弾幕の研究と技術向上は魔法に対するそれと等しくこの私、霧雨魔理沙のライフワーク。研究は座っててもできるが技術向上のためには実戦が不可欠だ。
その実戦には相手がいなくちゃいけないわけだが、相手の確保が久しく課題だった。まあそういう私にとって都合のいい奴なんて、そうそういるはずがないからな。
ところがだ。つい最近、格好の練習相手が見つかった。だいたいいつでも都合がついて、それなりに強い。
その二つの最低条件に加え、負けず嫌いな性格による高いモチベーションとこっちが全く遠慮する必要のない打たれ強さ、遠距離と近接どちらもいける戦術的幅広さを兼ね備え、頭を使ったトリッキーな戦法まで採ることができる。
最後に一つ付け加えると、奴の弾幕は気質の球でめちゃくちゃ痛いから食らいたくないので緊張感が跳ね上がる。
そう比那名居天子こそ、私が長年探し求めていた理想的な弾幕の実戦相手だったのだ。
「というわけで、今日も来たぜ霊夢」
地面すれすれで箒から降り、神社の縁側に露骨に嫌な顔を浮かべて座る霊夢へと挨拶する。
「何が『というわけで』なんだか」
「まあ話せば長くなるのぜ。ところで……」
「天子ならまだよ」
私の言葉を遮ってぶっきらぼうに霊夢は答える。こいつが不機嫌な理由はわかってる。誰だって自分の住処が危険に晒されるのはいい気がしないものだからな。
まあしかし待ち合わせにはわかりやすくて最適だし、たまにギャラリーがいたりするとより燃える。霊夢には悪いけどやっぱりここが一番なんだ。
「魔理沙ぁっ! 寝坊したーーーっ!!」
しばらく縁側に座って待っていたら、辺り一帯に響いただろう大声とともに天子が猛スピードで空から降りてきた。
見た目の割にやたら声量があるのは、日頃から歌をやってるせいでもあるのだろうか。
「気にするなって。じゃあさっそくやるのぜ」
「あんたら、わかってるでしょうね?」
霊夢の警告を背で受け流しながら愛用の箒にまたがって飛び上がり、要石に乗って降下中の天子と同じ高さでお互いホバリング。
目が合ったと同時に、二人ともニヤッと笑いが出る。
「さぁて、今日はどうやって楽しませてくれるのかしら」
「そうだな、ならさっそく種なしマジックの披露といくか」
最近のお約束、余計な前フリは不必要だ。出会った瞬間から臨戦体制。
私は懐から八卦炉を。天子は腰に手をやって緋想の剣を…………。
「待った!!」
「へ?」
取り出す代わりに両手を出して私を制止する。
「そうだ私、寝坊して慌ててたから……忘れて……」
ふむ、どうやら天子の奴、肝心の剣を忘れてきたらしい。仕方ないが、それにしても様子がおかしい。
あちらこちらバタバタさせて、いくら何でも慌てすぎじゃないか。
「……れ……無いと……たし…………」
ついにうつむいたまま、何かうわ言を言い始めた。これはおかしい。
「お、おい天子?」
一応警戒しながら近づいて、恐る恐る顔を覗き込んでみた。
「……っ!!??」
私を認識した瞬間、目を見開いて動きが止まる。そして若干の涙目が私を動揺させた。
「な、な、何があったんだぜ?」
「き、きゃあっ!」
勢い天子は反転して私から遠ざかろうとしたが、私は私で反射的に進路に先回りして退路を断つ。
この速度こそ数少ない天子に対する私の明確なアドバンテージだ。
しかしつい咄嗟に彼女の腕を掴んでしまった、これがいけなかった。
天子の短く高い悲鳴と共に今現在私の体はそこらへんの石ころのように軽々と振り上げられ、尋常じゃないスピードで神社の境内へと叩きつけられつつある。あんの馬鹿力め、こんな勢いで地面にぶつかったら間違いなく死ぬだろう。
もはや体勢を立て直すこともできない状態。その割にやけに時間がゆっくり感じるのは、これが死の直前ってやつだからだろうな。
ああ、もうちょっと生きたかったなぁ、私。
……
……
……
……
「おぶっ?!」
あれ?地面ってこんなに柔らかかったっけ。
いや違う、私の下でぼんやり光るこれは……霊夢の陣だ。
「間に合ってよかったわ」
「良かった助かった。終わったと思ったぜ」
咄嗟のところで霊夢がクッション代りに張ってくれたこの陣のおかげで、どうやら私は助かったようだ。
寝そべったまま視線を空に向けると、浮かんだまま両手で顔を覆っている天子が見えた。
「降りてきなさいよ」
私より先に霊夢が天子に声をかけた。特にいつもと違いを感じない、淡々とした口調。
「あ、あの、私、私……」
「いいから」
あわあわしてた天子だが、ようやく観念したように私の側に降りてきた。
「あの、ご、ご、ごめんなさい……」
おかしい。
「あ、あの……本当に……その……」
違う。もじもじしてるとかあわあわしてるとか、そんなんじゃない。
天子は、天人の比那名居天子は、例え私を地面めがけて投げ飛ばしたりしても、すぐにそれについて謝罪するような、そんな殊勝な奴じゃない。
これは、私が知ってる天子とは全然違う。私の目の前にいるこいつがあの天子だなんて、信じられない。
「なあお前、本当に天子なのか?」
「は、はい……でもその……本当にごめんなさい……」
相変わらずこの調子だからな。私もまだ思考が追い付いてないから次の言葉が浮かんでこずに、うつむいてばかりな天子の顔を眺めている。
