Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

風水師「物部布都」

2013/06/09 02:26:39
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神子「あなたは少し、この幻想郷では浮いた存在になっていますね」
ここは霊廟。
幻想郷で復活した今、少しずつではあるが道士として修行にくる者も多くなってきた。
我の名は「物部布都」
新しく生きる世界となったこの幻想郷で、一人でも多くの信者を募るべく日々務めている。
神子さまこそ我が全て。
彼女の力になれるなら、この力惜しむことあらず。
だが。
神子「まだこの世界に慣れていないとしても、やはり貴方の行動は目に余る」
布都「う…」
分かっている。
我は未だに妖怪が怖い。
仏門を見たら敵意をむき出しである。
この幻想郷は様々な種族が存在する世界。
人、妖怪、神様etc…。
その者たちと上手く折り合いをつけていくのが最善だろう。
だが。
我にはそれができない。
生前の妖怪に対する恐怖心。
仏教に対する敵対心。
未だに拭えないのが事実である。
自分の無力さに腹が立つ。
我がどう思われようといい。
だが、これ以上神子さまの顔に泥を塗るわけには。
神子「時に布都よ」
我が想い人が提案をする。
神子「その風水の力、世の為に使ってみてはどうだ?」

その神子さまの提案が。
先の我の人生を変えた。



◇◇◇



布都「ふむ」
さて、どうしたものか?
ここは人里。
我がよく買い出しに来る見慣れた場所。
ただ。
人々のこちらに向ける視線は決して良いものではない。
当たり前だ。
この人里は妖怪だっているのだ。
その妖怪に手当たり次第攻撃しているのは他ならぬ我なのだから。
分かっている。
自分がこの世界で見当違いなことをしていることを。
ここはある程度、人妖が共存している世界。
我が行っていることは、ただ妖怪が怖いだけの自分勝手な行動。
それが、危害を与えない妖怪にまで被害が及んでいることを。
布都「やはり、これではいかんかの」
いま我が行っている行為は神子さまの邪魔をしている以外なんでもない。
これでは、信者を増やすことの邪魔にもなる。
神子さまの邪魔になること。
それは我にとっても不都合な事である。
だが。
布都「さて、これからどうすれば良いのかのう?」
まずは自身の信頼を取り戻すことから始めなくてはいけない。
さて、そのためにはどうしたらよいのか。



◇◇◇



神子さまは言った。
「風水の力を世の為に使え」と。
私はまず、風水を使った占いのようなものをする場所を設置してみた。
が、全く振るわず。
客は全くと言っていいほど来ない。
これは何も風水が胡散臭いという訳ではない。
日頃の我の行いの所為。
誰も、我のような危険人物には近寄りがたいのであろう。
布都「…、うっ」
思わず涙ぐんでしまった。
宗教家として、信仰を集められないというのはもってのほか。
何よりも。
それが神子さまの邪魔になるということが堪らなく悔しかった。
我は、神子さまと共に尸解仙になったのは何よりも神子さまにずっとお仕えしたかったからだ。
なのに、結果的にはその邪魔になってしまっている。
それが何よりも悔しかった。
両手を強く握り、下を向いていた我に。
「あの、ここは風水で占ってくれる所なのですか?」
我が前に進む第一歩となる一声を。



◇◇◇



彼女の名は「紅美鈴」といった。
とある高名な館で門番をしていると。
なんだか、少し親近感が沸いた。
とある方に親身に使えているという立場。
何よりも、彼女から漂う優しい雰囲気が気に入った。
布都「う、うむ。風水なら任せておけ。必ずやお主に気に入る結果を示してやろうではないか。」
いつものドヤ顔で言う。
そう、ちょっと高潔そうに振舞うのも我の務め。
こんな特技は少し上から目線で言わないと信用してもらえないからだと思っている。
美鈴「あ、なら。ちょっと占ってもらってもいいですか?」
この方が、幻想郷での風水業初めての客となった。



