Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

仙人、探索する

2014/10/04 08:04:27
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「茨華仙さま!
 大変! 一大事! 異変ですわ!」
「……はい?」
 その日、自宅にて『久々にガーデニングでもしようかしら、るんるん(幻想入りしたワードシリーズ)』と桃を愛でていた(もちろん、後で食べるためである)茨華仙こと茨木華扇こと華扇ちゃんのところに、青い邪仙、霍青娥が血相変えて訪れる。
 片手にじょうろを持って、しばし、沈黙した後、
「……何が?」
 華扇は、そう、青娥に尋ねた。
 青娥は片手に、丁寧に折りたたんだ、一通の書類を取り出すと、
「こちらを!」
 と、それを華扇に突き出してくる。
 また何をわけわからんことを、と眉をひそめてそれを受け取る華扇。
 書類には、以下のようなメッセージが書かれていた。

『小さいお子様をお持ちのご家庭向け通達

 昨日、人里、七番通りの曲がり角にて小さな子供を狙った変質者が出没しました。
 時間も遅く、辺りが暗かったこともあって変質者の正体は不明です。
 幸い、事なきを得た上記一件ですが、ご両親様には、夜遅くに一人で子供を外に出歩かせないよう、ご配慮頂くと共に、里の見回りを一時的に強化いたしますので、それへのご協力を願います。
(以下省略)』

「……由々しき事態です」
 一瞬、『あ、こいつがやったのかな』と思った華扇であるが、事、青娥の一連の行動……というか、言動を思い出して、考えを改める。
 確かにこやつ、色々と警吏に通報ものの思想言動の持ち主であるが、いざ、それを実行することはないのだ。
 曰く、『紳士淑女は、己の心の内に燃え盛る情熱を、仲間の前以外では吐き出してはならない』のだという。
 ……そのセリフから行くと、華扇は青娥に『仲間』認識されていることが旗幟鮮明となって、非常にむかつくっつーかこいつぶっ飛ばしたいという思いに駆られるのだが、それはともあれとしよう。
「このような……! 紳士淑女の片隅にすら置いてはならない下劣なものが、幻想郷にいるなどと!
 許されざることです!」
「まぁ……治安の維持とか、子供の身の安全の確保とか、色んな意味で、許されないことではありますが」
「華扇さま!
 つきましては、この悪党を撃滅するために、お力添えを!」
「……物騒な」
 せいぜい、『捕まえて警吏に引き渡す』くらいの手伝いならわからんでもないが、『撃滅』とは。
 青娥が言うのだから、それはもう、恐ろしいくらいの『撃滅』なのだろう。
 多分、肉体どころか魂のひとかけらすら残らない程度の。
「落ち着きなさい、霍青娥。
 確かに、このようなものに限らず、悪事を働くものは許されないものです。
 しかし、だからといって、彼らには更生の……」
「余地があるとお思いですか?」
「……いや、まぁ……うん……」
 据わった目で見据えられ、華扇は沈黙する。
 確かに、目の前の青娥を見る限り、『この手の』連中が更生することなど、絶対100%ありえないだろう。
 それは、たとえば、イージーシューターがノーショットノーボム上下移動封印でルナティックをノーミスクリアする程度に。
 ……自分で何言ってんだかわからなくなってきたのか、華扇は青娥から視線をそらす。
「こういう輩に必要なのは、慈悲でも救いでもなく、己のしたことに対する罰ですわ。
 今の世の中は、そこがおかしいのです。
 悪人や犯罪者を守るのも必要ですが、そもそも守られるべきは被害者であり、被害を出さないための環境を作ることです。
 悪人に人権などありません!」
 過激な発言ではあるが、一本、筋の通った意見でもある。
 こういう意見を持っている輩を説得したり、意見を変えさせたりするのは実に難しい。
 ……もちろん、するつもりもないのだが。
「華扇さま! どうかお力添えを!
 お願いいたします!」
 そうして、目の前で、最敬礼などするものだから。
 華扇はため息をついて、「……わかりました」とそれを承諾した。


 青娥がどれだけ過激なこと考えてやらかそうとしているのか、まぁ、大体想像はつくが、知らないものと仮定して、その状況にたとえ陥ったとしても、己がいればそれを止める事が出来るだろう。華扇は、そう考えた。
 彼女の暴走を横で押しとどめ、ひどい目にあいかけた犯人ともどもありがたい説教でもしてやれば、青娥も犯人も、きっと、心を……入れ替えることはないだろうが、考えを改めるきっかけにもなることだろう。
 そう思って、青娥と一緒に人里にやってきたのであるが――。

