誰も一人では生きられない、と、昨日観た劇場版機動戦士ガンダムⅢ ~めぐりあい宇宙~ が教えてくれたように…
式たる私もまた、一人では生きられないのだ。
~ラン・ヤクモ~
いや、よく来てくれたね橙。いきなり呼び出してしまって済まなかった。
ここのところ、めっきり寒くなってきたな。ほら、ココアを淹れたから飲むといい…なに、熱い? ああ、それはすまない。お前は猫だものな。
フ、フーフーしてやろうか。念入りに、ねっとりと。
え? 草加雅人を思い出すからやめてくれって? 誰だいそれは、友達か? 名前から察するに男の子だね?
…ほう、流星塾? 年経た妖怪達が色々と教えてくれる…なるほど、寺子屋のようなものか。妖怪の山にもそういったものがあったとは驚きだよ。
し、しかし橙、言ってくれればその…私が手取り足取り尻尾取り、ねっちりみっちりティーチユーしてやってもいいのだぞ?
なに、相対性理論やフェルマーの定理は進研ゼミでやったから問題無いが、七の段が怪しいって? 7×6=42はどう考えても過大評価?
ふうむ…紫様は「一の段の存在意義が判らない」と仰っていたが、橙にはもっと高次の悩みがあったか…ま、私としては、「しちしちしじゅうく」の言いづらさがちょっと嫌いかな。
え? 紫様かい?
紫様は朝から出かけているんだ。だから橙、お前を呼んだのだよ。一緒に晩御飯を食べようかと思ってね。
無論、別に、決して、絶対に、寂しかったとか、そういう訳じゃあ、ないんだよ。
ほ、ほんとだぞ。
紫様が何処に行ったかって? 確か、映画を観に行くと仰っていたな。
聞くところによれば、何でも、その監督は、元々アニメーター? とかいう仕事をしていたが、連載している漫画を年単位でほっぽりだして、少人数でその作品を作ったとか。ヒロインの声は自分の奥さんだとか。
私は紫様の趣味にはあまり詳しくないので判らないが、「永野仕事しろ」「ゴチメがコケれば永野はFSSを描かざるを得ない」だとか、「ゴチメも結局プロムナード方式でしょ」だとか、「永野が幻想入りするのとFSSが完結するの、どっちが先かしら」「永野仕事しろ」などと、この数日うわ言の様に言っていたからな…
それで、同好の士…ピーマンみたいな色の巫女や、河童、少し前に復活した仙人とか、そんな面々と一緒に、外の世界へ行ってしまったよ。全く褒められた事ではないが、私が咎められることでもないし…困ったものだよ。
ああでも、お土産を買ってくると仰られていたから、帰ってきたらまた、お前を呼ぶよ。
おかわりはどうだ? ヴァンホーテンのココアは美味いだろう? やっぱりココアと言えばヴァンホーテンだよ。飲んでよし、ケーキに使ってもよし。
え? その話は何か判らないがよくないって? そ、そうだな、私もそんな気がする。
そもそも、ココアは何で出来ているかって?
うーん…何だろう。ココアの木に傷を付け、染み出た樹液を煮詰めて、粉末にしたものじゃないかと私は思っているのだが…ほら橙、あの有名な写真を知っているか?
ん? ぼっさん? 誰だそれは? 流星塾の友達かい? いやそうじゃなくてだね、ポディマハッタヤさんの写真だよ。ええと…あああった、これだ。
私たちが鉛筆で物を書けるのは、ポディマハッタヤさんの御蔭なんだよ。
だからココアも、ポディマハッタヤさんみたいな職人さんが、一本一本丁寧に、ココアの木からココア液を採取しているのかもしれないね。
え? 算数は得意そうだが、国語はどうかって?