◇◇◇



彼女の悩みはこうだ。
最近、力が衰えているのではないかと。
あと、物事が上手くいかないということ。
美鈴「元々、絶対に立ち寄らせてはいけない相手には容赦していないのですよ。なんとなくそういう相手は「気」で分かりますから。でも、最近ではそういった相手にも少し押され気味で」
しゅんと項垂れる美鈴。
ふむ、と考える。
今の段階で気付いた件は2つ。
布都「まず、お主はもしや普段からその「気」とやらを展開しながら門番をしているのか?」
美鈴「え、はい。そうです。」
布都「なら、普段からシエスタしているのは、その「気」を展開しているからではないかの?」
美鈴「え!?そこまで分かるのですか?」
大体の原因は分かった。
まず、彼女は「気」を展開して、広範囲に渡って館に近寄る相手を認知している。
そして彼女の「気」の力は、相手が館に害を及ぼすかどうかまで分かるらしい。
なので、本当に害が及ばない相手にはある程度力を抜いて、本当に害を及ばす相手には本気で迎撃する。
それが彼女の門番としてのスタンスなんだろう。
問題は、その「気」を常時展開しているということである。
どのくらいの力を必要するかは知らないが、相当な消費は避けられないのであろう。
なので、彼女はシエスタをする。
居眠りは力を回復するための手段である。
シエスタをしながらでも「気」を展開できるので、門番業と一石二鳥なのであろう。
布都「ふむ…」
なら、これは力の蓄積量の問題だ。
おそらく、もうシエスタだけでは力の回復が間に合っていない。
なら。
布都「我が気の溜まる場所、いわゆる「龍穴」を作ってやろうではないか!」
ふふん、と何時ものドヤ顔で言う。
美鈴「そ、そんなものまで作れるのですか!?」
布都「もとより風水は龍脈を探ることもある。我ならその龍脈を主の館まで引っ張ってきて門に龍穴を作ることも出来る!」
最初の依頼者がこの方で良かった。
思いっきり自身の得意分野である。
美鈴「あ、ありがとうございます!」
布都「礼には及ばん。これが我の仕事なのだからな!」
さて、最初の顧客だ。
精一杯やろうではないか。
さぁ、見るがいい!
永久にも及ぶ永い眠りから覚めた尸解仙物部布都の力とやらを!



◇◇◇



で、パパっと作ったぞ。
まぁ、作ったのはいいが…。
布都「なぁ、この館」
美鈴「はい?」
知っている。
人里で噂に聞いている。
紅魔館。
吸血鬼が根城としている妖怪の巣窟ではないか。
布都「お主も、妖怪なのか…?」
そう恐る恐る尋ねた私に。
美鈴「はい、そうですよ」
と、こちらまで笑みを浮かべてしまうような笑顔で応えられてしまった。
我は、ここで妖怪に対する認識を改めさせられることになった。
ここでの作業を行うまでに、私は美鈴と幾度となく接触した。
時には酒を酌み交わすときもあった。
我は。
ただ相手が妖怪だからというだけで敵意をむき出しにしていたのだ。
ようやく、この幻想郷というものが分かった気がした。
確かに人間に害を及ぼす妖怪もいる。
ただ、美鈴のようにこうして仲良くなれる妖怪だっているのだ。
布都「美鈴」
美鈴「はい?」
布都「…ありがとう」
美鈴「へ?」
美鈴が困ったように笑みを向ける。
多くは言うまい。
ただ、彼女が我から妖怪に対する偏見を取り除いてくれた。
もしかしたら、神子さまはここまで予見していたのかもしれない。
だからこそ、我に風水の仕事をやるようにと。
感謝せねばなるまい。
我にこのことを気付かせてくれた美鈴に。
そして、この役目を与えてくれた神子さまに。

布都「実はね、我は…」
美鈴「はい?」

妖怪が嫌いだったのさ。

彼女にはここから話そう。
そして、全てを打ち上げ改めて彼女に言おう。
我は貴方の「友」だということを。
お久しぶりです。
久々の投稿のエクシアです。

東方求聞口授と東方心綺楼での布都ちゃんはかなりの印象に差があるように感じました。
求聞口授では妖怪に対しては手当たり次第攻撃をするような感じでした。
でも心綺楼ではこいしに対しても、にとりにも、マミゾウにもそこまでの敵意は無かったように思えました。
仏教に対してはまだやや過激な発言をしていましたが(笑)
なので、この幻想郷に復活して色々な経験を積むうちに考え方が変わったのではないかと思いまして。
もしかしたら、こんなことがあったんじゃないかなぁと思い、今回の二次創作を作るに至りました。

最後まで読んで下さってありがとうございます。
まだ輝針城の体験版をプレイしていないで、夢は広がるばかりですね。
エクシア
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
新霊廟は寝起き、口授は伝聞、と考えると心綺楼が素でしょうか。もしかしたら太子の教育が生き届いたのかも(その太子が今度ははっちゃけたけど)
いずれにせよ誰かの影響を受けた、ってのはいい考えだと思います。