ物にならない長身による左足は、にとりの伸びきった腰と膝にがっちりと絡みつく。
――儂のような捻くれ者を剛だと思い込むとは、愚かじゃのう!
マミゾウを持ち上げるために自ら生み出した引く力の勢い。右脚を完全に殺され、如何に河童であっても堪える事は叶わず、重力と慣性に流されるままにとりは後ろに倒れていく。
――くっそぉぉぉぉぉぉ!
マミゾウの右手によって左側の腰や手も制され、為す術なくにとりは土俵の外に背を着けた。
「『外掛け』により、二ッ岩マミゾウ!」
あくまで試合としての勝敗宣言ではなく、映姫は行事として勝名乗りをあげる。
体格差をものともしない柔軟な身体を持つ河童の怪力と、剛体から柔を主にする戦いを行った化け狸による、長く二転三転する相撲に、まるで試合の決着とばかりに歓声が沸いた。
それに思わず魔理沙は「なんか、藍とムラサが戦った時より凄くないか? 地底って、相撲、盛んなのか?」と困惑していた。
未だ闘技場で仰向けに倒れるにとりは溜息を吐く。
「あー。萎えるなぁ……」
「何を言うか。儂が柔側に回るなんて事は数える程しかないよ」
マミゾウは手を差し出し、にとりはそれを掴まずに起き上がる。
「何にせよ、これでようやく一勝一敗じゃ。これで気持ちよくお前さんに勝ち、二回戦へ進むことができるのう」
「言ってなよ。私のような小柄な妖怪を力で捻じ伏せる事もできない奴に真剣勝負で負ける道理がないよ」
今現在も試合中ではあるものの、申し合わせたかのように二人は互いに背を向け、本来の試合開始位置まで下がって行く。故に、にとりは浮かぶ笑みを隠すことはしなかった。
――面白い相撲ではあったよ。でも、今のでお前の実力はよーく分かった。その程度なら私のこの道具で……。
にとりは左胸に触れ、突如表情が固まる。
「あれ?」
思わず服中の袋に触れるが、それによってよりはっきりとした事実に彼女の表情は青ざめていく。
――あの道具が……ない!
にとりが思わず振り返った先にいるマミゾウは不敵な笑みを浮かべている。河童が異常に気付くことが予想より遅かったことに、マミゾウは笑みを抑えきれなかった。
――あの野郎……まさか道具を……!
『五分経過しました。これよりあらゆる脱落規則を有効とします』
既に審判席へ戻った閻魔の声に一瞬だけ怯んだにとりの前にすぐさまマミゾウはせまる。指を第二関節部分まで曲げた掌底を放つも、にとりは腕で防ぐ。しかし、痛手は免れたものの大きく吹き飛ばされた。
「この野郎……人の道具を……!」
「さぁて、なんのことかのう? 仮にそうだとしても、道具を盗む事など反則でもなんでもないじゃろう?」
マミゾウの言い分は最もであり、にとりは舌打ちで返す事しかできない。
――反則……ルール……?
