「ご主人様。幻想郷の住人で、干支を揃えれないかな?」
「えと?あぁ、蟹とか山羊とか」
「それは星座だ」
◇ ◇ ◇
とある妖怪寺
その一室で談話するのは、星(毘沙門天代理)とナズーリン(部下)
二人でカップラーメンを啜りながら何気ない会話をしているときに、部下の方切り出してきた
「あれだよ、あれ。子、丑、寅…」
「あ、あぁ!そっちのほうですか!」
「ボケじゃなかったんだね、ご主人様」
軽い頭痛を覚えながらも、話を続けるナズーリン
「ともかく、私は干支を揃えてみたい」
「なんでですか?」
「私たち、人気落ちてるよね?」
「…!!」
思わず手にしていたカップラーメンを落としそうになる星
そうだ
コイツらは人気が低迷している
「非常に嘆かわしい。だからこそ、早い時期からでも次回の人気投票に向けて何か人気を上げる方法を見つけたいとは思わないかい?」
「えぇ、まぁそれはそうですが…」
残りのスープをズズッと吸った星が
「干支、揃えると私たちの人気が上がるのですか?」
「何もしないよりかはマシさ。ふとやってみた行動が吉と出ることもある。それに」
ズズッとスープを飲み干すナズーリン
「ね、うし、とら…」
「…!なるほど、私たちは干支の中では順位が高いと!?」
訳が分からないが、ともかく寅鼠コンビによる干支選考会議が開始されたのである
◇ ◇ ◇
「まず、『子』はナズーリンですね」
「あぁ、私がトップだ」
主を差し置いて誇らしげに(ない)胸を張る従者を殴りたい気持ちを抑えつつ、星が続ける
「『丑』。牛ですかぁ」
牛の妖怪なんていただろうか?
そんなことを考え悩む星に対して
「慧音先生がいるじゃないか」
なんてことを軽々しく言うナズーリン
「あのですねぇ。あの方は自分が牛って言われるのが気に入らないという噂を…」
「じゃあ、アリスかい?」
困惑気味に尋ねる星に対して、訳の分からないことを言うナズーリン
「牛がアリスさん?どういうことですか?」
「丑の刻参り」
「いや、それ牛でいいんですか?というか、アリスさん怒りますよ?」
◇ ◇ ◇
カップラーメンもなくなり、今度は春雨スープを啜りながら続きを考える
「『寅』、『卯』。飛ばしていいかい?」
「いきなり大ざっぱになりましたね!?」
「だって『寅』はご主人様、『卯』は永遠亭でいいじゃないか」
「自分の主を蔑にして何を堂々としてやがりますか!」
「『卯』のほうはいいのかい?」
「はい、いいです」
「君も大概だな、ご主人様」
◇ ◇ ◇
「次は『辰』か」
「龍ですよね。幻想郷にいそうな感じもしない訳では」
ナズーリンが酒のつまみに盗んd…じゃなくて買ってきたチーズを頬張りながら頭を悩ませる2人
「あぁ、いるじゃないか」
「誰です?」
「龍神さま」
「貴方、本当に殺されますよ!?」
幻想郷の守護神でもある龍神を軽々しく傘下に置こうとしている我が部下を必死に宥める主人
「この人里でも龍神さまを崇める人は大勢いるんですよ。その龍神さまを人気取りの材料にするだなんて」
「大丈夫だよ、ご主人様。きっと龍神さまだって人気欲しいさ」
「もしかして酔ってませんか!?」
ふと見てみると、何時の間にかナズーリンの片手にはウイスキーの入ったグラス
それをグイッと一飲み
ぷはぁ~っと息を吐く
御免なさい、ナズーリン
貴方でさえも、酒でも飲まなければやってられないくらいの気苦労は溜まっていたのですね
人気が低迷しているのに加え、宝塔探しや、毘沙門天様への報告、それに加えて宝塔探し…
心の中で謝罪をしながら、零れ落ちそうな涙を袖で拭う星
これからは、自分のうっかりも少し改めないといけないと本気で考える
