Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

輝夜が永琳の寝顔を愛でる話

2013/05/19 01:16:53
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「永琳、いる?」
 蓬莱山輝夜が八意永琳の部屋を訪れた。ふすまを引き、室内を見回す。
「あ、いた」
 室内の最奥、研究用の机に向き合い、背中をみせる永琳に輝夜は近寄る。
「えいり……」
 永琳の姿を見て、声をかけようとした輝夜の動きが止まった。
「ふふっ……」
 遠くからでは分からなかったが、永琳はうつむくようにして眠っていた。静かに寝息をたて、心地よさそうにしている。
「仕方ないわね」
 包み込むような陽気を肌に感じながら、輝夜は永琳の寝顔を見て微笑んだ。


「お師匠様~」


 輝夜の後ろから、因幡てゐがひょこりと顔をあらわす。
「あらてゐ、どうしたの?」
 唇に人差し指をあて、静かにするようジェスチャーで伝える輝夜。
 即座にジェスチャーの意味を理解し、てゐは声を潜める。
「お師匠様に頼まれていた薬草を集めてきたんですよ」
「集めさせてきた、でしょ?」
「わかっていてあえて口に出すあたり、姫様もいじわるですね」
 てゐは口の端を歪めて輝夜を見た。
「たまには、ね?」
 首を傾げ、いたずらっ子のような笑みを浮かべると輝夜はウインクをしてみせる。
「それで、お師匠様はうたた寝ですか」
「みたいよ」
 ちらりと視線を向け、てゐは永琳の様子をうかがう。
「最近忙しそうでしたからねえ」
 数日に渡って食事も睡眠もとらず、研究に没頭していた永琳の姿を思い出した。
「お師匠様がうたた寝なんて珍しいですよね」
「そうね。私もほとんど見たことがないわ。多分二回か三回くらいかしら」
 輝夜のしなやかな白い指が、ガラス細工に触れるように永琳の頬を撫でる。
「何してるんですか?」
「永琳の寝顔って、カワイイと思わない?」
 てゐは永琳の寝顔をじっと見た。
「……」
「無理に同意しなくてもいいのよ? 私の方が永琳歴は長いんだから」
「何ですか永琳歴って」
 またのろけでも始まった、とでも言いたげな顔でてゐは言う。
「恋して愛して慕っている期間のことよ」
「そりゃあ姫様にはかないませんよ。姫様歴もお師匠様には勝てませんし」
 ぱたぱたと手を振り、肩をすくめて笑った。
「ところで、お師匠様起こします?」
「少しくらい休ませてあげましょう」
「ですか。しばらくはお師匠様の珍しい寝顔でも拝見させてもらいましょうかね」
 てゐの言葉に輝夜は嬉しそうに小さく笑う。
「てゐも触ってみたら?」
 輝夜は永琳の頬を再び撫で、指先でつつくように軽く押していた。
「どれどれ」




「お師匠様」
 鈴仙・優曇華院・イナバの声に部屋の主の反応はない。
「お師匠様?」
 開け放された永琳の部屋に、廊下からおそるおそる顔を入れる。
「……入りますよ?」
 絵に描いたような忍び足をして鈴仙は足を踏み入れた。
「姫様と……てゐ……?」
 永琳の左半身に寄り添う輝夜とてゐが心地よさそうに眠っているのを見て、鈴仙は微笑む。
「……やれやれ」
 かけたものがずり落ちたのか、毛布が永琳の側に横たわっていた。
「みんな気持ちよさそうだわ」 
 状況を把握した鈴仙は、暖かな陽気の中で眠る三人に羨望のようなものを覚えつつ、毛布をかけなおして永琳の右隣に静かに腰を降ろした。
コメント



1.名無しの権米削除
なんかとても暖かい気分に
なりました。
とても好きです。
ありがとうございました。
2.名前が無い程度の能力削除
仲の良い家族と平穏な時を過ごせるというのは、本当に素敵なことですね。

何かこう、暖かい気持ちになりました。こういうお話は大好きです。
3.奇声を発する程度の能力削除
温かい気持ちになれる優しいお話でした