Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

おだいじに

2012/10/15 18:13:28
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やってしまった。
咳が止まるのを待って体の向きを変え、ぼうっとした頭で自分を責める。
昨日の夜から咳が出始めて、なんとなく体がだるかった。なのにどうしても終わらせたくて実験を続行して、4時間ほど寝て……咳で起きたら、このザマだ。

「ううううぅ」

布団を頭までかぶっても寒気が止まらない。おなかがすいた。誰か、誰か……。
ふと、見慣れた金髪が脳裡に浮かんだ。ここに一番近くて、一番信用できるのはあいつだ。
この間の異変からずっと持っていた人形を掴んで、あの時みたいに魔力を流す。
ベッドの近くに置いていたのは正解だった。


        *


『あー……アリス、起きてるか?』

くぐもった声に起こされた。ソファで寝ていたからか体が痛い。
時刻は午前5時過ぎ。1時間仮眠するつもりが3時間も眠っていたらしい。

『アリス?』

不安げで弱々しい声を訝しみながら、先の異変で使ったきりだった人形を手元に寄せ、魔力を通す。

「何、どうかした?」
『ちょっと来てほしいんだ。食べ物もあると嬉しい』
「底を尽きたの?」
『それもあるんだけど……』

言いにくそうに言葉を切った。2、3度促すと、ようやく観念したように口を開いた。

『風邪ひいたみたいなんだ』


        *


アリスは10分ほどでうちに来た。
リビングの方で物音がしていたが、やがて足音が寝室に向かってきた。

「バカじゃないの?」
「第一声がそれか……」

苦笑いが癇に障ったようで、アリスは不機嫌そうな表情のままベッド脇の椅子に腰掛けた。

「どうせ風邪だってわかってて無理したんでしょ」
「うっ」

棘のある言葉はまったくその通りで耳に痛い。ついでに頭も痛い。
小言が続きそうだと背を向けたら、ぽんと頭に何かが触れた。

「体をこわしちゃ、意味ないでしょうに」

髪を撫でてくれる手は優しい。

「ほんと、バカね」

背にかけられる声も、また。
鼻の奥がつんと痛んで、情けない顔を見られないように布団を引っ張り上げた。

「ご飯できたら起こすから、それまで寝てなさい」
「……ん」

髪を梳く指が心地よくて、目蓋が重くなる。
おやすみを言う前に、すうっと眠りに落ちた。
朝食後。

「帰るのか……?」

縋るような目をして服の裾を引く魔理沙の手にお盆を持っていない方の手を重ね、安心させるように笑いかけた。

「食器を持っていくだけ。まだ帰らないわ」
「そんなの、後でいいから」
「……わかったわ」

病気の時は、一人でいると寂しさがいつにも増してつらい。心細くなるのは身に覚えがある。
再び椅子に腰を落ち着けながら、魔理沙が寝たら泊まる準備をしに戻ることに決めた。



マリアリの日らしいので、風邪っぴき魔理沙となんだかんだで優しいアリス。
病気になると人恋しくなりますよね。

急に寒くなりましたね。
寒がりには堪える時期が近付いてきました。
風邪をひかぬよう、どうぞご自愛ください。

さて、今回はこのへんで。
お楽しみいただけたなら幸いです。
文羽
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
本当に風邪をひいたときの人恋しさは異常。
アリスの優しさが心に染みた。
2.名前が無い程度の能力削除
短いながらに愛が感じられる作品でした。
3.名前が無い程度の能力削除
いいねいいね
完治するまでずっと泊まるといいよ!
4.名前が無い程度の能力削除
好き
5.名前が無い程度の能力削除
暖かかったです。久しぶりのマリアリおいしかったです