三角巾とエプロンで武装したお姉ちゃんが、半眼で、ドヤ顔で口を開く。
「というわけで、カレーを作ります」
「なんで!?」
うちのお姉ちゃんがまたわけの判らないことを言い出しました。
間違いない……これは、寝ぼけてる!
「寝て。速やかに」
「材料はこちらに用意致しました」
「手際が良い!?」
既に揃っている具材。ニンジン、ジャガイモ、タマネギ、豚肉。基本的な素材。
……本気かぁ。
「さぁ、こいし、一緒に作るのよ」
「教えてお姉ちゃん。なんでカレー?」
「今日が二月だからよ」
「幅広いし意味判らないし……」
二月にカレー食べる習慣なんてあったかなぁ……
というか、二月っていったら、あれだよね、チョコとか、豆とか、恵方巻きとか!
あ。私、恵方巻き食べてみたい。食べたことない。
「ねぇお姉ちゃん」
「え? ビーフカレーの方が良かった?」
「そうじゃなくて!」
というか主にカレー全般却下したい気分でもあります。
「私、恵方巻き食べたい!」
「食べたじゃない」
「え?」
……食べた?
……食べてないよ?
……無意識っちゃいましたか? 私?
「え、いつ?」
「2月4日のお夕飯に」
えっと、献立なんだっけ!
「え、4日……何食べたっけ?」
「カツ丼だったでしょ」
「巻いてすらいないんですけど!?」
カツ丼が恵方巻きって云ってるの!?
お姉ちゃんの想定する恵方巻きって何!?
あれ!? 恵方巻きって太巻きのことだよね!?
……ちょっと自信なくなってきたけど、酔っ払ってるお姉ちゃんより私の記憶の方が正しいと信じることにする。
「それに添えてあったでしょ」
添え……恵方巻きを?
「……そういえば、カッパ巻きが、何故かあったような」
「それよ」
「それなの!?」
験担ぎの具材ゼロだよ! 栄養もないよ! 恵方も向いてもいないよ!
そういえばなんでカッパ巻きなんだろうって思った憶えがある。あれそういう意味だったのか。
「第一、この辺り地場が歪んでるから恵方判らないし」
「え?」
そうなの?
「はい、方位磁石」
なんで持ってるの?
えっと、どれどれ。
キュィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン
「うわ、高速回転してる!」
「地場が歪んでるから」
「そういう問題これ!?」
指突っ込んだら切断されそうな怖さがあった。
その恐ろしい大回転を見ていると、お姉ちゃんはそれをポケットにしまってしまった。
なんで持ち歩いてるんだろう。
「というわけで、カレーです」
「え、あぁ。え?」
あれ? なにが、どういうわけで?
「はい、こいしもエプロン」
「あ、あれ、私も?」
「もちろん」
「えぇ……」
料理は嫌いじゃないけど……もの凄く腑に落ちない。
「カレーなら私が作るから、寝てて良いよ?」
「こいしに任せたら、無意識に別の物になっちゃうかもしれないでしょ」
「し、しつれ……ぐっ、強く否定できないのが悔しい……」
眠そうに頭を揺らしている姉は、ドヤァと笑っていた。
「それじゃあ、まず、ニンジン切って」
「はいはい」
仕方ないので、寝ぼけたお姉ちゃんに従うことにする。
「あとジャガイモ切って」
「はぁい」
「タマネギ切って」
「はい」
「肉も切って」
「はい」
「三萬切って」
「はいは……はい?」
サンマン? どの具?
「あぁ……そこで南を切ってリーチ」
「……お姉ちゃん?」
リーチ?
「え、ロン? えぇ、そんな待ちなんて……」
「お姉ちゃん!? なんの話してるの!?」
これは明らかに麻雀だ!
しかし何故!?
「はっ……あぁ、ご飯代を賭けた麻雀で負けて餓える夢を見ていたわ」
「どうして!?」
絶対そんな場面、今までの人生で対面していないハズなのに!
「夢で良かったわ……それじゃあ牛乳温めて」
「なんでそんな夢見てるの……はいはい」
お鍋で牛乳コトコト。ホットミルクって美味しいよね。
「そこにコンソメを入れて」
「はぁい」
あぁ、良い匂い。
「じゃあそろそろ具を入れて」
「はい」
コトコト
「じゃあそこに、バターと小麦粉を入れて」
「……あれ。変わった手順だね」
コトコト煮込む。美味しそうになるまでゆっくり煮込む。
「そして最後に塩こしょうで味を調えたら」
「これホワイトシチューだよね!?」
完成して気付くのもどうかと思うけどなんかもう何もかも違うよこれ!
