冬の朝は寒い。
冷たい空気は眠気を覚ますにはもってこいで、そういう意味ではとても朝の気分がいいのだけれど、
なにしろ寒いから布団から出たくない。
布団からはみ出ないように小さく伸びをして、寝相を整えて。
もうしばらくはこの楽園を味わうべく、私はまどろみに意識を投じた。
「――?……――?」
冬の朝は静かなのもまたいい。
空気が澄んでるから静かだってのは理屈が全く通ってないけれど、それでもなんだか静かで澄んでて気分がいい。
冬の朝の良さを知らない人はちょっと損をしていると思う。
おすすめは日が昇る直前だ。
「――!……………――!」
ううう、動きたくないんだけれど一日何もしないのも人としてどうなんだろう。
そんなことを考えつつも、だんだん暖まってきた布団の魔力にもうあらがえる気がしない。
「うにゅぅ……」
頭もちょうどいい具合に蕩けてきて、一度は覚めた眼もまた眠くなってきた。
「まりさー?…あっ!まだ寝てる!ちょっと!魔理沙!起きなさい!」
…んぅ?ありす?
「ありす?じゃないわよぼやっとした声出してもー!」
ものすごく乱暴に体を揺さぶられて起こされた。私が何をしたってんだ。
私は寝起きが悪いんだぞ。知ってるだろアリス。
「昼まで寝たぼけておいてまだそんなことを言うかアンタは…」
は?昼?
「昼よ。昼の2時よ。1時にアンタのとこ行くって言ってたわよね?私。」
わお。
「わおじゃないこの馬鹿魔理沙ッ!」
痛った!!
◆ ◆ ◆
おはよう、アリス。
「おはようじゃないわよ本当に……こんな時間まで寝こけてるなんて信じられない…」
別に昼まで寝てるとか普通じゃんかさあ。
こんな気持ちのいい朝に気持ちよく寝ない方がおかしいってもんだ。
「寒い中待たされた私の身にもなりなさいよ!!」
わかった、わかった。悪かったって。
「全く……」
あきれた顔をしながらアリスはキッチンの方へ向かって行った。
朝ごはんでも作ってくれるのだろうか。この時間だと昼ごはんか。
しばらくすると、焼けた卵のいい匂いとともにアリスが戻ってきた。
目玉焼きとベーコン。私は取り置きのパンを取り出して、さらに並べた。
いただきます
「召し上がれ?」
アリスの作るごはんは美味しい。
私も料理は作らないこともないけど、得意ではないし、面倒だからほとんどやらない。
準備も片づけも面倒くさくて、毎日作っているアリスは本当に偉いよなと感心してしまう。
私なんて、大鍋にキノコのスープをなみなみ作って3日くらいはそれで済ましたりしてるのに。
「魔理沙、あのね。」
何だ?
「あなたが料理しないのは前からだから別にいいけど、ケミカルな実験器具を台所にそのまま放置しておくのはさすがにやめてちょうだい?」
ああ、そういえばそんなのもあったな。
すっかり忘れてた。
「本当に……どうせまた洗濯も掃除もサボってるんでしょ?」
どうせまた、ってなんだよ。
たまにはしてるんだぞ。私だって。
「たまに、じゃ意味ないでしょ。見渡した限り全然やってるように見えないわよ?
………いつからやってないの。」
…………先週から。
「ほら言わんこっちゃない。洗濯は?」
…………それも先週からやってない。
「汚いわよほんとに!どうせその服も3日くらい着たまんまなんでしょう?!」
それは大丈夫だ。3日来た服は上から下までさっき着替えてきた。
「そういうこっちゃないのよバカ魔理沙!」
痛った!なんで殴るんだよちょっと!
◆ ◆ ◆
…………なあ
「何?」
お前、私を犬かなんかだと思ってないか?
「犬同然の生活じゃない、こんなの。」
酷い言いようだな。
だけどさ、なんでお風呂まで入れさせられなきゃいけないんだ?
「アンタが不潔だからに決まってるじゃない。」
そういう問題じゃない。
数日家からも出ず風呂にも入ってない私が不潔なのは事実だからしょうがないとしても、
問題はどうして脱がされたり風呂に入れられたり、挙句の果てに体を洗うところまでアリスにされなきゃいけないんだ。子供扱いにも程があるぞ。
「こうでもしないとちゃんとしないじゃない。はあ…………素材は十二分にいいのに、勿体ない。」
素材ってなんだよ?!私をどういう目で見てるんだよちょっと!
