たまに、途方もなくおかしくなることがある。
この世界が大嫌いになって、すべてぶち壊したくなる事が。
そんなときはいつも、私は彼女を頼るんだ。
――私がおかしくなったのは、全部月のせいだ。
貴方を壊したい。
私がそう言うと、彼女は笑って「大丈夫」と返す。
「好きなだけ壊してよ」
もう壊れてるような物だから、と。
両手を広げて、彼女は私を誘う。
私は羽を輝かせて、その体に拳を、弾を、体を、叩きつける。
何度も、何度も、何度も、何度も。
彼女は嫌な顔一つせず、すべてを受け入れてくれる。
――爛々と輝く月の前で、あいつは意地悪く笑う。私のすべてを奪ったあいつが。
貴方を殺したい。
私がそう言うと、彼女はまた笑って「大丈夫」と返した。
「好きなだけ殺そうとしてよ」
それが出来るならね、と。
すがりつくように、彼女の首に指をかけた。
強く、握る。
気道がふさがっても、彼女は顔色一つ変えなかった。
そして彼女もまた、私の首に手をかける。
ただ絞めることはしない。優しく、慈しむように。
――私は逃げることができない。一生、此処にいなければいけない。
貴方と、一緒にいたい。
私がそう言うと、彼女は嬉しそうに微笑んで「大丈夫」と返してくれた。
「私か貴方が消えるまではね」
それまでは、飽きるまで一緒にいよう、と。
私の手から力が抜ける。
彼女は優しく私を抱きしめてくれた。
柔らかな人肌のぬくもり。
今まで幾年を重ねても、受け取る事のなかった――受け取ることができるはずもなかったぬくもりに縋る。
私の想いは、愛か、恋か、それとも同情か。
彼女の想いは、同情、恋か、もしくは愛か?
――少しの間だけでもいい。一人より、二人がいい。
私たちは似ているんだ。
月に唆され、月に苦しめられ、永遠に閉じ込められている。
一方は、常人を装う狂人だ。
もう片方は、狂人を装う常人だ。
ああ、貴方よ。美しき貴方よ。ありがとう。
おかげで私は、私――藤原妹紅でいられるから。
「またいつでも来てね」
ああ、いつでも来るよ。
どちらかが死ぬまでは、ずっと。
この世界が大嫌いになって、すべてぶち壊したくなる事が。
そんなときはいつも、私は彼女を頼るんだ。
――私がおかしくなったのは、全部月のせいだ。
貴方を壊したい。
私がそう言うと、彼女は笑って「大丈夫」と返す。
「好きなだけ壊してよ」
もう壊れてるような物だから、と。
両手を広げて、彼女は私を誘う。
私は羽を輝かせて、その体に拳を、弾を、体を、叩きつける。
何度も、何度も、何度も、何度も。
彼女は嫌な顔一つせず、すべてを受け入れてくれる。
――爛々と輝く月の前で、あいつは意地悪く笑う。私のすべてを奪ったあいつが。
貴方を殺したい。
私がそう言うと、彼女はまた笑って「大丈夫」と返した。
「好きなだけ殺そうとしてよ」
それが出来るならね、と。
すがりつくように、彼女の首に指をかけた。
強く、握る。
気道がふさがっても、彼女は顔色一つ変えなかった。
そして彼女もまた、私の首に手をかける。
ただ絞めることはしない。優しく、慈しむように。
――私は逃げることができない。一生、此処にいなければいけない。
貴方と、一緒にいたい。
私がそう言うと、彼女は嬉しそうに微笑んで「大丈夫」と返してくれた。
「私か貴方が消えるまではね」
それまでは、飽きるまで一緒にいよう、と。
私の手から力が抜ける。
彼女は優しく私を抱きしめてくれた。
柔らかな人肌のぬくもり。
今まで幾年を重ねても、受け取る事のなかった――受け取ることができるはずもなかったぬくもりに縋る。
私の想いは、愛か、恋か、それとも同情か。
彼女の想いは、同情、恋か、もしくは愛か?
――少しの間だけでもいい。一人より、二人がいい。
私たちは似ているんだ。
月に唆され、月に苦しめられ、永遠に閉じ込められている。
一方は、常人を装う狂人だ。
もう片方は、狂人を装う常人だ。
ああ、貴方よ。美しき貴方よ。ありがとう。
おかげで私は、私――藤原妹紅でいられるから。
「またいつでも来てね」
ああ、いつでも来るよ。
どちらかが死ぬまでは、ずっと。