小綺麗な店内。
前に椅子が並ぶカウンター。その向こうで、ピチピチの白い店員服を着た霖之介が、包丁を片手に仕込みをしている。大きな寸胴鍋からは湯気。
そこへガラガラと引き戸を開けて入店してくる魔理沙。
「へい、らっしゃい! 香霖ラーメンへようこそ……って魔理沙か」
「何だとは何だ。新しい店がしっかりやれてるか見に来てやったんだろうが」
「道具屋は潰れてしまったからね。不逞の輩が勝手に商品を持ち出す事例が多発してね」
「酷い奴がいたもんだ」
「大半は君だっていう自覚はあるかい?」
「そういう解釈もあるのか」
「まったく……魔理沙だとわかっていたら、『いらっしゃいませ』じゃなく、『いらっしゃいません。ここには誰もいらっしゃいません』とでも言っておけば良かったよ」
「お互いを目の前にしながらの居留守か。新しいな」
魔理沙、椅子に座る。
「今日は客として来たんだ。文句はないだろ」
「代金を払うなら客として認めるよ」
「代金を払えるような物を提供してくれたら払うぜ」
「じゃあとりあえず営業スマイルに対して払ってもらおうか」
「金取るのか?! Mドナルドでもしねぇぞ、んなアコギ!」
「105円」
「税込み?!」
霖之介、水の入ったコップを魔理沙の前に置く。
「まあ冗談はさておき、」
「冗談かよ。タチ悪いな」
「注文は何にするかな」
「何でもいいよ、食えりゃ。チャーシューメンでもタンメンでも」
「はい、喜んでー。では、(しゃがみ込み、すぐに立ち上がって)へい、お待ち、当店自慢の『シクラメン』です!」
大輪の花が目前にデーンと置かれる。
「鉢植えじゃねーか!!」
「お気に召さないかい?」
「召さねーよ! 飯食わせろ、飯!」
「やれやれ、花より団子の世代か」
「世代関係ねーだろ。昼食に来たんだよ、こっちは」
「じゃあ、これならお口に合うかな。当店お勧め、『ツタンカーメン』」
物々しい棺がデーンと置かれる。金色の人型が装飾されている。
「お前の中で食えるもんなのか、それは!!」
「お湯をかけて三分かかる」
「呪われるぞ! ミイラはそんなんじゃ復活しねぇよ!」
「古代エジプトの神秘を侮っては困るな」
「お前が冒涜してんだよ!! いいから、普通に食えるもの出せっての!」
「じゃあ、他にお勧めの……うん、ザーサイラーメンかな。略してザーメn」
「やめろ」
「お気に召さないかい?」
「年頃の娘に向かって何口走ってんだよ! もっと私が乙女だってことを意識してしゃべってくれ!」
「じゃあ、略さない方のをいただくかい?」
「意識してそれ?!」
「でも、結構精が付くよ」
「まあ、いい蛋白源だそうだからなぁ……って何言わせんだ! 変なところで精を出さなくてもいいんだよ、二重の意味で!」
「うん? (メニューを開いて)この餃子セットとか、略さなくてもいいメニューのことを言ったんだが」
「え、そ、そうか」
魔理沙、赤くなってうつむく。
「何と勘違いしたんだい?」
「え、その、」
「(顔を近づけて)な・に・と・勘違いしたのかな? ん? ん?」
「ダブルスパーク(霖之介の両目に箸を突き刺す。眼鏡の隙間を狙った見事な刺突)」
「ぎゃああああ! 目が! 目がぁ!」
「ウザイってぇの。いいから餃子セット、一つくれ」
「(目をこすりながら)ちょっとしたお茶目な冗談だというのに……。はい、餃子セットお待ち」
目の前にデーンと置かれた一個の餃子。バランスボール大。
「デカイわ!!」
「たーんと食べてくれ」
「たーんとじゃねえよ! これだけで腹破裂するだろうが!」
「大は小を兼ねると言ってね、ウンコをするついでにオシッコもできる」
「何を言ってんだ、お前は! そもそもラーメンはどこ行った!」
「慌てなさんな。餃子の皮を破ると、中からラーメンとライスが出てくるのさ」
「どんな構造だよ!?」
「(眼鏡の真ん中を指で押さえながら)ふっふっふ、まだまだ甘いね」
「勝ち誇る要素、一切ねぇよな?! 餃子の中身と一緒に、お前の頭も詰め替えろ!」
「もっと柔軟に考えたらどうだい。サプライズもスパイスの一つさ」
「そのサプライズは、世界に類を見ないほど需要がねぇんだよ! スパイスったって、ソフトクリームに山椒かけたりしないだろうが!」