「じゃあ話聞かせてもらうから。魔理沙が」
「おいおい、私かよ」
私の横を素通りして天子へ歩く霊夢の背中に向かって、とりあえずそれだけ言葉を絞り出した。
「私は別に関係ないから……あ、忘れてた」
そう言って振り向いた霊夢が私に向かって何かを払うような動作をすると、私が今まで乗っていた陣が消え……。
「あたっ!」
ほんの十センチ程度の高さからでも落下して尻餅をつくと結構痛い。
「ひえっ?!」
「ほら行くわよ」
ようやく私が起き上がる頃にはもう、天子は大人しく霊夢から手を引かれて神社へと歩を進めていた。
自信なさげに丸まったその背中に、なんとも言えないもどかしい感覚を覚える。
「どうぞ」
居間の卓袱台に私と天子が向き合いながら座ってしばらく、霊夢がお茶を淹れて持ってきた。
それまでの間、結局お互い一言も話さなかった。まあ天子はこの状態だからしょうがないけど、私は私で今は別に理由や真実を知りたいとかそんな気は全く無く、どうにも調子が狂ってかける言葉が見つからない。
「ああ、いただくのぜ」
喉を潤そうと一口茶をすする。いつも通り薄いけど、火傷しないように少し冷ましてあって舌と喉に優しい。あまり周知はされてないが、霊夢が実は本人も気付いてない部分で気配り上手なのを私は知っている。
「じゃ、ぼちぼち説明してもらいましょうか」
「………………実は……」
やっとこさ話し始めたと思ったらますます声が小さくなって、聞き取るのがやっとだ。
チラッと霊夢を見やると、我関せずといった素振りで目をつぶってお茶を飲んでいた。
「私はもともと、こういう性格なんです。家族……と言ってもお父様だけなんですけど、家族以外に他の人とうまく話すことができなくて……」
「おいおい、なんだぜそれは。今までの態度はどういうことだったんだ」
「……もうかれこれ千年以上前に私達が天人になってからというもの、私はどうしても天界に馴染めませんでした。知り合いなどもろくにできず、とにかくずっと屋敷にこもり本を読み過ごす日々が続いていました」
天子が本当は超がつくほど人見知りで引っ込み思案で、ずっと読書をしながら暮らしてきた。どうやらそういうことらしい。
うん、余計わからん。
「お父様は私の身を案じてくれていたのですが、天人になるときに上役の方から天人の寿命は長いのだから、千年二千年で焦ることなく気長に待ちなさいと言われていました。でもそうして千と四百年ほどが過ぎ、とうとうしびれをお切らしになられたのです」
話し疲れたのか一区切りつけ、申し訳なさそうな視線を私に向けた後で天子はお茶に口をつけた。
「ま、まあ無理しなくていいから、自分のペースでゆっくり話してくれていいのぜ。なあ霊夢?」
「まあ、そうね」
霊夢はこの状況でもいつもと変わらずにいるのに、どうして私はこんなにぎこちない態度しかとれないのか。
さすがに天子ほどではないけど、自分だって充分おかしいと思う。
「あるときお父様から呼ばれ、下の世界に幻想郷という場所があると教えられました。そこでは力ある者達がたびたび異変というものを起こしているということをおっしゃいました。そして、私に緋想の剣をお与えくださったのです」
それで天子があの剣を持っていたってわけか。だんだん話が見えてきたような。
「お父様はおっしゃいました。私にこの剣を使いこなせるようにしばらく修行し、しかる後に私も地上で異変を起こせと。内容は私の好きにしていいけれど、なるべく多くの者と関わるように、特に幻想郷の要たる博麗の巫女とは必ず、と」
なるほど、娘を思う親心ってわけか。多少強引でも外に出て人と触れ合うことで性格を改めようとしたんだな。
「……そうやって剣を使うための修行をするうちに、私にも段々と自信のようなものがついてきたんです。この剣があれば、この剣を持っていれば、私はこんなにすごいことができるんだ。そう思うと、きっとそれまで長い時間の反動だと思うのですけど、だんだんと……剣を持っている間だけですが……気持ちが前向きになってきて、できなかったいろいろなことができるようになりました。屋敷から出ることが多くなって、歌や踊りも始めました。そうすることで更に自信が深まっていったんです。そして計画を練った上で、私はあの異変を起こしました。その後は皆さんご存知の通りです」
「ふーん」
「……なるほどな……」
「でも結局、変われたのはうわべの部分だけだったんです。緋想の剣を身に付けていない私は人とろくに話もできない元の自分のままでした。根本の部分では何も変わっていないことを、さっき嫌という程思い知らされました。私のせいでさっきは魔理沙さんをあんな目に遭わせてしまって、本当に申し訳なく思います」
「で、これからどうするわけ?」
「……ご迷惑をおかけしたこと、そしてこのことがお二人の知ることとなった以上、もう地上へと顔を出すわけには参りません。全て私が緋想の剣を頼りにしすぎたのが間違いの原因だったのだと思います」
そう言って天子はうつむいたまま深く頭を下げる。これで終わりだなんて思いたくないけど、それと同時に私の心は深刻な状況だ。
もう地上には来ないって言ったな。そこまで深刻になる必要はないんじゃないか。私だってまだこれから天子ともっと……もっと……何だ?
