※推敲もせず勢いと休日のテンションだけで進めております。予めご了承下さい。
~あらすじ~
パロディと言う名の他人の褌を借り、安易な路線で話を作ってきた罪を清算するため、今まで登場してきたキャラクター達が集まり、作戦会議を始めた。
のちにヤッテヤルデス会談、略してヤルタ会談と呼ばれることになる、その様子をお伝えしよう。
参加者
ヨシフ・ナズーリン…鼠の妖怪でありながら、その智謀で某国のトップにまでのし上がった女傑。好きなものはチーズ。嫌いなものは馬車(撥ねられたことがある模様)
ウィンストン・チャーチルノ…英国を代表する知識人だったが、自ら結成したコマンド部隊のリーダー、ジョン・メイトリクスに叛旗を翻され、「貴様を殺すのは最後にしてやる」と言われたことにショックを受け、幻想郷に逃げてきた。そこではチルノと名乗り、あえて馬鹿を演じる事でメイトリクスの追跡から逃れている(ここまで全部妄想)
寅丸星…命蓮寺の誇る独立可動式ナマモノ本尊。おっぱいがでかい。何か太くなってきたウエストを誤魔化すため、腹甲のベルトをわざと緩めているがバレバレであり、ルーズベルトさんというあだ名がついた。
洩矢諏訪子…司会。ガノタかつ特撮オタ。
「さてお集まりの皆さん」
「待て。私とご主人はいいが、こいつはいつ出てきた?」
ナズーリンが目の前でムゲンバインを組み立てるチルノを指差し、そう尋ねた。
初投稿から九作目に至るまで、チルノが表立って出てきたことはない。ナズーリンが訝るのも無理のない話と言える。
「『V作戦』で餅をついてたよね?」
「…ああ! あの子が!」
「そういやいたな…でもそれだけだろう。もっといるんじゃないのか、一輪とか」
「あまり星蓮組で固めるのもどうかと思ってさあ…紅魔組は皆、大人気だし、気を利かせて召集したってワケ。ターンXだよって言ってムゲンバイン渡したら2時間くらい組めないでいるし、ちゃっちゃと進めちゃいましょう」
一心不乱にムゲンバインをいじるチルノを見て、ナズーリンは心底嫌そうな顔をしつつ、肩を竦めてみせた。緊急の話があるということで、このクソ暑い中呼び出された挙句、蛙の与太話に付き合わされるとは思ってもいなかったのだろう。
そんな使い魔をなだめるように、寅丸がとりなす。そして、里の信者から貰った水羊羹を、皆の前に置いた。
「…! なにこれ!」
仄かに漂う甘い香りに、チルノが反応する。そしてその匂いのもとが、目の前にいつの間にか置かれていた、小豆色の菓子であるということがわかると、ムゲンバインを傍らに置いて、水羊羹を凝視する。
「これはですね、水羊羹というお菓子です。英語で言うとウォーターユーキャン」
「ワラユーキャン! うまそう!」
「美味しいですよ、このワラユーキャァンはですね、ヨーカン公爵が羊羹を…」
「ご主人の菓子知識の大元は一体何処なのか、それが一番気になるんだがな」
「さあ…」
~少女飲食中~
「はー! うまいものだなー!」
「そうでしょうとも…フフフ。さて、洩矢さん? これからどうするのですか?」
「うん。簡単に言うとネタ禁止」
「ネタ…とは」
「面白くしようとして何かこう…どっかで聞いたような語句を使ったりすること。例えば今日は暑いよね? そんな時『暑いぜ暑いぜ暑くて死ぬぜ』とか言っちゃったりすること」
水羊羹の乗っていた皿をまとめ、脇にどけた諏訪子が、立ち上がって説明を始める。
要するに、パロディを使わずして最後まで乗り切れ、ということを言っているのだろう。真っ当な作者なら難なくこなすお題であるが、他力本願が染み付いたどこぞの男には辛い設定である。
「ブラッディウルフはダメか」
「ならず者戦隊どころか全部ダメ。ネタの新旧問わずぜーんぶ」
「簡単ですよ、ずっと黙っていればいいんですから」
「それじゃお話になんないでしょうが! ということで、これを用意しました」
ガチャリ、と音を立て、諏訪子が4つのベルトの様なものを卓の上に置いた。
「…これは…」
「東映から借りてきました。勝手に」
「何これかっこいい!」
「あ、アブトロニクスですか!? 私全然太ってませんよ!?」
「違うっつーの。これはね、ライダーベルト。はい皆さん、着けてつけて。チルノちゃんはオーズドライバー、寅門天チャンはカイザドライバー。黒と金だしね。んで私はディケイドライバー。はい、そしたら説明するからね」