「……何これ……」

 そこは、異様な気配に包まれた空間となっていた。
 ちょうど、時刻は子供たちの寺子屋への登校時間。
 道を歩く子供たち。
 そして、彼らの通学路を中心に直立不動で佇み、周囲に油断なく視線を送っている、ごっついガタイの野郎ども。
 子供たちが『おはようございます』と声をかければ、野太い声で『押忍! おはようございます!』とでっけぇ返事をして、子供たちが泣いて逃げるような連中である。
「幻想郷紳士淑女同盟が、現在、警吏のもの達と共同して犯人を捜しております。
 また、同時に、子供たちを守るための警備も」
 こいつらの方が明らかに人里の治安乱してるのは間違いない。見るだけで、それを言葉ではなく魂で理解できる光景である。
 ついでに、ちらと細い路地へと視線をやれば、『お前らこれから人殺しにでも行くのか』とツッコミを入れたくなる装備と目つきの連中が、男女問わず、鋭い視線を辺りに向けながら『いたか!?』『こっちにはいない!』『よし、次へ行くぞ!』と鍛え抜かれた精鋭のごとく、一挙手一投足、乱れぬ連携ぶりを発揮している。
「さあ、華扇さま。わたくし達も」
 こいつらどうしたもんか、そもそもこいつらの方こそ、幻想郷から放逐すべきじゃないのか、と頭を悩ませる華扇の手を引いて、青娥は裏路地の方へ。
 しばらく歩くと、唐突に、空間が開け、小さな建物が現れる。
「皆さん、ごきげんよう」
「青娥さま!」
「仙人さま!」
「偉大なる淑女さま!」
 ほったらかしておくと『クリーク! クリーク!』と叫び出しそうな連中が、そこに集っていた。
 彼らが装備している武器の物騒さにめまいを覚えたのか、華扇は入り口近くの柱に寄りかかる。
「現在の状況を」
「はっ!
 現在、人里の、全24地区のうち、半分の探索を終了しましたが、依然、手がかりはありません!
 24時間の警備体制を敷いてから、早三日!」
「敵もさるもの、ということですわね」
「我々が行動を開始してから、子供たちへの被害は出ておりません!」
「そちらは、きちんと、効果が出ているようで。何よりです」
「現在、第9と14地区へ斥候を放っております! 報告は後ほど!」
「わかりました。下がりなさい」
 なんつーか、下手な軍隊よりこいつら統率取れている。
 ロリコンとショタコンは幻想郷でも最強の勢力の一つであるらしい。
 その一角をなす妖怪の山の連中も、『俺らはこいつらと同レベルか』と、きっと頭を悩ませていることだろう。
「これより、わたくしと、茨華仙さまも警備に加わります」
「おお!」
「青娥さまに加え、茨華仙さまも!」
「我々の勝利は確定したぞ!」
「幻想郷の未来のため! 幼き子供たちの笑顔のため!」
「仙人さま! 共に戦いましょうぞ!」
「……あー……もー……うん……」
 何かもう色々疲れてきた。
 この場にいる連中をまとめて『茨流仙闘術』で薙ぎ倒したくなってきた。
 しかし、敵の敵は味方という。今はこいつらを敵に回すよりも、味方にしたほうが、きっと賢いのだろう。
 ……うん。多分。
「では、華扇さま」
「……そうですね」
 建物の外に出ると、『不埒な変態撃退本部』と書かれた、建物に張られた看板が目に入った。
 こんな、日の差さない裏路地に本部を置くということは、まぁ、そういうことなのだろう。
「自分たちが日陰者だと理解しているからこそ、行動には、信念を持つことが出来ます」
 華扇の言いたいことがわかったのか、青娥は見事、それをフォローしてくれた。
 その時の華扇に出来るのは、ただ、深い深いため息をつくことだけだったという。