「いや、結構イケるよ」
「試したのかよ?!」
「何事も食べてみなければわからない。いろいろ評価するのは味わってからにしてほしいな」
霖之介、餃子の皮を剥き、中から麺の載った器を取り出す。
「ほんとに入ってたよ……あれ、麺だけなのか?」
「つけ麺なのさ。スープは今出すよ」
霖之介、スープの入った器を渡す。
その親指がスープに浸かっていることに、魔理沙が気づく。
「ん? おいおい、店主さんよぉ、指入ってるぞ」
「うん、サービスだよ」
「どんなおもてなしだ!? 指大好きなラーメンマニアとかいるのかよ!」
「そりゃいないけどさ」
「だろ?」
「ラーメン好きな指マニアなら、」
「いねぇよ!」
「『今日は塩ラーメンは美味しかったな。ふふ、それにしてもあの店員さんの薬指の第二関節、最高! 昨日の美味い味噌ラーメンの店も、店長の親指が男らしかったなぁ』」
「いてたまるか、んな変態!」
「君のお父さんがそうだったんだが」
「わーい、これほど家を出て良かったと思ったことはなかったぜ。そして、どうせなら一生知りたくなかった事実……(うなだれる)」
「まあ、いいから食べてみてくれ。麺が伸びてしまう」
「……食欲ががた落ちなんだが」
魔理沙、力無く箸を手に取って、麺をスープに漬け、口に運ぶ。その目が見開かれる。
「こ、これは……!」
「美味いだろう?」
「すげぇ、これ……!(ひたすら食べる)ズルズルッ。うめぇ! 香霖、うめぇよ、これ!(さらに食べる)」
「味には自信があるんだ。リピーターも続出の一品さ」
「ああ、これなら毎日食っても飽きねぇな!」
「じゃあ、毎日作ってあげようか?」
「え……?」
二人の目が合う。霖之介は微笑んでいる。
魔理沙、慌てる。
「は、はぁ?! な、何言ってんだよ、やだなぁ、バカなこと言って……って、それより、このスープ! どんな風に作ってんだ? な、教えろよ!」
「利尻昆布や烏骨鶏のガラとか色々ね」
「いいもん使ってるじゃねえか」
「そして、それらを全て食したうえで、寸胴鍋に肩まで浸かって、」
「ダシ汁、お前経由かよ! (寸胴鍋と器のスープを交互に見て)オェエエッ!(口を押さえる)」
「味わいを深くしたいときには、ダシをプラスするため、そっと指を突っ込むんだ」
「さっきの指は本当にサービスのつもりだったのか!? ふざけんなっ、腹壊すに決まってんだろ! 保健所呼べ、保健所!」
「残念だが、保健所の方々にはすでに僕の特製ラーメンをごちそうしてあげて、既に病院送りさ」
「こいつのバカさ加減はとどまることを知らねぇ!!」
「邪魔させはしないさ、香霖ラーメンのチェーン化構想」
「食中毒を蔓延させるな! そのチェーン化はチェーンメール並に迷惑なんだよ!」
「しかし、すでに行列のできる店として有名なんだが」
「ホントかよ」
「女性に人気でね、食べるとお通じがよくなるって」
「腹下してるだけだろ!」
「さらにダイエット効果も抜群だそうだ」
「脱水症状でやつれてんだよ! 納豆や鯖缶より嫌なブーム作りやがって!」
「おや、もしかして魔理沙は、僕が女性に人気があるのが気にくわないのかい? おやおやおや(嫌な微笑)」
「(ミニ八卦炉を取り出し)おーっと、何だか急にマスタースパークを試射したくなってきたぞー」
霖之介、焦りながら両手で押しとどめる。
「ま、待て。待ってくれ。ちょっと調子に乗りたいのも察してほしい。こう見えてもここまで持ってくるのは大変だったんだ。始めは人気が全然出なくて」
「今人気だってのも納得がいかねぇけどな」
「どうも服装に問題があったらしくてね」
「根本そこじゃねえと思うけど……今は変えたのか?」
「ああ、以前はふんどし一丁だったんだ」
「人気ねぇの当たり前だ!!」
「店内に入った途端、すぐ店を出ていってしまう人ばっかりでね」
「通報されなかっただけありがたいと思え! ホモバーですら存在しねーよ、んな店!」
「一見さんお断りと勘違いされたのだろうね。格調が高すぎたか」
「格調の規準が異次元だぞ」
「しかし、この格好もどうもしっくり来なくてね」
「いや、そのままでいいだろ。次に何を言い出すか、嫌な予感しかしねえ」