見るとアリスはなんだか危ない目をして私の腕やお腹やなんかをべたべた触りまくっている。
やめろ、あんまり触るな、おい。お肉がついてて恥ずかしいんだぞその辺。
「お肉……お肉……本当に無駄なお肉よね。こことか。」
掴むなよっ!おい!
完全にアリスのされるがままになっていて恥ずかしいのもそうだけれど、
アリスの手はすごくすべすべで、なんというか、普通に触られただけでくすぐったいのだ。
ましてや、そんな手で体中触られた時なんて。まさに今だけれど。
くすぐったいっ やめろっ
「じっとしてなさいっ!」
◆ ◆ ◆
「……ほら。終わったわよ。」
そういって私の髪の手入れを終えたアリスが満足そうに鏡を渡してきた。
毎度思うけれど、鏡に映ってるの誰だろうこのひと。
私はもっとこう、ぼさぼさでもさもさで、いろいろどうしようもない女のはずなんだけれど。
鏡に映ってる女の子は、アリスが来たときにしか見たことない。本当に誰だろうこのひと。
「現実逃避しないの。いつも言ってるじゃない。アンタが本気を出せばこんなもんなんだから。もっとちゃんとしなさいよ。」
えぇ、嫌だ。めんどくさい。
「めんどくさいじゃないわよ。いつ見てもぼさぼさのもさもさのぐうたらじゃないアンタ。そのうち悪い意味で人間じゃなくなるわよ?」
大丈夫だって。流石に外に出るときとか人に会うときはちゃんとしてるぜ?
「私に会うときは?」
アリスは、……そのぅ…………あれだよ!
そっちが勝手に家に入ってくるからだろ?!
「関係ないわよもう……!」
うら若き乙女の園に勝手に踏み込むだなんてお前乙女じゃないだろ?
「家にゴミ部屋がある人が乙女と私は思わないけど」
あれはゴミ部屋じゃないよ!キノコ部屋だよ!
「似たようなもんじゃない。気持ちの悪い。」
うぅ……
「リアルにへこまないの。ほら。」
そういって頭を撫でてくれるアリスはなんだかんだで優しい。
こうやって撫でてくれるならこの自分もなんか悪くないのかな。
とか、そんなことを一瞬だけ思ったのは絶対に内緒だ。
「それで、私の午後をまるまる潰してくれた埋め合わせはどうするつもりかしら?」
そ、それは……ええと……
ど、どうすればいいんだ?
「質問で返さないの。そうねぇ……じゃあ今日のお泊りと、今度一緒にお出かけするので許してあげようかしら?」
え
「嫌でも拒否権はないわよ?」
嫌っていうか、アリスとお出かけすると絶対ふりふりの服を着せられるというか
あれ恥ずかしいっていうか
「ダメ。どれでもいいけどちゃんとあのかわいいの着ていくのよ?」
いやだぁぁぁ
アレは本当に恥ずかしいから勘弁してほし「ダメ」
はい……
嬉々として晩御飯を作りにかかっているアリスを尻目に、
私はため息をつきながら自分の部屋に戻ってクローゼットを開けた。
いつものよそいきの服を入れている隣を開けると、
おおよそ似つかわしくない、白かったり淡いピンクだったりふりふりだったりふわふわする服がたくさん入れられている。
アリスとお出かけするたびに着せられて増やされていて、そろそろ隣のクローゼットまで浸食しそうな勢いだ。
こんなの私が着ても絶対可愛くないと思うんだけどなぁ。アリスこそこれ着てほしいんだけれどなぁ。
そうだ。明日アリスもこれを着てもらえばいいや。
あいついつも似たような服しか着てないからな。私だけじゃなくてあいつもこのふりふりの可愛い服を着ればいいんだ。それで赤面して「外に出られない…///」とかなればいいんだ。ふへへ。
よし見てろよ。いつでも私がやられっぱなしだと思えば大間違いだからな。あのお節介娘め。
私はにやにやしながらアリスの許へかけていった。
冷たい空気は眠気を覚ますにはもってこいで、そういう意味ではとても朝の気分がいいのだけれど、
なにしろ寒いから布団から出たくない。
布団からはみ出ないように小さく伸びをして、寝相を整えて。
もうしばらくはこの楽園を味わうべく、私はまどろみに意識を投じた。
「――?……――?」
冬の朝は静かなのもまたいい。
空気が澄んでるから静かだってのは理屈が全く通ってないけれど、それでもなんだか静かで澄んでて気分がいい。
冬の朝の良さを知らない人はちょっと損をしていると思う。
おすすめは日が昇る直前だ。
「――!……………――!」
ううう、動きたくないんだけれど一日何もしないのも人としてどうなんだろう。
そんなことを考えつつも、だんだん暖まってきた布団の魔力にもうあらがえる気がしない。
「うにゅぅ……」
頭もちょうどいい具合に蕩けてきて、一度は覚めた眼もまた眠くなってきた。
「まりさー?…あっ!まだ寝てる!ちょっと!魔理沙!起きなさい!」
…んぅ?ありす?