 里の中を歩き始めて、早3時間。
 警吏の側との連携ということで、そちらの詰め所に足を向け、小兎姫なる人物と打ち合わせを1時間。
 犯行の起こった現場の確認に30分。
 その周囲を歩き回ること1時間。
 おいしそうなお菓子売ってる店見つけて、メモ帳にメモすること30分。
「まぁ、そう簡単に見つかるものでもないでしょうが」
「相手がどういう人物かも、謎ですから」
「狂言だったのでは?」
 休憩ということで、二人、通りに面した食事処で作戦会議。
 店主が『おお! 仙人さま! 今日の俺はついてるぞ! 仙人さまのご来店だ!』とやたら気合を入れて振舞ってくれたご飯は、とっても美味しかった。
「狂言ですか?」
「そもそもそんな人物は存在しなかった。
 たとえば、その子供の家庭が、親があまり家にいなくて、寂しかったから、親に目を向けて欲しくてやった――そういう例もありますよ」
「……確かに。
 個人のご家庭の事情には、あまり深入りはしておりませんので、その辺りは何とも」
「その変質者の目撃情報は、話のあった一件だけなのでしょうか?」
「何件もあった、と聞いてはいますが……」
 それが『別の人物から』の報告なのか、それとも『同じ人物』の証言なのか。
 そこまでは聞いてなかった、と青娥はつぶやいた。
「子供を疑うようなことはしたくありませんが、その可能性もありそうですね」
 これだけの人数の『強力な味方』が何日も里の中を警備して回って、その尻尾をつかませない――なかなかの手だれの犯行と見ても相違ないが、そもそもそのレベルの犯罪者が、人里の中を、そうそううろついているというのも考えづらい。
 よくも悪くも、この世界はのんびりとした世界なのだ。
 悪党というのは川原の砂よりも尽きないと言われるが、そのレベルの輩がそんなにうじゃうじゃいるのなら、この世界は、恐らく、もう此の世に存在すらしてないだろう。
「ともあれ、まだしばらくはお力添えを頂きたいのですが……」
「それは構いません。
 ただ、どこかで見切りはつけたほうがいいと思いますよ」
「そうですね。
 頭に血が上っていると、冷静な判断が出来なくなります。
 さすがは華扇さま。どんなときでも沈着冷静、深謀遠慮。仙人としてだけでなく、人としての器も大きなお方です」
 全く、手放しのほめようである。
 普通、ここまで言われたら、『こいつは自分をよいしょしてるだけじゃないのか』と疑ってしまうのは、人間も仙人も同じであるが、事、青娥にはそれが当てはまらない。
 なぜなら、彼女は、本気で華扇のことを『素晴らしい仙人』と信じきっているのだから。
「どうしたもんだか」
 そうつぶやき、華扇は立ち上がる。
 青娥もそれに続き、二人はお金を払って、店を後にする。
 そうして、通りを歩くこと、しばし。
「……?」
 ――つと、風が舞った。
 華扇は足を止め、青娥が『どうされました?』と首をかしげる。
「何か用事ですか?」
 佇む華扇のその言葉に、「いえ、ちょっと協力を」という声が返ってくる。
「あら、あなたは――」
「どうもどうも。
 幻想郷の先を行く、あらゆる情報その手に握る、天狗の新聞記者こと射命丸の文ちゃんです」
 近くの家の屋根の上。
 そこに腰掛け、にこにこ笑っていた彼女は、とうっ、と地面に飛び降りる。
 着地し、彼女はそのまま、華扇たちの元へと歩いてきた。
「いえ、実はですね。
 先ほど、華扇さん達のお話を横耳で聞いていたんですけれど」
「いつの間に?」
「それは秘密です」
 にっこり笑い、文が差し出すのは、一枚の写真。
 暗がりを写したものであり、正直、写真の質としてはよくないだろう。
 しかし、
「……これは!」
 そこに写し出されている光景を見て、青娥が声を上げた。
 華扇はそちらをちらと見てから、『どういうつもりですか?』と尋ねる。
「いえ、何。
 こういうところで、こういう方々に恩を売っておけば、色々と、この先、やりやすいかな、と」
「ふむ」
「それに、ほら。
 ジャーナリズムというのは、世の中の、いわば『影』に隠された部分を暴き出すのが使命ですから」
「それにしては都合がよくありませんか?」
「偶然ですよ」
 それに、と。
 文は言う。
「被写体の撮影には、ルールがあるんですよ!」
 ぐぐっ、と握りこぶし作って、彼女は宣言する。
「そのルールを破るような奴にカメラを持たせることなど、私は、絶対に許しません!
 華扇さん! 青娥さん! この不埒ものを、必ずや、お縄にかけてくださいね!」
 真剣なまなざしを向けてくる文を見て、華扇はとりあえず、右の拳を固めて、その顔面に『華扇ちゃんストレート』を叩き込んだ。
 盗撮魔にも『ルール』はある。
 言うなれば、『悪事をするにもルールが必要』ということか。
 文の言葉は、全く正しい。
 同じ盗撮魔であるからこそ、この犯人が許せないということなのだ。
 華扇はやってくる警吏に「おまわりさん、このひとです」と文を引き渡した後、青娥を振り返る。
「思いがけないところから情報が来ましたね」
「ええ、華扇さま。
 やはり、お天道様は、日頃の行いをよく見ているということです」
 お天道様も大変だなぁ、変態の行動監視してて、と華扇は思った。
「この犯人……必ず捕まえましょう!」
 文の写真に写るそれ――カメラを抱えた、にやつく男性の顔のところを爪で切り裂き、青娥は、やたらいい笑顔を華扇に向けたのだった。