「……あ、カレーじゃない」
わざとじゃないんだ!?
「まぁ、これをご飯に掛けてシチューライスにしなよ。私はパンで食べるけど」
お姉ちゃんやお燐はそういう食べ方するけど、私はパン派だなぁ。
お空は肉だけ食べる悪い子。でも、これ豚肉だけど、お燐が食べるの鶏肉なんだよね。なんであの子、鳥肉や鶏卵が好きなんだろう。
「じゃあもう一回材料を切ろう」
「え!?」
なんで!? 一品既にこさえたよ!?
「カレーが食べたいの。山の神社の巫女も云ってたわ」
「あぁ、早苗が?」
お姉ちゃんは重々しくこくりと頷いた。
「おせちも良いけどカレーもね、って」
「今二月だよ!?」
おせちが全く関係ない。
「兎に角カレーが食べたいの。食べたいの。食べるの」
口調は全く変化していないし表情も眠そうなままだけど、手を振って駄々をこねる。
「うわ、ワガママ!」
しかしこうなると説得は難しいので、やむなくカレー作成開始。
……シチューは冷凍かな。
「えっと、それじゃあ」
「お姉ちゃんは黙ってて!」
「えー」
またお姉ちゃんがごちゃごちゃ言うと間違えそうだから。
「じゃあ、隠し味の醤油ここに置いておくわね」
「あぁ、うん。ありがとう」
隠し味に醤油かぁ。聞いたことあるけど使うの初めてだなぁ。どんな味になるんだろう。
「えっと、よし」
気合いを入れて野菜を切る。
肉も切る。
「よし、鍋に牛乳を入れた過ちの地点まで来た! まずはタマネギとかを炒めよう」
鍋に油をしいて、ジャッジャッ
「あぁ、良い匂い。砂糖とお酒をちょっと入れて」
ジャッジャッ
「そうそう、醤油も加えて、っと」
ジャッジャッ
「ねぇ、こいし」
「なに?」
「何作ってるの?」
「え、何って、肉じゃ……」
………
………………
………………………
………………………………
………………………………………
………………………………………………
………………………………………………………
………………………………………………………………
………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………………orz
……どうしてこうなった……
「だから、やっぱり、私が見張ってないと駄目ねぇ」
「その結果はホワイトシチューだけどね!?」
「こいしでも頑張ればカレー作れるわよ」
「うわぁん、なんか私が駄目な子みたいに!?」
泣ける……寝ぼけ姉が鬱陶しい。
「じゃあ、カレー作るわよ」
「まだやるの……次はハヤシライスとかってやめてよ」
「大丈夫、あれは材料違うから」
「それは良かった」
「間違えるとしたら、ポトフね」
「やめてよホントに無意識に間違えそうだから!」
というか、何故取り返しが付かない場所まで来てから指摘をするのか。駄目な姉だ!
「えっと、というか、ルー何処」
「はい、これら」
「ありが」
どっちゃりと手に乗せられた。
「……多くない?」
「隠し味込み」
「う……コンソメとかそういうやつ?」
「細工はなんとか、あとは結果をなんとやら」
「胡乱げすぎるよ!」
まぁいいや……一斉投下。
「林檎のすり下ろしもあるよ。美味しいよ」
「ありが、ごぶっ!?」
スプーンを口に突っ込まれた!
「あ、美味し、じゃなくてなんで口に!?」
「え、美味しいから」
「隠し味じゃないの!?」
「ううん、食べたかっただけ」
「紛らわしいし迷惑だから! 危ないから! お姉ちゃん邪魔しないでどっか往っててよ」
「しょぼん」
……あ、ちょっとキツく言い過ぎたかな?
「あ……で、でも美味しかったよありがとう」
「でしょう」
即座にドヤ顔。
「くっ、ムカつく……」
我が姉ながら、寝ぼけた時の行動が一々鬱陶しい。
………
そうこうしている内に、カレーができました。
肉じゃがとシチューの処遇については……あとで考えよう。
「……えっと。作ったんだけど」
「さぁ、食べるわよこいし。私のお腹は空いているわ」
「そうだよね。今この場で満腹だから食べないって言ったらさすがの私でもお姉ちゃんのこと二度は殴るよ」
三発目はそっと殴るよ。
「久しぶりね、カレー」
「ん……あぁ、そういえば、あんまり作らなかったね」
「うふふ、いただきます」
「いただきます」
とりあえず、眠そうなお姉ちゃんにさっさと食べさせてさっさと寝かせることにする。
「お姉ちゃん、美味しい?」
「……zzzzzz」
「せめて食べきってから寝て!?」
「はっ……えぇ、美味しいわよ、隠し味の林檎が良い味出してる」
「入れてない!」
美味しかったけど入れてない! あれ残りは全部お姉ちゃん食べちゃったじゃない! おかわりまでしてたじゃない!
