Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

大ナマズとアク

2013/08/18 01:24:52
最終更新
サイズ
6.18KB
ページ数
1

分類タグ

(知ってますか?大ナマズ先生)

(なんじゃ?)

 長い間生きているこのわしに質問すると言う事は

 よっぽど難しい物かと首を傾ける
 
(アクの意味を)

(馬鹿にするでないわ)

 ワシのこの身体そのものではないかと言うと

 目の前の嬢ちゃんは変わらぬ笑顔で告げた

(だったら……)

 

     ・・・



「……なんじゃ、少しうとうとしてしまったようじゃな」

 どうやら、少し疲れが溜まっておるみたいじゃな

 なにせ、少し昔の事を夢で思い出すぐらいじゃから

 門番の嬢ちゃん……夢の中で久しぶりに顔を思い出した

 紅い屋敷での生活は思っている以上に楽しかった

 だが、今はそのお嬢ちゃんは門の前には居ない

「……おっと、忘れるところじゃったわい」

 少し慌てて、わしは目の前の世界に集中する

「……ふん、少し目を離せばすぐに湧いてきおる」

 ワシの目の前に見えるのは限りなく湧いてくるアク

 最も、わし自身がその世界に入れば

 目の前のアクの三倍になるであろうが

 わし一人だけなら、アクなどそのまま飲み干してくれる  

「……はずじゃったのだがな……」

 

 目の前の世界……死んだ者達の骨や臓腑から作られた血生臭い世界

 その世界に湧き出るアクをあろうことか

 ワシがそっとすくう……

 このような事をする等、

 天地がひっくり返ってもありえるハズが無いと思っていたが

「……このワシが、嬢ちゃんが言っておった戯言に惑わされるとはのう」

 先程の夢の言葉の続きを思い出す

 まだ、ワシが門の前で嬢ちゃんと楽しく仕事をしていた時の事を 



     ・・・



(はっ?全てすくう?)

(そうですよ、アクだって、すくわれないと……)

(そんな無駄な事をしてどうなる?アクは諦めないといかんじゃろう)

(うぅた、確かに時間はかかりますけど)

(時間の無駄じゃ!)

(ですけど……もし、もし全てすくうことができたら……)

(……)

(きっと、浮かばれるはずなんです)

(ふん!世迷言じゃ)




     ・・・



「……また、うとうとしとったか」

 ふと、意識が落ちていた事に気がつき首を振って意識を覚醒する

 夢の続きと、その後の事を思い出す

 嬢ちゃんが倒れた……屋敷の中でも大変な騒ぎになっておった

 嬢ちゃんが倒れると言う事は並大抵の事ではない

 屋敷の中の者達からの看病が手厚かったが

 門番の嬢ちゃんは日に日に窶れていく

 そしてワシは……

(それに耐えれず……一人、逃げて……)

 そして、罪滅ぼしでないが

 嬢ちゃんの言っていた話を実行する事にした

(あれからどれだけ時間が経過したのかもうわからん)

 そうして、ボロボロの姿で

 再び目の前の世界を覗き込んだ時

(な、なんじゃ?)

 不思議な事が起きておった……

 血生臭いはずの目の前の世界から、アクがなくなっている

 いや、完全には消えていないが前のように世界を覆っていたアクが

 明らかにその姿を減らしていた

「……もう一息という事か」

 ワシは再び目の前の世界と立ち向かう



     ・・・



(……どうじゃ?)

(あはは……)

(無理に起き上がるな、寝ておるとええ)

(はい、すいません)

(……)

(……)

(なあ、嬢ちゃんわしは)

(行って下さい)

(っ!?な、なんじゃと?何時からバレて)

(……気がついてますよ、大ナマズ先生の事ですから)

(ふん、ではな……生き残れよ)

(……頑張ります、ですから)

「ナマズ先生も……無茶しないで」



     ・・・




(いかん、また意識が)

 ハッと気がつき、目の前の世界を見る

「……こ、これは」

 其処には、アクが全て消えていた

 代わりにその下に見えるのは

「なんとも綺麗な……」

 長き長き時間の果、溢れるアクをひたすらすくい続けた結果

 まるで朝日のように澄んだ、綺麗な透き通った世界の姿

(嬢ちゃんの、言った事は正しかった)

 不可能と思えた偉業を超え

 ワシは、ふらふらと倒れそうになりながらも

 その世界を少しだけ揺らし、そっとその一部を手にした

(さあ、待っておれ……)

 長い間、無茶をさせた身体に最後のムチを打って

 ワシはこの空間から、あの懐かしい世界に戻る為に力を振るった

(嬢ちゃん)

  



     ・・・





 私は倒れて居ました……

 早く門の前に立ちたいのに、それができない

 悔しさと、そして心細さと……

 屋敷の皆は私を手厚く看護してくれます

 ……ええ、それはそれは手厚く……

 でもですよ?皆ちょっと過保護すぎじゃないですか

 妹様は毎日看護にやる気を出してくれるのは良いですけど

 花瓶壊れたり、30分事に身体をタオルで拭きに来るし

 咲夜さんはそれを見て対抗意識もっちゃたのか

 元気になるようにって料理を張り切ってくれる嬉しいんですけど

 毎回、豪華な料理を大量に持ってくるのは結構きついんです
 
 後、お嬢様、薬って少ない良い位で良いんですよ?
  
