Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

 恋色マスタースパーク 

2013/04/17 21:47:03
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・弾幕アクション的戦闘注意
・オリジナル設定が含まれている可能性があります。ご注意下さい。







コンコン、コンコン。
ノッカーを叩く音が森の人形使いの家に響く。
 時刻は午前3時前後というところであろうか。多数の妖怪蠢くこの土地で暮らす人間ならば、絶対に外出することなど無い時刻である。妖怪ならばその限りではないだろうが。
 この日は珍しく普通に睡眠をとっていた人形使いである家主の少女アリス・マーガトロイドは、まだ少し夢の世界へ置いてきた頭を抱えながら、彼女を現実へと引き戻したドアを開けた。
「どちらさまー…って、魔理沙」
 其処に立っていたのは、アリスの腐れ縁、霧雨魔理沙であった。彼女は人間であり、アリスのような妖怪ではない。だから、こんな草木も眠る丑三つ時にアリスの家を彼女が訪ねてくるのはとても奇異なことであった。
「よう、アリス!ここは寒いから中に入れてくれ!」
「この時間に来てそんなこと言うの?」
「当然そうだぜ。実際、私がわざわざそんなこと言わなくてもお前は中に入れてくれるだろ?」
「あんたがこんな非常識な時間に尋ねてこないならね……確かにここは寒いわ。勝手に尋ねてきたあんたはともかく、何の罪も無い私まで凍えるのはなんだか癪にさわるから、とりあえず上がりなさいよ」
 少々呆れたように答えるアリス。
「ああ、お邪魔するぜ」
 そんなアリスの様子を気にする様子も無く、魔理沙はアリスの家に上がりこんだ。


