Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

強い鬼と弱い橋姫

2013/01/14 22:17:34
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「あああああ!」

夢の中。
ふわふわと地に足つかない気分で、私は思いだした。
何時までも現れる兵士の幻。何時までも何時までも沸いてきやがる。
私は何時まで戦えばいい。
腕をもいで、腹を削いで、頭を砕いて殺していく。
それでも幻は消えない。
裏切られた、あの記憶。
多くの同胞が殺された。

◆◆◆

卑怯な卑怯な人間が、体の痺れで動けない同胞の首を切り落としていく。
そして火をつけ、焼かれてしまう。
その火は決して先を照らす灯火にならぬ、その炎は残酷過ぎた。
それでも私は泣きそうになりながら、動かない唇を震わそうともがいていた。
今まで対等に戦って来たじゃないか、理不尽に卑怯な手を使った鬼はちゃんと罪に問うた。だからこの会合に同意したんじゃないか。
平和に生きたい者が集まったんじゃないのか!?

なんでそこまで我らを恨む。
我らも沢山殺されてきたのに。

なんで毒を盛る。
我らはいつも真っ正面から戦ったのに。

ようやく交渉が成立すると…!罪無き子供を守れると思ったのに…!ようやく…ようやく…!

なんで…!


「あああああ゛あ゛!」


幾人かの鬼と四天王共は、まだ動ける。


我らは卑怯を赦さない。

我らは姑息を赦さない。

我らは軟弱を赦さない。

卑怯は恥ずかしいからだ、姑息は浅ましいからだ、軟弱は悲しいからだ。


怯えるか、脅えるか…卑怯で姑息で軟弱な人間め。

狼狽えるなよ、貴様等の毒の所為でしっかり手加減は出来てるんだから。
何が象をも殺すだ、何が外道の鬼か。
私は鬼神、私は怪力乱神だぞ。


さあ正面から砕いてやろう、怯えて跪いてくたばればいい!


ふふふ、ふはは、ひは、ははははは!はーはっはっきひっ!っ…は!ははは!ははは!ははははははははははは!はははは!ははは!!!!ははははははははははは!はははははははははははははは!はははははははははははははは!はははははははははははははは!ははははははははははははは!はははははははははははははは!はははははははははははははは!はははははははははははははは!はははははははははははははは!はははははははははははははは!はははははははははははははは!はははははははははははははは!はははははははははははははは!はははははははははははははは!ははは


ははは


◆◆◆


ここは何処だ。

暴れていた所為か、周囲には何もない。いや、違う…。
私は橋の上にいる、橋の上で寝転がっている、うつ伏せに。
…少し、胸が苦しいな。

体を起こし、あぐらをかいて座る。
そういや四天王にゃ、妙に礼儀作法にうるさい変り種もいたっけ…あぐらじゃ怒られちまう。
しかし周りに仲間も、四天王もいなかった。
…そうだ、私が最後に離脱して…他の連中はちゃんと逃げていた。
それならいいや、仲間が助かったんならそれでいい。

どういう事だ。
どうしてこうなってしまったんだろう…誰も答えてくれはしない。
いや、だけどさっきから橋の向こうを見て頬杖をついてる奴が一人…。

「…なあ、誰だあんた」

声をかけたら、少女は振り向いた。
妖怪のような娘、とても可憐な娘。

まるで私のように、しかし私より繊細そうな黄金の頭髪。
三千世界で一番美しいと言われたら信じてしまいそうな肌。
雰囲気のキツさを描いたような耳。

そして、何処か物憂げな緑の瞳。

私はこの少女を美しいと思った、きっと今まで見てきた全てよりも。
だが、少女が口を開いた瞬間…違和感に気付いた。

「気がついたかしら?」

「本当にびっくりしたのよ!私は水橋、この橋の下に住んでるの!」

「貴女みたいに大きな女の人…鬼は、ちょっと私には運べなくって…」

「あ、ちゃんと血は拭いたのよ?でも不思議ね、返り血ばかりで傷を負っていないなんて貴女すっごく強いのかしら」

「ああ待ってて、今すぐ飲み物を用意して来るか」「嘘だな」

「分かるよ、あんたは嘘吐きさね」

少女の口が止まる。
緑の瞳は獰猛な猛禽のように見開かれていた。

「あんた、本性は違うだろう。嘘を吐いている…胸糞悪い…」

この少女はこんな朗らかではない…こいつの目は、あの人間共ととても似ていた。とても濁った目だ。
ついさっきまで見ていたのと…同じ、同じなんだ。本当にそのまま。卑怯で姑息で軟弱な嘘吐きめ。
嘘を吐いた、私に向かって嘘を。
嘘吐きめ、嘘吐きめ、嘘吐きめ嘘吐きめ嘘吐きめ嘘吐きめ嘘吐きめ嘘吐きめ嘘吐きめうそつきめうそつきめうそつきめうそつきめうそつきめうそつきめうそつきめうそつきめうそつきめうそつきめウソツキハ…!