「…待て、何で私だけキックホッパーなんだ」
「いや、何となく…」
「差別だ!」
パチン
「キックホッパーの何が差別だよ…お前に矢車さんの何がわかるってんだよ…」
「あ…いや…うん…すいません」
無言でナズーリンの頬をはたいた諏訪子が、虚ろな目でそう呟く。実際、キックホッパーのデザインは悪くなく、ただ色々とネタが先行している感が大きいのがネックだ。
ナズーリンは腑に落ちない様子で頬をさすっていたが、やがて観念したのか、その細い腰にベルトを巻きつけた。
そうして全員が、ベルト着け終わるのを確認すると、諏訪子は咳払いを一つしてから、説明を始めた。
「これはね、見た目はアレらのベルトだけど、中身は違います。変身機能はおこがましいので当然ついてません…で、肝心の中身はと言いますと…」
「な、何でしょう」
「ネタに反応して、腹パンと同じくらいの衝撃を発生させます」
「…おい」
「はらパンって?」
「な、何でしょうね? 山パンみたいなもの…おっごおゥ!?」
突如として、寅丸の体がくの字に折れ曲がる。
いきなりのダメージに、寅丸は膝をつき、わけがわからぬ、といった表情で、諏訪子を見た。目には涙が浮かび、既に泣きそうだ。
「そうなります。今のは山ナントカに反応したみたいですね」
「山パンはネタ扱いなんでっぐほァ!?」
「幻想郷に存在していないものは、基本ネタとして扱われます。これでもう判ったと思うけれど、要するに真っ当な会話をしていれば、腹パンは喰らわないってこと」
「ふざけるな! どんな罰ゲームだそりゃあ! ああくそ、こんなもん外しておごァ!?」
ベルトに手を掛け、外そうとしたナズーリンが、寅丸と同じように、くの字の姿勢で跳ねた。
それを見て不敵に笑う諏訪子が、腕組みをしつつ口を開く。
「一度着けると8時間経過するか、このカギを使わない限り、外れないよ。無理に外そうとすると最大出力で腹パンだよ。んで、これから、私が雇った刺客たちが、ここにやってくるので、その人らと会話を楽しみつつ、そう…15kbくらいまで過ごします」
ずどん。
「おふ…失敗失敗…公平さを期すため、私のコレにもちゃんと、その機能がついてるからね」
「ぐっ…お前、本当に神か?」
「フフフ…これくらいの荒療治をしないと、効果がないからね…」
「私ら被害者じゃないか! 二次創作とは言え、大勢のファンがいるゲームのキャラに、腹パンを延々とねじ込む話なんてあってたまるか!」
どずん。
「ぐ…お…」
「二次…なんだって? ともかく、運が悪かったってことで…そんじゃま、始まりはじまり」
「…あたい、どうしよう」
「と、とにかく頑張りましょうチルノちゃん!」
刺客その1 オータムシスターズ
「どーも今日は、テッカマンアキシズハです」
「テッカマンアキミノリコです」
「ブレード2の話はやめろ!」
ボスン。
「ぐォふ…やめろ…こればっかりは腹パン食らっても言わせてもらう…テッカマンブレード2なんてなかっ…た…!」
どすん。
…例え腹パンを喰らってでも、言いたいことがあったのだろう。ナズーリンは苦悶しつつ、秋姉妹をにらみ付ける。
実際、テッカマンブレードの感動を一切合財無かったことにする、テッカマンブレード2に関しては、一家言ある者が多く、某草動画で公開が予定されているが、今からどうなるのか、恐ろしくもある。
「じゃ、諏訪子さん、私ら帰りますね」
「お疲れー」
「ぐッ…血を分けた悪魔めらが…」
どごん。
「あがが…しまった…ついサブタイを…」
どすん。
「何故!?」
「サブ何とかはアウトみたい」
「な、ナズーリン! しっかり!」
刺客その2 リグル・ナイトバグ
「あ、えーと…こんにちは」
「…こんにちは」
「こんにちは!」
「こんにち…って、その声、リグル?」
「う、うん」
リグルは蛍の妖怪である。
先ほどの姉妹のように、いきなりネタに走るわけでもないが、その姿は、例のアレであった。
「え、えーと…この格好…重いんですけど…」
「そ、そりゃ、そうでしょうね…高岩さんでもないかぎごはァア!?」
「ねえリグル、そのカッコ、何?」
黒いボディに銀色の装甲、身体の各部を走る赤いライン。特徴的な頭部はまるで、ギリシャ文字の「Φ(ファイ)」のようにも見える。
