「はーたーてっ」
「今忙しいの」
「何よーベッドで寝っ転がりながら携帯弄ってるだけじゃん。ほら、貴女の愛しの彼女ですよー文ちゃんですよー」
「へぇ」
「うわ、その反応は傷付くわぁ……」
「だって、ねぇ」
「三日振りに文ちゃん分を補充したいーとか思わない訳?ちなみに私ははたて分が不足していて目が血走っています」
「怖いから帰れ」
「えー」
「もうちょっと待ってってば」
「何やってるの?」
「小説読んでる」
「おーおー携帯小説ってやつですか。スイーツですか」
「そんなんじゃあないよ」
「なるなる」
「……」
「……」
「ひまー」
「麦茶でも飲んでたら?」
「はーい」
休日、Holiday、新聞記者を自称しつつ、天狗社会に属する『社会人』の端くれでもある彼女にとって、それは非常に魅惑的な言葉である。そんな神が与えたもうた安息日に事もあろうか世間一般で言う汚部屋を訪れ、来客を前にホットパンツのTシャツ一枚のあられもない姿で寝そべる女子と共に過ごすというのは、人妖の枠を超えて『変人』と言わざるを得ないであろう。尤も、射命丸文とはそういう者である、という認識はこの山や郷においては共通認識ではあるのだが。
「ねえはたて」
「ん」
「冷蔵庫の麦茶……あれ何日前に入れたやつなの……」
グラスをつまんでくるりと回すと、一般的な麦茶よりも少し黒く少し粘性のある液体がぐるぐると。思わず顔をしかめる。
「んー 分からないや」
「あんたいつか腹痛で死ぬわよ……」
「冷蔵庫で冷えてれば腐らないから大丈夫だって」
「どんな理屈よ……これ捨てとくからね」
溜息混じりに台所に向かい、空っぽのシンクに麦茶だった物をだばだばと流す。ここに洗っていない食器等が積み重なっていない事に軽く安堵するが、全く使われていないのもそれはそれで勿体無いよなぁ、などという老婆心を文は自ら認知しているのだろうか。
「ん、ありがと」
「ご褒美のちゅーは?」
「蛇口に口付けて水飲んだら引っ叩くからね」
「はたてだけに?」
「しばくぞ」
風神少女ですら見切れぬ速度で飛来した枕は、正確に文の顔面に衝突し、はたての匂いで包まれる。所謂一つのご褒美である。
「ねぇ、はーたーてぇー」
「んー……もうちょい読んだら構ってあげるから待って」
「ひまー」
はたてが寝転ぶベッドの縁に無遠慮にどさりと腰掛け、不貞腐れたように呟く。先程よりも暑くなったような感覚を覚え、無意識の内にブラウスの胸元をぱたぱたと扇ぐ。
「文はもっと休日を有意義に使うべきだと思うの」
「こうやってだらだらとしつつはたてに罵られる事以上に有意義な事なんて有り得ない!」
「はいはいクズ乙クズ乙」
「ご褒美ありがとうございます!!」
「じゃあさ、可愛い可愛い下僕さん?」
「はい!」
ノリノリじゃないの、と思わず苦笑いを零すはたての目元が悪戯っぽいそれに変わるのに文は気付かなかった。
「パスタ茹でて」
「……はぁ?」
「そろそろご飯時だと思うんだ。お腹空いてきたし」
「なんでこんなくっそ暑い日にあんなもん茹でなきゃならないの!?」
「あーや」
「う」
「茹でて?」
仰向けに寝転がりながらの図々しいおねだりではあるが、文には逆らえない。
「……本格的に駄目天狗になってきてるわね」
「何を今更」
「……お互い様です」
自嘲気味な、でもどこか心地良いような笑みが文の口元に浮かぶ。
「あ、戸棚にパスタソースの瓶があったと思うから」
「はーい」
「これ何時買ったやつ!?賞味期限ぶっちぎっちゃってるんだけどー!?」
「今忙しいの」