 彼は、焦っていた。
 ほんの出来心だったのだ。
 とある理由から手に入れた、この『カメラ』なる道具を使ってみたかっただけなのだ。
 被写体の選別が悪かった――今は、それを後悔するしかないだろう。
 己の興味と出来心が一致してしまった、ただそれだけなのだ。
 ただそれだけのことのはずだった。
 そう、それが、『彼女』の逆鱗に触れる行為だと知らなければ。

「追いつきました」

 声が、横からした。

「ひっ!?」
 飛びのき、引きつった顔をそちらに向けると、ゆっくりと、壁の中から現れる女の姿。
 彼女は足音を立てず、地面の上に足を下ろすと、にっこりと、彼に向かって微笑みかける。
「なるほど、確かに。
 日頃から、あまり人との接点を持たず、家の中にいることが多い方ならば――なるほど、外を探していても見つからないはずですわね」
「ご、ごめんなさい! そんなつもりはなかったんです!」
「あらあら……そう言われても」
 全力で謝っても、女の目は笑わない。
 いや、顔には張り付いたような笑顔が浮かんでいる。
 浮かんでいるのだが、目が全く笑っていないのだ。
 ……端的にぶっちゃけると、ものすげぇ怖い。
「困りましたわね……。
 そうして、平身低頭、謝られてしまうと、それを咎めるこちらが悪党になってしまいますし」
 うふふ、と笑う彼女は、頭を下げる彼の視線の高さへと、身をかがめる。
「本当に許して欲しいのなら、あなた、どんなことでも出来ますか?」
「ど、どんなこと、って……」
「そうですわね……。
 たとえば、簡単に突き刺さってしまう針の上で、土下座をしてみる、とか。
 あるいは全身にわらを巻きつけて、火をくべた上で、その誠意を絶叫してみる、とか。
 ――できますか?」
 無論、出来るわけがない。そんなことをすれば死ぬだろう。確実に。
 彼だって命は惜しい。
 罪を償って、まだ生きていたい。
 それなのに、罪を償うと同時に死んでしまうことなど、出来るはずがない。
「うふふ……そうですわね、出来るわけがありませんね。
 ごめんなさい、意地悪な質問をしてしまって。
 けれど――」
 彼女の手が、かんざしを握るそれが、『とん』と地面をつつく。
 途端、音もなく、ごっそりと、その周囲の地面が消失する。
「それは、己の命惜しさの愚かしい行為。
 己の罪を反省せず、うわべだけの謝罪に過ぎず。
 あなたは本当に、心から、己の行為を反省しているわけではない。
 なぜなら、『反省』の思いの上に、命を惜しむ、浅ましい想いがあるから」
 彼女の持つかんざしの先端が、彼を向く。
「これであなたの頭を突いてみたらどうなるでしょう?
 実は試したことがないのです。己の力を、生き物に使うという行為を。
 どうなってしまうでしょうね?
 頭に穴が空いてしまうのか、それとも、何も起きないのか。
 興味があるでしょう?」
 彼は顔を真っ青にして、必死に、首を左右に振った。
 手にしたカメラは地面に落ちる。彼女はそれを足で踏み砕き、張り付いた笑顔を浮かべたまま、一歩、また一歩と彼を追い詰めていく。
「一度、試させてくださいな?
 大丈夫、痛いことなどございません。
 だって、きっと、『痛い』と感じる前に死んでしまうのですから」
 振り上げた、彼女の右手。
 そこに光るかんざしに、彼は悲鳴を上げて、そしてそのまま卒倒する。
 彼女の振り下ろす手は、彼の頭のすぐ横――地面に倒れた彼の隣へと突き刺さる。
「――と。
 これくらい脅かせば、二度と、このような行為はしないでしょうか? 華扇さま」
「……やりすぎです」
 彼女――青娥の『罪を反省させるお説教』を暗がりから眺めていた華扇は、大きなため息をついて、そこから足を進めてくる。
「哀れな……」