「な、なんだろ? 判らないけど、諏訪子さんが着ろっていうから」
「うんうん、やっぱ蛍といえばそれだよね」
「あ、ああ…平成ライダーの中でも屈指のぐっはァ!?」
「か、かっこいいですよね…」
腹パンを恐れているとはいえ、口をついて出てしまうものは仕方がない。
そうこうしていると、ファイズと化したリグルのベルトに装着された、携帯電話が鳴り出した。
「あ、電話ですよぐぉフ!」
「で、出たほうがいいんじゃないかな…」
「うん」
リグルはバックルに装着された携帯電話…ファイズフォンを手に取る。しかし幻想郷には本来存在していないアイテムであるため、いまいち使い方が判らないようで、ボタンを押しまくったり、開閉したりと忙しい。
そうこうしている内に、リグルはヤケクソになったのか、腰にマウントされていた、懐中電灯のようなものまで持ち出して、弄り始めた。
「あ…それは…」
「あ、電話切れた…えっと、どうしよう」
「リダイヤルしてうごおっほ!」
「えーとどうやって…」
「えーと…とにかくボタン押して、どうにかするしかないね!」
「う、うん。あ、これ脚に付けられるんですね、かっこいー」
リグルが懐中電灯を右足に装着し、再びファイズフォンを弄ると、ピロリン、という電子音が響き、次いで鈍い、駆動音のようなものが響く。
そしてどこからともなく聞こえてくる、電子音声…
『エクシードチャージ…』
「シャベッタァアアアアアおごぉ!?」
「ま、まずいぞこれは、クリムゾンスマッシュがグハァアアア!?」
「リグルかっこいい! どうなんの!?」
「え、えーと…諏訪子さん、どうすれば?」
「うん、帰っていいよ。敵もいないし」
「あ、はい。お疲れ様でした」
リグルはそう言うと、ゆっくりと立ち上がり、やけにどっしりとした動作で歩いていってしまった。
「…次郎ウォークじゃないか!」
どすん。
刺客その3 物部布都
「本編じゃ絡みはないが、呼ばれて飛び出てオッスオッス。物部布都惨状。主らがいま感じている感情は腹パンのダメージの一種じゃ。増幅する方法は我が知っている。我に任せろ」
「…やめろ。確かに超先生は幻想入りしているかもしれんがおっほォウ!?」
「うむ、適当に話せと言われておるでな…さて、何が良いか…主ら、モーターヘッドの中ではどれが好きじゃ?」
「テロル・ミラージュうごォオ!?」
「テロルとか厨二もいいところじゃぐほァ! 通はA-TOLLコブラとかごへぇ! ヴォルケシェッツェとかはオウ!」
「出た出た、マイナー所挙げて通ぶってる蛙! まぁA-TOLLは確かにかっこいいングォ! がな、アシュラ・テンプルも逃げるしげほォ! で、アンタは何が好きなんだ、モノノベさん」
「ンー、やはり見た目のインパクトという点で天照家J型駆逐戦闘兵器に敵うものはおるまいが」
「長いんだよ! 普通にヤクト・ミラージュって言えよゲハァ!」
「ヤクトっつっても2機いるからねぇうゴァ! ヤクトと言えばヤクト・ドーガはどうかなほォウ!?」
「ギュネイの死に様はあんまりじゃよなー」
「それは全ガノタの共通認識だろップ!?」
連打される腹パンのダメージをものともせず、ナズーリンと諏訪子の発言は止まらない。FSSのファンというものはガノタよりは数が少ないが、その分濃度が高いものが多く、一度語りだすと止まらないという、結構迷惑な存在である。
パンチを喰らいつつも会話をやめない蛙、鼠をよそに、寅丸とチルノは麦茶をすする。
「今のうちに休んでおきましょう」
「うん」
刺客その4 多々良小傘
「呼ばれてないのにジャジャジャジャーン! おどろけー!」
「…」
「あ、れ? ウオオーッ! 驚けー!」
「…小傘で安心した」
「え、何が!? 何かひどいこと言われてない!?」
「いえいえ、気にしないで下さい。どうぞどうぞ、驚かして」
大きな傘をこれでもか、と言わんばかりに誇示し、面白い顔で威嚇する小傘であるが、誰一人…チルノですら、微動だにしない。
外人4コマの外人の如く鎮座する4人を前に、小傘はやがて泣きそうな顔で、それでも必死に続ける。
「アララララーーーーーーイ!」
「…」
「ウッラァアアア! あっけろォー! 君達の心の門をあっけろォーーーーーッ!」
ちりん、と、風鈴が鳴る。