いつも真面目でしっかりものの我が部下が酒に溺れて、ある意味暴言を吐いているのである
今までの己の行動に反省を持つ
こんなところはしっかり者の寅丸星
仮にも毘沙門天代理である
我が愛すべき部下のために、気を引き締める
引き締めるだけであって、うっかりは治らないが
「ご主人様、さぁアンタも飲めや。さぁ飲め飲め」
「ちょ、ナズーr…がぶがぶ」
◇ ◇ ◇
「めーりんさんにしましょうよ!あの人胸デカいし。胸デカいし!なんたって胸がデカいし!」
「では、『辰』は美鈴だね」
寅丸星は、あまり酒に強くない
◇ ◇ ◇
「へ・・・、蛇ですね」
「あぁ、『巳』だねご主人様」
水を飲んで少し落ち着いた星が、頭を押さえながらナズーリンに尋ねる
「頭が少しクラクラする」
「情けないね、ご主人様。それでも寅の妖怪かい?」
「別に寅が酒に強いってわけでも…」
「毘沙門天代理」
「関係ないですってば!」
部下のからかいに頭を振りながら反論する主
「蛇ですか。…あぁ、いるじゃないですか!私たちの身内に」
「八坂神奈子、と」
「え、そっち!?」
ぬえぇえええええん…
◇ ◇ ◇
ここで、ある意味テンポよくいっていた会話が止まった
「『午』」
「馬、ですよね」
幻想郷に馬はいねぇ
いや、いるけど
少なくとも、東方projectのキャラでは聞いたことない
「馬の妖怪…。いないかなぁ」
「馬っぽい顔の人はいませんでしたっけ?」
「どうやらまだ酒が残っているみたいだね、ご主人様」
ちょっと失礼に値するセリフを吐く主に、溜息をつきながら答える
先ほどまで酒が入って、それ以上の暴言を吐いていた鼠がよく言う
「ナズーリン、資料は?」
「ここのバカ作者が、求聞口授以外の公式本を全部実家に持って帰ってしまったんだよ」
「『馬 東方』でググったら」
「馬にまつわるキャラはヒットしなかったらしいね」
ホント、使えない作者だ
そう言いながら、博麗神社の宴会時に盗n…拝借してきた新しい酒を開けながら、ナズーリンが愚痴をこぼす
「まぁ最悪、霊夢と魔理沙にハリボテエ○ジーになってもらうさ」
「だから、あなた本当に退治されますよ」
自分の人気取りの為に、主人公たちすら出汁に使おうとする
汚い、さすがナズーリン汚い
◇ ◇ ◇
とても賢将とは思えない意見を飛ばすナズーリン(酔)だが
「『未』かぁ」
「羊ですよねぇ」
またしても難問にぶち当たる
「実は、羊をウィキったら色々興味深いデータが出てきたんだ」
ナズーリンはそう言いながら、スマートフォン(河童製)を取り出す
それを興味深そうに覗き込む星
「ウシ科なのですか」
「慧音先生、2役だね」
だからそういうのはやめましょうよと言いながら、星が先を読んでいく
「『東方見聞録』。まるこぽーろって誰ですか、ナズーリン?」
「知らないな。だが、原種の紹介にも何か縁深いものを感じないかい?」
そういいながら、2人であれやこれや言いながら話していたら
「・・・あ、そうだ」
「どうしました、ナズーリン?」
突如、名案が浮かんだとばかりにナズーリンが声を上げる
「ご主人様、めーりさんの?」
「え、え?ひ、羊?」
「羊、羊♪メーリさんの」
「羊、可愛いな~♪」
陽気に歌い出すナズーリンにつられて声を出す星
「はい、羊はマエリベリー・ハーンだね」
「…。え!?ま、まりえべ…?え、誰?」
さすが賢将
外の世界の住人すらも巻き込むとは
◇ ◇ ◇
少々強引すぎるところもあったが、難題の『午』、『未』をクリアした2人
さぁ、残りは4つだ
「『申』。猿ですねぇ」
「あぁ、それについては大丈夫さ、ご主人様」
またしても難題にぶつかったか?といった声を出した星に対して、なんら問題はないと言った風なナズーリン
