Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

仙人、お出かけした

2014/01/09 21:53:31
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「まぁ、今更言うのも何ですが」
「はい」
「あなた、本当に、どこにでも現れますね」
 神出鬼没もいいところだと指摘するピンク頭のお団子仙人、茨木華扇ちゃん。
 一方、文字通りの神出鬼没さでもって、幻想郷のあちこちに出没する青色仙人、霍青娥。
 二人はここ、人里の甘味処で顔を突き合わせている。
 事の発端はもちろん、『本日限定、特製クリームあんみつ(フルーツ盛りだくさん)』のチラシが配られていたのを速攻ゲットした華扇のところに、たまたま、青娥が顔を見せたことによる。
「はい。やはり仙人と言うのは神出鬼没であるべきかなと」
「まぁ、言葉は間違ってはいませんが」
「それに、ここ、幻想郷ではまだまだ新参のわたくし達にとって、あちこちを歩き回って見聞を広めることは、道教の布教を広めることにも役立つと考えております」
「間違ってませんが」
 しかし、何かどっか違う。
 色々と言いたいことは山のようにあるのだが、それを一つ一つ選別するだけで日が暮れる。
 ならばと全部、口に出してやってもいいのだが、今度は時間が足りない。
 仙人とは因果な商売である。
「それに、大奥に引きこもってばかりだと、世が読めなくなりますから」
「まぁ、そうですね」
「割とわたくし、諸国行脚、好きですのよ」
「それは意外です」
「特に幻想郷は、地域ごとに特色がありますから」
「……」
 あっただろうか、そんなもの。
 東西南北に長いというわけでもない、地域地域において、深みのある歴史を持っているわけでもない。
 そこに住んでいる身分でありながら、その土地に文句をつけるというのもぶしつけな話ではあるが、幻想郷とは、まだ出来て歴史の浅い土地なのだ。疑問にも思うだろう。
「何か、私の知らないものがあるのですか?」
「あら」
 そこで、青娥が『これは驚きました』という顔をする。
「意外ですわ。
 わたくしよりも遥かに高名であらせられる仙人の華扇さまが、よもやそのような疑問を」
「……本気で言ってますか?」
「ええ、もちろん」
 青娥の普段の態度を知っていると、このような言葉は露骨なよいしょ、悪く見れば相手を小ばかにしているとしか思えないのだが、事、華扇に対してはガチである。
 この彼女、どういう理屈かそれとも因果か、華扇のことを『徳の高い素晴らしい仙人』と信じきっているのだ。
「たとえば、どのような?」
「そうですわね……」
 過去の記憶を浮かび上がらせるためか、それとも、思い出に浸るためか。
 瞳を閉じた青娥が、ゆっくりと口を開く。

「まず博麗神社。
 ここには、小憎らしい、しかしながら確かな実力を持った巫女がいることはご存知かと思われますが、何より素晴らしいのは、とても小さくかわいらしい三月精ちゃん。
 彼女たちはいたずら好きな小さな女の子。ですが、まぁ、妖精ですから頭の中身が根本的にお子ちゃまなところもございまして、美味しいお菓子を持っていくと、簡単に篭絡……もとい、心を開いてくれました。彼女たちと過ごす、楽しいお茶の時間は、何物にも換えがたい時間でございます。
 しかも最近では、まるでお人形さんのようにかわいらしい少名針妙丸ちゃんも加わりました。これからが楽しみです」

「……………………」

「続きまして紅魔館。
 ここには言わずと知れたスカーレット姉妹、レミリアちゃんとフランドールちゃんがいらっしゃいます。
 どちらも年相応、見た目相応の愛らしさ。
 お姉さんのレミリアちゃんはちょっとわがままマスコット、妹のフランドールちゃんはとってもよい子。
 この子達を眺めている、それだけで時が過ぎるのを忘れてしまいます。
 さらにこの館の周囲に存在する霧の湖には、氷の妖精のチルノちゃんを始めとした小さな小さな妖精ちゃん達。
 お菓子を持っていくだけで、みんな笑顔になって、わたくしと一緒に写真撮影にも応じてくれる辺りが最高ですわね。
 しかも妖精とはなかなか育たないどころか、決して大人にならないという、わたくしにとって至高の事実が存在します。隠居したら、この辺りに家を構えてみるのも面白いかもしれません」

 華扇は無言で、青娥の言葉から耳を閉じた。

「さらに白玉楼。
 こちらには現在、日々を研鑽に費やす少女剣士の魂魄妖夢さん。
 もう少しでわたくしの射程範囲から外れてしまうのが残念ですが、彼女は人間ではなく、その見た目の成長も遅いと聞いておりますから、向こう数十年は通う価値がございます。
 彼女のように何事にも一生懸命でまっすぐな少女は大変貴重な存在です。彼女に対して、その生き様を見届けると共にアドバイスが出来るような仙人となりたいとも思います。
 それに夏はとても涼しいところですから、避暑に通うのもいいかもしれませんね。
 さらにそこに辿り着くまでの道程にも、にぎやかで笑顔の似合うリリーホワイトちゃん。とても演奏の上手なリリカ・プリズムリバーちゃん。全く、あの世というのは最高でございます」