生ぬるい風が茶の間を吹き抜け、皆の髪の毛をなびかせた。
「はい、結構です。おかえりください」
「ひどい!」
「うむ、いい休憩時間だったな」
「小傘さん、やっぱり驚かすっていうなら、筋肉モリモリマッチョマンの変態が夜道でニワトリと包丁持って立ってるくらいしないと」
ドスン
「あがが…しまった、つい…」
「な、なんだよ…なんだよもー! お前ら全員もげろ! うわーーーーん!!」
プライドをいたく傷つけられた小傘は、よく判らない捨て台詞を残し、去っていった。
ボーナスステージ然とした時間を過ごし、4人は一息ついた。
刺客FINAL 八坂神奈子
「あー、今日は暑いねえ。スカートの中が蒸れて仕方ないよ…」
やってくるなり、神奈子はそう言って、ロングスカートの裾をたくし上げる。
ゴトリ、と音を立て、スカートの中から出てきたのは、序ノ口譲二先生の著作「淫魔の乱舞」であった。
「…!?」
「あー、あっついあっつい」
「あの、神奈子さん、それは…」
「あァこれ? 早苗に頼まれてね、『よつばと』の新刊」
「嘘をつけ! そんな乳首の長そうな風香がいるか!」
ドゴォ
「ん? これ違うのか? 絵が似てるからそうかなーって思ったんだけど」
「に、似てるっちゃ似てるかもしれんが、似てないだろ! いや、違わないけど! あってるけど!」
「以前チャットで、序ノ口先生を知らない若者に、その正体を教えたら、物凄くショック受けてたって、作者が言ってましオウフ!」
神奈子はその本を手に取り、パラパラとめくる。
ネタとかパロディとかそういう空気ではなく、何やら不穏な雰囲気だ。迂闊なことは言うまいと、皆、口をつぐむ。
もっとも、チルノに関しては、それが何であるか理解していないようであるが。
「うーん、よつばとじゃなかったか…早苗に何て言えばいいのか」
「あ、安心しろ…専門の回収員が来る…ほら来た」
ナズーリンが中庭を指差すと、そこには筋骨隆々、強面の男が立っていた。
この暑いのに汗もかかず、男はゆっくりと右手を差し出す。
「ふむ、彼に渡せばいいのか」
「そ、そういうことだ」
神奈子は中庭に降り、手にした本をその男に手渡す。
男はそれを受け取ると、コートの内側に仕舞いこみ、挨拶もせずに、そのまま去っていった。
「…あれはよつばとではなかったか。仕方ない、もう一度買いに行くとしよう…じゃあな諏訪子、夕飯までには戻れよ」
「わ、わかった」
そう言い残し、神奈子は手をふって、そのまま空へと消えていった。
蝉の鳴き声だけが、あとに残る。
「…おわり」
「ようやくか…ああ畜生、終わったと思ったら急に腹が…」
諏訪子が各々のベルトを外し、袋に入れていく。
結局一発のパンチも貰わなかったチルノは若干不満げであったが、それはさておいて、諏訪子がまとめに入る。
「以上のことから、ネタの危険性が判ったと思う! これからは軽挙妄動は慎み、清く正しい二次創作のキャラクターとして生きていくことを願うものである!」
「そらまあ、私らはいいけど…」
「え、ええ…問題は別なところにあるので…こればっかりは…」
「あたい、あんま面白くなかった」
「や、いやいや、チルノちゃんはせめて、綺麗なままでいてください」
そして栄光の落日(高難度)が訪れた…
命蓮寺、脱衣場。
「…あ、ウエスト2cm縮まりましたよナズーリン!」
「…よかったな」
ヤルタ会談がもたらしたもの…それは安易なネタに走ることへの抑止力…555がやはり最高だということ…A-TOLLコブラは作者も大好きであるということでも破烈の人形の方がもーっと好きであること…序ノ口譲二先生とあずまきよひこ先生のこと…
そして星くんのウエストのダウンサイジングであった…。
~あらすじ~
パロディと言う名の他人の褌を借り、安易な路線で話を作ってきた罪を清算するため、今まで登場してきたキャラクター達が集まり、作戦会議を始めた。
のちにヤッテヤルデス会談、略してヤルタ会談と呼ばれることになる、その様子をお伝えしよう。
参加者
ヨシフ・ナズーリン…鼠の妖怪でありながら、その智謀で某国のトップにまでのし上がった女傑。好きなものはチーズ。嫌いなものは馬車(撥ねられたことがある模様)