今まで感じていた違和感が私の中で渦を巻いてもっと違う感情になってしまっていた。
ぞわぞわする。ぞくぞくする。ドキドキする。
何か言葉を口にしないと、それにまるごと取り込まれてしまいそうだ。
「おいおい、そう言われても、なあ。霊夢、どう思う?天子のこと」
「さあ? 天子のしたいようにすればいいんじゃない。それよりその態度が気持ち悪いんだけど」
「そ、そうですよね、本当に……すみません……」
「お、ま、真に受けるなって」
……思わず霊夢に振ったのを後悔してしまった。まあ霊夢からしたら今の天子は気持ち悪い、それはごもっとも。だが私の考えは違った。
うん、なんとなくわかった。私が抱いていた違和感の原因は多分、こういう奴に慣れていないことにある。今まで知り合ってきた奴と言えば自分勝手、自己中心的、利己的、自身過剰、わがままな連中ばかり……まあ多少は私も人のことは言えないとは思うけど、この天子なんてまさにその代表格だったわけだ。
だけども今私の目の前にいるこいつはどうだ。神妙に肩をすくめて、怯えたような顔をしながら震えた声でおっかなびっくり自分の暗い過去を話す。まるで小動物か何かのようだ。
こんな奴に私は今まで出会って話をしたことがない。そんな天子のことが、どうにもこうにも、言葉にするならそうだ……。
可愛らしく、愛おしくすら。そう思えてしまう。
この天子に対して、私は今、すごくどうかしてやりたい。どうかしてやりたいのだけど、自分でも情けないことに何をしたいのかがわからない。
悲しいことに、今の私は圧倒的経験不足。我の強い奴への対処ならいくらでも思いつくが、こんなケースは初めてだからどんなことをするのが正解なのやらさっぱりだ。
全然いつもの調子が出てこない。平常心でいられる霊夢が恨めしいぜ。
「魔理沙、さっきから黙ってどうしたの?」
「いや、なんでもないぜ」
そう言いながら、私の心臓はまるで鼓動の音が聞こえそうなくらい激しく脈打っている。もはや天子の顔をまともに見ることすらできっこない。
でも、やっぱり嫌だ。いくらなんでももう来ないなんて、そこまでしなくていいはずだ。こんなのでお別れなんて、私は嫌だぜ。
「ねえ魔理沙ってば、貴方までちょっと様子おかしくない?」
ああもう。ままよ、どうにでもなれ!