        ☆                


「それで、どういう用があってこんな時間に尋ねて来たのよ」
 そうアリスは魔理沙に切り出した。
 ここはアリス邸の居間。壁にある暖炉の中では赤々と炎が燃え、ココアを運んだりしている人形たちや、少し迷惑そうにしている妖怪、そして何か、彼女の身の丈ほどもある何かを大事そうに抱えている人間をオレンジ色に照らしていた。
「いや、妖怪の科学ってもんは便利なもんだな、ボタン一つで明かりが灯るのか」
「…そんな無駄話をしに来たのなら今すぐ叩き出すわよ」
 弾幕ごっこ用の人形を呼び出したアリスに、魔理沙は少しも慌てた様子を見せずにこう答える。
「おぉ、怖い怖い。…当然、無駄じゃない話をしに来たに決まってるぜ」
「…ちなみに、その無駄じゃない話にはそのご大層な包まれてるマジックアイテムが関係するのかしら」
 魔理沙が抱えている包みからは、異質な力がとめどなく放出されていた。
「当然。でなきゃこんなもん持ってこないぜ」
 そうして彼女は包みを開け始めた。一枚一枚剥いでいくごとに小さくなっていく包みは、アリスに子供の時分に見たことのある極北の地の人形を思い起こさせた。
「じゃじゃーん。何か凄いだろ?」
「コメント付け辛いけど、確かになんか凄いわね」
 魔理沙が持ってきたものとは、一輪の花であった。何の変哲も無い花。何かを放っていることを除いては。
「で、これで何をするつもりなの?」
「あーそれは、その、乙女の『ぷらいばしー』って奴だぜ」
「…自慢する為だけにこんな時間に来たのなら、私には今すぐあんたをぶっ飛ばす用意があるのだけれどいいかしら?」
 少し恥ずかしそうに答える魔理沙に対し、リスは怒気を立ち上らせながら答える。
「いや、それがな、これを売ってたおっさんが『これはとても強いマジックアイテムじゃ。好きな男にでも使ってみろ、イチコロじゃ』とか言ってたんだがな、これがどーにも胡散臭い。私だけだと何かされて騙されているんじゃないかと思ったから、お前に確かめて欲しかったんだぜ」
「そんなに怪しげな人だったなら何故買ったのよ…それと、今のであんたの目的全バレだけど、良かったの?」
「…油断したぜ」
 呆れながら答えを返したアリスに、魔理沙は少し照れながら答えた。すると、
「これはいい酒の肴が出来たわ」
 ニヤリと嫌らしい笑みを浮かべながら言うアリス。
「それで?誰に使うの?ん?」
 より下衆じみた笑みを浮かべながら更にアリスは魔理沙に問う。
「まあ大体見当は付くけど。あの変人の半妖でしょ?私には正直あの男のどこがいいのか分からないけど…」
 アリスはそこまで言って、己の悪友が泣き出す一歩手前である事に気付いた。
「あー、えっと、冗談キツかったかしら」
「…キツいどころじゃない。お前の趣味は人の心を抉ることか?」
 そんな魔理沙の糾弾に、
「はいはい、私が悪かった、悪かったわよ」
 さしものアリスも良心の呵責に襲われた。
そもそも魔法使いというものは出来るだけ人付き合いを避ける傾向にある者が大概である。
そんな訳なので、魔法使いであるアリスにはこの魔理沙の他に親しくしている友人は居なかった。
だから、アリスにとって魔理沙という存在は失うわけにはいかなかった。例え自分が魔理沙の数多く存在する友人の一人であり、魔理沙にとって失ってもさして影響の無い存在であるとしても。
「…本当に、反省したか?」
 魔理沙がその大きな目に少し涙を貯めたまま、上目遣い気味にアリスに言った。
 なんとも可愛らしい表情であるが、生憎普通の魔法使いであるアリスにそんな趣味は無かった。
「反省したなら、手伝ってもらおうか」
 涙を袖でぬぐって魔理沙はそう言った。まだ彼女の眼は少し赤かったが、いつもの勝気な光を取り戻していた。
 アリスは「立ち直り早いなあ」と思ったが、そんなことを指摘したらまた面倒なことになるのは明白なので、黙っておくことにした。
「一体何を?今までの流れからして大体その惚れ薬のことだと思うけど」
「ご名答。お前はもう既に逃げられない立場にあるのだぜ。お前は共犯者決定だ」
「…まあバレたら一緒に謝ってあげるけど、そもそも一服盛るっていうのは倫理的にどうなの?」
「魔法使いに倫理だとかそういうことを言うのは無粋じゃないか?それに、ちゃんと実験もするから問題ない。後、『一服盛る』ってのはちと語弊があるな。正しくは『一発撃つ』だぜ」 
 やれやれ、でも、という風に言ったアリスに、魔理沙はミニ八卦炉を取り出して答えた。
 ミニ八卦炉、魔理沙の象徴にして彼女の必殺武器だ。本物の八卦炉は道教の神である太上老君が持つものである。それは仙丹を煉る為のものであるが、それのレプリカのようなものであるミニ八卦炉にはとてもそのような芸当はできない。が、ミニ八卦炉は魔力を燃料とし火炎や魔砲を放射することが出来る。このように、実際の八卦炉とは似ても似つかないが、作成者が『ミニ八卦炉』と名づけたのだからしょうがない。
「マスパにどうにかこの花を混ぜ込むんだ。いつもマスパを撃つ時はこいつに魔法の森の茸で作った薬を入れて魔力の補助にしてるんだが、それに花を入れてみようと思ってる」
「まさか…私を実験台にしようとか思ってないわよね?」
「お前じゃ面白くないと思う」
 ホッと胸をなでおろすアリス。しかし、どこか複雑な気分だった。
「実験台は霊夢だ。霊夢に効くなら誰にだって効くだろ」
「…私、あんたが自殺志願者なんじゃないかと思えてきたわ」
 相手が悪すぎる。弾幕戦ならまだしも生死を懸けた戦いなどアリスは霊夢とだけは絶対にしたくなかった。アリスだけではなく、この幻想郷に生けるものの大半がそう思っているはずだった。そんな恐ろしい相手に魔理沙は
実験をしようとしているのだ。
「第一効いたとして霊夢が誰に惚れるのよ」
「いや、あんな他人には興味ありません、って面してても内では意外と乙女してるかもしれないぜ?」
「確かにそうかもしれないけど」
 よくよく考えてみたら、アリスの目の前に「内では意外と乙女してる」例が居たのだった。
「そもそも実験の話をする前にその花を加工する方法を考えることが先決だと思うんだけど」
「そりゃいつも通り…」
「行き当たりばったりってわけね。はぁ」
 計画性の無い魔理沙に、アリスは呆れて溜息をつく。
「実験ってのは、すべての可能性を考えなきゃいけないだろ?それを加味するとこうなるんだ。…その前に、何でお前私の実験について知ってるんだ?」
「いや、その…ああ、前に貴方私に言ってたじゃない、えーと、クリスマスの時に」
「そうだったか?」
 いぶかしむ魔理沙に、アリスはほんの少し赤くなって答える。なんと分かりやすい性格だろう。
「さ、それはともかく実験を早速始めるぜ。善は急げだ」
「なんとなく分かってたけど、やっぱり今始めるのね…」
 無茶を言う魔理沙に、それに付き合わされるアリス。いつも通りであった。


