Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

月に狂わされた二人の話

2014/05/19 00:14:33
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 たまに、途方もなくおかしくなることがある。
 この世界が大嫌いになって、すべてぶち壊したくなる事が。
 そんなときはいつも、私は彼女を頼るんだ。

――私がおかしくなったのは、全部月のせいだ。

 貴方を壊したい。
 私がそう言うと、彼女は笑って「大丈夫」と返す。

「好きなだけ壊してよ」

 もう壊れてるような物だから、と。
 両手を広げて、彼女は私を誘う。
 私は羽を輝かせて、その体に拳を、弾を、体を、叩きつける。
 何度も、何度も、何度も、何度も。
 彼女は嫌な顔一つせず、すべてを受け入れてくれる。

――爛々と輝く月の前で、あいつは意地悪く笑う。私のすべてを奪ったあいつが。

 貴方を殺したい。
 私がそう言うと、彼女はまた笑って「大丈夫」と返した。

「好きなだけ殺そうとしてよ」

 それが出来るならね、と。
 すがりつくように、彼女の首に指をかけた。
 強く、握る。
 気道がふさがっても、彼女は顔色一つ変えなかった。
 そして彼女もまた、私の首に手をかける。
 ただ絞めることはしない。優しく、慈しむように。

――私は逃げることができない。一生、此処にいなければいけない。

 貴方と、一緒にいたい。
 私がそう言うと、彼女は嬉しそうに微笑んで「大丈夫」と返してくれた。

「私か貴方が消えるまではね」

 それまでは、飽きるまで一緒にいよう、と。
 私の手から力が抜ける。
 彼女は優しく私を抱きしめてくれた。
 柔らかな人肌のぬくもり。
 今まで幾年を重ねても、受け取る事のなかった――受け取ることができるはずもなかったぬくもりに縋る。
 私の想いは、愛か、恋か、それとも同情か。
 彼女の想いは、同情、恋か、もしくは愛か?

――少しの間だけでもいい。一人より、二人がいい。
 
 私たちは似ているんだ。
 月に唆され、月に苦しめられ、永遠に閉じ込められている。
 一方は、常人を装う狂人だ。
 もう片方は、狂人を装う常人だ。
 ああ、貴方よ。美しき貴方よ。ありがとう。
 おかげで私は、私――藤原妹紅でいられるから。

「またいつでも来てね」

 ああ、いつでも来るよ。
 どちらかが死ぬまでは、ずっと。
 あえての妹紅視点。ロリ母性的なフランドールが書きたかった。
 妹紅もフランドールも一人ぼっちですし、月(輝夜、レミリア)に狂わされていて、そして永遠の檻(片や永遠に開くことのない檻、片や永遠という名の檻)から逃げられない。
 もこもこ。羽生えますしね。フェニックス。もこもこ。
沢田
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
良かった