「何よーベッドで寝っ転がりながら携帯弄ってるだけじゃん。ほら、貴女の愛しの彼女ですよー文ちゃんですよー」
「へぇ」
「うわ、その反応は傷付くわぁ……」
「だって、ねぇ」
「三日振りに文ちゃん分を補充したいーとか思わない訳?ちなみに私ははたて分が不足していて目が血走っています」
「怖いから帰れ」
「えー」
「もうちょっと待ってってば」
「何やってるの?」
「小説読んでる」
「おーおー携帯小説ってやつですか。スイーツですか」
「そんなんじゃあないよ」
「なるなる」
「……」
「……」
「ひまー」
「麦茶でも飲んでたら?」
「はーい」
休日、Holiday、新聞記者を自称しつつ、天狗社会に属する『社会人』の端くれでもある彼女にとって、それは非常に魅惑的な言葉である。そんな神が与えたもうた安息日に事もあろうか世間一般で言う汚部屋を訪れ、来客を前にホットパンツのTシャツ一枚のあられもない姿で寝そべる女子と共に過ごすというのは、人妖の枠を超えて『変人』と言わざるを得ないであろう。尤も、射命丸文とはそういう者である、という認識はこの山や郷においては共通認識ではあるのだが。
「ねえはたて」
「ん」
「冷蔵庫の麦茶……あれ何日前に入れたやつなの……」
グラスをつまんでくるりと回すと、一般的な麦茶よりも少し黒く少し粘性のある液体がぐるぐると。思わず顔をしかめる。
「んー 分からないや」
「あんたいつか腹痛で死ぬわよ……」
「冷蔵庫で冷えてれば腐らないから大丈夫だって」
「どんな理屈よ……これ捨てとくからね」
溜息混じりに台所に向かい、空っぽのシンクに麦茶だった物をだばだばと流す。ここに洗っていない食器等が積み重なっていない事に軽く安堵するが、全く使われていないのもそれはそれで勿体無いよなぁ、などという老婆心を文は自ら認知しているのだろうか。
「ん、ありがと」
「ご褒美のちゅーは?」
「蛇口に口付けて水飲んだら引っ叩くからね」
「はたてだけに?」
「しばくぞ」
風神少女ですら見切れぬ速度で飛来した枕は、正確に文の顔面に衝突し、はたての匂いで包まれる。所謂一つのご褒美である。
「ねぇ、はーたーてぇー」
「んー……もうちょい読んだら構ってあげるから待って」
「ひまー」
はたてが寝転ぶベッドの縁に無遠慮にどさりと腰掛け、不貞腐れたように呟く。先程よりも暑くなったような感覚を覚え、無意識の内にブラウスの胸元をぱたぱたと扇ぐ。
「文はもっと休日を有意義に使うべきだと思うの」
「こうやってだらだらとしつつはたてに罵られる事以上に有意義な事なんて有り得ない!」
「はいはいクズ乙クズ乙」
「ご褒美ありがとうございます!!」
「じゃあさ、可愛い可愛い下僕さん?」
「はい!」
ノリノリじゃないの、と思わず苦笑いを零すはたての目元が悪戯っぽいそれに変わるのに文は気付かなかった。
「パスタ茹でて」
「……はぁ?」
「そろそろご飯時だと思うんだ。お腹空いてきたし」
「なんでこんなくっそ暑い日にあんなもん茹でなきゃならないの!?」
「あーや」
「う」
「茹でて?」
仰向けに寝転がりながらの図々しいおねだりではあるが、文には逆らえない。
「……本格的に駄目天狗になってきてるわね」
「何を今更」
「……お互い様です」
自嘲気味な、でもどこか心地良いような笑みが文の口元に浮かぶ。
「あ、戸棚にパスタソースの瓶があったと思うから」
「はーい」
「これ何時買ったやつ!?賞味期限ぶっちぎっちゃってるんだけどー!?」
もっと流行ればいいと思うよ!!
ところでチューブのわさびとからしって絶対に期限ぶっちするよね?