「ありす?じゃないわよぼやっとした声出してもー!」
ものすごく乱暴に体を揺さぶられて起こされた。私が何をしたってんだ。
私は寝起きが悪いんだぞ。知ってるだろアリス。
「昼まで寝たぼけておいてまだそんなことを言うかアンタは…」
は?昼?
「昼よ。昼の2時よ。1時にアンタのとこ行くって言ってたわよね?私。」
わお。
「わおじゃないこの馬鹿魔理沙ッ!」
痛った!!
◆ ◆ ◆
おはよう、アリス。
「おはようじゃないわよ本当に……こんな時間まで寝こけてるなんて信じられない…」
別に昼まで寝てるとか普通じゃんかさあ。
こんな気持ちのいい朝に気持ちよく寝ない方がおかしいってもんだ。
「寒い中待たされた私の身にもなりなさいよ!!」
わかった、わかった。悪かったって。
「全く……」
あきれた顔をしながらアリスはキッチンの方へ向かって行った。
朝ごはんでも作ってくれるのだろうか。この時間だと昼ごはんか。
しばらくすると、焼けた卵のいい匂いとともにアリスが戻ってきた。
目玉焼きとベーコン。私は取り置きのパンを取り出して、さらに並べた。
いただきます
「召し上がれ?」
アリスの作るごはんは美味しい。
私も料理は作らないこともないけど、得意ではないし、面倒だからほとんどやらない。
準備も片づけも面倒くさくて、毎日作っているアリスは本当に偉いよなと感心してしまう。
私なんて、大鍋にキノコのスープをなみなみ作って3日くらいはそれで済ましたりしてるのに。
「魔理沙、あのね。」
何だ?
「あなたが料理しないのは前からだから別にいいけど、ケミカルな実験器具を台所にそのまま放置しておくのはさすがにやめてちょうだい?」
ああ、そういえばそんなのもあったな。
すっかり忘れてた。
「本当に……どうせまた洗濯も掃除もサボってるんでしょ?」
どうせまた、ってなんだよ。
たまにはしてるんだぞ。私だって。
「たまに、じゃ意味ないでしょ。見渡した限り全然やってるように見えないわよ?
………いつからやってないの。」
…………先週から。
「ほら言わんこっちゃない。洗濯は?」
…………それも先週からやってない。
「汚いわよほんとに!どうせその服も3日くらい着たまんまなんでしょう?!」
それは大丈夫だ。3日来た服は上から下までさっき着替えてきた。
「そういうこっちゃないのよバカ魔理沙!」
痛った!なんで殴るんだよちょっと!
◆ ◆ ◆
…………なあ
「何?」
お前、私を犬かなんかだと思ってないか?
「犬同然の生活じゃない、こんなの。」
酷い言いようだな。
だけどさ、なんでお風呂まで入れさせられなきゃいけないんだ?
「アンタが不潔だからに決まってるじゃない。」
そういう問題じゃない。
数日家からも出ず風呂にも入ってない私が不潔なのは事実だからしょうがないとしても、
問題はどうして脱がされたり風呂に入れられたり、挙句の果てに体を洗うところまでアリスにされなきゃいけないんだ。子供扱いにも程があるぞ。
「こうでもしないとちゃんとしないじゃない。はあ…………素材は十二分にいいのに、勿体ない。」
素材ってなんだよ?!私をどういう目で見てるんだよちょっと!