 『わ、私の為に早く治れ!』って真っ赤になって

 一日一錠なのを一瓶を強引に口に突っ込まないで下さい



「はぁ……疲れる」
 
 こんなんじゃ、ただの夏風邪も治らない

「……おい、嬢ちゃん」 

 そんな時、少し疲れた懐かしい声が聞こえた

 ハッとして私が振り向くと

「大ナマズ先生!」

 そこに居たのは、数日程姿を消していた大ナマズ先生の姿が

 思わず泣きそうになった私に対して

「とりあえず、此処から出るかのう」

 大ナマズ先生は、疲れてはいるが

 優しい笑顔で私をパクッと口に含むと

 屋敷の盲点である地面の中にポチャンと逃げ出してくれた

 そして、門の傍にある隠し小屋の中で

 私を開放すると、そっと私に丼を出してくれた




「とりあえず、スープがあるから飲むと良い」

「うわぁ、ありがとうございます!最近脂っこのばっかりできつかったんですよ」

「……豚骨とか野菜とから大量に入っておるけどの?」

「うぅ、それは油でギトギト……」

「……」

「って、アクが全部無くなって澄み切ってるから、濃厚なのにあっさりしてる」

「まあ、飲めるなら飲んでおいけ」

「お代わり!」

「それだけ言えるなら、明日には復活できそうじゃな」

 

 ねぇ、大ナマズ先生?

 ん?なんじゃ?

 この湯(タン)作るの、大変だったんじゃないんですか?

 ……さてのう……嬢ちゃんも程よいタイミングで屋敷に返るんじゃな

 ガラや豚骨入った湯が透き通るまでアクを取り続けるって数時間じゃ……

 ワシは疲れたから寝る!お休み! 

 ……もう、天邪鬼なんですから……



     ・・・



 次の日、お嬢ちゃんは完全復活を遂げたらしい
 
 そして、屋敷の連中が看病いらないと言われて大いに凹んでおったが 

(が、代わりにワシが調子悪い……)

 まあ、三日三晩は寝ずにアクをすくい続けておったからのう……

(その分、眠ってしまっても……構わんじゃろう?)

「大ナマズ先生、門の此処が一番太陽が当たって暖いですよ?」

「おっ?では失礼して……」

(という訳で……お休みじゃ……ぐぅ~)

 数時間後、またワシは嬢ちゃんの抱き枕になっておって

 何時ものように嬢ちゃんに起きるように怒鳴るのはまた今度……
美鈴「はい!大ナマズ先生型もやし炒め細工出来ましたよ!」

大ナマズ「むお?ただのモヤシのヒゲと根を取り除いて、ワシの姿に細工して、その上に濃い目のタレをかけるとは」

 そんなお話です
 久しぶりに大ナマズ先生が書きたくなった、ただそれだけ
 脇役って、こっそりと出ても面倒じゃ無いからいいね
 では、また次のナマズ先生のお話でノシ 

※コメントありがとうございます、脇役らしくこっそりとコメント返させて貰います

・絶望と司る程度の能力様
ポルナレフ的感謝wやっぱり美鈴とナマズの話はほのぼのしてないとね

・奇声を発する程度の能力様
ナマズと美鈴はほのぼのハッピーエンドでないとね

・3様
御久しぶりです、確かに苦味も料理の味の一つなんですよね
ま、まあそこは大ナマズ先生が
病人にも食べやすくしてくれたと言う優しさで補ってくれたという事でお勘弁

・4様
御久しぶりです、脇役は面白い話を書く主役の陰に隠れてそっと作品を書きます
名も無き脇役
コメント



1.絶望を司る程度の能力削除
い、いま起きたことをありのまま話すぜ!俺は最初死にネタかと思って読んでたらハートフル物語だった!なにを言っているかわかんねーと思うが俺にもさっぱりわかんねぇ・・・。夢オチとかただの料理モンとかそんなちゃちいモンじゃねぇ・・・。もっとあたたかい気持ちを味わったぜ。
2.奇声を発する程度の能力削除
良いですね良かったです
3.名前が無い程度の能力削除
めっちゃ久しぶりですね! 脇役さんの話は誰も傷つかない話なので好きです
そういえば中国人は苦味や酸味も味の要素と考えるらしいので、
鍋で灰汁をすくうのを見ると複雑そうな顔をするらしいですね
4.名前が無い程度の能力削除
俺は今!脇役さんが戻ってきてくれた事に猛烈に!感動している(T ^ T)脇役さんのナマメーは大好きです