「ちょっと来い、天子!」
「っ! あ、あの」
「霊夢! 来るなっ!」
「魔理沙!?」
気付けばまるで何かに思い切り背中を蹴り飛ばされたような勢いで、私は天子の手を引いて神社裏の藪の中へと全力で走っていた。
「はあっ……はっ……はぁーっ、すぅーっ、ふぅーっ」
「あ……の……大丈夫……ですか?」
そう長くない距離にも関わらず私の息はすっかり上がってしまったのに、天子の方は全く乱れていやしない。種族の差って奴が少し恨めしいぜ。
「ああ、大丈夫。ただ走っただけだからな。心配かけて悪かったぜ」
「いえ……」
私から明らかに目を背ける天子を見てはっとした。そうだ、不慣れな場所に私と二人なこの状況だってきっと今の天子にとっては決して居心地がいいはずがない。それなのに私の心配をしてくれたってのは、ちょっと嬉しい気がする。
で、つい勢いでここまで来たはいいけどどうしたものか。ここで天子が考えているようにもう地上に降りてくることなくまた以前のように引きこもるっていうなら、今度こそこいつは心を閉ざしてもう二度と外に出られなくなってしまうかもしれない。
私にしたって天子と会えなくなるのは嫌だ。別に弾幕の練習相手がいなくなるからとかそんなんじゃない。緋想の剣を持ってるときの高慢な天子でもいいし、今の弱気な天子でもいい。
私は、天子にいてほしいんだ。
「なあ天子、やっぱりもう来ないとか思う必要なんて無いぜ?」
そう呼びかけても天子は顔を伏せたまま。ひどく緊張しているのがありありと見て取れる。
なんとか……どうにかして天子を安心できるようにしてやりたい。そのためにはまず、私が天子の味方だって思ってもらわないとな。
「さっきは私のことを危ない目に遭わせたとか思ってるかもしれないけどさ、あれだって結局は霊夢が助けてくれて大丈夫だったじゃないか。何かあってもさ、いろいろあってお互い助け合ったりとか、力を貸したりとかできるんだぜ。私が今まで見てきた中でも、明らかにお前より危険な奴だっていっぱいいたし、死にそうな思いだってしてきたさ。それでも私はここにいるし、そいつらだって何食わぬ顔して普通に暮らしてる。だからさ、お前がそんなに心配する必要なんてないんだぜ。大丈夫、私がついてるからな」
「魔理沙……さん、き、気持ちはすごく嬉しいです。でも、皆さんを騙していたことになりますし、今更どんな顔で魔理沙さんや霊夢さん達にお会いしたらいいのかわかりません」
うーん、私からしたら別にこれまで通りで会えばいい気がするんだが、きっと天子からしたらそんな単純なものでもないんだろうな。
「誰にだって思い出したくない過去の一つや二つなんてあるもんさ。もちろん私にだってな」
「そう……ですか? 魔理沙さんにも?」
「おうよ。……えーと」
は、恥ずかしくなってきた。しかし、ここはやるしかないのぜ。
「う…うふ、うふふふふ、うふふふふふふふふ」
「あ、あの?」
や、やっちまったか? 天子はきょとんとしてわけがわからない様子。というか当たり前だ。もうこうなったら、勢いで乗り切るしかない!
「笑えよ!」
「ひっ?」
「い、今のおかしかっただろ? これが私の思い出したくない過去って奴なのさ。さあとりあえず笑ってくれ。んで詳しいことが知りたかったらまた降りてこいよ」
「ま、魔理沙さん」
「何だぜ?」
「あ、あの、どうしてですか?」
「へ?」
「お気持ちはすごくありがたいし、とっても嬉しいと思います。でもどうして魔理沙さんに迷惑をかけた私に対して、また地上に降りてくるようにそうしていろいろしてくれるのですか?」
「ふぇっ?!」
あー、なんでって、そりゃ……。ん?
いや、ないないない。でも、いや、まさか、そんな。しかし、きっと、そうだよな、そうなのか。おいマジかよ。
「まり――」
「す、好きだからだぜ、天子のこと」
「!?」
私は今、生まれて初めて人の顔が真っ赤になる瞬間ってやつを見た。
天子も多分、同じ瞬間を見たはずだ。
「じょ、冗談を……」
「冗談なんかじゃないぜ! でなきゃこんなことするはずないだろ。だから大丈夫だ、何があっても私が天子を守るぜ」
「こんな私でもいいのですか?」
ああもう、そんな潤んだ上目遣いで見つめられたらもう、抱きしめるしかないじゃないか。
……って思ったんだ。で、そしたら見えたんだ。樹の間に、そう、例の竜宮の使いが。うん、あれだよ、緋想の剣片手に。
なぜかそのとき頭に浮かんだのが、あいつの能力が本当なら、私は魔法を使えないってことになるなって、くだらないことだったぜ。
まあ、よかったんじゃないか。天子の奴も緋想の剣受け取った途端いつもの調子に戻ったしな。さすがに少し気まずそうだったけど。
私はなんだか気が抜けて、生返事っぽくしか返せなかった。
「天子と何があったか知らないけど、そろそろ夕餉の支度だから帰ってくれないかしら?」
「そんなに冷たいこと言わないでくれよ霊夢。私でも落ち込むことくらいあるんだぜ」
「知らないわよ。で、結局天子はまた来るの」
「知らん」
「知らんって」
「ああでも、今度天子の自宅に遊びに来てくれって竜宮の使いが言ってた」
「ああ、そういうこと」
「何一人で納得してるんだよ」
「わからない? 自宅ってことは、剣無しで会いましょうってことじゃない」
「ああそうか、それは気付かなかったな」
