Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

道程

2012/07/27 00:06:15
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さらさらと、煌々と。

彼女の肩にかかる髪を、瞼の裏に見ていました。

毛先は陽の光を受けて、ほとんど透明なくらいに透き通り、指を通せば私の手に、きんいろの影を落とすのでした。

それがいかにも彼女らしくて、私が笑うと、私の掌に頬を寄せて彼女もえへへと笑うのでした。



そうして、まるで昨日の事のように。

一日の中で幾度も幾度も。

彼女を描くのですけれど、何故だかぼんやりしているのです。
私の中の、一番大切なものだというのに、彼女の事が、ひどくぼんやりしているのです。

よくよく考えて、やっと気付きました。

随分と遠くまで来てしまったのだと。

二本並んでいた道は、いつの間にか角度を変え、彼女を連れ去ってしまったのでした。



気付いた私は焦りました。

彼女の姿を探すには、私はあまりにも遠くまで来てしまったのです。

離すまいと感覚がなくなるくらい強く、手を繋いでいたものですから、いつの間にか自分の手のひらに、自分の爪が刺さっていた事にも、その血が乾いてしまったことにも気が付かなかったのです。



引き返そうにも振り返れば、今足を離した道はもう消えてしまっているのです。

飛べる身の上であることを思い出して魔法を使っても、身体が浮く瞬間に、強い、強い風が邪魔して、地面から足を離せずにいました。

酷い風の中を飛んだことも、今まであったと思い返せば、いつも隣に彼女が居たのを、余計に思い知らされました。



どこに行ったの?

問う声はだんだんと大きくなるというのに、返事はいつまでも、聞こえてはこないのを、本当はわかっている自分を自覚して。

彼女の笑顔も、やわらかい肌も、きらきら光る髪の毛も、匂いも、声も、何もかもがここにはないのに、嫌になるほど私の中には、しっかりと在るのでした。



どうすることもできず、泣くことも忘れ日々を過ごし、私はある日、思い至りました。

こんなにも私の中に彼女がいるのだから、ぼんやりとして消えてしまう前に、彼女を形にすればいいと。

時間をかければしっかりと、彼女のことは思い出せるので、仕草や、言葉や、彼女の彼女たる要因全てを、形にして、私は作りあげました。




足りないのは、












.....
「…ん、ここは…アリスの家…?」

とても長い間眠っていたように、体中の関節がギシギシと鳴っている。

深くソファに腰掛けていたからか、身体は少しも痛まなかった。
トレードマークの魔女帽子はいつものように、ソファの端に引っ掛けてあって、多分玄関にはお気に入りの箒が私を待っている。

眠る前の事が思い出せないけれど、きっといつもみたいに新種のきのこでも煎じて飲んだ副作用だろう。

どんな様子だったか聞こうと、ティーテーブルを見やると、珍しくアリスが突っ伏して眠っていた。

あれ?こいつの肩はこんなに細かったっけ?

仕方ないな、とクローゼットから一枚タオルケットを取り出して掛けてやる。
もぞもぞと身じろぎする横顔があまりにも疲れて見えたから、どうしたのだと聞こうと思ったけれど。
まぁ、そんな事は、明日にでも聞いたらいい。
なんかちょっと調子も変だし、今日はとりあえず帰ろう。

「おやすみ、アリス」

ドアを開けると、星が空一面に広がる。
「……ぁ」声が聞こえて振り返ってみたけれど、どうやら寝言らしかった。

「おやすみ」


もう一度言って、私は地面を蹴った。









朝。

今日も研究付けの一日が始まる。

本当は寝なくてもいいのだけれど、人間らしい生活をしていないと、彼女が薄れて行きそうで。
ここ5年でやっと完成に近づいてきたそれに視線を移す。

おかしい。無いのだ。

昨日ソファに座らせたままのはず。
上海人形にも、蓬莱人形にも特に命令は出していない。

泥棒?

身体から血の気が引いた。
そこでふと、違和感に気付いた。

誰が私にタオルケットをかけたの?

おやすみ、アリス。


懐かしい声を夢で聞いた。
あぁ、もしかして。


大きな音がして窓が飛ぶ。
土煙の中、煌々と。

「おう!アリス!遊びに来てやったぜ!」

お茶の準備もしてないのか、と、記憶の通りに。


「ずいぶん遅かったのね。待ってたのよ?
 

 おはよう……魔理沙」
らいる
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
あり得たかも知れない未来。
実際、アリスならやりかねないし、やれるだけの能力も在りそうですしね。

ただ、個人的にはあとがき部分も含めて一本にしてしまった方が良かったかなと。
あとがきで真相を……て手法はアリだと思うんですが、これでは本文部分がちょっと不足な気がします。

ほんのり暖かいマリアリ、御馳走様でした。
2.奇声を発する程度の能力削除
まったりして良かったです
3.名前が無い程度の能力削除
ほんのり暖かくて少し恐ろしいような