ウィンストン・チャーチルノ…英国を代表する知識人だったが、自ら結成したコマンド部隊のリーダー、ジョン・メイトリクスに叛旗を翻され、「貴様を殺すのは最後にしてやる」と言われたことにショックを受け、幻想郷に逃げてきた。そこではチルノと名乗り、あえて馬鹿を演じる事でメイトリクスの追跡から逃れている(ここまで全部妄想)
寅丸星…命蓮寺の誇る独立可動式ナマモノ本尊。おっぱいがでかい。何か太くなってきたウエストを誤魔化すため、腹甲のベルトをわざと緩めているがバレバレであり、ルーズベルトさんというあだ名がついた。
洩矢諏訪子…司会。ガノタかつ特撮オタ。
「さてお集まりの皆さん」
「待て。私とご主人はいいが、こいつはいつ出てきた?」
ナズーリンが目の前でムゲンバインを組み立てるチルノを指差し、そう尋ねた。
初投稿から九作目に至るまで、チルノが表立って出てきたことはない。ナズーリンが訝るのも無理のない話と言える。
「『V作戦』で餅をついてたよね?」
「…ああ! あの子が!」
「そういやいたな…でもそれだけだろう。もっといるんじゃないのか、一輪とか」
「あまり星蓮組で固めるのもどうかと思ってさあ…紅魔組は皆、大人気だし、気を利かせて召集したってワケ。ターンXだよって言ってムゲンバイン渡したら2時間くらい組めないでいるし、ちゃっちゃと進めちゃいましょう」
一心不乱にムゲンバインをいじるチルノを見て、ナズーリンは心底嫌そうな顔をしつつ、肩を竦めてみせた。緊急の話があるということで、このクソ暑い中呼び出された挙句、蛙の与太話に付き合わされるとは思ってもいなかったのだろう。
そんな使い魔をなだめるように、寅丸がとりなす。そして、里の信者から貰った水羊羹を、皆の前に置いた。
「…! なにこれ!」
仄かに漂う甘い香りに、チルノが反応する。そしてその匂いのもとが、目の前にいつの間にか置かれていた、小豆色の菓子であるということがわかると、ムゲンバインを傍らに置いて、水羊羹を凝視する。
「これはですね、水羊羹というお菓子です。英語で言うとウォーターユーキャン」
「ワラユーキャン! うまそう!」
「美味しいですよ、このワラユーキャァンはですね、ヨーカン公爵が羊羹を…」
「ご主人の菓子知識の大元は一体何処なのか、それが一番気になるんだがな」
「さあ…」
~少女飲食中~
「はー! うまいものだなー!」
「そうでしょうとも…フフフ。さて、洩矢さん? これからどうするのですか?」
「うん。簡単に言うとネタ禁止」
「ネタ…とは」
「面白くしようとして何かこう…どっかで聞いたような語句を使ったりすること。例えば今日は暑いよね? そんな時『暑いぜ暑いぜ暑くて死ぬぜ』とか言っちゃったりすること」
水羊羹の乗っていた皿をまとめ、脇にどけた諏訪子が、立ち上がって説明を始める。
要するに、パロディを使わずして最後まで乗り切れ、ということを言っているのだろう。真っ当な作者なら難なくこなすお題であるが、他力本願が染み付いたどこぞの男には辛い設定である。
「ブラッディウルフはダメか」
「ならず者戦隊どころか全部ダメ。ネタの新旧問わずぜーんぶ」
「簡単ですよ、ずっと黙っていればいいんですから」
「それじゃお話になんないでしょうが! ということで、これを用意しました」
ガチャリ、と音を立て、諏訪子が4つのベルトの様なものを卓の上に置いた。
「…これは…」
「東映から借りてきました。勝手に」
「何これかっこいい!」
「あ、アブトロニクスですか!? 私全然太ってませんよ!?」
「違うっつーの。これはね、ライダーベルト。はい皆さん、着けてつけて。チルノちゃんはオーズドライバー、寅門天チャンはカイザドライバー。黒と金だしね。んで私はディケイドライバー。はい、そしたら説明するからね」
「…待て、何で私だけキックホッパーなんだ」
「いや、何となく…」
「差別だ!」
パチン
「キックホッパーの何が差別だよ…お前に矢車さんの何がわかるってんだよ…」
「あ…いや…うん…すいません」
無言でナズーリンの頬をはたいた諏訪子が、虚ろな目でそう呟く。実際、キックホッパーのデザインは悪くなく、ただ色々とネタが先行している感が大きいのがネックだ。
ナズーリンは腑に落ちない様子で頬をさすっていたが、やがて観念したのか、その細い腰にベルトを巻きつけた。
そうして全員が、ベルト着け終わるのを確認すると、諏訪子は咳払いを一つしてから、説明を始めた。