 今回の騒動を引き起こした人物は、年齢ならば15か、6か。
 充分、ティーンエイジと言える年頃の子供だった。
 そんな『子供』を、青娥は容赦なく『お説教』したのである。
 さすがの華扇も、あそこまでのことはしないだろう。せいぜい、正座させて8時間ほど、延々と、言葉による『罪』と『反省』を説くだけだ。
「二度と、このようなことをせぬよう、きっと彼も心に刻んだことでしょう」
「……そりゃあ」
 絶世の美人、と言っても相違ない青娥が、にこやかな、しかし、決して『許さぬ』笑顔で迫ってきたら、大抵の人間は土下座して許しを請うことだろう。
 笑顔というのは、時に、恐ろしいものへと変じるのだ。
 かてて加えて、その相手が、自分を『殺してしまえる』相手だとしたら。
 ……泣きながら『ごめんなさい』するしかないだろう。人間ならば。
「さて、彼は警吏に突き出すと致します」
「ここまでしてさらにですか」
「罪は反省させなければなりません。
 己が犯した罪を真摯に見つめ、向き合い、受け入れると共に反省することが、人が成長するきっかけとなるのです」
 言っていることは正しいのだが、やっていることはむちゃくちゃである。
 恐怖のあまり失神し、ついでに失禁もしている彼をひょいと片手で軽々担ぎ上げ、「犯人が見つかってよかったですわ」と青娥は笑顔を浮かべる。
 その笑顔に、華扇は、色んな意味で底知れぬものを覚え、「……ほどほどにするように」とつぶやいた。
 青娥は空へとふわりと浮かび上がり、「ご迷惑をおかけしました」と華扇に頭を下げた。
 意気揚々と、『犯人』と書いた紙を彼の顔面にぺたりと貼り付け、さらし者にしながら去っていく彼女の後ろ姿。
 それは、あらゆる意味で、『満足した』姿であったという。
「……あとで、彼には何らかのフォローをしておかないといけないわね」
 あのままほったらかしておけば、彼に張られるレッテルは『変態ロリコン野郎』である。
 どう考えても、この先、まともな人生を送れるとは思えない。
「まぁ……変態だろうと、ロリコンだろうと、まともじゃなくても満足した人生を送っている輩は、幻想郷には腐るほどいるけれど……」
 その『器の中』に、彼のような子供が取り込まれてしまうというのは、色んな意味で、哀れであった。
「……慧音さんにも話をしておかないと」
 どうして、私が、あいつのやることの後始末をしないといけないんだろう、と華扇はぼやいた。
 青娥と二人でセット扱いされている自分の扱いというか立場というものを嘆きつつも、やらなきゃならないことはやらなきゃならないと割り切って、その場を後にする。
「……私は保護者じゃないのよ」
 そう呻く華扇であるが、生来からの巻きこまれと首突っ込み体質が、その現状を作っていることに気がつくのは、またしばらく後の話であったという。
小さい子を愛でる時は、ちゃんとルールを守って紳士的にね(標語:青娥にゃんにゃん)
haruka
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
良かったです
2.名前が無い程度の能力削除
お仕事中にもちゃっかりお菓子屋さんメモっちゃう華扇ちゃんマジ華扇ちゃん
なんだかんだ言いつつも最後はしっかりフォローしてくれるし、これでは尊敬されて当たり前ですよね・・・
3.絶望を司る程度の能力削除
なにこの特殊部隊w
4.ペンギン削除
人里での華仙ちゃんの扱いがすごいwさすがフルーツ仙人…
訓練された紳士たちと本気にゃんにゃんがかっこよくて素敵で、今回もとても面白かったです
5.ペンギン削除
人里での華仙ちゃんの扱いがすごいwさすがフルーツ仙人…
訓練された紳士たちと本気にゃんにゃんがかっこよくて素敵で、今回もとても面白かったです