……まぁ、でも、隠し味入れても、あんまり味変わったかどうかって判らないよね。食べ比べてみたら、案外違うものなのかな。
あれ。お姉ちゃん、隠し味に何入れたんだろう。
「ねぇ、お姉ちゃん」
「ハッピーバレンタイン」
「バレンタインデーはまだ先だけど、お姉ちゃんカレーに何入れたの?」
「チョコレート」
言われて、手を叩く。
そうか、あの多いブロック、チョコレートが含まれてたんだ。
「……あぁ、なるほど」
「お姉ちゃんからの本命チョコですよ」
なにが本命チョコ……あ、あぁ!? まさかそれで、その為にカレー!? いや、そんなわけはないとおも、っていうか調理したの私だし!
……あわわ。なんか、照れてきた。気付かないなんて、あぁ、なにちょっと嬉しくなってるんだろう、こんないい加減な半寝の姉に……
なんか頭がほわほわしてきて混乱してきたので、照れ隠しになんか言おう。
「え、えっと……お返しはホワイトシチューでいい? ……なんて」
「良しとします」
……いいんだ。
そして姉はにこりと笑うと、バタンと倒れて眠りに就きました。
ホントに毎度……傍迷惑なお姉ちゃんだよ。
倒れたお姉ちゃんを自室へ運ばなければならいので、お燐を呼びつける。すると二秒もせずに駆け込んできたので、猫車にお姉ちゃんを乗せる。その姉の寝顔は、とても満足そうでした。
……起きたら覚えてないんだろうけどね。
はぁ……まったく。
……カレー、美味しかったなぁ。えへへ。
「というわけで、カレーを作ります」
「なんで!?」
うちのお姉ちゃんがまたわけの判らないことを言い出しました。
間違いない……これは、寝ぼけてる!
「寝て。速やかに」
「材料はこちらに用意致しました」
「手際が良い!?」
既に揃っている具材。ニンジン、ジャガイモ、タマネギ、豚肉。基本的な素材。
……本気かぁ。
「さぁ、こいし、一緒に作るのよ」
「教えてお姉ちゃん。なんでカレー?」
「今日が二月だからよ」
「幅広いし意味判らないし……」
二月にカレー食べる習慣なんてあったかなぁ……
というか、二月っていったら、あれだよね、チョコとか、豆とか、恵方巻きとか!
あ。私、恵方巻き食べてみたい。食べたことない。
「ねぇお姉ちゃん」
「え? ビーフカレーの方が良かった?」
「そうじゃなくて!」
というか主にカレー全般却下したい気分でもあります。
「私、恵方巻き食べたい!」
「食べたじゃない」
「え?」
……食べた?
……食べてないよ?
……無意識っちゃいましたか? 私?
「え、いつ?」
「2月4日のお夕飯に」
えっと、献立なんだっけ!
「え、4日……何食べたっけ?」
「カツ丼だったでしょ」
「巻いてすらいないんですけど!?」
カツ丼が恵方巻きって云ってるの!?
お姉ちゃんの想定する恵方巻きって何!?
あれ!? 恵方巻きって太巻きのことだよね!?
……ちょっと自信なくなってきたけど、酔っ払ってるお姉ちゃんより私の記憶の方が正しいと信じることにする。
「それに添えてあったでしょ」
添え……恵方巻きを?
「……そういえば、カッパ巻きが、何故かあったような」
「それよ」
「それなの!?」
験担ぎの具材ゼロだよ! 栄養もないよ! 恵方も向いてもいないよ!
そういえばなんでカッパ巻きなんだろうって思った憶えがある。あれそういう意味だったのか。
「第一、この辺り地場が歪んでるから恵方判らないし」
「え?」
そうなの?
「はい、方位磁石」
なんで持ってるの?