「やはりここは全裸でやるしか……」
「やめろよ、絶対!」
「だって、いろいろ身につけたままで寸胴鍋に入るというのもどうかと思わないか?」
「ちょっ、ダシ取った後、そのまんまでご営業かよ!」
「まさか。僕は一日働いた後にダシを取る」
「より最悪じゃねーか!」
「そうすることで僕の味が濃厚に出るんだ」
「出るとこ出られることを心配しろ! そしてその上ヌードになって、お前はどこを目指してんだ! ネバーランドか!」
「いや、やはりヌルすぎたと思うよ。こんなボディペインティングでごまかすなんて」
「とっくに脱衣してただと?!」
「うん、ほら、よく見てみると、この辺りにエリンギが生えてないか?」
「んー、そういえばブナシメジっぽいのが……って、バカーっ!(ダイレクトアタック&クリティカルヒット)」
「ギャー!!」
魔理沙、霖之介の股間を叩き、真っ赤になった顔を両手で覆う。
霖之介、股間を押さえ、うずくまる。
「こ、これがゴールドエクスペリエンスレクイエム……(黄金体験鎮魂歌)」
「はっ恥ずかしくねーのかよ、バカ香霖! 羞恥心はねぇのか!」
「そ、そういえば」
「だろ?」
「指毛の処理を怠っていた」
「どうでもいいよ! 裸と関係ねーだろ! いい加減ツッコむのも疲れてきたぞ、おい!」
「ははは、参ったね、どうにも褒められてる気がしないよ」
「褒めてねーんだよ!!」
魔理沙、カウンターを思い切り叩く。
「もういい! お前のこと気にして来た私がバカだった! さっさと会計済ませてくれ、帰るッ!」
「そうか、じゃあこれを」
霖之介、魔理沙に紙を渡す。
「ちっ、いくらだよ。(目を見開く)こ、これは、お会計票として差し出されたこの紙は……!」
「ふふ、僕も精算のし時だと思ってね」
「婚姻届……っ!」
「スープ、飲み干してみてくれ」
「う、うん。ゴクゴクゴク……あっ!」
「見つかったかい?」
「スープがいい具合にからまったこの金属のリングは……ゆ、指輪?」
「婚約指輪さ。結婚してくれ、魔理沙」
「──喜んで!」
HAPPY END !
前に椅子が並ぶカウンター。その向こうで、ピチピチの白い店員服を着た霖之介が、包丁を片手に仕込みをしている。大きな寸胴鍋からは湯気。
そこへガラガラと引き戸を開けて入店してくる魔理沙。
「へい、らっしゃい! 香霖ラーメンへようこそ……って魔理沙か」
「何だとは何だ。新しい店がしっかりやれてるか見に来てやったんだろうが」
「道具屋は潰れてしまったからね。不逞の輩が勝手に商品を持ち出す事例が多発してね」
「酷い奴がいたもんだ」
「大半は君だっていう自覚はあるかい?」
「そういう解釈もあるのか」
「まったく……魔理沙だとわかっていたら、『いらっしゃいませ』じゃなく、『いらっしゃいません。ここには誰もいらっしゃいません』とでも言っておけば良かったよ」
「お互いを目の前にしながらの居留守か。新しいな」
魔理沙、椅子に座る。
「今日は客として来たんだ。文句はないだろ」
「代金を払うなら客として認めるよ」
「代金を払えるような物を提供してくれたら払うぜ」
「じゃあとりあえず営業スマイルに対して払ってもらおうか」
「金取るのか?! Mドナルドでもしねぇぞ、んなアコギ!」
「105円」
「税込み?!」
霖之介、水の入ったコップを魔理沙の前に置く。
「まあ冗談はさておき、」
「冗談かよ。タチ悪いな」
「注文は何にするかな」
「何でもいいよ、食えりゃ。チャーシューメンでもタンメンでも」
「はい、喜んでー。では、(しゃがみ込み、すぐに立ち上がって)へい、お待ち、当店自慢の『シクラメン』です!」
大輪の花が目前にデーンと置かれる。
「鉢植えじゃねーか!!」
「お気に召さないかい?」
「召さねーよ! 飯食わせろ、飯!」
「やれやれ、花より団子の世代か」
「世代関係ねーだろ。昼食に来たんだよ、こっちは」
「じゃあ、これならお口に合うかな。当店お勧め、『ツタンカーメン』」
物々しい棺がデーンと置かれる。金色の人型が装飾されている。
「お前の中で食えるもんなのか、それは!!」
「お湯をかけて三分かかる」
「呪われるぞ! ミイラはそんなんじゃ復活しねぇよ!」
