凍えそうな、とある冬の日。
透き通るような寒さの中で、私は少し思い悩んでいた。
原因も、これが何かも分からない。
だけれども、こう、何かを感じている。
目の前には、タライ、洗濯板、洗いかけの神様の服。
冷たい水に手をつけて、力を込めて服を洗う。
見たところ汚れはないけど、神様たちにはいつもきれいな服を着てほしい。
そう思って、自分から洗っているはずなのに。
何故だか、どうしてか、凄く違和感がある。
――私は何を洗っているのだろうか。
――神様たちはいるのだろうか。
――私とはなんなのだろうか。
外の世界に、神様たちはいた。
外の世界に、神様たちはいなかった。
前者は私の世界。
後者は他の人の世界。
神様が見えるのは私くらいなものだった。
神様なんていない。
神様なんていない。
神様なんていない。
言われ続けたこの言葉。
あの子はおかしい。
あの子はおかしい。
あの子はおかしい。
影で囁かれたこの言葉。
私の耳に、こべりついている。
私はおかしくなんかない。
だって、今ここに神様の服がある。
神様はここにいる。
もし神様がいないなら、私は何を洗っているの?
そこに、神様たちの洋服がある。
私が着たらはち切れそうな小さな服と、私が着たらダボダボになる大きな服。
あそこに、神様たちがいる。
洩矢諏訪子様。八坂神奈子様。お二人の神様が、あちらにおわします。
ここは、幻想の郷。
夢幻の存在がいくらでもいる不思議な世界。
じゃあ、どこに私はいるのだろう。
私は、どこにいたのだろう。
外の世界で、私はいなかったのだろうか。
力が入ってしまったせいか、白い洗剤の泡が一つ飛びあがって、そして割れた。
洗濯し終わったら、今度は干さないといけない。
神様のお洋服を、一着一着竿竹にさす。
私の手からは感覚がほとんどなくなっていて、干すのも一苦労だった。
小さく震えている、赤くなった手のひら。
暫く冷たい水に触れていたからこそ、色が変わる。
これこそ、私が洗濯をした証拠。
私は神様のお洋服を洗濯した。
どこか申し訳なさそうな顔をしながら。
そんなに汚れてないよといいながら。
私たちも手伝うよといいながら。
神様たちは、私に服を渡してくれた。
それが、神様のいる証拠。
神様は、ここにいる。
私は、神様のそばにいる。
神様がいること、それが――私のいる証拠なんだ。
手のひらに息を吹きかけて暖めていると、神様たちがこちらに向かってきた。
――早苗、手は大丈夫か?
――お茶入れてあるよ!
祝の手を心配する神様。
お茶を入れる神様。
神様らしくない行動だけど、神様たちは確かにここにいる。
だって、私がここにいるから。
私がいなかったら、神様たちはそこにいるかな。
きっと、ずっとおわすんだと思う。
ただの風祝一人、いてもいなくても差し支えない。
でも、もしかしたらいないのかもしれない。
他の人の世界に神様たちがいなかったように、私がいない世界には神様たちもいないのかも。
思い上がった風祝の、もしかしたらの馬鹿げたおはなし。
だけど、たしかめる手段がないなら。
そう思ってても、いいよね?
神様がおわす。
だから、私がいる。
私がいる。
だから、神様がおわす。
どっちかが欠けたら、もう片方も消える。
今は、私の独りよがりな思いだけど。
見て、聞いて、話して、触って、一緒にいて。
いつか、名実ともにそんな存在になれればいいな。
凍えたままの手を見ながら、私は小さく笑った。
透き通るような寒さの中で、私は少し思い悩んでいた。
原因も、これが何かも分からない。
だけれども、こう、何かを感じている。
目の前には、タライ、洗濯板、洗いかけの神様の服。
冷たい水に手をつけて、力を込めて服を洗う。
見たところ汚れはないけど、神様たちにはいつもきれいな服を着てほしい。
そう思って、自分から洗っているはずなのに。
何故だか、どうしてか、凄く違和感がある。
――私は何を洗っているのだろうか。
――神様たちはいるのだろうか。
――私とはなんなのだろうか。
外の世界に、神様たちはいた。
外の世界に、神様たちはいなかった。
前者は私の世界。
後者は他の人の世界。
神様が見えるのは私くらいなものだった。
神様なんていない。
神様なんていない。
神様なんていない。
言われ続けたこの言葉。
あの子はおかしい。
あの子はおかしい。
あの子はおかしい。
影で囁かれたこの言葉。
私の耳に、こべりついている。
私はおかしくなんかない。
だって、今ここに神様の服がある。
神様はここにいる。
もし神様がいないなら、私は何を洗っているの?
そこに、神様たちの洋服がある。
私が着たらはち切れそうな小さな服と、私が着たらダボダボになる大きな服。
あそこに、神様たちがいる。
洩矢諏訪子様。八坂神奈子様。お二人の神様が、あちらにおわします。
ここは、幻想の郷。
夢幻の存在がいくらでもいる不思議な世界。
じゃあ、どこに私はいるのだろう。
私は、どこにいたのだろう。
外の世界で、私はいなかったのだろうか。
力が入ってしまったせいか、白い洗剤の泡が一つ飛びあがって、そして割れた。
洗濯し終わったら、今度は干さないといけない。
神様のお洋服を、一着一着竿竹にさす。
私の手からは感覚がほとんどなくなっていて、干すのも一苦労だった。
小さく震えている、赤くなった手のひら。
暫く冷たい水に触れていたからこそ、色が変わる。
これこそ、私が洗濯をした証拠。
私は神様のお洋服を洗濯した。
どこか申し訳なさそうな顔をしながら。
そんなに汚れてないよといいながら。
私たちも手伝うよといいながら。
神様たちは、私に服を渡してくれた。
それが、神様のいる証拠。
神様は、ここにいる。
私は、神様のそばにいる。
神様がいること、それが――私のいる証拠なんだ。
手のひらに息を吹きかけて暖めていると、神様たちがこちらに向かってきた。
――早苗、手は大丈夫か?
――お茶入れてあるよ!
祝の手を心配する神様。
お茶を入れる神様。
神様らしくない行動だけど、神様たちは確かにここにいる。
だって、私がここにいるから。
私がいなかったら、神様たちはそこにいるかな。
きっと、ずっとおわすんだと思う。
ただの風祝一人、いてもいなくても差し支えない。
でも、もしかしたらいないのかもしれない。
他の人の世界に神様たちがいなかったように、私がいない世界には神様たちもいないのかも。
思い上がった風祝の、もしかしたらの馬鹿げたおはなし。
だけど、たしかめる手段がないなら。
そう思ってても、いいよね?
神様がおわす。
だから、私がいる。
私がいる。
だから、神様がおわす。
どっちかが欠けたら、もう片方も消える。
今は、私の独りよがりな思いだけど。
見て、聞いて、話して、触って、一緒にいて。
いつか、名実ともにそんな存在になれればいいな。
凍えたままの手を見ながら、私は小さく笑った。
生きとし生けるもの、外の世界でも中の世界でもこれについて考えることになるんでしょうね。