えっと、どれどれ。
キュィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン
「うわ、高速回転してる!」
「地場が歪んでるから」
「そういう問題これ!?」
指突っ込んだら切断されそうな怖さがあった。
その恐ろしい大回転を見ていると、お姉ちゃんはそれをポケットにしまってしまった。
なんで持ち歩いてるんだろう。
「というわけで、カレーです」
「え、あぁ。え?」
あれ? なにが、どういうわけで?
「はい、こいしもエプロン」
「あ、あれ、私も?」
「もちろん」
「えぇ……」
料理は嫌いじゃないけど……もの凄く腑に落ちない。
「カレーなら私が作るから、寝てて良いよ?」
「こいしに任せたら、無意識に別の物になっちゃうかもしれないでしょ」
「し、しつれ……ぐっ、強く否定できないのが悔しい……」
眠そうに頭を揺らしている姉は、ドヤァと笑っていた。
「それじゃあ、まず、ニンジン切って」
「はいはい」
仕方ないので、寝ぼけたお姉ちゃんに従うことにする。
「あとジャガイモ切って」
「はぁい」
「タマネギ切って」
「はい」
「肉も切って」
「はい」
「三萬切って」
「はいは……はい?」
サンマン? どの具?
「あぁ……そこで南を切ってリーチ」
「……お姉ちゃん?」
リーチ?
「え、ロン? えぇ、そんな待ちなんて……」
「お姉ちゃん!? なんの話してるの!?」
これは明らかに麻雀だ!
しかし何故!?
「はっ……あぁ、ご飯代を賭けた麻雀で負けて餓える夢を見ていたわ」
「どうして!?」
絶対そんな場面、今までの人生で対面していないハズなのに!
「夢で良かったわ……それじゃあ牛乳温めて」
「なんでそんな夢見てるの……はいはい」
お鍋で牛乳コトコト。ホットミルクって美味しいよね。
「そこにコンソメを入れて」
「はぁい」
あぁ、良い匂い。
「じゃあそろそろ具を入れて」
「はい」
コトコト
「じゃあそこに、バターと小麦粉を入れて」
「……あれ。変わった手順だね」
コトコト煮込む。美味しそうになるまでゆっくり煮込む。
「そして最後に塩こしょうで味を調えたら」
「これホワイトシチューだよね!?」
完成して気付くのもどうかと思うけどなんかもう何もかも違うよこれ!
「……あ、カレーじゃない」
わざとじゃないんだ!?
「まぁ、これをご飯に掛けてシチューライスにしなよ。私はパンで食べるけど」
お姉ちゃんやお燐はそういう食べ方するけど、私はパン派だなぁ。
お空は肉だけ食べる悪い子。でも、これ豚肉だけど、お燐が食べるの鶏肉なんだよね。なんであの子、鳥肉や鶏卵が好きなんだろう。
「じゃあもう一回材料を切ろう」
「え!?」
なんで!? 一品既にこさえたよ!?
「カレーが食べたいの。山の神社の巫女も云ってたわ」
「あぁ、早苗が?」
お姉ちゃんは重々しくこくりと頷いた。
「おせちも良いけどカレーもね、って」
「今二月だよ!?」
おせちが全く関係ない。
「兎に角カレーが食べたいの。食べたいの。食べるの」
口調は全く変化していないし表情も眠そうなままだけど、手を振って駄々をこねる。
「うわ、ワガママ!」
しかしこうなると説得は難しいので、やむなくカレー作成開始。
……シチューは冷凍かな。
「えっと、それじゃあ」
「お姉ちゃんは黙ってて!」
「えー」
またお姉ちゃんがごちゃごちゃ言うと間違えそうだから。
「じゃあ、隠し味の醤油ここに置いておくわね」
「あぁ、うん。ありがとう」
隠し味に醤油かぁ。聞いたことあるけど使うの初めてだなぁ。どんな味になるんだろう。
「えっと、よし」
気合いを入れて野菜を切る。
肉も切る。
「よし、鍋に牛乳を入れた過ちの地点まで来た! まずはタマネギとかを炒めよう」
鍋に油をしいて、ジャッジャッ
「あぁ、良い匂い。砂糖とお酒をちょっと入れて」
ジャッジャッ
「そうそう、醤油も加えて、っと」
ジャッジャッ
「ねぇ、こいし」
「なに?」
「何作ってるの?」
「え、何って、肉じゃ……」
………
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……どうしてこうなった……
「だから、やっぱり、私が見張ってないと駄目ねぇ」
「その結果はホワイトシチューだけどね!?」
「こいしでも頑張ればカレー作れるわよ」
「うわぁん、なんか私が駄目な子みたいに!?」
泣ける……寝ぼけ姉が鬱陶しい。
「じゃあ、カレー作るわよ」
「まだやるの……次はハヤシライスとかってやめてよ」
「大丈夫、あれは材料違うから」
「それは良かった」
「間違えるとしたら、ポトフね」
「やめてよホントに無意識に間違えそうだから!」
というか、何故取り返しが付かない場所まで来てから指摘をするのか。駄目な姉だ!