「古代エジプトの神秘を侮っては困るな」
「お前が冒涜してんだよ!! いいから、普通に食えるもの出せっての!」
「じゃあ、他にお勧めの……うん、ザーサイラーメンかな。略してザーメn」
「やめろ」
「お気に召さないかい?」
「年頃の娘に向かって何口走ってんだよ! もっと私が乙女だってことを意識してしゃべってくれ!」
「じゃあ、略さない方のをいただくかい?」
「意識してそれ?!」
「でも、結構精が付くよ」
「まあ、いい蛋白源だそうだからなぁ……って何言わせんだ! 変なところで精を出さなくてもいいんだよ、二重の意味で!」
「うん? (メニューを開いて)この餃子セットとか、略さなくてもいいメニューのことを言ったんだが」
「え、そ、そうか」
魔理沙、赤くなってうつむく。
「何と勘違いしたんだい?」
「え、その、」
「(顔を近づけて)な・に・と・勘違いしたのかな? ん? ん?」
「ダブルスパーク(霖之介の両目に箸を突き刺す。眼鏡の隙間を狙った見事な刺突)」
「ぎゃああああ! 目が! 目がぁ!」
「ウザイってぇの。いいから餃子セット、一つくれ」
「(目をこすりながら)ちょっとしたお茶目な冗談だというのに……。はい、餃子セットお待ち」
目の前にデーンと置かれた一個の餃子。バランスボール大。
「デカイわ!!」
「たーんと食べてくれ」
「たーんとじゃねえよ! これだけで腹破裂するだろうが!」
「大は小を兼ねると言ってね、ウンコをするついでにオシッコもできる」
「何を言ってんだ、お前は! そもそもラーメンはどこ行った!」
「慌てなさんな。餃子の皮を破ると、中からラーメンとライスが出てくるのさ」
「どんな構造だよ!?」
「(眼鏡の真ん中を指で押さえながら)ふっふっふ、まだまだ甘いね」
「勝ち誇る要素、一切ねぇよな?! 餃子の中身と一緒に、お前の頭も詰め替えろ!」
「もっと柔軟に考えたらどうだい。サプライズもスパイスの一つさ」
「そのサプライズは、世界に類を見ないほど需要がねぇんだよ! スパイスったって、ソフトクリームに山椒かけたりしないだろうが!」
「いや、結構イケるよ」
「試したのかよ?!」
「何事も食べてみなければわからない。いろいろ評価するのは味わってからにしてほしいな」
霖之介、餃子の皮を剥き、中から麺の載った器を取り出す。
「ほんとに入ってたよ……あれ、麺だけなのか?」
「つけ麺なのさ。スープは今出すよ」
霖之介、スープの入った器を渡す。
その親指がスープに浸かっていることに、魔理沙が気づく。
「ん? おいおい、店主さんよぉ、指入ってるぞ」
「うん、サービスだよ」
「どんなおもてなしだ!? 指大好きなラーメンマニアとかいるのかよ!」
「そりゃいないけどさ」
「だろ?」
「ラーメン好きな指マニアなら、」
「いねぇよ!」
「『今日は塩ラーメンは美味しかったな。ふふ、それにしてもあの店員さんの薬指の第二関節、最高! 昨日の美味い味噌ラーメンの店も、店長の親指が男らしかったなぁ』」
「いてたまるか、んな変態!」
「君のお父さんがそうだったんだが」
「わーい、これほど家を出て良かったと思ったことはなかったぜ。そして、どうせなら一生知りたくなかった事実……(うなだれる)」
「まあ、いいから食べてみてくれ。麺が伸びてしまう」
「……食欲ががた落ちなんだが」
魔理沙、力無く箸を手に取って、麺をスープに漬け、口に運ぶ。その目が見開かれる。
「こ、これは……!」
「美味いだろう?」
「すげぇ、これ……!(ひたすら食べる)ズルズルッ。うめぇ! 香霖、うめぇよ、これ!(さらに食べる)」
「味には自信があるんだ。リピーターも続出の一品さ」
「ああ、これなら毎日食っても飽きねぇな!」
「じゃあ、毎日作ってあげようか?」
「え……?」
二人の目が合う。霖之介は微笑んでいる。
魔理沙、慌てる。
「は、はぁ?! な、何言ってんだよ、やだなぁ、バカなこと言って……って、それより、このスープ! どんな風に作ってんだ? な、教えろよ!」
「利尻昆布や烏骨鶏のガラとか色々ね」
「いいもん使ってるじゃねえか」
「そして、それらを全て食したうえで、寸胴鍋に肩まで浸かって、」