「すいません、おかわりください」
「はいただいまー」

「続きましてマヨヒガです。
 これに辿り着くのはとても苦労致しました。さすがの仙人であるわたくしでも、遠野の神話にございます幸福の館に辿り着くのには難儀致しました。
 しかし、辿り着いてみれば、そこにはとてもかわいらしい猫ちゃんの、橙ちゃんがいらっしゃるではありませんか。
 妖として修行を積みつつ、ひなたぼっこでごろごろしているそのお姿。思わず妖怪の山で大枚はたいて購入した『かめら』の『ふぃるむ』を全部使い切ってしまうほどでした。
 橙ちゃんはやはり猫の妖でございますから、こう、喉をなでてあげるとこれがまたかわいくて。
 今度こそ、マヨヒガへの道を確立し、彼女に逢いに行こうと考えております。またたび持って」

「おまたせしましたー」
「いただきまーす」

「先日、布都ちゃんが風邪を引いた際に訪れたのですが、竹林の奥にある永遠亭というところも素晴らしいところでした。
 情緒あふれる日本家屋というのは、人々の美の意識の集大成でございますが、そこで働く白衣のうさぎちゃん達がこれまた。ええ。
 遥か遠い神代の頃から居るといわれる因幡てゐさんは、わたくし達、仙人にとっても尊敬すべき人生の先達であり、思わずほっぺたぷにぷにしたくなるかわいらしさでございました。そして、そこで一生懸命、医者の卵として働く小さなうさぎちゃん達の数々。
 皆、妖となって日が浅いというお話でございましたが、彼女たちも、これから頑張ってお医者さんを目指すのでしょう。
 お医者さんごっこというのは、また危険な響きを携えた言葉でございます」

「このソフトクリーム美味しいですねー」
「そうでしょう? 仙人さま。あたしも頑張ったんですよ。慣れないながらにね~」

「なかなか訪れる機会がないのですが、妖怪の山も、よいところだと考えております。
 漂う妖と神の気配は、仙人として修行を積むのに最適。確か、華扇さまもあちらに居を構えておりましたね。さすがです。
 山のほうには、まだまだ足を踏み入れることが出来ず、さすがは天狗たち。手ごわい相手です。
 仕方ないので、その頂上の神社に参拝するのが日課となりつつありますが、こちらにもかわいらしい神様の洩矢諏訪子さまがいらっしゃいまして。
 ご本人は祟り神と仰っているのですが、なかなかどうして、このようにかわいらしい祟り神もいらっしゃるものです。
 しかし、その見た目と反して深い知識と智慧、信仰を集めており、驚くべきものがございます。耳年増ということもございまして、他の少女たちには伝わらないことも簡単に伝わって、こう、背徳感がたまりません。今度、お酒を飲みながら、人生の深みについて語り明かすつもりでございます」

「ちょっと体が冷えてしまいました。こちらの焼きまんじゅうを二つください」
「かしこまりましたー」

「一日の疲れは温泉で癒すのが最適なものです。
 最近のお気に入りは地霊殿でして、こちらにはとても素晴らしい温泉がございます。今度、華扇さまもご一緒にいかがですか?
 お湯の質も、建物の風情もさることながら、やはりそこで働くかわいらしい二人の女将、古明地さとりさんとこいしさんに尽きると思われます。
 何事にも元気でかわいらしいこいしさん。少し大人びた、知的な風貌のさとりさん。どちらも同じくらいに愛らしい少女でして、どちらを愛でるか目移して迷ってしまうほどでございます。困ったものです。わたくしの体は一つしかございませんから、双方の頭をなでなでが限界ですもの。
 あと最近、お近づきになったのですが、キスメさんという釣瓶落としの妖怪も、また侮れないロリータ……こほん、少女ですわ。
 まだあまりお話が出来ていないので、今度、じっくりとお時間を取らせていただければと」

「なんと、あんこも少し焼きを入れてあるんですね。ほんのりあったかい感じが最高です」
「ありがとうございます、仙人さま。仙人さまにほめられた甘味は何でも成功すると、里じゃ噂なんですよ」

「また、最近、他の宗教の知識も得るべく、命蓮寺にも通っております。
 こちらで修行を積んでおります聖白蓮さまは、とても素晴らしいお坊様でして。お話を聞くと、なかなか、人生の深みと渋みを携えていることがよくわかります。
 それに、わたくしと同じく子供好きな方でございますので、子供たちに向けて開くお祭りごとなどのお話をよく聞いていただけます。
 加えましてこちらで修行を積んでおります山彦の響子ちゃんのかわいらしさといったら。
 何にでも興味を持つお年頃と申しましょうか。こちらが言ったことをすぐに真似して笑っている笑顔がとてもかわいらしくて。
 あ、こちら、今度、その響子ちゃんに持っていってあげる予定のアイドル衣装ですわ。かわいらしいでしょう。
 それに、本当にたまにしか逢えないのですが、多々良小傘ちゃんも、侮れない存在ですわ。
 素直で健気、まっすぐないい子。もうそれだけで笑顔と一緒に美味しいお菓子をあげたくなるところです。しかし、驚くべきは、彼女もまた幻想郷にすら数少ないロリ巨乳。あの童顔とそれに見合わぬ容姿は、永遠に、記憶の中に留めるにふさわしいものだと感じております」