「ショックで頭が回らなかったのかしら?」
「かもな。ってことはまだチャンスありか。ありがとうだぜ霊夢。じゃあな、また来るぜ」
土産は何にしようか。服はいい機会だから新調したりしてみようかな。恥ずかしがり屋の相手と上手く話せる秘訣が書いてある本なんて図書館にないかな。それとも香霖堂の方がいいだろうか。
その実戦には相手がいなくちゃいけないわけだが、相手の確保が久しく課題だった。まあそういう私にとって都合のいい奴なんて、そうそういるはずがないからな。
ところがだ。つい最近、格好の練習相手が見つかった。だいたいいつでも都合がついて、それなりに強い。
その二つの最低条件に加え、負けず嫌いな性格による高いモチベーションとこっちが全く遠慮する必要のない打たれ強さ、遠距離と近接どちらもいける戦術的幅広さを兼ね備え、頭を使ったトリッキーな戦法まで採ることができる。
最後に一つ付け加えると、奴の弾幕は気質の球でめちゃくちゃ痛いから食らいたくないので緊張感が跳ね上がる。
そう比那名居天子こそ、私が長年探し求めていた理想的な弾幕の実戦相手だったのだ。
「というわけで、今日も来たぜ霊夢」
地面すれすれで箒から降り、神社の縁側に露骨に嫌な顔を浮かべて座る霊夢へと挨拶する。
「何が『というわけで』なんだか」
「まあ話せば長くなるのぜ。ところで……」
「天子ならまだよ」
私の言葉を遮ってぶっきらぼうに霊夢は答える。こいつが不機嫌な理由はわかってる。誰だって自分の住処が危険に晒されるのはいい気がしないものだからな。
まあしかし待ち合わせにはわかりやすくて最適だし、たまにギャラリーがいたりするとより燃える。霊夢には悪いけどやっぱりここが一番なんだ。
「魔理沙ぁっ! 寝坊したーーーっ!!」
しばらく縁側に座って待っていたら、辺り一帯に響いただろう大声とともに天子が猛スピードで空から降りてきた。
見た目の割にやたら声量があるのは、日頃から歌をやってるせいでもあるのだろうか。
「気にするなって。じゃあさっそくやるのぜ」
「あんたら、わかってるでしょうね?」
霊夢の警告を背で受け流しながら愛用の箒にまたがって飛び上がり、要石に乗って降下中の天子と同じ高さでお互いホバリング。
目が合ったと同時に、二人ともニヤッと笑いが出る。
「さぁて、今日はどうやって楽しませてくれるのかしら」
「そうだな、ならさっそく種なしマジックの披露といくか」
最近のお約束、余計な前フリは不必要だ。出会った瞬間から臨戦体制。
私は懐から八卦炉を。天子は腰に手をやって緋想の剣を…………。
「待った!!」
「へ?」
取り出す代わりに両手を出して私を制止する。
「そうだ私、寝坊して慌ててたから……忘れて……」
ふむ、どうやら天子の奴、肝心の剣を忘れてきたらしい。仕方ないが、それにしても様子がおかしい。
あちらこちらバタバタさせて、いくら何でも慌てすぎじゃないか。
「……れ……無いと……たし…………」
ついにうつむいたまま、何かうわ言を言い始めた。これはおかしい。
「お、おい天子?」
一応警戒しながら近づいて、恐る恐る顔を覗き込んでみた。
「……っ!!??」
私を認識した瞬間、目を見開いて動きが止まる。そして若干の涙目が私を動揺させた。
「な、な、何があったんだぜ?」
「き、きゃあっ!」
勢い天子は反転して私から遠ざかろうとしたが、私は私で反射的に進路に先回りして退路を断つ。
この速度こそ数少ない天子に対する私の明確なアドバンテージだ。
しかしつい咄嗟に彼女の腕を掴んでしまった、これがいけなかった。
天子の短く高い悲鳴と共に今現在私の体はそこらへんの石ころのように軽々と振り上げられ、尋常じゃないスピードで神社の境内へと叩きつけられつつある。あんの馬鹿力め、こんな勢いで地面にぶつかったら間違いなく死ぬだろう。
もはや体勢を立て直すこともできない状態。その割にやけに時間がゆっくり感じるのは、これが死の直前ってやつだからだろうな。
ああ、もうちょっと生きたかったなぁ、私。
……
……
……
……
「おぶっ?!」
あれ?地面ってこんなに柔らかかったっけ。
いや違う、私の下でぼんやり光るこれは……霊夢の陣だ。
「間に合ってよかったわ」
「良かった助かった。終わったと思ったぜ」
咄嗟のところで霊夢がクッション代りに張ってくれたこの陣のおかげで、どうやら私は助かったようだ。
寝そべったまま視線を空に向けると、浮かんだまま両手で顔を覆っている天子が見えた。
「降りてきなさいよ」
私より先に霊夢が天子に声をかけた。特にいつもと違いを感じない、淡々とした口調。
「あ、あの、私、私……」
「いいから」
あわあわしてた天子だが、ようやく観念したように私の側に降りてきた。
「あの、ご、ご、ごめんなさい……」
おかしい。
「あ、あの……本当に……その……」
違う。もじもじしてるとかあわあわしてるとか、そんなんじゃない。
天子は、天人の比那名居天子は、例え私を地面めがけて投げ飛ばしたりしても、すぐにそれについて謝罪するような、そんな殊勝な奴じゃない。
これは、私が知ってる天子とは全然違う。私の目の前にいるこいつがあの天子だなんて、信じられない。
「なあお前、本当に天子なのか?」
「は、はい……でもその……本当にごめんなさい……」
