私は何故こんなことを!?
瑠璃色のワンピースを土まみれにし匍匐前進をしていた慧音は、ふと我に返る。
我に返って自身の滑稽な姿を自覚し、羞恥に苛まれ赤面する。
落ち着け冷静に。と心の自分に言い聞かせ、慧音は事の起こりを思い出そうとした。
寺子屋は休みであった。掘り出し物を目当てに古書店へと向かっていた。
路地裏に差し掛かったところ、垣根の向こうに妹紅の姿を見かけた。
里に来るなんて珍しいと思いつつ、声を掛けようとして思い止まった。
見覚えのある人物が、妹紅に近づき話しかけたから。
森近霖之助。雰囲気からすると、どうやら待ち合わせのようだ。
それを認識した途端、慧音はなぜだか垣根に隠れるよう地面に突っ伏していた。
慧音にそのつもりが無くても、出るに出られず仕方なく盗み聞きの形となってしまう。
立ち話なら良かったのだが、二人して歩き出したので匍匐前進となってしまう。
そこまでしても二人の会話は聞き取れず、慧音の努力は徒労でしかなく、
馬鹿馬鹿しくなってきたところ、不意に妹紅の声が耳に届く。
「相談にのってくれて助かったよ。慧音の喜ぶ物、わからなくて」
「お役に立てたのならよかったけど。誕生日、来週だっけ」
会話の内容がわかり、慧音はますます出られなくなってしまうわけで。