ふむ、自慢じゃないが私はね、まだお前くらい小さかった頃…賞を取ったことがあるんだよ。
確か、フランス書院と言ったか? イタリア? ボスニア・ヘルツェゴビナ? まあ忘れたがともかく、そんな名前の出版社が主催していたコンクールがあってだね、それでね。
まあ今だから言ってしまうけど、内容の殆どは紫様が考えたんだよ。私は字が綺麗だからという理由で清書しただけなのだがね、それでも何故か、紫様は私の名前で投稿してくれてね…「エイトクラウド・LAN」というハイカラなペンネームではあったが、あれは嬉しかったなあ。
どんな内容だったかって? ううん…随分昔のことだから、もう失念してしまったが、確か夫に先立たれた女性が、親切な男性に借金を肩代わりしてもらうという、ハートフルなストーリーだったと思うよ。本自体は今も紫様が持っているかもしれないから、今度見せて貰おうかな。
さて橙、夕飯の支度をしようか。何が食べたい? 何でも作ってやるぞ。
最近はリトルグルメとかいうジャンルの料理に凝っていてね、これが紫様にも大変評判がいいんだよ。欠点はやたらチョコを使うことなんだが、まあ紫様が大量に仕入れてきたビックリマンチョコがあるから問題無いな。
なに、猫にチョコを与えてはいけない? 何だって、それは本当かい!? え、じゃあ待てよ、ココアもチョコと味が似ているが…まさか…
ふむ、ココアはココアだからいいのか。なるほど…
ええとちょっと待てよ…じゃあリトルグルメはよそう…ふむ、何がいいか…ほら橙、ご覧の通り、レシピはたくさんあるんだ。
美味しんぼ、包丁人味平、ザ・シェフ、極道ステーキ、大使閣下の料理人、鉄鍋のジャン、スーパー食いしん坊、ミスター味っ子、クッキングパパ、孤独のグルメ、喰いしん坊! などなど。
ふむ、全部漫画じゃないかって? まあ、そう言われれば、そうだな。だがこれで結構馬鹿に出来んぞ、ごく普通のレシピとは違って、目からウロコ、なものも多い。
刺身にマヨネーズとかな。春巻に固めたスープとかな。
紫様が最近何を好んで食べているか? ふむ、そうだな…言いたくは無いが、どうやら宅配ピザをもの凄い安値で食べる裏技を見つけたらしくてね…
そのせいか、どうにも、ふくよか…というか…ちょっとシャレにならない感じに丸くなってきているというか…いやまあ、あの方は色々と常識外の方だから、すぐに元に戻るとは思うのだが…
週に3回も配達させるのは、ピザ屋のバイト君にも可哀想なので、どうにかしてやめさせたいところだな。
え? 私も胸が大きい? ば、馬鹿、これは元からだよ! ピザはそんなに食べていないよ!
そもそもごちそうとはだね、やってきたお客の為に、馬を走らせ、食材を集める「馳走」のことを指すんだよ。
私は馬には乗れないが、相手にひっついての回転なら誰にも負けない自信があるし、お前の為に回転しながら食材を集めるなんてことは、朝飯前さ。
お前がそう望むのであれば、ハッタリかまして、無農薬有機栽培の野菜、天然物の魚、東京X、ほんやくこんにゃく、とんがらC、爆発するスイカだろうが何だろうが、揃えてみせるさ。
これまた自慢じゃないが、私が紫様の意向でシェフをしていた頃、フランス政府からレジオンドヌールを贈ろうという打診があったのだがね、すぐに断ったよ。
私の料理の腕は、紫様と…そして橙、お前の為にのみ揮われればよいのだから。
二人の笑顔と、「美味しい」という言葉が、私にとって最高の勲章さ。
ふふ…ちょっと臭かったかな…
さ、橙。何が食べたい?
「ペヤング」
「イヤッホォオオオオオウ!」
式たる私もまた、一人では生きられないのだ。
~ラン・ヤクモ~
いや、よく来てくれたね橙。いきなり呼び出してしまって済まなかった。
ここのところ、めっきり寒くなってきたな。ほら、ココアを淹れたから飲むといい…なに、熱い? ああ、それはすまない。お前は猫だものな。
フ、フーフーしてやろうか。念入りに、ねっとりと。
え? 草加雅人を思い出すからやめてくれって? 誰だいそれは、友達か? 名前から察するに男の子だね?