相変わらずこの調子だからな。私もまだ思考が追い付いてないから次の言葉が浮かんでこずに、うつむいてばかりな天子の顔を眺めている。
「じゃあ話聞かせてもらうから。魔理沙が」
「おいおい、私かよ」
私の横を素通りして天子へ歩く霊夢の背中に向かって、とりあえずそれだけ言葉を絞り出した。
「私は別に関係ないから……あ、忘れてた」
そう言って振り向いた霊夢が私に向かって何かを払うような動作をすると、私が今まで乗っていた陣が消え……。
「あたっ!」
ほんの十センチ程度の高さからでも落下して尻餅をつくと結構痛い。
「ひえっ?!」
「ほら行くわよ」
ようやく私が起き上がる頃にはもう、天子は大人しく霊夢から手を引かれて神社へと歩を進めていた。
自信なさげに丸まったその背中に、なんとも言えないもどかしい感覚を覚える。
「どうぞ」
居間の卓袱台に私と天子が向き合いながら座ってしばらく、霊夢がお茶を淹れて持ってきた。
それまでの間、結局お互い一言も話さなかった。まあ天子はこの状態だからしょうがないけど、私は私で今は別に理由や真実を知りたいとかそんな気は全く無く、どうにも調子が狂ってかける言葉が見つからない。
「ああ、いただくのぜ」
喉を潤そうと一口茶をすする。いつも通り薄いけど、火傷しないように少し冷ましてあって舌と喉に優しい。あまり周知はされてないが、霊夢が実は本人も気付いてない部分で気配り上手なのを私は知っている。
「じゃ、ぼちぼち説明してもらいましょうか」
「………………実は……」
やっとこさ話し始めたと思ったらますます声が小さくなって、聞き取るのがやっとだ。
チラッと霊夢を見やると、我関せずといった素振りで目をつぶってお茶を飲んでいた。
「私はもともと、こういう性格なんです。家族……と言ってもお父様だけなんですけど、家族以外に他の人とうまく話すことができなくて……」
「おいおい、なんだぜそれは。今までの態度はどういうことだったんだ」
「……もうかれこれ千年以上前に私達が天人になってからというもの、私はどうしても天界に馴染めませんでした。知り合いなどもろくにできず、とにかくずっと屋敷にこもり本を読み過ごす日々が続いていました」
天子が本当は超がつくほど人見知りで引っ込み思案で、ずっと読書をしながら暮らしてきた。どうやらそういうことらしい。
うん、余計わからん。
「お父様は私の身を案じてくれていたのですが、天人になるときに上役の方から天人の寿命は長いのだから、千年二千年で焦ることなく気長に待ちなさいと言われていました。でもそうして千と四百年ほどが過ぎ、とうとうしびれをお切らしになられたのです」
話し疲れたのか一区切りつけ、申し訳なさそうな視線を私に向けた後で天子はお茶に口をつけた。
「ま、まあ無理しなくていいから、自分のペースでゆっくり話してくれていいのぜ。なあ霊夢?」
「まあ、そうね」
霊夢はこの状況でもいつもと変わらずにいるのに、どうして私はこんなにぎこちない態度しかとれないのか。
さすがに天子ほどではないけど、自分だって充分おかしいと思う。
「あるときお父様から呼ばれ、下の世界に幻想郷という場所があると教えられました。そこでは力ある者達がたびたび異変というものを起こしているということをおっしゃいました。そして、私に緋想の剣をお与えくださったのです」
それで天子があの剣を持っていたってわけか。だんだん話が見えてきたような。
「お父様はおっしゃいました。私にこの剣を使いこなせるようにしばらく修行し、しかる後に私も地上で異変を起こせと。内容は私の好きにしていいけれど、なるべく多くの者と関わるように、特に幻想郷の要たる博麗の巫女とは必ず、と」
なるほど、娘を思う親心ってわけか。多少強引でも外に出て人と触れ合うことで性格を改めようとしたんだな。
「……そうやって剣を使うための修行をするうちに、私にも段々と自信のようなものがついてきたんです。この剣があれば、この剣を持っていれば、私はこんなにすごいことができるんだ。そう思うと、きっとそれまで長い時間の反動だと思うのですけど、だんだんと……剣を持っている間だけですが……気持ちが前向きになってきて、できなかったいろいろなことができるようになりました。屋敷から出ることが多くなって、歌や踊りも始めました。そうすることで更に自信が深まっていったんです。そして計画を練った上で、私はあの異変を起こしました。その後は皆さんご存知の通りです」
「ふーん」
「……なるほどな……」
「でも結局、変われたのはうわべの部分だけだったんです。緋想の剣を身に付けていない私は人とろくに話もできない元の自分のままでした。根本の部分では何も変わっていないことを、さっき嫌という程思い知らされました。私のせいでさっきは魔理沙さんをあんな目に遭わせてしまって、本当に申し訳なく思います」
「で、これからどうするわけ?」
「……ご迷惑をおかけしたこと、そしてこのことがお二人の知ることとなった以上、もう地上へと顔を出すわけには参りません。全て私が緋想の剣を頼りにしすぎたのが間違いの原因だったのだと思います」
そう言って天子はうつむいたまま深く頭を下げる。これで終わりだなんて思いたくないけど、それと同時に私の心は深刻な状況だ。
もう地上には来ないって言ったな。そこまで深刻になる必要はないんじゃないか。私だってまだこれから天子ともっと……もっと……何だ?