「猿の妖怪?いましたっけ、幻想郷に」
「あぁ、『狒々』って知っているかい?猿の妖怪さ。美女になりすまして人を攫うってこともあるらしい。尤も、あの人は人攫いはしないだろうけどね」
「?分かりません。ナズーリン、今の説明のどこに幻想郷の住人に似た特徴が?」
「曰く」
すぐ隣で疑問符を浮かべている主の杯に酒を注ぎながら、話を続ける
「相手の心や思考を見抜く。『覚』のような力も持っていたらしい」
「つ、つまり」
星の頭に浮かんだのは、一人の妖怪
相手の心を読み取り、その能力故に忌み嫌われた少女
「それを考えながら、本人の前に立ってみたらどうですか。それはもう、取り返しの無いくらいのトラウマを見せられますよ?」
「ははっ、ご主人様も言うようになったじゃないか」
◇ ◇ ◇
『酉』、『戌』に関しては言うまでもない
鳥はお空やミスティアがいる
犬だって椛(「犬じゃないです!」)や、咲夜(「犬ではありません。狗です」)、最近では山犬だって出てきた
さぁ、最後の一人だ
「『亥』ですか。これはまた難しいですね。猪の妖怪なんていましたっけ」
うーんと頭を捻る星
「そういやご主人様。そろそろツマミがなくなってきたね」
「こら、ナズーリン。あなたも少しは考えなさい。そもそも貴方が干支を揃えようと…!」
「いやぁ。いつのまにかご主人様の方が必死になってるね」
「何か言いました」
「別に」
悩むこと数分
流石に東方には猪の妖怪はいない
が
「…妖怪一本ただら」
「一本ただら?どういった妖怪ですナズーリン?」
「はい つ http://www5.kcn.ne.jp/~shinya8/tatara.html」
「ついにコピペ使いやがりましたね。えーっと何々?『牛石ケ原には、牛が寝そべっているような形をした「牛石」が笹原の中にポツンとあります。』…え、まさか」
「うん、牛だね。牛いるじゃん。慧n」
「また先生を出汁に使いますか!というか、この説明文からして少々違う気も」
「じゃあ、猪八戒を美鈴に」
「貴様いい加減にしろやぁ!!」
◇ ◇ ◇
あまりにもいい加減な部下に対して、持っていた槍を振り下ろす。
それをヒラリと躱して「ハーハッハッハ!さーらばだー!」と言って俊足で命蓮寺を去る鼠
「…はぁ」
自由奔放な部下に頭を悩ましながら、寝る準備をする星
「本当、あの部下は」
ただ、少しは楽しかったかな?
これからのナズーリンの処遇に悩みつつも、頭の片隅でそんなことを考えながら、星は眠りへとついた
◇ ◇ ◇
後日談
「あなたが寅丸星ですか?」
「どちら様でしょうか?」
「申し遅れました。私、行者をやっています茨華仙と申します」
「もしかして、噂に聞く仙人さまでしょうか。本日はどういったご用件で?」
「無縁塚のナズーリンという妖怪からの依頼です。本日、ここに複数の動物を届けるようにと。えーっと、まずネズミに牛、寅、龍…」
「…」
「全部で12匹ですね。ではお代金をいただきます。総計…」
「金払うんは私かい!!」
力いっぱい叫ぶ寅一匹
私がいるから寅いらねーじゃんとか、そんなツッコミは無視して、何故ナズーリンの人気取りの提案に対して全ての金を自分が払わなくてはいけないのかと、今すぐ無縁塚にいる鼠を殴り倒したい
てか、茨華仙に頼むんなら最初っからそうしろとも叫びたい気分で一杯の星であった
妖怪じゃないが、聖徳太子には厩戸皇子(うまやどのおうじ)という異名もある……あとは分かるな?
>亥
猪武者なみょんちゃんでいいんじゃないかな!!
しかし、慧音先生が過労死しそうだなw
UMA
正体不明
あとは判るな?
×マリエベリー
○マエリベリー
などと安直な発想をした私を許してください