Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

だいきらい

2013/05/30 19:11:17
最終更新
サイズ
2.43KB
ページ数
1

分類タグ




霊夢さんのことが大嫌いだった。

新聞のネタになるから仕方がなく、通っていた。

「文、また来たの」

呆れた顔でため息をついて、でもお茶を入れて迎えてくれる。いつもの光景。
みんなに平等な博麗の巫女は、迷惑なパパラッチ天狗にも平等だった。

「今日も取材?」

ええ、そうですよ。

取材でもなくこんなところに来るはずがないでしょう。
後半は心の中で囁いた。チクリと胸が痛んだ気がした。

「あんたも暇人ね。何もないこんなところに毎日来るなんて」

ネタの宝庫ですから。

ここには大嫌いなあなたがいますし。

以前に霊夢さんに大嫌いだと言ったことがある。少し眉をしかめて、それで?と聞き返された。
ああ、この人は私に関心がないのだなと、思った。



ある日、霊夢さんは言った。
あんたは私が死んだら泣くの?

私は答えた。
泣くわけがないでしょう。……私はあなたが嫌いです。

霊夢さんはまた前と同じ顔をした。

残念ね。あなたの泣き顔が見てみたいわ。

霊夢さんは手を伸ばして私の頬に触れた。その感触になぜか視界がうるんだ。
一瞬だけですぐに視界は戻ったが、胸に圧迫感が残る。

私は、泣きませんよ。あなたのためなんかに。
自分に言い聞かすように、言った。その言葉にはなぜか力がなくて、悲しい気持ちになった。


+++++


「霊夢さん」

返事はない。

「大嫌いなんて嘘です」

返事は、ない。



私は泣いていた。声をあげずに、泣いていた。

嘘をついたことになるな、と頭の片隅でぼうっと考える。私は今、霊夢さんせいで泣いている。

いつもいつも鋭い霊夢さんは、ときどき鈍いのだ。
それこそ見逃してきた一瞬の泣き顔とか。

私の視界はときどき涙でぼけるのに、鋭いはずの霊夢さんはそれに気づけなかった。

今、私がこれだけ泣いているのに霊夢さんは気付かない。気付けない。

いつもの笑顔はどこかに忘れてきてしまったらしい。ふと鏡を見ると歪な泣き笑いが見えて、なんだここにあるじゃないかと思った。かがみの中に落とし物。笑顔を落としてしまって、今は拾い上げることなんてできない。

霊夢さんは気付かない。

「れいむ、さん」

霊夢は眠っている。
ぽたり、涙が落ちる。まるで霊夢が泣いてるみたいに涙が頬を流れた。

この気持ちも涙も全部、嘘なら。

(にせものなら良かったなぁ)

濡れた霊夢さんの頬を拭い、ゆっくりと唇を触れさせた。


涙は、止まった。


+++++




「文、どうしたの?」
「……あなたのことが大嫌いだったことを思い出していたの」
「そう。ねえ、今のあなたなら私が死んだとき泣いてくれるかしら」
「決して泣いたりなんてしないわ」
「どうして?」
「あなたのことを死なせたりしないから」
「いずれ、先に死ぬわ」

「なら私も一緒に」
「一緒に死にましょうか」

ああ、にせものじゃなくてよかった。





すきです。そう告げた日、私は泣いていた。



かなり前の診断。二人のおだいったーより。
調べてみたら2月はじめでした。この短編を書くのに何ヵ月かかったことやら。
「だいきらい」シリーズです。いろいろなCPの「だいきらい」を書くつもりです。

それこそ見逃してきた一瞬の泣き顔/(にせものなら良かったなぁ)/かがみの中に落とし物

では、最後まで読んでくださりありがとうございました。
小波
コメント



1.ドラえもん削除
素敵です
次作、楽しみにしています
2.こーろぎ削除
こんなあやれいむもいい
3.名前が無い程度の能力削除
文ちゃんマジ乙女
4.奇声を発する程度の能力削除
良いあやれい