「これはね、見た目はアレらのベルトだけど、中身は違います。変身機能はおこがましいので当然ついてません…で、肝心の中身はと言いますと…」
「な、何でしょう」
「ネタに反応して、腹パンと同じくらいの衝撃を発生させます」
「…おい」
「はらパンって?」
「な、何でしょうね? 山パンみたいなもの…おっごおゥ!?」
突如として、寅丸の体がくの字に折れ曲がる。
いきなりのダメージに、寅丸は膝をつき、わけがわからぬ、といった表情で、諏訪子を見た。目には涙が浮かび、既に泣きそうだ。
「そうなります。今のは山ナントカに反応したみたいですね」
「山パンはネタ扱いなんでっぐほァ!?」
「幻想郷に存在していないものは、基本ネタとして扱われます。これでもう判ったと思うけれど、要するに真っ当な会話をしていれば、腹パンは喰らわないってこと」
「ふざけるな! どんな罰ゲームだそりゃあ! ああくそ、こんなもん外しておごァ!?」
ベルトに手を掛け、外そうとしたナズーリンが、寅丸と同じように、くの字の姿勢で跳ねた。
それを見て不敵に笑う諏訪子が、腕組みをしつつ口を開く。
「一度着けると8時間経過するか、このカギを使わない限り、外れないよ。無理に外そうとすると最大出力で腹パンだよ。んで、これから、私が雇った刺客たちが、ここにやってくるので、その人らと会話を楽しみつつ、そう…15kbくらいまで過ごします」
ずどん。
「おふ…失敗失敗…公平さを期すため、私のコレにもちゃんと、その機能がついてるからね」
「ぐっ…お前、本当に神か?」
「フフフ…これくらいの荒療治をしないと、効果がないからね…」
「私ら被害者じゃないか! 二次創作とは言え、大勢のファンがいるゲームのキャラに、腹パンを延々とねじ込む話なんてあってたまるか!」
どずん。
「ぐ…お…」
「二次…なんだって? ともかく、運が悪かったってことで…そんじゃま、始まりはじまり」
「…あたい、どうしよう」
「と、とにかく頑張りましょうチルノちゃん!」
刺客その1 オータムシスターズ
「どーも今日は、テッカマンアキシズハです」
「テッカマンアキミノリコです」
「ブレード2の話はやめろ!」
ボスン。
「ぐォふ…やめろ…こればっかりは腹パン食らっても言わせてもらう…テッカマンブレード2なんてなかっ…た…!」
どすん。
…例え腹パンを喰らってでも、言いたいことがあったのだろう。ナズーリンは苦悶しつつ、秋姉妹をにらみ付ける。
実際、テッカマンブレードの感動を一切合財無かったことにする、テッカマンブレード2に関しては、一家言ある者が多く、某草動画で公開が予定されているが、今からどうなるのか、恐ろしくもある。
「じゃ、諏訪子さん、私ら帰りますね」
「お疲れー」
「ぐッ…血を分けた悪魔めらが…」
どごん。
「あがが…しまった…ついサブタイを…」
どすん。
「何故!?」
「サブ何とかはアウトみたい」
「な、ナズーリン! しっかり!」
刺客その2 リグル・ナイトバグ
「あ、えーと…こんにちは」
「…こんにちは」
「こんにちは!」
「こんにち…って、その声、リグル?」
「う、うん」
リグルは蛍の妖怪である。
先ほどの姉妹のように、いきなりネタに走るわけでもないが、その姿は、例のアレであった。
「え、えーと…この格好…重いんですけど…」
「そ、そりゃ、そうでしょうね…高岩さんでもないかぎごはァア!?」
「ねえリグル、そのカッコ、何?」
黒いボディに銀色の装甲、身体の各部を走る赤いライン。特徴的な頭部はまるで、ギリシャ文字の「Φ(ファイ)」のようにも見える。
「な、なんだろ? 判らないけど、諏訪子さんが着ろっていうから」
「うんうん、やっぱ蛍といえばそれだよね」
「あ、ああ…平成ライダーの中でも屈指のぐっはァ!?」
「か、かっこいいですよね…」
腹パンを恐れているとはいえ、口をついて出てしまうものは仕方がない。
そうこうしていると、ファイズと化したリグルのベルトに装着された、携帯電話が鳴り出した。
「あ、電話ですよぐぉフ!」
「で、出たほうがいいんじゃないかな…」
「うん」
リグルはバックルに装着された携帯電話…ファイズフォンを手に取る。しかし幻想郷には本来存在していないアイテムであるため、いまいち使い方が判らないようで、ボタンを押しまくったり、開閉したりと忙しい。
