Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

霊夢を想う話

2013/02/13 15:30:56
最終更新
サイズ
2.76KB
ページ数
1

分類タグ

霊夢が眠っていた。
いつもと違う脱力しきった顔で。いつもいる縁側で。名前を呼び掛けてみても返事はない。
観察してみる。

いつもと同じ腋の出た服を着ているので寒そうだ。口からはよだれが垂れている。床板に頭が直接当たっているのに、痛くはないのか。

手を伸ばしてみる。ハンカチでそっとよだれを拭い、脱いだコートをかけた。
目が覚める様子はない。
音を立てないよう横へ座り、頭に触れた。

艶やかに輝く黒い髪。健康的で美しい、白すぎることのない肌。まるで紅をさしているような美しく赤い唇。小さく整った鼻。そして今は瞼に隠されている、真実を見据えるような栗色の瞳。

それが、今、触れられる距離にある。

迂闊に触れると壊れてしまいそうな危うさを感じつつも、恐る恐る、触れた。
壊れない。
指先で髪を掬い上げる。さらさらと指の間を抜けて落ちていく。
何度か、繰り返してみた。
何度でも、落ちていった。
それが、私と霊夢の関係を表しているように感じられて、寂しくなった。

霊夢は自由だ。いつも、自由で。近くなったと思ったら遠くにいて、離れていると思えば隣にいる。するすると指の間を抜け落ちる。


前に、私は霊夢が好きだった。恋していた。抱き合いたかった。頭を撫でたかった。キスをしたかった。
霊夢はいつも同じところにいた。近付くことはできなかった。

今は、私は霊夢が好きなのか。わからない。家のテーブルに飾りたいと思う。首をしめて殺したいと思う。殺されたいと思う。
霊夢はやっぱりいつも同じところにいた。やっぱり近付くことはできなかった。

首に触れかけて躊躇する。パッと手を離した。手を見つめる。
触れたら戻れないよ。
そう聞こえた気がした。


瞳をつむり、首に、手を、かけた。
優しく、触れるだけ。
両手で、軽く。

「れいむ」

名前を呼ぶ。誰にも聞こえないように、口のなかで転がすように。

とくとくと、血が流れるのを感じながら顔を覗き込んだ。
白すぎない、白い肌。薄紅の頬。栗色の虹彩。

反射的に手を離す。霊夢は、起きていた?いつから。


「ねえ、あんたは私が嫌いなの」

それは、違う。

「あんたは私が憎いの」

そんなことは、ない。

「あんたはどうして首をしめようとしていたの」

ごめんなさい。

「あんたはどうして」

悲しそうな顔をするの?
そう問われた。答えは、持っていない。
うつむき首を横に振ってわからないのだと示す。頬に何かが触れた。暖かい、指。顔を上げる。

「教えて?」


口から言葉がこぼれ出す。

霊夢が大好きだったということ
今は好きでないということ
霊夢を部屋に飾りたいということ
霊夢を殺したかったこと
殺されたかったこと

全部、心の奥まで見透かされるような目を前に、全てを吐き出した。
霊夢は相づちを打つのでもなく、ただただ静かに聞いていた。

全てを言い終えたとき、霊夢の手がこちらへと伸びてきた。
首に触れた。

「殺されたい?」

無言で頷く。

「ごめんね。それはできないわ」

ゆっくりと、頷く。

「あなたの気持ちは受け取ったわ。今日は帰って、眠りなさい」

コートを返され、ポンと背中を押された。そのままの勢いで、飛ぶ。

「また、来るといいわ」

涙が流れ出した。なぜだかわからなかった。速度をあげて、飛んで、飛んだ。

空は曇り、視界は薄暗かった。
霊夢が想う話


「本当に望むなら、あんたになら殺されてあげてもいいわ」

空に相手には届かない言葉を投げた。

彼女は私を前に好きだったと言った。
私は彼女を今も好きだった。

彼女は優しいから、きっと私を殺したあとに死を選ぶ。
私はさみしがりだから、きっと彼女を殺したあとに生きられない。
そんな未来を私は望まないから。

「また、ね」

いつか二人に死が訪れたら、そのときは。





一周月記念でした。

霊夢さんの相手は一体誰なんでしょう。
いつかの二人の殺し愛を見たいです。

最後まで読んでくださりありがとうございました。
小波
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
いいね
スナック感覚でよめた
2.奇声を発する程度の能力削除
さっくりしてて良かったです
3.ドラえもん削除
小波さんの作品好きです。
またお願いします。
4.名前が無い程度の能力削除
そうそう、さくさく、ぽりぽり。
5.こーろぎ削除
また咲霊かなと思ったら違ってて驚きました、それでも面白かったです。さっくり
6.名前が無い程度の能力削除
デジャブを感じますが、良かったです
7.名前が無い程度の能力削除
レイアリ好きな自分はアリスに変換して読んだ
いいんだ作者が意図した相手じゃなくても・・・
8.名前が無い程度の能力削除
二人の精一杯さが良かった。
9.yosei削除
胸がぎゅっとなった
10.名前が無い程度の能力削除
ベネ