今まで感じていた違和感が私の中で渦を巻いてもっと違う感情になってしまっていた。
ぞわぞわする。ぞくぞくする。ドキドキする。
何か言葉を口にしないと、それにまるごと取り込まれてしまいそうだ。
「おいおい、そう言われても、なあ。霊夢、どう思う?天子のこと」
「さあ? 天子のしたいようにすればいいんじゃない。それよりその態度が気持ち悪いんだけど」
「そ、そうですよね、本当に……すみません……」
「お、ま、真に受けるなって」
……思わず霊夢に振ったのを後悔してしまった。まあ霊夢からしたら今の天子は気持ち悪い、それはごもっとも。だが私の考えは違った。
うん、なんとなくわかった。私が抱いていた違和感の原因は多分、こういう奴に慣れていないことにある。今まで知り合ってきた奴と言えば自分勝手、自己中心的、利己的、自身過剰、わがままな連中ばかり……まあ多少は私も人のことは言えないとは思うけど、この天子なんてまさにその代表格だったわけだ。
だけども今私の目の前にいるこいつはどうだ。神妙に肩をすくめて、怯えたような顔をしながら震えた声でおっかなびっくり自分の暗い過去を話す。まるで小動物か何かのようだ。
こんな奴に私は今まで出会って話をしたことがない。そんな天子のことが、どうにもこうにも、言葉にするならそうだ……。
可愛らしく、愛おしくすら。そう思えてしまう。
この天子に対して、私は今、すごくどうかしてやりたい。どうかしてやりたいのだけど、自分でも情けないことに何をしたいのかがわからない。
悲しいことに、今の私は圧倒的経験不足。我の強い奴への対処ならいくらでも思いつくが、こんなケースは初めてだからどんなことをするのが正解なのやらさっぱりだ。
全然いつもの調子が出てこない。平常心でいられる霊夢が恨めしいぜ。
「魔理沙、さっきから黙ってどうしたの?」
「いや、なんでもないぜ」
そう言いながら、私の心臓はまるで鼓動の音が聞こえそうなくらい激しく脈打っている。もはや天子の顔をまともに見ることすらできっこない。
でも、やっぱり嫌だ。いくらなんでももう来ないなんて、そこまでしなくていいはずだ。こんなのでお別れなんて、私は嫌だぜ。
「ねえ魔理沙ってば、貴方までちょっと様子おかしくない?」
ああもう。ままよ、どうにでもなれ!
「ちょっと来い、天子!」
「っ! あ、あの」
「霊夢! 来るなっ!」
「魔理沙!?」
気付けばまるで何かに思い切り背中を蹴り飛ばされたような勢いで、私は天子の手を引いて神社裏の藪の中へと全力で走っていた。
「はあっ……はっ……はぁーっ、すぅーっ、ふぅーっ」
「あ……の……大丈夫……ですか?」
そう長くない距離にも関わらず私の息はすっかり上がってしまったのに、天子の方は全く乱れていやしない。種族の差って奴が少し恨めしいぜ。
「ああ、大丈夫。ただ走っただけだからな。心配かけて悪かったぜ」
「いえ……」
私から明らかに目を背ける天子を見てはっとした。そうだ、不慣れな場所に私と二人なこの状況だってきっと今の天子にとっては決して居心地がいいはずがない。それなのに私の心配をしてくれたってのは、ちょっと嬉しい気がする。
で、つい勢いでここまで来たはいいけどどうしたものか。ここで天子が考えているようにもう地上に降りてくることなくまた以前のように引きこもるっていうなら、今度こそこいつは心を閉ざしてもう二度と外に出られなくなってしまうかもしれない。
私にしたって天子と会えなくなるのは嫌だ。別に弾幕の練習相手がいなくなるからとかそんなんじゃない。緋想の剣を持ってるときの高慢な天子でもいいし、今の弱気な天子でもいい。
私は、天子にいてほしいんだ。
「なあ天子、やっぱりもう来ないとか思う必要なんて無いぜ?」
そう呼びかけても天子は顔を伏せたまま。ひどく緊張しているのがありありと見て取れる。
なんとか……どうにかして天子を安心できるようにしてやりたい。そのためにはまず、私が天子の味方だって思ってもらわないとな。