「ふぅ、美味しかった。すいませーん、お会計をお願いしたいのですが」
「はーい」

「そして忘れてはならない人里。
 たくさんの人々が日々を生活する、大切な空間です。あちこちを回り、同郷の布教に努めております。
 そんな中、つい最近、お知り合いになりました稗田阿求さんと本居小鈴さん。
 阿求さんは大変でございますね。短い命を何度も繰り返し、幻想の歴史を編纂する。彼女のその因果が、いずれ解き放たれる日は来るのでしょうか。それはわたくしにもわかりかねます。そんな日々を平和に、そして楽しく、前向きに過ごしていらっしゃる。あのお小さい体に、どれほどのバイタリティを備えているのか。敬服してしまいます。
 そして、本居小鈴さん。彼女の家にはたくさんの本がございます。本というのは知識と智慧、そして歴史の集大成。いくつになっても、そしていつになっても、これをたしなむことをやめることは出来ません。彼女お勧めの本をたくさん借りてきてしまいました。わたくしも本については知識が深いと存じております。ついつい、マニアックな話にも興じてしまいまして、まぁ、時の過ぎることの早いこと。楽しい時間でございました。
 さらに加えて、いたずらっ子の正邪ちゃんに逢うことも増えております。彼女、どうも人里の子供たちと友達になったみたいでして、子供らしいいたずらを考えたり、彼らと仲良く過ごしているようですよ。いいことです。小さな子たちがじゃれあっているのを見ると胸がときめいてしまいますね。うふふ。
 あと、たまに通りの片隅で秦こころちゃんが舞を披露していることがあります。ご存知でしたか?
 見事なものです。あのあどけない顔立ち、幼い姿に似合わない、見事な舞を披露しております。手を叩き、声をかけ、その見事な腕前を讃えてあげるのは、わたくし達、仙人の務めでございます。あと、こころちゃん、割と食いしん坊ですので、ご飯をおごってあげると声をかけるとすぐに、かるがもの赤ちゃんみたいについてくるんです。かわいらしいですわ」


「一日の行脚を終えて家に戻れば、神子ちゃん布都ちゃん芳香が出迎えてくれます。
 彼女たちにご飯を作って、お風呂に入れてあげて、そして寝るまで子守唄を歌ってあげる。それがわたくしの一日です。
 このようにかわいらしい少女たちが入り乱れる幻想郷――なんと素晴らしいところでしょうか。
 ですわよね? 華扇さま」
「こっちに話を振るな。」
 長い語りも終わり、いきなり正気に戻る青娥。なお、彼女の『正気』が一般的な意味でのそれと同じかどうかまではわからない。
「あと最近、彼岸の橋渡しの向こうに、とてもかわいらしい少女が居ると聞きまして。
 それがこちらの写真なのですが、すでにご存知とは思われますが、四季映姫ちゃんと仰るそうで」
 一体、どこのどいつがいつ撮影したのかわからないそれは、幻想郷ではトップクラスの実力と威厳と権威を持つ閻魔さまが、くまさんだっこしておねんねしているシーンを激写したものであった。
「さすがに、彼女に逢いにいくのはわたくしが死を迎えたときだと思っておりますが、不老不死のこの身、それがかなわぬのも事実。
 ……もったいないことしたっ! そう思います」
「……あんたね」
「だからたまにちょっと死んでみるのもいいかもしれないなー、と思って仮死状態になる術の勉強を始めております。
 神子ちゃん達に施したものとはまた違いまして、これは魂のつながりを維持したまま、それを完璧にコントロールするという高度な術です。
 ところで華扇さま、こちらの術の体得についてアドバイスを願いたいのですが……」
「知るかーっ!」
 叫びと共に放たれる『茨華仙流仙術究極奥義一の型 全力右ストレート』は見事青娥を直撃し――しかし、「やはり華扇さま。こうしたことは他人に頼らず、己の実力で、という教え、しかと受け取りました」と青娥の深い誤解をますます深くするだけで終わってしまったという。
販売場所:香霖堂 人里本屋
レンタル:鈴奈庵
haruka
コメント



1.絶望を司る程度の能力削除
相変わらず暴走してるなww
2.名前が無い程度の能力削除
青色仙人様は本当にぶれませんなあ。
映姫様のプライベートショットはアレですね、下手すりゃ所有者を巡ってちょっとした異変クラスの騒動が起きてもおかしくないブツだと思います。
3.名前が無い程度の能力削除
これが宿業か。
4.名前が無い程度の能力削除
ぬえをナチュラルにハブるとかいい度胸じゃねえの
5.名前が無い程度の能力削除
ほー。あのにゃんにゃんが聖に言及するとは珍しい。お眼鏡に適ったのか。適っちゃったのか。若返り術を更に拡張して大人の女性から幼女になる可能性でも見たか、あるいは悪い意味での『子供好き』同輩か……。