…ほう、流星塾? 年経た妖怪達が色々と教えてくれる…なるほど、寺子屋のようなものか。妖怪の山にもそういったものがあったとは驚きだよ。
し、しかし橙、言ってくれればその…私が手取り足取り尻尾取り、ねっちりみっちりティーチユーしてやってもいいのだぞ?
なに、相対性理論やフェルマーの定理は進研ゼミでやったから問題無いが、七の段が怪しいって? 7×6=42はどう考えても過大評価?
ふうむ…紫様は「一の段の存在意義が判らない」と仰っていたが、橙にはもっと高次の悩みがあったか…ま、私としては、「しちしちしじゅうく」の言いづらさがちょっと嫌いかな。
え? 紫様かい?
紫様は朝から出かけているんだ。だから橙、お前を呼んだのだよ。一緒に晩御飯を食べようかと思ってね。
無論、別に、決して、絶対に、寂しかったとか、そういう訳じゃあ、ないんだよ。
ほ、ほんとだぞ。
紫様が何処に行ったかって? 確か、映画を観に行くと仰っていたな。
聞くところによれば、何でも、その監督は、元々アニメーター? とかいう仕事をしていたが、連載している漫画を年単位でほっぽりだして、少人数でその作品を作ったとか。ヒロインの声は自分の奥さんだとか。
私は紫様の趣味にはあまり詳しくないので判らないが、「永野仕事しろ」「ゴチメがコケれば永野はFSSを描かざるを得ない」だとか、「ゴチメも結局プロムナード方式でしょ」だとか、「永野が幻想入りするのとFSSが完結するの、どっちが先かしら」「永野仕事しろ」などと、この数日うわ言の様に言っていたからな…
それで、同好の士…ピーマンみたいな色の巫女や、河童、少し前に復活した仙人とか、そんな面々と一緒に、外の世界へ行ってしまったよ。全く褒められた事ではないが、私が咎められることでもないし…困ったものだよ。
ああでも、お土産を買ってくると仰られていたから、帰ってきたらまた、お前を呼ぶよ。
おかわりはどうだ? ヴァンホーテンのココアは美味いだろう? やっぱりココアと言えばヴァンホーテンだよ。飲んでよし、ケーキに使ってもよし。
え? その話は何か判らないがよくないって? そ、そうだな、私もそんな気がする。
そもそも、ココアは何で出来ているかって?
うーん…何だろう。ココアの木に傷を付け、染み出た樹液を煮詰めて、粉末にしたものじゃないかと私は思っているのだが…ほら橙、あの有名な写真を知っているか?
ん? ぼっさん? 誰だそれは? 流星塾の友達かい? いやそうじゃなくてだね、ポディマハッタヤさんの写真だよ。ええと…あああった、これだ。
私たちが鉛筆で物を書けるのは、ポディマハッタヤさんの御蔭なんだよ。
だからココアも、ポディマハッタヤさんみたいな職人さんが、一本一本丁寧に、ココアの木からココア液を採取しているのかもしれないね。
え? 算数は得意そうだが、国語はどうかって?