私は、腕を振り上げ。

「つぶ「…はぁ?」

え。

異様に覚めた目で少女は私を見る。
何故だろう、振り上げた腕を止めてしまう妙な迫力があった。
途端、少女は饒舌はそのまま私に強く本性を見せてきた。

「チッ、珍しくこの私が良心見せてやったと思えばいきなりなによ嘘吐きだぁ!?当たり前でしょこの牛乳鬼女!妬ましいわね!」

「う、うし…?」

「私は橋姫、橋を守り橋と生き橋を渡る者全てを妬み嫉み羨む鬼の遠縁よ!それと!助けてもらったら『ありがとう』でしょ!その傲慢さが妬ましいわ!」
「あ、りがと…」
「よし!」

予想外過ぎる、なんだこの展開は。
ふと気づく。
この橋姫は、私の知っている中で最も異質な性根をしているのかも知れない。
美しく、それでいて恐ろしい。
だから、こうも胸を張っているのだろうか。
力ではかなわない私に対してすら、あまりに堂々と。

「美人で妬ましいわ巨乳で妬ましいわ色白で妬ましいわ美髪で妬ましいわ長身で妬ましいわ…もうどこから妬んでいいか分からないぐらいだけどね…とりあえず、助けてあげたからには責任持つわ、ようこそ河童の住まう川大橋へ…あと、少し言いたい事があるわ」

少女は少し目を瞑り、一気に息を吐き出した。

「強いからって威張んなボケ女、弱いけど必死で生きようとする奴は嘘だろうがなんだろうが使ってるんだ…お前みたいな強いだけの奴には分からないだろうけどね!」

「私は生まれながらの橋姫で、神であった時代も鬼である今も強大ではないけれど…生きるための努力をしているんだ。橋姫として橋を渡る者を守り嫉妬し嫌われていく」

「だけど私の二面性を否定するな、それは私の誇りに対する侮辱だ」

「橋姫である私に対する最大の侮辱だ…覚えとけ」

そうか。
この少女は『覚悟』している、とても強い意志で『覚悟』しているんだ。
結局少女はあの人間共にはまるで似ても似つかない、濁っていたのは私の目の方だった。
嫌われる事も、自分を嫌う者を守る事さえも。
そんな少女が、卑怯で姑息で軟弱な訳がない。
その姿は、凛として涼やかで…とても。

「…可愛い」
「あ゛!?」

…よし、決めた。

「私と結婚してくれ水橋!」
「はあああああ!?」

驚きすぎじゃないか。

「同性に告白されたら普通はビビるわボケ鬼!」
「そうだな、私は今日から色ボケ鬼だ」
「この〇乱!!」
「私は処〇だ!!」
「知るかボケ!」

抱きつこうとする私を必死で避ける水橋、これもまた可愛いなんて反則じゃないか。
真っ赤な顔が非常に素敵。
多分抱きしめたらすごくいい香りがするんだろう、それもいい。
仲間もいない、いつかは探さなきゃならないけど…。
まずは惚れた女をモノにし、全てを捧げよう。

「まずは名前教えとくれ、水橋!」

「パルスィよ!パルスィ、だから追いかけるなぁああ!」

「そうか!よろしくパルシィ!」

「私は勇儀、星熊勇儀だ!!」
「今朝、懐かしい夢を見たよ」
「ふふ、あんたが夢を見るなんてね。蝶にでもなってきたの?」
「いや、まだ私がお前の名前覚えてなかった頃の話さ」
「珍しいわね…そういや初夜に痛い痛いって呻いてたわね」
「私を全力でつねった奴に言われてもな」
「はいはい、朝ご飯冷めちゃうでしょ。さっさと食べなさい」
「はいよ」
ラック
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
珍しいパルシィだな
2.名前が無い程度の能力削除
甘っ最後甘っ
そしてナチュラルに名前間違えてるよ勇儀さん…
いやあ楽しい勇パルありがとうございました!