いつものように、隙間を介して外界を覗き見ていた紫は、自分の背をつんつくと突く者の存在に、面倒くさげに腕を振って隙間を閉じ、振り向いた。
しかしそこには誰もいない。一面真っ白な空間が広がっているのみである。
気のせいだったか、いや確かに今。しかし、自分に気づかせない程の妖怪がいるのか……。
思考する紫の背を、またも何者かがつっつく。
今度は素早く振り向いた。
だが、やはりそこには誰もいない。一面真っ白な空間が広がっているだけだ。
不機嫌に腕を組んだ紫は、少し考えて、もし次同じように背を突く者があったら、振り向かず隙間を開いて正体を暴いてやろうと考えた。
間もなく、背を突く存在が現れる。
紫は、考えていた通り、振り向かずに腕を縦に振った。
ピィッと空間が裂け、やや離れた所から見下ろすような形で自分の背を見た。
その間、一秒もせず。
だというのに、何者の姿を捉える事もできず、紫は自分自身が隙間を覗き込んでいるのを見る事しかできなかった。
少しして、ふと思い立って、紫は手を伸ばした。
限界まで腕を伸ばすと、少し身を乗り出して、指先で自分の背中を突っついてみる。
すると、目の前の自分は面倒くさげに隙間を閉じたではないか。
紫は自分自身が振り向いてくる前に乗り出していた身を戻し、隙間を閉じた。
そして再び背後に隙間を開くと、考え込んでいる自分の姿が見える。
興がのった紫は、同じように腕を伸ばし、その背をつっつくと、素早く身を隠す。
少し間をおいて隙間を開けば、何者かの正体が掴めず、考え込んでいる己の姿がある。
紫は面白くなって、口元に手を当てて声を殺して笑った。
と、紫は自分の背をつんつくと突く者の存在に、面倒くさげに腕を振って隙間を閉じ、振り向いた。
ま
え
を
見
て
い
る
ぞ フフッ