ふむ、自慢じゃないが私はね、まだお前くらい小さかった頃…賞を取ったことがあるんだよ。
確か、フランス書院と言ったか? イタリア? ボスニア・ヘルツェゴビナ? まあ忘れたがともかく、そんな名前の出版社が主催していたコンクールがあってだね、それでね。
まあ今だから言ってしまうけど、内容の殆どは紫様が考えたんだよ。私は字が綺麗だからという理由で清書しただけなのだがね、それでも何故か、紫様は私の名前で投稿してくれてね…「エイトクラウド・LAN」というハイカラなペンネームではあったが、あれは嬉しかったなあ。
どんな内容だったかって? ううん…随分昔のことだから、もう失念してしまったが、確か夫に先立たれた女性が、親切な男性に借金を肩代わりしてもらうという、ハートフルなストーリーだったと思うよ。本自体は今も紫様が持っているかもしれないから、今度見せて貰おうかな。
さて橙、夕飯の支度をしようか。何が食べたい? 何でも作ってやるぞ。
最近はリトルグルメとかいうジャンルの料理に凝っていてね、これが紫様にも大変評判がいいんだよ。欠点はやたらチョコを使うことなんだが、まあ紫様が大量に仕入れてきたビックリマンチョコがあるから問題無いな。
なに、猫にチョコを与えてはいけない? 何だって、それは本当かい!? え、じゃあ待てよ、ココアもチョコと味が似ているが…まさか…
ふむ、ココアはココアだからいいのか。なるほど…
ええとちょっと待てよ…じゃあリトルグルメはよそう…ふむ、何がいいか…ほら橙、ご覧の通り、レシピはたくさんあるんだ。
美味しんぼ、包丁人味平、ザ・シェフ、極道ステーキ、大使閣下の料理人、鉄鍋のジャン、スーパー食いしん坊、ミスター味っ子、クッキングパパ、孤独のグルメ、喰いしん坊! などなど。
ふむ、全部漫画じゃないかって? まあ、そう言われれば、そうだな。だがこれで結構馬鹿に出来んぞ、ごく普通のレシピとは違って、目からウロコ、なものも多い。
刺身にマヨネーズとかな。春巻に固めたスープとかな。
紫様が最近何を好んで食べているか? ふむ、そうだな…言いたくは無いが、どうやら宅配ピザをもの凄い安値で食べる裏技を見つけたらしくてね…
そのせいか、どうにも、ふくよか…というか…ちょっとシャレにならない感じに丸くなってきているというか…いやまあ、あの方は色々と常識外の方だから、すぐに元に戻るとは思うのだが…
週に3回も配達させるのは、ピザ屋のバイト君にも可哀想なので、どうにかしてやめさせたいところだな。
え? 私も胸が大きい? ば、馬鹿、これは元からだよ! ピザはそんなに食べていないよ!
そもそもごちそうとはだね、やってきたお客の為に、馬を走らせ、食材を集める「馳走」のことを指すんだよ。
私は馬には乗れないが、相手にひっついての回転なら誰にも負けない自信があるし、お前の為に回転しながら食材を集めるなんてことは、朝飯前さ。
お前がそう望むのであれば、ハッタリかまして、無農薬有機栽培の野菜、天然物の魚、東京X、ほんやくこんにゃく、とんがらC、爆発するスイカだろうが何だろうが、揃えてみせるさ。
これまた自慢じゃないが、私が紫様の意向でシェフをしていた頃、フランス政府からレジオンドヌールを贈ろうという打診があったのだがね、すぐに断ったよ。
私の料理の腕は、紫様と…そして橙、お前の為にのみ揮われればよいのだから。
二人の笑顔と、「美味しい」という言葉が、私にとって最高の勲章さ。
ふふ…ちょっと臭かったかな…
さ、橙。何が食べたい?
「ペヤング」
「イヤッホォオオオオオウ!」
山も意味もないけど貴方らしい作品だから別にいいか…
あとナイスガッツさんの作品割と好きだからマジレスするんだけど、パロネタ満載なのはいいとしてもそろそろやり方変えるなりグレートアップするなりしないと読む人減ってく一方。
パロネタはシチューに入れる塩みたいなもんで、少し入れれば美味くなるけど、じゃあ入れれば入れるほど美味くなるのかっていうとそうじゃない。仕込むネタが多ければ単純に面白さも増すのかって話。それどころか分からないカバーネタが広いと、読む人も分からないネタが増えてくる。分からないっていうのは単純にそれで済むものでなく、むしろ不快にすら感じる場合もある。分かるネタで得た面白さもそこで失われることになる。
でも、結局趣味の問題だし、好きなように書きたいに決まってるし。まあ、SS読んでこういう感想を持ったよってことで。
2>>貴重な意見、ありがとうございます。もうちょっとこう…どうにかしたいとは常々思っているんですけども…何もかもが他人より足りない自分にとって、それは結構ハードなクエスチョンという有様。
とはいえやらん訳にもいかないので、血ぃ吐きながらも試行錯誤してみます。ありがとうございました。
自分は幅広いネタを盛り込む作風は全然アリだと思いますよ?
それを軸にSS一本書き上げるのは、誰でもできる技術ではないですし。