        ☆


 数日経って、件の魔女二人はターゲットの居る博麗神社への道を歩いていた。
「本当にやるの?私死にたくないんだけど。霊夢に奇襲かけるとか正気の沙汰とはまったく思えないんだけど」
「やるったらやる。善は急げが私のモットーだぜ」
 青ざめた顔をしながらアリスは魔理沙に確認する。アリスの生物の本能はこの場から今すぐにでも逃げ出したがっていたが、魔法使いとしての好奇心がそれを強固に押しとどめていた。そんな訳で、彼女は魔理沙の成功率の限りなく低い実験を見学していたのだ。それに、どうせ薬を作るのに協力した時点で共犯なのだからもはや制裁される道は避けられないだろう。だから毒を食らわば皿まで。そう自棄気味に考えていた。
「よう霊夢。遊びに来てやったぜ」
「あら魔理沙。素敵なお賽銭箱はそこよ」
 挨拶をする魔理沙に対し、霊夢は賽銭を要求する。いつも通りといえばいつも通りである。
 妖怪退治の仕事があるので暮らしぶり自体は悪くないのだが、神社にあるべきものである賽銭が全く無い。それを霊夢はいつも気にしていた。
「で、何よ魔理沙。また厄介事でも持ってきたの?」
「厄介事だなんてとんでもない。お前は私の新作魔法の栄えある実験台に選ばれたんだぜ」
「やっぱり厄介事じゃないの。…まあいいわ。私もちょうど暇だったのよね」
「お、やっぱりそう来なくっちゃな!」
 魔理沙がそう言うと霊夢は大幣を取り出し、魔理沙はその特徴的な帽子を深く被り直し、神社の縁側に立てかけておいた彼女愛用の箒を手に取った。
 霊夢と魔理沙の間に、しばし無言の緊張が流れる。その一筋の油断も許されないような雰囲気に、先ほどから話に不安そうだったアリスはごくり、と固唾を呑んだ。弾幕ごっこが始まる。