しかし、マミゾウの言った言葉でにとりには、とあるひらめきが起こった。
「こんなの不公平だ……」
「やれやれ、戦いに公平も不公平もなかろう」
「私はお前に道具を盗まれて、事実上手の内をさらされた。なら、やられる前に、せめてあんたの道具も見せてくれよ……」
「だから、誰も盗んだとは言ってなかろう。まぁいいわい。ほれ」
マミゾウは懐から道具を取り出す。それは一見、何の変哲もない一枚の葉っぱだった。
「これが儂の道具じゃ。これは――」
しかし、にとりにとってはどうでも良い事だった。
「審判! こいつは試合の禁止ルールが有効になった瞬間、道具を二つ持ってたぞ!」
何を持っているかではなく、マミゾウが道具を何個持っているかが重要だったのだ。
「こいつは今の葉っぱと……注射器か何かを隠し持ってるはずだ!」
「……この一瞬で、よく考えたのう!」
マミゾウが苦笑いする中、閻魔は視線を向ける。しかしその視線は反則に対する鋭いものではなかった。
「それが……どうしたのでしょうか」
「……え?」
自分の言い分が閻魔にまるで相手にされず困惑するにとりの横にマミゾウはあっという間に詰める。両肩を押さえ、己の左足でにとりの両足を刈り、頭から後ろに叩きつけた。
「がっ!?」
視界が歪むにとりの腰を起こしたマミゾウは後ろから羽交い絞めにする。
「いくら肩や腕が柔らかくとも両腕をいっぺんに逃がす事はできんじゃろう? それはそうと、お前さんの言葉は片や正しく、間違っておるよ」
「なん……だって?」
「お前さんは道教の尸解仙が言った言葉に騙されておるよ」
にとりの鼓動は一度大きく跳ねる。確かに先程の作戦を思いついたのは、第四試合が始まる寸前に物部布都が霊烏路空に対して道具を二つ所持していることに対して抗議する描写を思い出したからである。
「あの時は地獄鴉がすぐに道具を預けたから何も起こらなかったが、そもそもあのまま続行しても問題はなかったはずじゃ。反則なのはあくまで、道具を二つ以上『使用』することじゃからな」
「……あっ!」
ようやくにとりは自分がしていた勘違いに気付く。第四試合の時に布都は抗議をしていたが、あの段階では空はまだ反則でもなんでもない。あくまでその二つをそれぞれ利用した時に初めて反則が適用されるのだ。
「ちなみに、お前さんが言った事には正しい事もある」
羽交い絞めの体勢を保ったまま、マミゾウは懐に手を入れる。
「私は確かに、二個目の道具を持っておるよ」
懐から出した注射器の様な道具を眼前に見せられたにとりは、よりマミゾウの腕から逃れようとする。
「くっそ……!」
「ほっほ。そうそう、素直なのはいい事じゃ。さぁて、中身は毒か、それとも別の何かか……お前さんで確かめんとな!」
マミゾウはにとりの右胸に注射器を刺し、注射筒を押していく。
しかし、苦しむどころかにとりには一切の変化がないことにマミゾウは疑問に思う。
「ばぁか。それはただの強化剤だよ」
「……なんじゃと?」
若干、力が増したような気がしたにとりは右手で自らに刺さっている注射器を抜き、そのまま強引に後ろにいるマミゾウの左太腿に突き刺した。
「ぬぅ!」
「相手に盗まれて使われることは想定済みさ!」
にとりは中途半端に飛び出ている注射筒の側面部分に指で力を入れ、破壊した。
「だから正しい使い方は、こうやって壊すんだよ!」
「な……何を……したんじゃ……」
「これは妖力放出器! 幻想郷に来たばかりのお前には解らないだろうけど、さっき戦ってた鬼の術を応用したものだよ。お前が降参するまで、お前からは絶えず妖力が垂れ流しになるのさ!」
鬼である伊吹萃香が使う技の中には『鬼縛りの術』というものが存在する。それを強力にしたものに、相手に鎖を巻きつけて霊力を宙に散らし、弾幕はおろか空を飛ぶ程度の力さえ無くしてしまう技もある。それを応用して造ったにとりの道具は、たとえ鬼であろうと長く生きた化け狸であろうと、あっという間に妖力を枯渇させ骨抜きにできる、というものである。
しかし、自分を羽交い絞めにしているマミゾウの腕からは一向に力が抜けない事に、にとりは困惑する。まるで、先程の自分のように。
「そうかい……妖力放出器……かい……。……わざわざ詳しく説明してくれて、すまんのう」
マミゾウは懐から二本目の注射器を取り出し、にとりの前に見せた。
――そんなばかな! 私は一本しか持ってきてない! こいつ……既にリュックに入れてた予備を盗んでた?
