Mary had a little lamb

Mary had a little lamb




仮装パーティーがあるのは知っていたし、蓮子が乗り気なのも知っていた。

特に着る衣装も無くてどうしようか迷っていたのだけれども。

蓮子がぴったりなものがあると言ったので家まで持ってきてもらったのだ。

「で？　この格好はどういうことなのかしら」

今の私は燕尾服を着ていた。



「うん、やっぱり髪を後ろで縛るとしっかりするわね、格好良いわよメリー」

「これのどこがぴったりなのか、答えは教えてくれるんでしょうね？」

私の相棒は全て承知した様子で胸に手を置いた。

「日本でメリーさんと言えば有名なのは２つよ。１つは人形が追いかけてくる都市伝説」

「確かに小さい頃はそれでからかわれたりもしたわ」

「それは人形のように可愛かったからやっかみや好意の裏返しだったりするんじゃないかしら、そのことは後で詳しく話してもらうとして」

「今回はもう一つの方かしら？」

「えぇ、童謡『メリーさんの羊』よ」

「……」

「……」

「え、これもしかして羊と執事をかけた駄洒落？」

「だって、しょうがないでしょ。思いついちゃったんだもの」

私の相棒が人外れた行動をすることは間々あったが、ここまで酷いとは。

「理由はそれだけじゃないわ」

「はいはい、どんな重要な理由なのかしら」

「いつも可愛いメリーは見てるけど、たまには格好良いメリーが見たいと思ったのよ」

ボンッ

顔を上げれない、鏡を見なくてもわかる、絶対に赤い。

「きっと蓮子の方が似合うと思うのだけど」

「それは私も否定できないけど、これは仮装パーティーだから。普段はしない格好の方が絶対に面白いと思うのよ」

ん？　何か引っかかった。

「蓮子もそういう格好をするのかしら？」

「ええ、こういうのは楽しんだもの勝ち。いつもはしない服装で周りをあっと言わせて見せるわよ」

その瞬間、私の中で悪魔がささやいたのだ。

「なら、私が見繕ってあげる。蓮子が普段絶対にしないような格好」

相棒の目が細くぎらつく。

「私に対する反撃ってところかしら。いいわよ、この勝負受ける。準備時間は３時間くらい？」

「お構いなく、何せこの部屋にもうありますから」

確か実家から持ってきたものがクローゼットの奥の方に。

「あった、蓮子にはこれを着てパーティーに出てもらうわ」

取り出したるは

「純白の、ドレス……」

「そう、普段しない格好というのならこういう格好はしないと思うわ。だからこそ蓮子にはこれを着てもらう」

「……」

あれ？　反応が違う。

蓮子なら「えぇ、立派に着こなしてみせるわ」ぐらい言うと思ってたのに。

「いや、これは、ちょっと問題が」

何この蓮子可愛い。

真っ赤になっちゃって、もしかしてこういうのが恥ずかしいのかしら。

今度からこれをネタに……

「離して、メリー。苦しいってば」

私のゴーストが囁いた結果、蓮子を抱きしめていたらしい。

「理由、聞かせてもらうわよ。着ていくのが恥ずかしいわけじゃないんでしょ？」

「その、笑わないで欲しいんだけど」

こんな色々な蓮子が見れるなんて、今日はなんていい日なのだろう。

一体どんな秘密が……







「胸の部分が絶対に余るの」

私は蓮子の胸部を見つめていた。

まさにスレンダーというべき体形。

そこが蓮子の魅力の一つなのだけれど。

下を見る、わたしの胸がある。

「……」

「……」

「何か言ってってば」

「蓮子、蓮子。貴女はどうしてそんなに可愛いのかしら、今急いでサイズ直すからちょっと脱ぎなさい」

「え？　ちょっとメリー、いきなり何を。ってどさくさにまぎれてどこ触ってるの」

「うわ、なにこの腰細っ。ちょっと蓮子、貴女一体何食べて生きてるのよ？」

「メリーも大体は一緒のもの食べてるじゃない。ええい、こうなったら私も触ってやるんだから」

その後色々あって

私達はもう少し仲良くなったのだった。



ちなみにパーティーはと言えば。

さり気無く胸を手で隠す蓮子がとても可愛くてご満悦だったのだが。

友人の一人曰く、

「あれ？　二人とも結婚したの？　式には呼んでくれって言ったじゃない。蓮子の方がお嫁さんだとは知らなかったけど」

それから先のことは覚えていない。

さり気無く手で胸をガードする蓮子が見たい。