昼下がりの神社。
霊夢は文と並んでお茶を飲み、手帖の文字を追う横顔を見たり飽きて森の方を眺めていたが、突然微かな衝撃を伴って文の頭が肩に乗せられた。
「何よ、急に」
「いえ、大したことじゃないんだけどね」
ふ、と苦笑して手帖を脇に置く。そのままゆっくりと目を閉じた。
「……巫女も、人間なのよね」
「化け物みたいだって言いたいの?」
「違う違う。ただ、私たちとは違うんだな、って」
霊夢は数度目を瞬かせ、沈黙で先を促す。
「貴女がどれだけ人間離れした力を持っていても、脆い人間でしかない」
「そうね」
「だから、私より先に死んでしまう」
「……そうね」
当然のことだ。だから妖怪は妖怪で、人間は人間なのだ。
「……私が」
「ん?」
「私が人間だったら、貴女とも対等でいられたのかしら」
対等。霊夢の唇が同じ言葉をなぞる。
強弱や上下のことではなく、寿命のことを言っているのだと。それに気付いて、気付かないふりをする。
「……無理でしょうね」
文が目を開けた。赤い目が霊夢を見つめる。
「だって、人間は弱いもの。あんたが人間だったら私に守られることになる。それは対等じゃない」
文は何も言わない。
「だから、今のままでいいのよ」
頬に痛いほどの視線を感じながら、文の言葉を待つ。
文は二度、三度と口を開きかけては閉じ、
「……そう、ね」
無理矢理絞り出したような声は苦しげで、霊夢はそっと顔を背けた。
どうして得られないものばかり求めてしまうのだろう。
得られないとわかっているのに、苦しむことになると知っているのに。
それでもないものねだりをやめられない。
霊夢仙人(もしくは神)ルートも作ってもいいんじゃよ?