「ダシ汁、お前経由かよ! (寸胴鍋と器のスープを交互に見て)オェエエッ!(口を押さえる)」
「味わいを深くしたいときには、ダシをプラスするため、そっと指を突っ込むんだ」
「さっきの指は本当にサービスのつもりだったのか!? ふざけんなっ、腹壊すに決まってんだろ! 保健所呼べ、保健所!」
「残念だが、保健所の方々にはすでに僕の特製ラーメンをごちそうしてあげて、既に病院送りさ」
「こいつのバカさ加減はとどまることを知らねぇ!!」
「邪魔させはしないさ、香霖ラーメンのチェーン化構想」
「食中毒を蔓延させるな! そのチェーン化はチェーンメール並に迷惑なんだよ!」
「しかし、すでに行列のできる店として有名なんだが」
「ホントかよ」
「女性に人気でね、食べるとお通じがよくなるって」
「腹下してるだけだろ!」
「さらにダイエット効果も抜群だそうだ」
「脱水症状でやつれてんだよ! 納豆や鯖缶より嫌なブーム作りやがって!」
「おや、もしかして魔理沙は、僕が女性に人気があるのが気にくわないのかい? おやおやおや(嫌な微笑)」
「(ミニ八卦炉を取り出し)おーっと、何だか急にマスタースパークを試射したくなってきたぞー」
霖之介、焦りながら両手で押しとどめる。
「ま、待て。待ってくれ。ちょっと調子に乗りたいのも察してほしい。こう見えてもここまで持ってくるのは大変だったんだ。始めは人気が全然出なくて」
「今人気だってのも納得がいかねぇけどな」
「どうも服装に問題があったらしくてね」
「根本そこじゃねえと思うけど……今は変えたのか?」
「ああ、以前はふんどし一丁だったんだ」
「人気ねぇの当たり前だ!!」
「店内に入った途端、すぐ店を出ていってしまう人ばっかりでね」
「通報されなかっただけありがたいと思え! ホモバーですら存在しねーよ、んな店!」
「一見さんお断りと勘違いされたのだろうね。格調が高すぎたか」
「格調の規準が異次元だぞ」
「しかし、この格好もどうもしっくり来なくてね」
「いや、そのままでいいだろ。次に何を言い出すか、嫌な予感しかしねえ」
「やはりここは全裸でやるしか……」
「やめろよ、絶対!」
「だって、いろいろ身につけたままで寸胴鍋に入るというのもどうかと思わないか?」
「ちょっ、ダシ取った後、そのまんまでご営業かよ!」
「まさか。僕は一日働いた後にダシを取る」
「より最悪じゃねーか!」
「そうすることで僕の味が濃厚に出るんだ」
「出るとこ出られることを心配しろ! そしてその上ヌードになって、お前はどこを目指してんだ! ネバーランドか!」
「いや、やはりヌルすぎたと思うよ。こんなボディペインティングでごまかすなんて」
「とっくに脱衣してただと?!」
「うん、ほら、よく見てみると、この辺りにエリンギが生えてないか?」
「んー、そういえばブナシメジっぽいのが……って、バカーっ!(ダイレクトアタック&クリティカルヒット)」
「ギャー!!」
魔理沙、霖之介の股間を叩き、真っ赤になった顔を両手で覆う。
霖之介、股間を押さえ、うずくまる。
「こ、これがゴールドエクスペリエンスレクイエム……(黄金体験鎮魂歌)」
「はっ恥ずかしくねーのかよ、バカ香霖! 羞恥心はねぇのか!」
「そ、そういえば」
「だろ?」
「指毛の処理を怠っていた」
「どうでもいいよ! 裸と関係ねーだろ! いい加減ツッコむのも疲れてきたぞ、おい!」
「ははは、参ったね、どうにも褒められてる気がしないよ」
「褒めてねーんだよ!!」
魔理沙、カウンターを思い切り叩く。
「もういい! お前のこと気にして来た私がバカだった! さっさと会計済ませてくれ、帰るッ!」
「そうか、じゃあこれを」
霖之介、魔理沙に紙を渡す。
「ちっ、いくらだよ。(目を見開く)こ、これは、お会計票として差し出されたこの紙は……!」
「ふふ、僕も精算のし時だと思ってね」
「婚姻届……っ!」
「スープ、飲み干してみてくれ」
「う、うん。ゴクゴクゴク……あっ!」
「見つかったかい?」
「スープがいい具合にからまったこの金属のリングは……ゆ、指輪?」
「婚約指輪さ。結婚してくれ、魔理沙」
「──喜んで!」
HAPPY END !
こーりんものの中では読みやすいな、思いました