そうこうしている内に、リグルはヤケクソになったのか、腰にマウントされていた、懐中電灯のようなものまで持ち出して、弄り始めた。
「あ…それは…」
「あ、電話切れた…えっと、どうしよう」
「リダイヤルしてうごおっほ!」
「えーとどうやって…」
「えーと…とにかくボタン押して、どうにかするしかないね!」
「う、うん。あ、これ脚に付けられるんですね、かっこいー」
リグルが懐中電灯を右足に装着し、再びファイズフォンを弄ると、ピロリン、という電子音が響き、次いで鈍い、駆動音のようなものが響く。
そしてどこからともなく聞こえてくる、電子音声…
『エクシードチャージ…』
「シャベッタァアアアアアおごぉ!?」
「ま、まずいぞこれは、クリムゾンスマッシュがグハァアアア!?」
「リグルかっこいい! どうなんの!?」
「え、えーと…諏訪子さん、どうすれば?」
「うん、帰っていいよ。敵もいないし」
「あ、はい。お疲れ様でした」
リグルはそう言うと、ゆっくりと立ち上がり、やけにどっしりとした動作で歩いていってしまった。
「…次郎ウォークじゃないか!」
どすん。
刺客その3 物部布都
「本編じゃ絡みはないが、呼ばれて飛び出てオッスオッス。物部布都惨状。主らがいま感じている感情は腹パンのダメージの一種じゃ。増幅する方法は我が知っている。我に任せろ」
「…やめろ。確かに超先生は幻想入りしているかもしれんがおっほォウ!?」
「うむ、適当に話せと言われておるでな…さて、何が良いか…主ら、モーターヘッドの中ではどれが好きじゃ?」
「テロル・ミラージュうごォオ!?」
「テロルとか厨二もいいところじゃぐほァ! 通はA-TOLLコブラとかごへぇ! ヴォルケシェッツェとかはオウ!」
「出た出た、マイナー所挙げて通ぶってる蛙! まぁA-TOLLは確かにかっこいいングォ! がな、アシュラ・テンプルも逃げるしげほォ! で、アンタは何が好きなんだ、モノノベさん」
「ンー、やはり見た目のインパクトという点で天照家J型駆逐戦闘兵器に敵うものはおるまいが」
「長いんだよ! 普通にヤクト・ミラージュって言えよゲハァ!」
「ヤクトっつっても2機いるからねぇうゴァ! ヤクトと言えばヤクト・ドーガはどうかなほォウ!?」
「ギュネイの死に様はあんまりじゃよなー」
「それは全ガノタの共通認識だろップ!?」
連打される腹パンのダメージをものともせず、ナズーリンと諏訪子の発言は止まらない。FSSのファンというものはガノタよりは数が少ないが、その分濃度が高いものが多く、一度語りだすと止まらないという、結構迷惑な存在である。
パンチを喰らいつつも会話をやめない蛙、鼠をよそに、寅丸とチルノは麦茶をすする。
「今のうちに休んでおきましょう」
「うん」
刺客その4 多々良小傘
「呼ばれてないのにジャジャジャジャーン! おどろけー!」
「…」
「あ、れ? ウオオーッ! 驚けー!」
「…小傘で安心した」
「え、何が!? 何かひどいこと言われてない!?」
「いえいえ、気にしないで下さい。どうぞどうぞ、驚かして」
大きな傘をこれでもか、と言わんばかりに誇示し、面白い顔で威嚇する小傘であるが、誰一人…チルノですら、微動だにしない。
外人4コマの外人の如く鎮座する4人を前に、小傘はやがて泣きそうな顔で、それでも必死に続ける。
「アララララーーーーーーイ!」
「…」
「ウッラァアアア! あっけろォー! 君達の心の門をあっけろォーーーーーッ!」
ちりん、と、風鈴が鳴る。
生ぬるい風が茶の間を吹き抜け、皆の髪の毛をなびかせた。
「はい、結構です。おかえりください」
「ひどい!」
「うむ、いい休憩時間だったな」
「小傘さん、やっぱり驚かすっていうなら、筋肉モリモリマッチョマンの変態が夜道でニワトリと包丁持って立ってるくらいしないと」
ドスン
「あがが…しまった、つい…」
「な、なんだよ…なんだよもー! お前ら全員もげろ! うわーーーーん!!」
プライドをいたく傷つけられた小傘は、よく判らない捨て台詞を残し、去っていった。
ボーナスステージ然とした時間を過ごし、4人は一息ついた。
刺客FINAL 八坂神奈子
「あー、今日は暑いねえ。スカートの中が蒸れて仕方ないよ…」