「さっきは私のことを危ない目に遭わせたとか思ってるかもしれないけどさ、あれだって結局は霊夢が助けてくれて大丈夫だったじゃないか。何かあってもさ、いろいろあってお互い助け合ったりとか、力を貸したりとかできるんだぜ。私が今まで見てきた中でも、明らかにお前より危険な奴だっていっぱいいたし、死にそうな思いだってしてきたさ。それでも私はここにいるし、そいつらだって何食わぬ顔して普通に暮らしてる。だからさ、お前がそんなに心配する必要なんてないんだぜ。大丈夫、私がついてるからな」
「魔理沙……さん、き、気持ちはすごく嬉しいです。でも、皆さんを騙していたことになりますし、今更どんな顔で魔理沙さんや霊夢さん達にお会いしたらいいのかわかりません」
うーん、私からしたら別にこれまで通りで会えばいい気がするんだが、きっと天子からしたらそんな単純なものでもないんだろうな。
「誰にだって思い出したくない過去の一つや二つなんてあるもんさ。もちろん私にだってな」
「そう……ですか? 魔理沙さんにも?」
「おうよ。……えーと」
は、恥ずかしくなってきた。しかし、ここはやるしかないのぜ。
「う…うふ、うふふふふ、うふふふふふふふふ」
「あ、あの?」
や、やっちまったか? 天子はきょとんとしてわけがわからない様子。というか当たり前だ。もうこうなったら、勢いで乗り切るしかない!
「笑えよ!」
「ひっ?」
「い、今のおかしかっただろ? これが私の思い出したくない過去って奴なのさ。さあとりあえず笑ってくれ。んで詳しいことが知りたかったらまた降りてこいよ」
「ま、魔理沙さん」
「何だぜ?」
「あ、あの、どうしてですか?」
「へ?」
「お気持ちはすごくありがたいし、とっても嬉しいと思います。でもどうして魔理沙さんに迷惑をかけた私に対して、また地上に降りてくるようにそうしていろいろしてくれるのですか?」
「ふぇっ?!」
あー、なんでって、そりゃ……。ん?
いや、ないないない。でも、いや、まさか、そんな。しかし、きっと、そうだよな、そうなのか。おいマジかよ。
「まり――」
「す、好きだからだぜ、天子のこと」
「!?」
私は今、生まれて初めて人の顔が真っ赤になる瞬間ってやつを見た。
天子も多分、同じ瞬間を見たはずだ。
「じょ、冗談を……」
「冗談なんかじゃないぜ! でなきゃこんなことするはずないだろ。だから大丈夫だ、何があっても私が天子を守るぜ」
「こんな私でもいいのですか?」
ああもう、そんな潤んだ上目遣いで見つめられたらもう、抱きしめるしかないじゃないか。
……って思ったんだ。で、そしたら見えたんだ。樹の間に、そう、例の竜宮の使いが。うん、あれだよ、緋想の剣片手に。
なぜかそのとき頭に浮かんだのが、あいつの能力が本当なら、私は魔法を使えないってことになるなって、くだらないことだったぜ。
まあ、よかったんじゃないか。天子の奴も緋想の剣受け取った途端いつもの調子に戻ったしな。さすがに少し気まずそうだったけど。
私はなんだか気が抜けて、生返事っぽくしか返せなかった。
「天子と何があったか知らないけど、そろそろ夕餉の支度だから帰ってくれないかしら?」
「そんなに冷たいこと言わないでくれよ霊夢。私でも落ち込むことくらいあるんだぜ」
「知らないわよ。で、結局天子はまた来るの」
「知らん」
「知らんって」
「ああでも、今度天子の自宅に遊びに来てくれって竜宮の使いが言ってた」
「ああ、そういうこと」
「何一人で納得してるんだよ」
「わからない? 自宅ってことは、剣無しで会いましょうってことじゃない」
「ああそうか、それは気付かなかったな」
「ショックで頭が回らなかったのかしら?」
「かもな。ってことはまだチャンスありか。ありがとうだぜ霊夢。じゃあな、また来るぜ」
土産は何にしようか。服はいい機会だから新調したりしてみようかな。恥ずかしがり屋の相手と上手く話せる秘訣が書いてある本なんて図書館にないかな。それとも香霖堂の方がいいだろうか。
豹変して引っ込み思案な天子、というのが眼目なんでしょうから、そこを一番目立つような展開で読みたかったな、とちょっと思いました、
ちゃんとしていれば面白い内容ですね
無印のミスは時間が巻き戻ったり謎の文字列や時間が挿入されていたりと、ホラーかと思ったw