「えっと、というか、ルー何処」
「はい、これら」
「ありが」
どっちゃりと手に乗せられた。
「……多くない?」
「隠し味込み」
「う……コンソメとかそういうやつ?」
「細工はなんとか、あとは結果をなんとやら」
「胡乱げすぎるよ!」
まぁいいや……一斉投下。
「林檎のすり下ろしもあるよ。美味しいよ」
「ありが、ごぶっ!?」
スプーンを口に突っ込まれた!
「あ、美味し、じゃなくてなんで口に!?」
「え、美味しいから」
「隠し味じゃないの!?」
「ううん、食べたかっただけ」
「紛らわしいし迷惑だから! 危ないから! お姉ちゃん邪魔しないでどっか往っててよ」
「しょぼん」
……あ、ちょっとキツく言い過ぎたかな?
「あ……で、でも美味しかったよありがとう」
「でしょう」
即座にドヤ顔。
「くっ、ムカつく……」
我が姉ながら、寝ぼけた時の行動が一々鬱陶しい。
………
そうこうしている内に、カレーができました。
肉じゃがとシチューの処遇については……あとで考えよう。
「……えっと。作ったんだけど」
「さぁ、食べるわよこいし。私のお腹は空いているわ」
「そうだよね。今この場で満腹だから食べないって言ったらさすがの私でもお姉ちゃんのこと二度は殴るよ」
三発目はそっと殴るよ。
「久しぶりね、カレー」
「ん……あぁ、そういえば、あんまり作らなかったね」
「うふふ、いただきます」
「いただきます」
とりあえず、眠そうなお姉ちゃんにさっさと食べさせてさっさと寝かせることにする。
「お姉ちゃん、美味しい?」
「……zzzzzz」
「せめて食べきってから寝て!?」
「はっ……えぇ、美味しいわよ、隠し味の林檎が良い味出してる」
「入れてない!」
美味しかったけど入れてない! あれ残りは全部お姉ちゃん食べちゃったじゃない! おかわりまでしてたじゃない!
……まぁ、でも、隠し味入れても、あんまり味変わったかどうかって判らないよね。食べ比べてみたら、案外違うものなのかな。
あれ。お姉ちゃん、隠し味に何入れたんだろう。
「ねぇ、お姉ちゃん」
「ハッピーバレンタイン」
「バレンタインデーはまだ先だけど、お姉ちゃんカレーに何入れたの?」
「チョコレート」
言われて、手を叩く。
そうか、あの多いブロック、チョコレートが含まれてたんだ。
「……あぁ、なるほど」
「お姉ちゃんからの本命チョコですよ」
なにが本命チョコ……あ、あぁ!? まさかそれで、その為にカレー!? いや、そんなわけはないとおも、っていうか調理したの私だし!
……あわわ。なんか、照れてきた。気付かないなんて、あぁ、なにちょっと嬉しくなってるんだろう、こんないい加減な半寝の姉に……
なんか頭がほわほわしてきて混乱してきたので、照れ隠しになんか言おう。
「え、えっと……お返しはホワイトシチューでいい? ……なんて」
「良しとします」
……いいんだ。
そして姉はにこりと笑うと、バタンと倒れて眠りに就きました。
ホントに毎度……傍迷惑なお姉ちゃんだよ。
倒れたお姉ちゃんを自室へ運ばなければならいので、お燐を呼びつける。すると二秒もせずに駆け込んできたので、猫車にお姉ちゃんを乗せる。その姉の寝顔は、とても満足そうでした。
……起きたら覚えてないんだろうけどね。
はぁ……まったく。
……カレー、美味しかったなぁ。えへへ。
三萬切ってのくだりにはひとり、爆笑。
南切りリーチで振り込むとは、染めの多い場だったに違いない。
カレーだけに好い味が出ていると思います。
相変わらず自由でウザいさとり様に振り回されてツッコんで怒って照れるこいしちゃんかわいい
自分も二人のカレー食べたいです
こいしちゃんツッコミ頑張れ超頑張れ。
結局どんな味になったのかとても気になる…