やってくるなり、神奈子はそう言って、ロングスカートの裾をたくし上げる。
ゴトリ、と音を立て、スカートの中から出てきたのは、序ノ口譲二先生の著作「淫魔の乱舞」であった。
「…!?」
「あー、あっついあっつい」
「あの、神奈子さん、それは…」
「あァこれ? 早苗に頼まれてね、『よつばと』の新刊」
「嘘をつけ! そんな乳首の長そうな風香がいるか!」
ドゴォ
「ん? これ違うのか? 絵が似てるからそうかなーって思ったんだけど」
「に、似てるっちゃ似てるかもしれんが、似てないだろ! いや、違わないけど! あってるけど!」
「以前チャットで、序ノ口先生を知らない若者に、その正体を教えたら、物凄くショック受けてたって、作者が言ってましオウフ!」
神奈子はその本を手に取り、パラパラとめくる。
ネタとかパロディとかそういう空気ではなく、何やら不穏な雰囲気だ。迂闊なことは言うまいと、皆、口をつぐむ。
もっとも、チルノに関しては、それが何であるか理解していないようであるが。
「うーん、よつばとじゃなかったか…早苗に何て言えばいいのか」
「あ、安心しろ…専門の回収員が来る…ほら来た」
ナズーリンが中庭を指差すと、そこには筋骨隆々、強面の男が立っていた。
この暑いのに汗もかかず、男はゆっくりと右手を差し出す。
「ふむ、彼に渡せばいいのか」
「そ、そういうことだ」
神奈子は中庭に降り、手にした本をその男に手渡す。
男はそれを受け取ると、コートの内側に仕舞いこみ、挨拶もせずに、そのまま去っていった。
「…あれはよつばとではなかったか。仕方ない、もう一度買いに行くとしよう…じゃあな諏訪子、夕飯までには戻れよ」
「わ、わかった」
そう言い残し、神奈子は手をふって、そのまま空へと消えていった。
蝉の鳴き声だけが、あとに残る。
「…おわり」
「ようやくか…ああ畜生、終わったと思ったら急に腹が…」
諏訪子が各々のベルトを外し、袋に入れていく。
結局一発のパンチも貰わなかったチルノは若干不満げであったが、それはさておいて、諏訪子がまとめに入る。
「以上のことから、ネタの危険性が判ったと思う! これからは軽挙妄動は慎み、清く正しい二次創作のキャラクターとして生きていくことを願うものである!」
「そらまあ、私らはいいけど…」
「え、ええ…問題は別なところにあるので…こればっかりは…」
「あたい、あんま面白くなかった」
「や、いやいや、チルノちゃんはせめて、綺麗なままでいてください」
そして栄光の落日(高難度)が訪れた…
命蓮寺、脱衣場。
「…あ、ウエスト2cm縮まりましたよナズーリン!」
「…よかったな」
ヤルタ会談がもたらしたもの…それは安易なネタに走ることへの抑止力…555がやはり最高だということ…A-TOLLコブラは作者も大好きであるということでも破烈の人形の方がもーっと好きであること…序ノ口譲二先生とあずまきよひこ先生のこと…
そして星くんのウエストのダウンサイジングであった…。
555は一説によるとモチーフ蛍じゃなくて鮫らしい系の話が以下略
相変わらずで安心した
…真面目とか次回作大丈夫なのか
の初登場がもうなんというか 一目惚れですね わいにとっちゃMHのアウクソーや!
いかん熱くなってしまう ネタがわからないと面白さが半減しそうだけど俺は面白かったです
次回作楽しみにしてます!
1>「電車の中で~」はコメディを書く者にとって最上級の褒め言葉なので、とてもありがたいことです。自分の好きな作家様も、そういったものを上梓しておられるので、ちょっとでも近づけるよう頑張ります。
555の鮫説は自分も聞いたことがありますが、あれ鮫なのかなあw
2>ありがとうございます。
3>腹パンは俺と海さんの漫画を直前に読んでいたせいです…お許しください!
4>爆死覚悟で次回作書いております。まあペーペーの自分に失うものなどあんまりない!
でも読んでいただければこれ幸い。
5>FSSの人きた! これで勝つる!
A-TOLLはアシュラの前に出てくるところがかっこよくてもうだめ。ラウンドバインダもたまりません。
そしていまだにアレクトーとアウクソーを混同する自分がいる。まあ好きなファティマは静ですけどw
次回作もどうかよろしくお願いします。
あー、腹筋割れそう。