        ☆


「それじゃ霊夢!先手は頂いたぜ!」
 魔理沙はそう一声叫ぶが早いか、低く飛翔し霊夢に突進した。その手に持った箒を、飛翔の勢いを利用し霊夢の腹に叩き込むつもりだった。なんとも単純で明朗で快活な、魔理沙らしい戦術である。
「一撃KOだぜ!」
 魔理沙の手に握られた箒に魔力が込められ、青白く発光し始める。それは霊夢の腹を打ち据えようとしたが、難なく霊夢はそれを大幣で受け止めた。
「相変わらず単純ね。いくら速度が速くても、もっと捻らなくちゃ」
「生憎お前ほど捻くれてはないんでなッ!」
 魔理沙は鍔迫り合いを利用し後ろに飛びのきつつ、マジックミサイルをバラ撒く。たちまち霊夢は爆風に包まれる。
(少しは効いたか?)
 爆風が晴れる。しかしそこには霊夢の影は無かった。博麗霊夢という人間が常識の通じる普通どおりの人間ならば驚くべき事柄であるが、霧雨魔理沙の知る博麗霊夢は普通どおりの人間などではなかった。
 亜空穴。それが先ほど霊夢の使った技である。端的に言えばただの瞬間移動である。異能者揃いの幻想郷ではたいした技能でないかの様に思われるが、このような『単純な』瞬間移動を実現しているのは八雲紫などの数少ない強力な者達ばかり。その中に含まれる博麗霊夢という人間の規格外さが窺い知れる。
 (亜空穴!…クソっ!)
 魔理沙が振り向こうとした刹那、空中に現れた霊夢が魔理沙の背に飛び蹴りを命中させた。
「ぐっ…!!」
 大きく前に吹き飛ばされるが、その勢いのままハンドスプリングの要領で霊夢より少し高いくらいの空中に退避する。
「魔空『アステロイドベルト』!」
 そう魔理沙がスペルカード宣言すると同時に、魔理沙を中心とした全方位に大きな星型弾が放たれ始める。
「私の展望としては今回のメインである新作でドカーンと短期決戦!…だったんだがなあ」
「私相手にそんなに簡単に事が運ぶと思っているの?」
 事実、霊夢は星の弾幕の間を縫って魔理沙との距離を着実に詰めて来ていた。一見弾幕をどうにか避けている、という様子の霊夢だが、彼女の表情がそうではないことを物語っている。
魔理沙との距離を十分に詰めた霊夢は、上昇の勢いのまま昇天脚を叩き込もうとするが、命中の瞬間魔理沙は足に組み付く。
「新作お披露目タイムだ!零距離なら外さん!」
 魔理沙は懐からミニ八卦炉を取り出し、魔砲のチャージを始める。ミニ八卦炉に桃色の粒子が集まり始める。
「万事休すかしらね…」
 組み付かれた状態では不完全に相手を瞬間移動に巻き込んでしまう可能性があるため、不用意に亜空穴は使うことが出来ない。これは命のやり取りではないのだから、取り返しの付かないことになってしまうような行動は避けたほうが良いと霊夢は考えた。
 数瞬のち、ミニ八卦炉より押し固められた魔力の奔流が開放される。それは魔理沙が予想していたものより圧倒的に巨大で、二人はもちろんのこと博麗神社の施設や、特にやることも無かったので人形の綻びを直していたアリスさえも飲み込んだ。


        ☆


 アリスは目を覚ました。神社は滅茶苦茶になってはいるが、体に目立った怪我はないようだ。あの『花』には確かに凄まじい力があったが、あれだけの魔力の爆発を起こしておきながら生き物には爪痕を残さないところを見ると、もしかしたら万に一つ、本当に魔理沙が想定した通りの効果をこの『新作』は発揮した可能性があるのかもしれない。…明らかに失敗だが。
 そんなことを徒然とアリスが考えていると、なにやら言い争っている声が聞こえてくる。どうやら魔理沙と霊夢の様である。
「ちょっと魔理沙!この有様どうしてくれんのよ!?どこぞの不良天人に壊されたのをやっとこさ再建したのよ!?」
「あー、えっと、悪かった、私が悪かった霊夢。でもな、その、これはちょっと不慮の事故ってやつでな、うん」
「事故だろうとなんだろうと関係ないわよ!神社がまた崩壊したっていう事実しかないわよ今この時点では!」
「あー。うん。悪かった、とにかく私が悪かった、悪かった悪かった。だからその針を仕舞ってくれ」
 激昂した霊夢が封魔針を携えて魔理沙に迫っていたが、完全に魔理沙の自業自得であるので、フォローはしないことにする。
「…魔理沙の出会ったおじいさんは、あながち法螺吹きって訳でもなかったみたいね」
 霊夢と魔理沙の二人ががやがやと騒いでいる様子を見て、アリスはくすっと微笑み、そしてそう優しく呟いた。





   
最後までこんな何がしたかったのか分からないものを読んでくださった方にお礼を申し上げます。ありがとうございました。
タモスケ
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
え、これで終わりか
ここから面白くなるかと思ったのに
2.タモスケ削除
すいませんちょっとした思い付きだったもので…
3.名前が無い程度の能力削除
続き物、じゃないだよね?
起承転結の転が来るぞ、って思ったらそのまま終わってた。

まぁ、ある分は、おもしろかったです。
4.奇声を発する程度の能力削除
意外な所で終わってしまいました