見るとアリスはなんだか危ない目をして私の腕やお腹やなんかをべたべた触りまくっている。
やめろ、あんまり触るな、おい。お肉がついてて恥ずかしいんだぞその辺。
「お肉……お肉……本当に無駄なお肉よね。こことか。」
掴むなよっ!おい!
完全にアリスのされるがままになっていて恥ずかしいのもそうだけれど、
アリスの手はすごくすべすべで、なんというか、普通に触られただけでくすぐったいのだ。
ましてや、そんな手で体中触られた時なんて。まさに今だけれど。
くすぐったいっ やめろっ
「じっとしてなさいっ!」
◆ ◆ ◆
「……ほら。終わったわよ。」
そういって私の髪の手入れを終えたアリスが満足そうに鏡を渡してきた。
毎度思うけれど、鏡に映ってるの誰だろうこのひと。
私はもっとこう、ぼさぼさでもさもさで、いろいろどうしようもない女のはずなんだけれど。
鏡に映ってる女の子は、アリスが来たときにしか見たことない。本当に誰だろうこのひと。
「現実逃避しないの。いつも言ってるじゃない。アンタが本気を出せばこんなもんなんだから。もっとちゃんとしなさいよ。」
えぇ、嫌だ。めんどくさい。
「めんどくさいじゃないわよ。いつ見てもぼさぼさのもさもさのぐうたらじゃないアンタ。そのうち悪い意味で人間じゃなくなるわよ?」
大丈夫だって。流石に外に出るときとか人に会うときはちゃんとしてるぜ?
「私に会うときは?」
アリスは、……そのぅ…………あれだよ!
そっちが勝手に家に入ってくるからだろ?!
「関係ないわよもう……!」
うら若き乙女の園に勝手に踏み込むだなんてお前乙女じゃないだろ?
「家にゴミ部屋がある人が乙女と私は思わないけど」
あれはゴミ部屋じゃないよ!キノコ部屋だよ!
「似たようなもんじゃない。気持ちの悪い。」
うぅ……
「リアルにへこまないの。ほら。」
そういって頭を撫でてくれるアリスはなんだかんだで優しい。
こうやって撫でてくれるならこの自分もなんか悪くないのかな。
とか、そんなことを一瞬だけ思ったのは絶対に内緒だ。
「それで、私の午後をまるまる潰してくれた埋め合わせはどうするつもりかしら?」
そ、それは……ええと……
ど、どうすればいいんだ?
「質問で返さないの。そうねぇ……じゃあ今日のお泊りと、今度一緒にお出かけするので許してあげようかしら?」
え
「嫌でも拒否権はないわよ?」
嫌っていうか、アリスとお出かけすると絶対ふりふりの服を着せられるというか
あれ恥ずかしいっていうか
「ダメ。どれでもいいけどちゃんとあのかわいいの着ていくのよ?」
いやだぁぁぁ
アレは本当に恥ずかしいから勘弁してほし「ダメ」
はい……
嬉々として晩御飯を作りにかかっているアリスを尻目に、
私はため息をつきながら自分の部屋に戻ってクローゼットを開けた。
いつものよそいきの服を入れている隣を開けると、
おおよそ似つかわしくない、白かったり淡いピンクだったりふりふりだったりふわふわする服がたくさん入れられている。
アリスとお出かけするたびに着せられて増やされていて、そろそろ隣のクローゼットまで浸食しそうな勢いだ。
こんなの私が着ても絶対可愛くないと思うんだけどなぁ。アリスこそこれ着てほしいんだけれどなぁ。
そうだ。明日アリスもこれを着てもらえばいいや。
あいついつも似たような服しか着てないからな。私だけじゃなくてあいつもこのふりふりの可愛い服を着ればいいんだ。それで赤面して「外に出られない…///」とかなればいいんだ。ふへへ。
よし見てろよ。いつでも私がやられっぱなしだと思えば大間違いだからな。あのお節介娘め。
私はにやにやしながらアリスの許へかけていった。
でも魔理沙は和食派でパンは…。
料理も寧ろ皆に振る舞ってる描写多いよね。
魔理沙は和食はじゃなかったかな
それは置いといて、何よりも魔理沙が可愛らしくて、よかったです