「これは先程、お前さんから盗んだ道具じゃよ」
「は……はぁ? じゃ、じゃあさっきのは……」
「……儂の説明を聞かないお前さんが悪い」
マミゾウの太腿に刺さっている注射器は突如煙を上げる。煙が散った時、そこにあったのは一枚の葉っぱだった。
「なっ……あぁぁぁ!」
「まんまと化かされてくれてありがとう」
マミゾウは再びにとりの右胸に注射器を刺し、先程見たのと同じように注射筒の部分を指で折った。
僅かに青色が見えるにとりの霊力は注射器を通じて宙に放出されていく。必死に暴れるも、道具を使われる前から振り解けなかったマミゾウの羽交い絞めを妖力が溢れていく今の状態で逃れることは不可能に近い。
「あ……あぁぁぁ……」
「もうええじゃろ。これ以上妖力を無くすと闘技場から歩いて帰れなくなるぞ」
歯を食い縛りつつも、文字通り手も足も出せず道具も利用されて万策尽きたにとりの表情からは闘気が消えた。
「こ……降参……だよ」
マミゾウが河童を解放した後、閻魔の声が闘技場に響き渡る。
「そこまで! 河城にとりの降参宣言により、勝者、二ッ岩マミゾウ!」
相撲勝負とは違いあっさりと決着が着いた事に観客が戸惑う中、にとりは力を振り絞り注射器を掴む。それを二回、更に胸に差し込むと、まるで自ら離れるかのように注射器はにとりから抜け落ちた。
「なるほど。抜かれる対策も兼ねて、そうしないと抜けない、ということかい。聖には聞かされておったがこの世界でそんな技術を持っておるとは、河童は大した種族じゃ」
「はん……皮肉にしか聞こえないよ。……一つ聞きたいんだけど。あの相撲は……私から道具を盗む口実だけで提案したのかい?」
「何と言えばいいかのう。仮に普通の戦いを行ったとしても、儂はお前さんから道具を盗む自信はあった。ま、戦績を一勝一敗にしたい、というのが本音だよ。そして今、儂が勝ち越せた。それだけじゃよ」
「……あーあ。こんな大会……出るんじゃなかったよ。あの閻魔も、あんたが自分と私の道具を使った事に対して何も言わないし」
「始めの五分も後の十五分も、同じひとつの試合じゃからのう。お前さんの抗議は、どのみち間違っておったんじゃよ」
「……まぁ、あれはあんたが失格になってくれればラッキー程度のものだったし」
数分あれば起きれると、苦笑いするにとりは差し出した手を拒んだので、マミゾウはそのまま闘技場を後にする。
「楽しい相撲じゃったぞ」
「……けっ」
河童との会話を交わし、出入り口の通路に入るマミゾウをぬえが待ち構えていた。
「お見事。ほとんど技を見せる事無く勝つなんて。まぁ、河童程度には技を見せる必要もないか」
「買い被るな。あいつは大した力を持ってたよ。ただ、少々道具に頼りすぎる気があった。本来の試合が始まってから儂が放った大外刈りや羽交い絞め。力があるにも関わらず河童はそれをわざと受けるために手加減していた。儂が道具を使う事を誘うためにな。便利な道具を持つと、自らの力ではなくそれを使う事に気を取られてしまったのが、あの河童の敗因じゃ。まぁ、おかげでどこぞの狐に手の内を見せんで済んだがのう」
マミゾウが耳を澄ますと、観客席からはちらほらと、二回戦で八雲藍と自分が戦う事になることで盛り上がる話が聞こえてくる。
「儂ともあろうものが楽しみでしょうがないわい」
吊り上った口元を隠そうとせず色めくマミゾウは笑顔を浮かべていた。
さしずめ次試合は平安と平城のエイリアン対決といったところか。
ぬえの試合楽しみです。予測としては姫様のチート道具の前に負けそうだけど・・・
こういう試合はリアルの人間じゃ出来ないですよね 卑怯ありじゃ結局ショービジネスになってプロレスみたいなサーカスになりさがるんだよなあ プロレスもいいけど宗教じみてくるから苦手(唐突な愚痴)
卑怯なのは嫌いだけど頭はよく回るなと感心します 絶対こいつらと戦いたくねえ!
でもそこまでやって爽やかに終われるのは流石幻想少女
現実じゃなかなかこうはいかないから格闘技は繊細過ぎる程礼儀やマナーを重んじるんですよね ある意味現実の格闘技こそ一種の弾幕ごっこなのかも知れません
だからこれは格闘技でもなく一歩超えた何かなんでしょう
普段弾幕ごっこをやってる彼女達だからこそ出来る芸当なのかも知れません
ホント大したもんだと思いますよ精神的に
とても面白かったです。